2023.08.08

こどもに嘔吐や下痢の症状が見られるときの対応方法|原因や受診のタイミングを解説

子どもに嘔吐や下痢の症状があると、「何が原因なの?」「どのタイミングで医療の専門家に相談するべき?」と迷いますよね。

本記事では、子どもの嘔吐や下痢の症状の原因や、対応方法を解説します。受診のタイミングも解説しているので、参考にしてください。

目次

こどもが嘔吐・下痢するのはなぜ?こどもによくある原因を紹介

子どもに嘔吐・下痢の症状がある場合に、まず気になるのが原因です。嘔吐・下痢は、さまざまな原因が考えられますが、知っておくべき重要な情報もあります。

以下では、子どもが嘔吐や下痢をする一般的な原因をいくつか紹介します。

ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)

子どもの嘔吐や下痢の主要な原因の一つはウイルス性胃腸炎です。胃と腸がウイルスに感染し、炎症を起こす状態を指します。

ウイルスの種類はさまざまで、秋から春に多く見られ、特に子どもが感染しやすいですが、種類によっては大人も罹患する可能性があります。

ロタウイルス

ロタウイルスは、乳幼児が感染しやすいウイルスで、急性の胃腸炎を引き起こします。症状は、液体のような下痢、嘔吐、発熱、腹痛です。

生後6ヶ月から2歳が感染のピークであり、5歳までにほぼ全ての子どもがロタウイルスに感染し、胃腸炎を発症すると考えられています。通常1〜2週間で自然に治りますが、脱水症状を引き起こすと、重症化する可能性があるため、注意が必要です。

ノロウイルス

ノロウイルスは、流行性嘔吐下痢症の原因となる感染症です。主な症状は、嘔吐と下痢で、発熱は軽度です。脱水症状を伴うケースもあるため注意しましょう。

多くの場合、ノロウイルスによる症状は1日から3日で治まることが一般的です。

ノロウイルスは、乳幼児だけでなく大人にも感染し、一度発症しても再感染することは珍しくありません。感染力が強く、保育園、幼稚園、小学校などの集団感染に注意が必要です。

アデノウイルス

アデノウイルスは、感染性胃腸炎を引き起こすウイルスです。6歳以下の感染割合が高く、特に夏季に多くみられます。

主な症状は、発熱、下痢、嘔吐などで、感染者の咳やくしゃみ、便などを介して感染します。他のウイルス性胃腸炎と比較して下痢の期間が長いことが特徴です。

サポウイルス

サポウイルスは、感染性胃腸炎を引き起こす、一年を通して感染するウイルスです。

主な症状には嘔吐、嘔気、下痢があります。また、腹痛、頭痛、発熱、悪寒、筋痛、咽頭痛、倦怠感などの症状を伴うケースもあるでしょう。

子どものみならず大人も感染する可能性があり、二枚貝の生食による食中毒から発症し、感染者との接触により、集団感染するケースもあります。

一部の事例では、サポウイルスがノロウイルスやロタウイルスと同時に検出されることもあります。

アストロウイルス

アストロウイルスは、急性胃腸炎の原因となるウイルスです。感染すると吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、軽度の発熱などの主な症状が現れます。

感染経路は主にウイルスに汚染された飲食物や、ふん便や吐物を介した二次感染、飛沫感染などです。

アストロウイルスの潜伏期間は1~4日で、冬から春にかけての発生が多いものの、年間を通じて発生することもあります。ノロウイルスやロタウイルスに比べると発生頻度は低いです。

食物アレルギー

食物アレルギーは特定の食品に反応し、嘔吐などの症状を引き起こします。食事の後に頻繁に吐く、または皮膚や、顔のむくみがある場合、食物アレルギーの可能性を考えましょう。

子どもの場合、どの食品に対してアレルギー反応があるのか識別が難しいです。子どもの食物アレルギーの症状に気付いた場合は、すぐに医療機関へ相談しましょう。

食中毒(細菌性胃腸炎)

