「赤ちゃんに嘔吐や下痢の症状が見られる場合、どのタイミングで受診したらよいのだろう?」
「嘔吐下痢症にかかった原因が何かわからない」といった風に、乳幼児が罹患した場合の対応に戸惑う保護者の方も多いですよね。
特に冬場はお腹の風邪が流行しやすいため、原因と対策を明確にしておくことが大切です。
本記事では、「乳幼児の嘔吐下痢症の原因となるウイルス」を解説します。
赤ちゃんが罹患した場合の対応方法もわかりやすく紹介するので、慌てずに適切な対応を心がけましょう
目次
乳幼児の嘔吐下痢症とは?
乳幼児の嘔吐下痢症とは、いわゆるお腹の風邪を指します。
主にウイルスによって引き起こされる病気で、原因となるウイルスには、ロタウイルス・ノロウイルス・アデノウイルスなどがあります。
これらのウイルスは、患者の便や嘔吐物、咳や鼻水から感染し、冬から春にかけて流行するのが特徴です。
乳幼児の嘔吐下痢症の症状
乳幼児の嘔吐下痢症は、突然の嘔吐から始まり、その後に下痢が1週間程度続く場合が多いです。
クリーム色の水っぽい便が頻繁に出るのが特徴的で、発熱を伴うケースもあります。
嘔吐下痢症は特効薬がないため、一般的には整腸剤や吐き気止めを服用します。
1週間程度で回復するのがほとんどです。しかし、重症化すると脱水症状を引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。
乳幼児の嘔吐下痢症の原因
乳幼児の嘔吐下痢症の原因となる主なウイルスについて説明します。
ロタウイルス
ロタウイルスは、乳幼児期(0〜6歳ころ)にかかりやすい病気で、急性の胃腸炎を引き起こします。
主な症状は、水のような下痢・吐き気・嘔吐・発熱・腹痛などです。
ほとんどの子どもが5歳までにロタウイルスに感染するといわれていて、急性胃腸炎の入院患者のうち、約半数はロタウイルスが原因です。
ノロウイルス
乳幼児がノロウイルスに感染すると、突発的な嘔吐や下痢、発熱などの症状が現れます。
ノロウイルスの潜伏期間はとても短く、感染すれば半日から2日で症状が現れます。
症状は通常1〜2日で自然に治癒することが多いですが、嘔吐や下痢が続くと脱水症状を引き起こす可能性もあります。
乳幼児は好奇心が旺盛で、目や手、口でモノの形や感触を判別しようとするため、感染リスクが高まります。
その他のウイルス
上記2種類のウイルスの他、アデノウイルス・サポウイルス・アストロウイルスが乳幼児の嘔吐下痢症の原因となる可能性もあります。
アデノウイルスは、夏期に流行するプール熱の原因となるウイルスです。
嘔吐や下痢だけでなく、肺炎や脳炎を引き起こすこともあります。
サポウイルスは、冬期に流行する食中毒が原因で発生するウイルスです。嘔吐・下痢・発熱の症状が現れます。
アストロウイルスは、乳幼児の嘔吐下痢症の約数%から検出されるウイルスで、下痢や嘔吐の症状が現れます。
乳幼児の嘔吐下痢症ですぐに受診すべき状態
乳幼児の嘔吐下痢症で、以下のような症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
- 生後3ヶ月未満で38度以上の発熱が見られる
- ぐったりしている
- 1日に何度も嘔吐や下痢の症状が見られる
- 肌や口が乾燥している
- 尿が出ない
症状が軽い下痢や嘔吐のみなら、自宅で様子を見てみましょう。
乳幼児の嘔吐下痢症に対する水分補給の方法
乳幼児の嘔吐や下痢が続くと、体から水分や塩分(電解質)が失われて脱水状態に陥りやすいため、こまめな水分と塩分の補給が重要です。
脱水症状がある場合には、体液の成分である電解質を含んでいる経口補水液を飲ませるのが効果的です。
嘔吐や下痢があるときは、腸の動きが悪く、吸収が悪い状態になっています。
一度に大量の水分を与えると症状を悪化させる場合があるため、少量ずつ与えることが重要です。
症状が悪化しないように確認しながら、少しずつ量を増やしていきましょう。
