2023.08.17

小児アレルギーについて|アレルギーの種類や原因・治療方法を解説

アトピー性皮膚炎や小児気管支喘息(ぜんそく)など、子育て中の人なら一度はアレルギー疾患の名前を耳にしたことがあるでしょう。

実際に子どもが小児アレルギーで、日常生活でも配慮が必要な人もいるかもしれません。

小児アレルギーは、大人になってから発症するアレルギーと違い、成長とともに軽快することも多いといわれています。

本記事では、アレルギーが起こる仕組みや代表的な小児アレルギーを紹介します。検査や治療の方法もお伝えしますので、アレルギーと上手に付き合っていく参考にしてみてください。

目次

アレルギーとは?|アレルギーが起こる仕組みや要因

まず、アレルギーが起こる仕組みや要因を解説します。仕組みが分かると、アレルギーを悪化させない対策を考えるヒントが見つかるでしょう。

アレルギーとは

アレルギーとは、体の中に入ってきた異物に対し、もともと備わっている免疫機能が過剰に反応してしまう状態を指します。

私たちの体には、細菌やウイルス、寄生虫といった異物から体を守るために免疫機能が備わっています。通常であれば、免疫機能は異物だけを排除するため、皮膚炎やくしゃみなどの症状は起こりません。

しかし、環境や遺伝、ライフスタイルの変化などによって免疫機能が過剰に反応してしまうと、皮膚炎やくしゃみなど体のあちらこちらにさまざまな不調が起きてしまいます。

特に、小児アレルギーは乳幼児期のアトピー性皮膚炎を始まりとして、食物アレルギー・気管支喘息(ぜんそく)・アレルギー性鼻炎が次々と異なる時期に生じることがあります。

アレルギーが次々起こることを「アレルギーマーチ」といいます。アレルギーマーチの発症・進展を防ぐことが、アレルギー治療で最も大切なことです。

アレルギーが起こる仕組み

アレルギーは、起こる仕組みや症状の出方によってⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型・Ⅳ型に分けられます。

特に身近なのがⅠ型です。

Ⅰ型アレルギーは、アレルギーの原因となる物質「アレルゲン」が体に入ってくることで起こるアレルギーです。

アレルゲンが入ってくると、まず異物を排除するために免疫機能が働き「IgE抗体」が作られます。

「IgE抗体」はアレルゲンにくっついてアレルギーを起こす抗体で、皮膚のすぐ下にあるマスト細胞や血液中の好酸球の表面にくっついています。健康な人の体内にはわずかにしか存在しません。

再びアレルゲンが体内に入ってくると、アレルゲンにIgE抗体がくっつきます。

すると、アレルゲンとIgE抗体がくっついたシグナルでマスト細胞や好酸球が活性化し、化学伝達物質が放出されてアレルギーが起こります。

代表的な疾患は、花粉症やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎などです。

Ⅱ型アレルギーは、何らかの原因で自分の細胞を異物と認識して攻撃してしまうことで起こります。代表的な疾患は、自己免疫性溶血性貧血などです。

Ⅲ型アレルギーは、体液中に溶けている異物とIgE抗体が結合して生まれる免疫複合体によって体の組織が傷つけられるアレルギーです。代表的な疾患には関節性リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)などがあります。

Ⅳ型アレルギーは、細胞内のTリンパ球によって起こるアレルギーで、IgE抗体は関係しません。原因となる異物を取り込んで半日~数日して起こることも多いとされています。

代表的な疾患には接触性皮膚炎やアトピー性皮膚炎があります。

アレルギーの要因

アレルギーには、遺伝的要因や環境的要因が関係しているといわれています。しかし、要因はこれだけでなく、一人ひとり異なるため一概に何が要因とはっきりいえません。

アレルギーを悪化させる原因もさまざまです。

研究が進んで少しずつ分かってきたこともありますが、まだ不明なことも少なくありません。

小児によく見られるアレルギー疾患

小児によく見られるアレルギー疾患には、次のようなものがあります。

  • アトピー性皮膚炎
  • アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)
  • 小児気管支喘息
  • 食物アレルギー