食中毒は、摂取した食品が原因で引き起こされる胃腸炎の一種です。主な症状は、嘔吐、下痢、腹痛、発熱です。

特定の食品を摂取した後にこれらの症状が現れた場合、食中毒の可能性があります。

食中毒の発症は、食品の摂取後数、時間から数日後に起こり、原因食品の特定は難しい場合もあります。症状が現れたら直ちに医療機関を受診してください。

腸重積(ちょうじゅうせき)

腸重積は、腸の一部が隣接する腸に入り込み、内容物の通過や血流が阻害される病気で、生後3ヶ月から2歳の子どもによく見られます。

腸重積の症状は、突然の腹痛から始まります。乳幼児はこの痛みをうまく説明できないため、不機嫌さや激しい泣き声が症状の手がかりとなることがあります。

時間が経過すると血便の症状が現れるケースもあるでしょう。

その他

その他にも、嘔吐や下痢の原因はあります。

  • 髄膜炎
  • アセトン血性嘔吐症
  • 肺炎・気管支炎・百日咳
  • 脳症
  • 急性肝不全

子どもの嘔吐や下痢は、重い病気が隠れている可能性もあります。しっかりと様子を確認しましょう。

受診のタイミングは?こどもが嘔吐・下痢したの際にチェックすべき症状

子どもが嘔吐や下痢をしているとき、ただちに病院を受診するべきか、それとも自宅で様子を見て大丈夫か判断しなければなりません。

その判断のためにチェックすべき症状をいくつか紹介します。

嘔吐・下痢をしているこどもに関してチェックすべきこと

子どもが嘔吐や下痢をしているとき、どのような症状があるのかを冷静に観察しておくことが大切です。

以下のようなポイントをチェックしてみてください。

  • 発熱しているか
  • 機嫌が悪くないか
  • 食事は摂れているか
  • 便の形状、色
  • 嘔吐物の形状、色
  • 嘔吐、下痢の回数

まずは、医師に正しく症状を伝えられるよう、チェックをしておきましょう。

こんな症状が見られたらすぐ受診を!

以下の症状が見られた場合は至急医療機関への受診が必要です。

  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 機嫌が悪い、食欲がない
  • 嘔吐の回数が多い
  • 血液やコーヒーのかすの様な形状の物を吐いたとき
  • 血液の混じった便があるとき
  • 脱水症状が疑われるとき

子どもに上記のような症状が見られる場合、すぐに医療機関へ受診しましょう。

こんな症状の場合はしばらく様子を見てもOK

上記のような症状がない場合は、あわてずに自宅で様子を観察しましょう。とくに、以下のような様子であれば、急いで医療機関に行く必要はありません。

  • 元気がある
  • 顔色が良い
  • 食事や水分が摂れている

下痢や嘔吐が長期間続く場合や、気になる症状がある場合は、医療機関を受診しましょう。

子どもが嘔吐・下痢している場合の対応は?

子どもが嘔吐・下痢をしている場合の対応方法を確認しましょう。

水分補給をしっかり行う

嘔吐や下痢によって体内から大量の水分が失われると、脱水症状を引き起こす恐れがあります。しかし、嘔吐した直後に水分を摂取させると、再度吐いてしまうこともあります。

ですので、少し時間を置いてから水分補給を始めることが大切です。

そして、一度に大量の水分を摂取させるのではなく、少量を頻繁に補給するようにしましょう。また、ただの水よりも、体内で吸収されやすい経口補水液を利用することをおすすめします。

嘔吐や酷い下痢が治まったら少しずつ食事を摂らせる

嘔吐や酷い下痢が治まったら、ゆっくりと食事を再開します。

食事の再開は急がず子どもの体調を見つつ、無理のない範囲で少しずつ食べさせていきましょう。

おすすめの料理

NGな料理

おかゆ

揚げ物などの脂っこいもの

うどん

海藻やきのこなど

スープ

酸味の強いもの

下痢や嘔吐の症状がある場合、消化に良いものを選びましょう。

横向きに寝かせる

吐いたものが喉に詰まらないように、寝かせるときは横向きにすることが重要です。横向きに寝かせることで、万が一嘔吐しても吐物が気道に入るのを防ぎます。

精神的なケアにも力を入れる

子どもは体調不良にたいして、不安や恐怖を感じて泣いていることもあります。

医療的な対応はもちろんのこと、子どもの心のケアも重要な要素です。信頼している大人からの優しい言葉掛けや抱きしめる行為は、子どもにとって大きな安心感をもたらします。

ウイルス性の場合特に注意!他の家族にうつるのを予防するためにできることは?

