水ぼうそうは、正しく対処しないと、簡単に伝染する病気です。主に子どもがかかる病気として知られていますが、大人もかかる可能性があります。
本記事では、感染の原因やかかった場合の対処法、看病する際の注意点を紹介します。
水ぼうそうにかかった際の参考にしてください。
目次
水ぼうそう(水痘)とは
水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。水痘とも呼ばれます。
ウイルスに感染すると、2週間ほど後に、かゆみを伴う水疱が現れます。水疱は時間とともにかさぶたになります。
水ぼうそうは学校保健安全法で、第2種学校感染症に定められており、すべての水疱が、かさぶたになるまで学校や保育園・幼稚園は出席停止です。
水疱がかさぶたになるまで10日ほどとされていますが、個人差があります。
水痘・帯状疱疹ウイルスは、一度感染すると症状がなくなった後も体内の神経節に潜んでいます。加齢や疲労・ストレスなどで体の抵抗力が落ちると、ウイルスが再び活性化し帯状疱疹になることがあるので、注意が必要です。
妊娠初期(8~20週目)に水ぼうそうに感染すると、約2%の赤ちゃんが先天性水痘症候群になるといわれています。
先天性水痘症候群になると、低体重出生や四肢の形成不全、脳炎、小頭症、白内障などが現れます。
水ぼうそうにかからないためには、妊娠前までにワクチン接種を受けることが大切です。
流行する時期
水ぼうそうは、年間を通してみられる病気ですが、特に12~7月に流行のピークを迎えます。
かかりやすい年齢
水ぼうそうを発症する患者の90%以上は、9歳以下とされています。特にかかりやすいのは、生後6ヶ月から4歳の子どもです。
水ぼうそう(水痘)の症状
水ぼうそうの症状を、感染初期から解説します。
基本症状と合併症に分けて紹介しますので、水ぼうそうにかかったかもしれないと思ったら医療機関を受診するかどうかの参考にしてください
基本症状
水疱・帯状疱疹ウイルスに感染すると、2週間ほど後に、次のような症状が現れます。
- 発熱・だるさ
発熱の有無は個人差があり、子どもの場合は熱が出ないこともあります。
大人の場合、水疱が出る1〜2日前から発熱や全身のだるさを伴うことが多いです。
- 紅斑
皮膚に赤い発疹が現れます。
- 水疱
全身にかゆみを伴う水ぶくれ(水疱)ができます。水疱は、はじめは頭皮に出現することが多く、次いで胴体や・手足に広がります。特に水疱ができやすいのは体幹部です。
1週間ほどで、かさぶたになります。
- 帯状疱疹
体の中に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化して引き起こされる症状です。
神経に沿って痛みを伴う赤い発疹や水ぶくれが帯状に現れます。
帯状疱疹の初期は、皮膚の痛みや違和感、かゆみなどのことが多く、体の左右どちらかに神経に沿って現れるのが特徴です。
帯状疱疹が顔に現れた場合、目の合併症や顔面神経麻痺のリスクがあります。
合併症
水ぼうそうは、合併症を起こすケースもある感染症です。ここでは主な合併症について解説します。
特に、大人が感染した場合は重症化しやすいため注意しましょう。
- 皮膚の二次性細菌感染(とびひ)
水ぼうそうになって、かゆいからと水疱を掻き壊してしまうと、そこに細菌が感染して膿のたまった水ぶくれやただれ、赤み、かゆみなどが起こります。
離れた場所にも飛び火のように感染するのが特徴です。
発熱やリンパ節の腫れ、のどの痛みなどを伴うこともあります。
- 肺炎
大人が水ぼうそうにかかった場合、重症化して肺炎を併発することがあります。
- 小脳炎
小脳に炎症が起き、複数の筋肉をバランスよく協調させて動かすことができなくなる小脳失調をきたします。感染後2、3週間後に発症することもあります。予後は良好なことが多いです。
- 脳炎
脳の広い部分に炎症が起きます。1万例に2.7件ほどと、まれな疾患ですが、成人に多くみられる合併症です。
- ライ症候群
水ぼうそうの急性期に、アスピリンを服用した幼児に発生することがある合併症です。
急性脳症(嘔吐、意識障害、痙攣、高熱など)のほか、肝臓や他の臓器の脂肪変性、脳浮腫が見られます。
水ぼうそう(水痘)がうつる原因
