「子どもがよく咳をして吐くけれど原因は何?」
「子どもが咳込んで嘔吐している場合、どのタイミングで受診したらよいの?」
子どもが咳をして嘔吐すると、緊急事態なのではないかと心配になります。
本記事では、「子どもが咳込んで嘔吐した場合の対応方法」を解説します。
吐く原因や受診のタイミングもわかりやすく紹介するので、子どもが咳込んで嘔吐しても冷静に適切な対応ができるでしょう。
目次
子どもが咳込んで吐くのはダメなこと?咳には大切な働きがある
咳は、体が異物や不要なものを排出しようとする、非常に自然で重要な反応です。
特に子どもにとっては、気道を清潔に保つために欠かせない働きとなります。
例えば、風邪をひくとウイルスが鼻やのどに侵入し、体が異物を排出しようとして粘液を作り出します。
粘液が気管や肺に降りてくると、それを排出しようとして咳が起こります。
咳が正常に機能することで、ウイルスと一緒に粘液を体外に排出できます。
したがって、咳そのものを抑制することは、必ずしもよいこととはいえません。
しかし、咳が強すぎると胃の内容物が逆流し、結果的に嘔吐へとつながります。
咳や嘔吐が長時間続く場合や、子どもの様子が普段と異なる場合には医療機関に相談することをおすすめします。
咳はつらい症状ですが、自己防衛の行動と理解し、適切に対応することが大切です。
子どもが咳で嘔吐してしまう原因
子どもが咳をして嘔吐する原因は、強い咳で胃の内容物が逆流し、のどへと押し上げられてしまうためです。
乳幼児は、胃と食道をつなぐ筋肉が完全に発達していないため、大人よりも逆流しやすい体のつくりをしています。
咳が続くと胃の内容物が逆流し、それが咳をさらに悪化させて嘔吐に至ることがあります。
風邪・肺炎・ぜんそくなどが原因で咳が慢性化し、嘔吐を引き起こすこともあるでしょう。
子どもが頻繁に咳をして嘔吐する場合や、咳と嘔吐が長時間続く場合、または他の症状(発熱・呼吸困難・食欲不振など)がある場合は、専門家に相談することが重要です。
夜中に子どもが咳込んで嘔吐したら受診するべき?
子どもが夜中に咳込んで嘔吐すると、深刻な状態なのではないかと不安に思うかもしれません。
しかし、一時的な咳や嘔吐は通常、受診の必要はありません。
ただし、以下のような症状が現れた場合には、即座に医療機関へ連絡し、必要に応じて夜間の救急外来を受診することが重要です。
呼吸苦 | 子どもが呼吸できない、苦しいと訴えたり、息をするのが明らかに困難な様子を見せたりする場合はすぐに医療機関に連絡してください。 症状はぜんそくや重度の風邪、肺炎など、深刻な状態の可能性があります。 |
異常な呼吸音 | 子どもが息をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった異常な音がする場合も、注意が必要です。 気道が狭まっている証拠であり、呼吸困難を引き起こす可能性があります。 |
何度も嘔吐して脱水症状 | 子どもが何度も嘔吐し、脱水症状(口が渇く・尿が少ない・目がくぼむ・元気がない・皮膚の弾力がないなど)を示す場合、すぐに医療機関に連絡してください。 |
意識障害 | 子どもが反応しない、起こしても起きないなど、意識が明瞭でない場合も緊急の受診が必要です。 |
いずれの症状も、子どもの安全と健康に関わる重要なサインです。
これらの症状が見られたら、迷わず医療機関へ連絡を取りましょう。
万が一の状況に備え、地元の救急病院や小児科の連絡先を事前に確認しておくことをおすすめします。
子どもの症状や開始時期、嘔吐した回数などを医療スタッフに提供できるよう、常に記録を付けておくこともポイントです。
何かがおかしいと感じたら、適切な医療措置を講じるためにすぐに医療機関に連絡することが大切です。
子どもが咳込んで吐いた場合・嘔吐しそうな場合の対応は?