アトピー性皮膚炎とは?|原因・症状・治療について解説

次々と種々のアレルギーが異なる時期に起こる「アレルギーマーチ」。その始まりとなることがあるアトピー性皮膚炎を解説します。

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは、かゆみのある湿疹が全身に広がる疾患です。症状は慢性的で、よくなったり悪くなったりを繰り返します。

アトピー性皮膚炎になると皮膚のバリア機能が低下するため、刺激や乾燥の影響を受けやすくなるだけでなく、皮膚からアレルゲンが体内に入りやすくなります。

常にかゆみを感じるため、無意識にでもかいてしまうと皮膚のバリア機能がさらに低下し、よりかゆみを感じやすくなる悪循環に陥ることが少なくありません。

アトピー性皮膚炎の原因

アトピー性皮膚炎は、体質的要因と環境的要因が重なったときに発症するといわれています。

アトピー性皮膚炎が悪化する要因や症状は個人差が大きいため、一概に何が要因だとはっきりいえません。

アトピー性皮膚炎の症状

アトピー性皮膚炎の主な症状は、次の通りです。

  • かゆみをともなう湿疹(盛り上がる湿疹やジュクジュクした湿疹などタイプはさまざま)
  • 皮膚の肥厚(かくことによって、皮膚が厚くなりごわごわした状態になる)
  • かさぶた

湿疹は顔や耳、首回りのほか、脇の下や肘の内側・外側、脚の付け根、膝の表・裏側といった皮膚がやわらかいところにできやすいのが特徴です。

アトピー性皮膚炎の検査と治療

アトピー性皮膚炎の状態を把握するために、血液検査を行うのが一般的です。そのうえで、よく似ている疾患と鑑別するために、症状に応じた検査を追加で行います。

治療は、スキンケア・薬物治療・環境整備が柱です。

保湿を心がけ、処方された薬を正しく使いながら、アレルゲンをできるかぎり取り除いた環境を整えましょう。

アトピー性皮膚炎は、日常生活にも支障を来すことが珍しくない疾患です。顔に症状がある場合、目をこすることで視力が低下することもあります。

治療は日常生活に支障がなく、薬物治療もほとんど必要でない状態を目標に行います。

アレルギー性鼻炎とは?|原因・症状・治療について解説

アレルギー性鼻炎を解説します。

アレルギー性鼻炎とは?

アレルギー性鼻炎は、アレルゲンが鼻から体内に入ることで起こるアレルギーです。

鼻水・鼻づまり・くしゃみといった症状が現れます。

鼻風邪と違って発熱をともなうことはなく、鼻水もサラサラしているのが特徴です。

通年性アレルギーと季節性アレルギー

アレルギー性鼻炎には、1年を通して症状が出る「通年性アレルギー」と、特定の時期だけ症状が出る「季節性アレルギー」があります。

季節性アレルギーの代表が花粉症です。

子どもによっては、通年性アレルギーに季節性アレルギーを併発していることもあります。

アレルギー性鼻炎の原因

アレルギー性鼻炎の要因は、主に花粉やハウスダストです。

特に季節性アレルギーは、スギだけでなくヒノキ・イネ科の植物(カモガヤなど)・ブタクサ・ハンノキ・シラカバなどの花粉が原因のことが多いといわれています。それぞれ飛散する時期が異なります。アレルギーが出る時期で、ある程度アレルゲンが特定可能です。

ハウスダストには、ダニ・ホコリ・ペットの毛・カビなどが含まれており、通年性アレルギーの原因になることが多いでしょう。

アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎になると、次のような症状が現れます。

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻づまり

小さい子どもの場合、口呼吸になったり、鼻を頻繁にこすったりするしぐさが見られることもあります。花粉症によるアレルギー性鼻炎の場合、目のかゆみを訴えるケースも少なくありません。

アレルギー性鼻炎の検査と治療

アレルギー性鼻炎の検査は、血液検査と皮膚プリックテストを行うのが一般的です。

皮膚プリック検査は、皮膚の上にアレルゲン液を垂らし、専用の針でその部分を軽く刺して行います。

アレルギー性鼻炎の治療は、アレルゲンの除去・薬物療法が基本です。花粉やハウスダストにさらされないように換気や掃除を心がけたうえで、処方された薬で症状を抑えます。

アレルギー性鼻炎を根本的に治す方法として、「アレルゲン免疫療法」もあります。しかし、数年間にわたって治療薬の服用・注射が必要です。

小児気管支喘息とは?|原因・症状・治療について解説

小児気管支喘息を解説します。

小児気管支喘息とは?

