「子どもが嘔吐、下痢でつらそう。原因はなんだろう?」
「どのタイミングで受診したらよいの?」
子どもが胃腸炎で嘔吐や下痢に苦しんでいると、緊急事態かもしれないと心配になりますよね。
本記事では、「子どもが胃腸炎にかかった場合の対応方法」を解説します。
胃腸炎の原因や病院に行くタイミングもわかりやすく紹介するので、子どもが胃腸炎にかかった場合の参考にしてください。
目次
子どもの胃腸炎とは?よくある胃腸炎の原因と症状
胃腸炎とは、胃や腸が炎症を起こし、主に嘔吐や下痢の症状を引き起こす病気です。
子どもにとっては非常に一般的な病気で、特に冬季には集団感染を起こすこともあります。
多くの胃腸炎の原因はロタウイルスやノロウイルスなどウイルスですが、なかには細菌が原因となる胃腸炎も存在します。
原因ウイルスによる胃腸炎(ウイルス性胃腸炎・嘔吐下痢症)症状の違い
ウイルス性胃腸炎は、ウイルスが胃腸に感染して起こる疾患です。
子どもがかかる胃腸炎の中で最も多く、特に冬期に感染が拡大します。
ウイルスの種類により、症状や重症度が異なります。
- ロタウイルス
ロタウイルスは、特に乳幼児を中心に感染しやすく、急な嘔吐や水様便、発熱を引き起こします。
嘔吐や下痢が続くと脱水症状を起こす危険があるため、早期の対応が必要です。
- ノロウイルス
ノロウイルスは、感染力の強いウイルスで、嘔吐・下痢・発熱・腹痛などの症状があります。
ほとんどの場合、症状が出てから数日で自然に治ります。
- アデノウイルス
アデノウイルスは、咽頭結膜炎や気管支炎を引き起こすウイルスです。
51の型に分類され、型によっては喉や肺の症状だけでなく、胃腸炎を引き起こすものも存在します。
- その他のウイルス
その他、胃腸炎を起こすウイルスには、サポウイルスやアストロウイルスなどがあります。
これらのウイルスも同様に嘔吐や下痢を引き起こし、冬季に流行するのが特徴です。
細菌が原因の胃腸炎(細菌性胃腸炎・食中毒)
細菌性の胃腸炎は、主に食材の不適切な取り扱いや調理により感染します。
胃腸炎を起こす細菌は多種多様ですが、なかでも腸炎ビブリオやサルモネラ菌が代表的です。
これらの細菌は食中毒菌として、急性の下痢や嘔吐、腹痛などの症状を起こします。
子どもが胃腸炎にかかった場合は病院に行くべきか?受診のタイミングを解説
胃腸炎の場合、重症化を防ぐために確認したいポイントがあります。
症状をよく観察し、受診が必要かどうかを見極めましょう。
子どもが胃腸炎にかかった場合にチェックすべきこと
胃腸炎かもしれないと思ったら、以下の項目をチェックしましょう。
- 発熱があるか
- 元気があるか、機嫌がよいか
- 嘔吐や下痢が頻繁にあるか
- 便や嘔吐物に血が混じっているか
- 尿の回数が少ないか、尿が濃い色をしていないか
こんな症状が見られたらすぐ受診を!
以下のような場合は、夜間でも救急外来を受診すべきです。
- 高熱が続く場合
- 体力が無く、元気がない、反応が鈍い
- 吐き続けて水分補給が難しい
- 下痢が止まらず、便に血や粘液が混じっている
- 皮膚のツヤがなくなり、手足が冷たい
しばらく様子を見ても大丈夫なケース
以下のような場合は、一時的に自宅で様子を見ても問題ありません。
- 発熱がない、または軽度で、飲食や睡眠に大きな影響がない
- 嘔吐や下痢があるが、回数が少なく症状が軽い
- 水分補給が可能で、尿の回数や色が通常と大きく変わらない
- 元気で、通常通りに遊んだり動いたりする
子どもが胃腸炎にかかり嘔吐・下痢の症状が見られる場合の対応は?