子どもが咳込んで吐いた場合、もしくは嘔吐しそうな場合の家庭での対応方法を説明します。
少量の水分を取らせる・脱水症状を防ぐ
子どもが咳で嘔吐してしまった場合、脱水症状を防ぐために適度な水分補給が不可欠です。
嘔吐により体内の水分が大量に失われ、脱水症状が引き起こされる可能性があるでしょう。
そこで大切なのが、嘔吐した後に少量ずつ頻繁に水分を補給することです。
口の中が乾燥すると咳が増えることがあるため、咳の抑制にもつながります。
具体的には、吐き終わった後にしばらくは何も与えず、吐き気が治まったら小さな一口から始めてみてください。
水だけでなく、電解質(塩分など)も一緒に補給できる経口補水液がおすすめです。
無理に大量に飲ませると再び吐いてしまう可能性があるため、子どもの様子を見ながら少しずつ与えていきましょう。
一方、頻繁に嘔吐を繰り返して脱水症状が見られる場合は、すぐに医療機関に連絡を取りましょう。
重度の脱水症状は緊急事態です。
室内の温度と湿度を整える
子どもが咳込んで嘔吐する原因の1つとして、乾燥した環境が挙げられます。
乾燥はのどを刺激し、咳を誘発することがあるでしょう。
空気が乾燥するとウイルスが空中に長時間留まることが知られており、感染症のリスクも高まります。
室内の湿度は、50%以上に保つことが理想的です。
このレベルの湿度では、のどや鼻の粘膜が適切に潤い、ウイルスの侵入を防ぎやすくなります。
室内温度も子どもの体調管理に重要です。
体が冷えると免疫力が下がり、風邪などの病気にかかりやすくなります。
特に冬季は、注意が必要です。室温は、20度以上に保つことが推奨されています。
このような環境を整えることは、子どもが咳込んで嘔吐するのを予防するだけでなく、快適な生活空間を提供するためにも重要です。
吐きやすい態勢を整える
子どもが咳で嘔吐する場合、適切な体位や態勢を整えることが重要です。
咳で嘔吐が生じたとき、吐きやすい態勢にしてあげることで、子どもの苦痛を軽減できます。
子どもが吐きそうな場合は、嘔吐物が誤って気管に入るのを防ぐために、座らせたりすることが有効です。咳が強くなる前に吐き気を感じたら、子どもを座らせて、嘔吐物が顔や髪に付かないようにするとよいでしょう。
子どもが吐いてしまったとき、親がパニックになったり叱ったりすると、子どもはさらにストレスを感じてしまいます。
子どもが吐いてしまった際には、落ち着いて対応して安心させてあげましょう。
優しく背中をさすったり、頭をなでたりすることで、リラックスさせられます。
体を締め付けない洋服に着替えさせる
子どもが咳で嘔吐する場合、その症状を和らげるためにも体を締め付けない洋服を選ぶことがおすすめです。
体を締め付ける服装は、呼吸を圧迫するだけでなく、胃や腸などの内臓にも影響を与えます。
ウエスト部分がゴムやベルトで締め付けられている服、首元が締まった服などは避けて、ゆったりとしたデザインの服を選びましょう。
素材にもこだわるのも大切です。
綿やリネンなどの自然素材は通気性がよく、体温調節にも優れています。
咳や嘔吐が頻発する場合、洋服が汚れてしまうことがあります。
簡単に着替えができるタイプの洋服を選ぶこともおすすめです。
例えば、フロントがボタンやファスナーで全開になるものや、大きなネックラインのあるものなどがよいでしょう。
こうした配慮をすることで、子どもがリラックスして過ごせる環境を整えられ、咳や嘔吐の症状の改善にもつながります。
子どもが咳込んで嘔吐しているときの食事は?
子どもが咳で嘔吐する際の食事は、胃への負担を考慮して選ぶことが重要です。
吐いてしまうと、胃が空っぽになります。しかし、すぐに大量の食事を取らせると、再び嘔吐を引き起こすことがあるでしょう。
食事は少なめの量を何度も取らせることが推奨されています。
一度に大量に食べさせるのではなく、少量を頻繁に取らせることで、胃への負担を和らげることが可能です。嘔吐のリスクを低減させられます。
食事内容は、消化がよくて胃に優しいものを選びましょう。
例えば、おかゆやうどん、バナナなどが考えられます。
食事の温度も重要なポイントです。
冷たいものはのどや胃に刺激を与え、咳や嘔吐を引き起こす可能性があります。
冷たいものはなるべく避け、常温や温かいものを選ぶとよいでしょう。
子どもの体調や食欲に合わせて、食事の量や種類、タイミングを調整することが大切です。
無理に食べさせるのではなく、子どもの様子を見ながら対応しましょう。
子どもが咳込んで嘔吐することに関するよくある質問
子どもが咳込んで嘔吐することに関する、よくある質問をまとめました。
咳込んで嘔吐した後、子どもが食事をしたがりません。無理にでも食べさせた方がよいですか?
再度の嘔吐を引き起こす可能性があるため、無理に食事を強制するのは避けた方がよいでしょう。
その代わり、体調が回復するまでは、水分補給に重点を置いてみてください。
咳をしてたまに吐きますが、元気です。どれくらい咳が続いたら受診すべきですか?
咳が2週間続く場合は、医療機関を受診することをおすすめします。
咳により吐く回数が増え、何も食べられなくなってしまった場合や、咳や吐き気で夜間も安定して休めない場合も、受診が必要です。
水分補給の際におすすめの飲み物はありますか?
水分と電解質を効率的に補給できる、経口補水液がおすすめです。
元気ですが、たまに咳をしながら吐きます。おかしな病気ではありませんか?
子どもが咳をしながら時折吐くことは、風邪やウイルス感染など一時的な症状であることがほとんどです。
しかし、症状が続く、症状が重い、何か異常を感じる場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
子どもが咳込んで嘔吐する際は落ち着いて対応を
子どもが咳込んで嘔吐する様子を見るのは、親にとっても非常に心配な状況です。
しかし、慌てずに冷静に対応することが何より大切です。
親の落ち着いた態度は、子どもを安心させ、その後の回復にもつながります。
本記事で説明したように、咳込んで嘔吐する原因はさまざまです。
風邪やウイルス感染など一時的なものから、アレルギーや胃食道逆流症などの病気まで、さまざまな可能性があります。
しかし、元気で、食欲もあり、日常生活に支障がない場合は、特別に心配する必要はありません。
対策として、少量頻回の水分補給、室内の温度と湿度の調整、適切な飲食など、家庭でできることは多くあります。
体を締め付けない服装にする、吐きやすい態勢を整えるなど、子どもの快適性に配慮することも重要です。
必要なときには、医療機関に相談する勇気も忘れずに、子どもの健康を見守りましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。