乳幼児の嘔吐下痢症に対する食事の方法
嘔吐下痢症に対する食事の方法について解説します。嘔吐が落ち着いてきたら、徐々に食事をとらせましょう。
乳児の食事について
乳児の場合、嘔吐が落ち着いた段階で母乳やミルクを与えると、回復が早まるといわれています。
下痢や嘔吐の症状がひどい場合は、脱水症状の処置が必要になるため、医療機関を受診するようにしましょう。
離乳食について
吐き気が治ったら、消化のよい食事を与えましょう。
胃腸が弱っているため、重湯や野菜スープから始めて、徐々におかゆやうどんなどのやわらかい食事を与えます。
ただし、おかゆやうどんだけを続けると回復が遅れるため、下痢がなくなってきたら2〜3日でもとの離乳食に戻しましょう。
幼児の食事について
大人と同じ食事をしている幼児は、おかゆやうどん、りんごのすりおろしや野菜の煮潰しを与えましょう。
嘔吐や下痢の症状が治まり食欲が出てきたら、豆腐や白身魚、芋類なども食事に加えられます。
乳幼児の嘔吐下痢症に対する家庭内での感染予防方法
家庭内での完成を予防するためには、以下の3つが有効です。
- 手洗い・うがいをよく行う
- 食品はよく加熱する
- 調理機器を消毒する
吐瀉物や便が感染源になるため、トイレ後や料理前は必ず手を洗いましょう。
また、感染者と同じ食器を使うと感染する可能性があるため、別々の食器を使ってください。使用後もすぐに洗うことで感染予防が期待できます。
乳幼児の嘔吐下痢症に関するよくある質問
乳幼児の嘔吐下痢症に関するよくある質問をまとめました。
経口補水液は手作りできますか?
経口補水液は、家庭で手軽に作ることが可能です。
特に、市販の補水液が甘すぎると感じる場合や、自分で調整したい場合には、手作りの補水液がおすすめです。以下に、一例として手作り経口補水液のレシピを紹介します。
- ミネラルウォーター:500ml(水道水でも可)
- 塩:1.5g(小さじ4分の1)
- 砂糖:10gから20g(大さじ1~2)
- レモン汁:少々(適量)
手作りの補水液は保存がきかないため、作ったその日のうちに飲み切るようにしましょう。
乳幼児の嘔吐下痢症に効果のある予防接種はありますか?
乳幼児の嘔吐下痢症に効果のある予防接種として、ロタウイルスワクチンがあります。
乳幼児の嘔吐や下痢を引き起こす主要な原因であるロタウイルスは、ワクチンを接種することで重症化を80〜90%予防できます。
嘔吐下痢症にかかっている子どもをお風呂に入れても良いのでしょうか?
体調が悪い場合や脱水症状が見られる場合は、お風呂に入れるのは避けた方がよいでしょう。
ノロウイルスなどの感染症の場合は、お風呂の水で感染する可能性があります。
湯船には入らず、シャワーを使ったり体を拭いたりする程度にしておきましょう。
下痢でお尻がかぶれないためにはどうすればよいですか?
頻繁におむつを交換することが有効な対策です。
下痢の症状があるときは、おむつかぶれを起こしやすくなるため、排便があればなるべく早くおむつを替えましょう。
症状がどの程度治まったら保育園や幼稚園に登園させても良いのでしょうか?
乳幼児の嘔吐や下痢の症状が完全に治まり、普段通りの食事がとれるようになれば、保育園や幼稚園に登園させても問題ありません。
ただし、具体的な期間は定められていないため、事前に通っている保育園や幼稚園に確認しておきましょう。
乳幼児の嘔吐下痢症には水分補給をしっかりと
乳幼児の嘔吐下痢症とは、主にウイルスによって引き起こされる病状で、乳幼児が特にかかりやすい疾患です。
ロタウイルスやノロウイルスなどの感染により引き起こされ、急激な嘔吐や下痢を引き起こします。
赤ちゃんが罹患した場合は、脱水症状を防ぐために十分な水分補給が必要です。
自宅で適切な処置をすれば自然に治癒しますが、症状が重い場合や改善しない場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。