小児気管支喘息は、アレルギーによって空気の通り道(気管支)が狭くなり、呼吸がしにくくなる疾患です。息を吸うたびにヒューヒュー・ゼーゼーといった喘鳴(ぜんめい)が聞こえます。

気管支で常に炎症が起こっているため、少しの刺激で咳が止まらなくなったり、息がしにくくなったりする発作が出るのも喘息の特徴です。

小児気管支喘息の原因

小児気管支喘息の原因は、次のようなものです。

  • ダニ
  • ペットの毛
  • ハウスダスト
  • カビ
  • 花粉
  • 食べ物

このほかに、症状を悪化させる要因としてストレス・風邪などの感染症・大気汚染・激しい運動・たばこの煙などがあります。

小児気管支喘息の症状

小児気管支喘息の主な症状は、以下の通りです。

  • ヒューヒュー・ゼーゼーといった喘鳴
  • 突然起こる激しい咳
  • 呼吸困難
  • 胸の痛み
  • 動悸
  • 息切れ
  • 痰の絡まない空咳

小児気管支喘息の発作は、夜間や明け方に起こることが多いとされています。

小児気管支喘息の検査と治療

小児気管支喘息かどうかは、症状の頻度や重症度で診断することが一般的です。しかし、必要に応じて、次の検査が検討されます。

  • 呼吸機能検査

一気に息を吐き切って、気管支がどの程度狭くなっているかを見る検査

  • ピークフロー測定

息を吐き出すスピードをチェックして、喘息の状態を見る検査

  • 気道過敏性検査

発作が出やすい状態にして、どの程度呼吸機能が低下するかを調べる検査

  • 呼気一酸化窒素(NO)検査

吐く息の中に含まれる一酸化窒素の量を調べて、喘息の状態や正しく治療できているかをチェックする検査

喘息の治療は、悪化因子の除去・薬物療法・生活習慣の見直しが柱です。

まず、アレルギーの原因となるハウスダストやペットの毛などに触れにくい環境を整え、たばこの煙など喘息を悪化させる要因を生活から取り除きます。

そのうえで、吸入ステロイド薬やロイコトリエン拮抗薬などを使用して、狭くなった気管支を広げ、炎症を鎮めるのが一般的です。

適度な運動やバランスのよい食事、十分な睡眠といった生活習慣も、喘息改善に効果的だといわれています。

食物アレルギーとは?|原因・症状・治療について解説

食物アレルギーを解説します。

食物アレルギーとは?