水ぼうそうがうつる原因は以下のとおりです。感染経路を知って、予防に役立てましょう。
- 空気感染
- 接触感染
- 飛沫感染
空気感染
咳やくしゃみによって空気中に排出されたウイルスに触れることで感染する経路です。
水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強く、長時間空気中に漂うため、同じ部屋に長時間滞在しただけでも感染することがあります。
接触感染
水疱や粘膜から出た体液や分泌物に触れることで感染する経路です。
体液や分泌物が付いた手で口や目・鼻の粘膜に触れると感染します。
飛沫感染
患者が咳やくしゃみをしたときに飛び散った飛沫を吸い込むことで感染する経路です。
水ぼうそう(水痘)の治療方法
水ぼうそうにかかった場合、全身の健康状態が良好であれば、自然治癒が期待できます。
薬を使用する際は、症状が出てから48時間以内に、抗ウイルス薬(アシクロビルまたはバラシクロビル)の内服を開始するのが一般的です。
かゆみが強い場合は抗ヒスタミン薬などのかゆみ止めを服用したり、フェノール・亜鉛華リニメント(カチリ)や抗菌外用薬を塗ります。
高熱があれば解熱薬を使用しますが、子どもの場合はアスピリンを使用するとライ症候群になる恐れがあるので、自己判断で市販の解熱薬を使用するのは避けましょう。
成人の場合、発熱や倦怠感などの全身症状が強く出やすいので、入院して抗ウイルス薬の点滴をすることがあります。
水ぼうそう(水痘)ワクチンの効果
水ぼうそうのウイルスは、麻疹(はしか)より感染力が弱く、おたふくかぜや風疹(三日はしか)よりは強いとされています。
しかし、水ぼうそうはワクチンを1回接種することで、重症化がほぼ防げる感染症です。
2回接種を受ければ、軽症も含め水ぼうそうの発症を予防できるので、受けられるようになったら早めに予防接種を受けましょう。
予防接種を受けるタイミングは以下のとおりです。
- 1回目:生後12ヶ月~15ヶ月の間
- 2回目:1回目接種から3ヶ月以上の間隔をおいて(一般的には6ヶ月~12ヶ月経過したタイミングで)
水ぼうそう(水痘)に感染したときの対処方法
水ぼうそうに感染したときは、次のように対処しましょう。
- 子どもの場合|保育園・幼稚園・学校を休む
- 大人の場合|仕事を休む
- タオルを共用しない
- 同居家族と接触しない
子どもの場合|保育園・幼稚園・学校を休む
水ぼうそうは、学校保健安全法で第2種の感染症に指定されています。
すべての発疹がかさぶたになるまでは出席停止です。
いつから登園・登校できるかは個人差がありますが、発症してからすべての発疹が、かさぶたになるまでは10日ほどかかるのが一般的です。
保育園・幼稚園・学校によっては、登園・投稿に際して医師の許可証が必要なことがあります。欠席の連絡を入れる際に確認し、必要に応じて医師に許可証を書いてもらいましょう。
大人の場合|仕事を休む
大人の場合、法律で規定はされていませんが、感染を防ぐために仕事を休むことを推奨します。
大人が水ぼうそうにかかると重症化しやすいですが、医療期間で適切な治療を受ければ2~3日で快方に向かうことが多いです。
しかし、回復にかかる時間は個人差があるので、一概に何日で治る・出勤できるとはいえません。
タオルを共用しない
水ぼうそうは、患者の水疱や粘膜から分泌された体液に触れることで感染が広がります。
接触感染を防ぐためにも、タオルは共用しないようにしましょう。
使い捨てペーパータオルなどを活用し、使用済みのものは密閉できる袋に入れて処分するようにすると、より効果的に予防できます。
同居家族と接触しない
水痘・帯状疱疹ウイルスは感染力が強く、家庭内で患者と接触があった場合90%が発症するといわれています。
接触感染を防ぐためにも、患者と他の家族の部屋を分けたり、患者はマスクを着用したりするなど、家族と密に接触しないよう工夫しましょう。
患者が過ごす部屋を、こまめに換気することも大切です。
看病する人を決め、看病後はしっかり手洗い・うがいをして他の家族がウイルスに接触しないよう工夫するのも適切な方法です。
水ぼうそう(水痘)感染者の看病方法
家族が水ぼうそうにかかったら、次のことを心がけて看病しましょう。