子どもが嘔吐や下痢を起こす原因として、ウイルス感染が考えられます。

特にウイルス性の疾患は、手を介した接触感染や飛沫感染により、家庭内で短時間で広がるリスクがあります。

まず、嘔吐物や便の処理には特別な注意が必要です。ウイルスはこれらを介して感染しますので、ゴム手袋をはめて処理をし、その後必ず手洗いを忘れないようにしましょう。

また、家庭内での感染拡大を防ぐためには、感染者と他の家族との接触を最小限に抑えることが有効です。特に食事の際には別々にする、共有のタオルや食器を使わないなど、日常生活の中での配慮が求められます。

さらに、感染した子どもの体調が戻ったあとも、ウイルスは一定期間体内に残りますので、早めの登園・登校は避け、回復後もしばらくは手洗いやうがいを徹底することが大切です。

こどもの嘔吐と下痢に関するよくある質問

こどもの嘔吐と下痢に関するよくある質問をまとめました。

嘔吐・下痢の症状が見られるこどもと一緒に親兄弟が食事をして問題ありませんか?

嘔吐や下痢の症状が出ている子どもとの共食は、感染症の拡大を防ぐ観点から見ると避けるべきとされています。

特にウイルス性の胃腸炎(例えばノロウイルスなど)は、嘔吐物や便から大量のウイルスが排出され、これが直接または間接的に口に入ることで感染が広がります。

嘔吐・下痢の症状が見られる赤ちゃんに母乳を与えて大丈夫ですか?

嘔吐や下痢の症状が見られる赤ちゃんについて、母乳は引き続き与えて大丈夫です。しかし、嘔吐直後に母乳を与えると再度嘔吐を引き起こす可能性があります。

そのため、可能であれば搾乳した母乳を少量ずつ与えることを推奨します。

嘔吐の酷いこどもに吐き気止めを与えても良いですか?

嘔吐が酷い子供に吐き気止めを与えるのは一般的には推奨されません。嘔吐は体が異物や毒素を排出しようとする自然な反応です。

そのため、吐き気止めを使用すると本来排出すべきものが体内に残る恐れがあります。嘔吐が続く場合は、医療機関に相談しましょう。

下痢でこどものお尻がただれています。どうしたらダメージを抑えることができますか?

まずはお尻を清潔に保つことが大切です。オムツは頻繁に換え、お尻を洗ってあげましょう。

乾燥させることも大切なので、オムツをしばらく外しておく時間を作ると良いでしょう。

こどもの嘔吐と下痢吐は原因とチェックすべきポイントを押さえ適切な対応を

子どもの嘔吐や下痢の原因は主に、ウイルス性胃腸炎、食中毒、アレルギー反応など多岐にわたります。

特に、ロタウイルスやノロウイルスなどの感染症が子どもの嘔吐・下痢を引き起こす主な原因とされています。

子どもに嘔吐や下痢の症状があっても、慌てることなく、症状を観察することが大切です。

以下の症状が見られる場合は、すぐに医療機関へ受診しましょう。

  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 機嫌が悪い、食欲がない
  • 嘔吐の回数が多い
  • 血液やコーヒーのかすの様な形状の物を吐いたとき
  • 血液の混じった便があるとき
  • 脱水症状が疑われるとき

このような症状がなく、元気があれば、急いで医療機関に行く必要はありません。自宅で水分補給をしっかりとおこない、医療的な対応と子どもの心のケアも行いましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。