子どもが胃腸炎にかかって、嘔吐や下痢などがある場合の対応方法を解説します。
子どもの胃腸炎を早く治す方法は?まずは水分補給をしっかり行うことが大切
胃腸炎では、嘔吐や下痢によって体内の水分が大量に失われ、脱水症状を起こすことがあります。
まずは適切な水分補給が必要です。
ただし、嘔吐を繰り返す場合は、吐き気がおさまってから1〜2時間後に少量ずつ水分を補給します。
ただの水ではなく、経口補水液を使えば、必要な塩分も補うことができます。
その際、冷たい飲み物よりも常温の飲み物のほうが体に負担をかけず、効果的です。
嘔吐や酷い下痢が治まったら少しずつ食事を摂らせる
胃腸炎の症状が落ち着いたら、少しずつ食事を摂らせましょう。
最初は軽い食事から始め、体調を見ながら量を増やしていきます。具体的には、以下のような食事がおすすめです。
おすすめの食事 | 避けるべき食事 |
おかゆ、うどんなどの消化が良い食事 | 脂っこい食事 |
バナナ、りんごなどの繊維質が多いフルーツ | 濃い味付けや、スパイシーな食事 |
白身魚や豆腐などのたんぱく質 | 乳製品、カフェインを含む飲み物 |
もし、食欲がない場合には食べさせず、脱水に注意をしながら水分補給を行いましょう。
子どもの胃腸炎が他の家族にうつるのを防ぐためにできること
胃腸炎は、ウイルスや細菌による感染症の一つで、非常に感染力が強いのが特徴です。
そのため、一人の家族が胃腸炎にかかると、他の家族にも広がる可能性があります。
感染拡大を防ぐために、以下のことを心掛けてください。
- 吐しゃ物や下痢のあとはすぐに掃除し、必ず手洗いをする
- 吐しゃ物はなるべく他人が触れないように、ビニール袋などに密閉して処理する
- 使用した食器はすぐに洗い、可能であれば食洗機で洗うか、高温で十分に加熱して殺菌する
- 共有の物(リモコンやドアノブなど)は定期的に消毒する
子どもの胃腸炎に関するよくある質問
腹痛を訴えている子どもへの対応について、よくある質問をまとめました。
ノロウイルスが疑われる場合は検査した方がよいですか?
ノロウイルスは症状からの診断が一般的ですが、特に保育園や学校への通園・通学している場合、確定診断を求められる場合があります。
病原体の特定は、感染拡大の防止や適切な対策をとるため行なわれます。
ウイルス性胃腸炎に効果的な予防接種はありますか?
ウイルス性胃腸炎のうち、ロタウイルスには予防接種があります。
ただし、予防接種を受けても100%の予防効果はありません。
他のウイルス性胃腸炎に効果がある予防接種は、現在のところありません。
ですから、予防には基本的な手洗いや衛生管理が大切です。
胃腸炎の子どもをお風呂に入れても良いですか?
子どもが胃腸炎でも、お風呂は可能です。
感染リスクを最小限に抑えるため、湯船には最後に入れ、残り湯を洗濯などに使いまわすのはやめましょう。
市販の経口補水液を買っていません。家で作れますか?
経口補水液がないときは、簡易的に自宅で作ることもできます。
参考に、レシピをご紹介します。
- 水 1リットル
- 砂糖 大さじ6
- 食塩 小さじ1/2
これにレモン汁を少し加えると、飲みやすくなります。
ただし、あくまで緊急時のみ使用してください。
市販の経口補水液には、食塩に入っているナトリウムだけではく他のイオンなども含まれていますので、できるだけ早く手に入れましょう。
胃腸炎の症状がどれくらい治まれば登園・登校して良いのでしょうか?
症状が治まった後も、再発や他の子どもへの感染を防ぐために、一定期間家で休養を続けることが推奨されています。
一般的には、下痢や嘔吐が止まってから2日間は自宅で過ごし、その後も体調を見ながら徐々に外出や登園・登校を再開するスケジュールです。
ただし、これは一般的な目安であり、具体的な判断は医師や保育園・学校の指導に従いましょう。
子どもの胃腸炎は原因や症状を理解し適切な対応を
胃腸炎は、子どもにとって辛い経験であり、親としても大変でしょう。
しかし、胃腸炎の原因や症状、対処法を理解していれば、あわてずにすみます。
子どもが胃腸炎にかかったときは冷静になり、症状を観察して、必要なら医療機関に連絡しましょう。
病気が広がらないためには、日常的な衛生管理が大切です。
手洗いをこまめにする、食材の取り扱いに注意する、感染した場合は他人にうつさないよう注意するなど、基本的なことを心がけましょう。
胃腸炎は、ほとんどが完治します。
しかし、胃腸炎による脱水は特に小さい子どもにとっては命に関わる可能性もあり油断できません。
子どもが胃腸炎にかかったら、こまめに水分補給をして、必要なら医療機関を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。