- 発疹をケアする
- 脱水症状に気を付ける
- 刺激の少ない服を着せる
- シャワーで体を流す
発疹をケアする
水ぼうそうの発疹は、強いかゆみを伴うのが特徴です。
かゆいからといって掻き壊してしまうと、細菌性二次感染を起こすことがあるので注意しましょう。
掻き壊さないために、爪を短く切りましょう。そのうえで、処方された塗り薬や飲み薬を使って症状を抑えます。
もしどうしても掻いてしまう場合は、長袖の服を着せたり、患部に包帯を巻いたりするのも効果的です。
脱水症状に気を付ける
熱が出ているときは、脱水にならないようにこまめに水分を補給しましょう。
湯ざましや麦茶、経口補水液、野菜スープなどがおすすめです。
口の中に発疹ができていると、痛みから食事や飲みものを受け付けなくなる子どももいます。
そんなときは、アイスクリームやゼリーなど、冷たく、のどごしの良いものを少しずつ与えてください。
刺激の少ない服を着せる
水ぼうそうになるとかゆみや痛みを伴います。できるだけ肌触りが良く、刺激の少ない服を着せましょう。
体に密着するようなタイトな服よりも、ゆったりとした服の方が刺激が起きにくいので、おすすめです。
シャワーで体を流す
熱が下がり、機嫌が良ければ、シャワーで体を流してあげましょう。体力を消耗するので、長風呂や熱いお風呂は避けてください。
体を洗うときは、水疱を潰さないように気を付けながら、やさしく洗いましょう。かさぶたを剥がしてしまうと跡が残りやすくなるので、剥がさないように注意してください。
刺激が強いシャンプーやボディソープを使うと悪化することがあるので、水またはぬるま湯のみでやさしく洗うのがポイントです。
水ぼうそう(水痘)とはしかの違い
どちらも発疹が出て、子どもに患者の多い水ぼうそうとはしか(麻疹)ですが、その違いは以下のとおりです。区別して適切に対処しましょう。
水ぼうそう | はしか | |
潜伏期間 | 2週間ほど | 9~12日 |
治るまでの期間 | 10日ほど | 10日ほど |
主な症状 | 発熱・かゆみを伴う水ぶくれ | 発熱・咳・鼻水・コプリック斑・全身の赤い発疹 |
よくある質問
水ぼうそうについて、よくある質問を紹介します。参考にしてください。
- 子どもの水ぼうそうは大人にうつる?
- 子どもが水ぼうそうになったらいつまで保育園を休むべき?
- 水ぼうそうになったらいつから外出可能?
子どもの水ぼうそうは大人にうつる?
水ぼうそうは、伝染力が強い感染症です。これまで水ぼうそうにかかったことがなければ、大人も感染します。
子どもが水ぼうそうになったらいつまで保育園を休むべき?
水ぼうそうは学校保健安全法で第2種に指定されている感染症です。すべての水疱がかさぶたになるまでは出席停止と定められています。
保育園・幼稚園や学校によっては、登園・登校に許可証が必要なところもあります。事前に確認して、必要があれば医師に書いてもらいましょう。
水ぼうそうになったら、いつから外出可能?
水疱がすべてかさぶたになるまでは外出を避けましょう。
水ぼうそうは、すべての水疱がかさぶたになるまで周囲に感染するおそれがあります。医療機関を受診する際も、事前に水ぼうそうの疑いがあることを伝えて、指示に従って受診してください。
まとめ
水ぼうそうは、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、伝染力が強いのが特徴です。
子どもだけがかかる病気ではなく、抗体がなければ大人も感染するので、正しく理解して対処しましょう。
水ぼうそうになると次のような症状が現れます。
- 発熱・だるさ
- 水疱
- 帯状疱疹
もし、不安な症状が現れた際は、事前に連絡したうえで医療機関を受診しましょう。
家族が水ぼうそうになったら、できるだけ接触を減らしながら、次のことを意識して看病してください。
- 発疹をケアする
- 脱水症状に気をつける
- 刺激の少ない服を着せる
- シャワーで体を流す
水ぼうそうはワクチンで予防できる感染症です。受けられる年齢になったら、早めに予防接種を受けることをおすすめします。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。