食物アレルギーとは、本来体に害のない食べ物を体が異物と認識することで出るアレルギーです。

現れる症状はさまざまで、蕁麻疹(じんましん)やかゆみのほか、咳や消化器症状もあります。

食物アレルギーの種類

食物アレルギーといっても、5つの種類があります。それぞれ解説します。

新生児・乳児消化管アレルギー

新生児・乳幼児がミルクや母乳を飲んだ後に起こすアレルギーです。

嘔吐や下痢、血便などの消化管症状が見られます。

約7割の患者が生後1ヶ月以内に発症しており、生まれたその日に発症するケースもあります。

原因は、粉ミルク・母乳に含まれる牛乳たんぱく質です。

粉ミルクの代替として粉末大豆ミルクを与えることもありますが、まれに大豆ミルクでもアレルギーを発症することがあります。

このアレルギーは、IgE抗体が関わらない、アレルゲン特異的リンパ球による細胞依存性アレルギーです。

即時型食物アレルギー

アレルゲンとなる食べ物を食べた後すぐ(多くは2時間以内)に症状が出るアレルギーです。幅広い年齢層に見られます。

最も多い患者は0~1歳で、成長にともない治ることも珍しくありません。

アレルゲンとなる食物には、次のようなものがあります。

  • 鶏卵
  • 牛乳
  • 小麦
  • ナッツ類
  • 果実類
  • 魚卵類
  • 魚類
  • 甲殻類
  • 大豆
  • そば

食物アレルギーの有無は、問診・血液検査・プリックテスト・食物経口負荷試験で検査します。

食物経口負荷試験は、医師の監督のもとアレルゲンと疑われる食品を少しずつ実際に食べて、症状の有無を判定する検査です。

食物アレルギーは、ときに命に関わるアナフィラキシーを起こすことがあるため、かかりつけの医師と緊急時の対応を相談しておくようにしましょう。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー

アレルゲンとなる食べ物を食べた後、2時間以内に運動することで発症する食物アレルギーです。原因は小麦が最も多く、次に多いのが甲殻類とされています。

10~20代で初めて発症する人が多く、発症すると次のような症状が現れます。

  • 皮膚症状(蕁麻疹・かゆみ・赤み)
  • 呼吸器症状(喘鳴・咳・呼吸困難)
  • 消化器症状(嘔吐・腹痛・下痢)
  • ショック症状(意識障害・血圧低下)

口腔アレルギー症候群

口腔アレルギー症候群は、口の中やのど、耳の奥などがかゆくなる食物アレルギーです。

特定の植物の花粉症と関係があるとされています。

これは、特定の花粉と似た形のたんぱく質を含む果物を口にした際、免疫機能が果物のたんぱく質を花粉と間違えてしまうのが原因です。

例えば、カバノキ科の花粉症の人は豆乳、ブタクサ科花粉症の人はメロンやバナナを口にすると口腔アレルギー症候群が起きやすいとされています。

果物や豆乳をしっかり加熱してから食べると、起きにくいといわれています。

アトピー性皮膚炎(食物アレルギーの関与するもの)

生後3ヶ月頃までにアトピー性皮膚炎を発症した赤ちゃんに多い食物アレルギーです。

特に顔にもアトピー性皮膚炎の湿疹があり、2ヶ月ほど治療を行っても症状が改善しない場合は、食物アレルギーからくるアトピー性皮膚炎を疑いましょう。

アレルゲンとなる食べ物は、鶏卵・牛乳・小麦であることがほとんどです。

アトピー性皮膚炎が治りにくいと感じたら、できるだけ離乳食開始前にアレルギー専門医の診察を受けましょう。

アレルギーを起こす食べ物に気付かず離乳食を食べさせた場合、即時型症状が出やすくなります。

小児アレルギーに関するよくある質問

小児アレルギーに関するよくある質問をまとめました。アレルギーと上手に付き合っていく際の参考にしてみてください。

親にアレルギーがあると子どもにも必ずアレルギーが出ますか?

アレルギーは、遺伝的な要因に環境的な要因が重なって発症します。親がアレルギー体質だからといって、子どもも必ずアレルギーを発症するとは限りません。

食物アレルギーは自然によくなりますか?

乳幼児期の食物アレルギーは、成長とともになくなっていくことも多いことが分かっています。

子どもに食物アレルギーがあります。どの程度の頻度で検査を受け直した方がよいですか?

おおむね6ヶ月を目安に検査を受け直し、最新の結果に基づいて治療方針を主治医と相談しましょう。

子どもに小麦アレルギーがあります。麦茶は飲ませても大丈夫ですか?

麦茶の原料は、大麦です。重い小麦アレルギーがあって、麦類全般の摂取を禁止されているのでなければ、飲ませても問題ありません。

小児アレルギーは医療機関と連携して適切な対応を

小児アレルギーは、成長とともに軽快することも多いアレルギーです。だからといって放っておくと、重症化したり、生活の質が下がってしまったりします。

子どもがアレルギー体質かもしれないと思ったら、まずはかかりつけの医療機関を受診して検査を受けてみてください。

アレルギーの症状は、人それぞれです。

医療機関や学校などと連携しながら、一人ひとりに合わせた適切な対応を行いましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。