2023.07.11

その症状、水疱瘡かも|正しい理解で重症化をストップ!対処法と予防法を解説

「水疱瘡」(水痘)は、「みずぼうそう」(すいとう)と読みます。子どもの感染症というイメージがありますが、大人でも免疫を持たない人は、かかることがあります。

特に大人は重症化しやすいので要注意です。

この記事では、水疱瘡にかかったときの症状を、写真を交えながら解説しますので、受診の参考にしてください。

対処法や感染対策もお伝えしますので、療養・看病のヒントも見つかりますよ。

目次

写真で解説|水疱瘡(水痘)の症状

水疱瘡(水痘)の代表的な症状は以下のようなものです。

  • 顔や体に赤くて小さな発疹ができる
  • 数日経つと発疹が「かさぶた」になる
  • 頭痛や発熱がある
  • 食欲がない
  • 全身がだるい

それぞれ写真を交えながら解説しますので、疑わしい症状がある人は早めに医療機関を受診しましょう。

顔や体に赤くて小さな発疹ができる

水疱瘡のウイルスに感染すると、約10〜20日後に、頭や手足、胴体などに発疹ができます。人によっては口の中や顔にも発疹が現れることがあり、他の病気と見分けがつきにくい場合もあります。

水疱瘡の発疹は少し盛り上がっていてかゆみが強く、しだいに、水ぶくれ(水疱)に変化します。

蕁麻疹とよく似た症状ですが、蕁麻疹が数十分~数時間で消えることが多いのに対し、水疱瘡の発疹は短時間で消えません。発疹が現れはじめてから5日程度は、発疹が増え続けます。

数日経つと発疹がかさぶたになる

水疱瘡の発疹は、丘疹(少し盛り上がった赤い発疹)から水ぶくれ(水疱)になり、最終的にかさぶたになるのが特徴です。

発症から5日は次々に発疹が現れるため、丘疹・水ぶくれ・かさぶたが混在します。

すべての発疹がかさぶたになるまでは、一般的には、1週間程度かかるでしょう。

頭痛や発熱がある

水疱瘡では、発疹が現れる前に、頭痛や発熱がみられることがあります。

水疱瘡の発熱は37〜38℃くらいのことが多く、2〜3日続くのが特徴です。

子どもに比べて、大人の方が発熱しやすいとされています。

食欲がない

発疹が現れる1〜2日前から、食欲がなくなることもあります。

全身がだるい

発疹が出る1~2日前から、全身のだるさを感じる人もいます。

大人は子どもより強いだるさが出やすいです。

水疱瘡(水痘)とあせも・虫刺されの違い

水疱瘡(水痘)とあせも、虫刺されは、それぞれ皮膚の発疹ができるので、間違いやすいものです。ここでは、それぞれの違いを解説します。

 

発疹ができる場所

発疹の特徴

水疱瘡

顔・体・頭皮・口

強いかゆみがある

・頭皮や口を含め、次々に全身に現れる

・発疹が水ぶくれに変わり、かさぶたが残る

あせも

髪の生え際・首・脇の下・肘や膝関節裏など汗が溜まりやすいところ

・強いかゆみのほか、チクチクとした痛みや熱感を伴うことがある

・汗をかかない場所にはあらわれにくい

汗をよくかくところに、急にできる

・通常は数日程度で治る

虫刺され

肌を露出している場所

・虫に刺された場所が点状に赤くなる

・多くは1~2週間程度で良くなる

水疱瘡(水痘)あせも・虫刺されは、発疹があらわれる場所が違います。

水疱瘡(水痘)の発疹が全身に次々とできるのに対し、あせも・虫刺されの発疹は、その場所にしか、現れません。

発疹が水ぶくれになることがないのも、あせもや虫刺されの特徴です。

水疱瘡(水痘)とは

水疱瘡は、「水痘(すいとう)」と呼ばれることもある感染症で、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。

ウイルスに感染すると約10〜20日の潜伏期間を経て発疹が現れ、しだいに水ぶくれ・かさぶたに変化します。

9歳以下の子どもがかかりやすく、冬から春にかけて流行しやすいとされています。とても感染力が強いので、保育園や幼稚園、学校などで、うつされる子どもが多くいます。

一度感染すると一生にわたる免疫を獲得できますが、重症化するリスクもあるので、ワクチンが打てるようになったら早めに予防接種を受けましょう。

水疱瘡(水痘)にかかる原因

水疱瘡(水痘)の感染経路は、以下の3つです。それぞれのリスクを知って、水疱瘡の予防に努めましょう。

  • 空気感染する
  • 接触感染する
  • 飛沫感染する

空気感染する

水疱瘡(水痘)は、空気感染する感染症です。

空気感染は患者の咳やくしゃみ、破れた水ぶくれに含まれるウイルスが空気中に漂い、その空気を吸い込んで感染するルートです。

患者と同じ部屋に長時間滞在すると、感染リスクが上がります

接触感染する

接触感染は、患者の体液や水ぶくれの内容物に触れて感染するルートです。

直接触れなくても、患者が触ったものや場所でウイルスに触れると、感染リスクが高くなります。

飛沫感染する

飛沫感染は、患者の咳やくしゃみによって、飛び散った飛沫に含まれるウイルスを吸い込んで感染するルートです。

くしゃみや咳の症状がある時は、患者だけでなく周囲の人もマスクを着用すれば、感染リスクがおさえられます。

水疱瘡(水痘)の症状

水疱瘡(水痘)は、子どもは軽い症状ですむことが多いのですが、大人が感染すると重症化しやすいといわれています。

また、水疱瘡のウイルスは、症状が消えた後も体の中に隠れていて、疲れや寝不足などで抵抗力が落ちると帯状疱疹を引き起こすことがあり要注意です。

水疱瘡(水痘)の主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 発疹(赤い発疹が水疱に変化し、かさぶたが残る)
  • 強いかゆみ
  • 発熱
  • 全身のだるさ
  • 頭痛
  • 食欲不振

水疱瘡(水痘)は、すべての発疹がかさぶたになった時点で治ったと判断します。治癒までに、どれくらいかかるかは個人差がありますが、おおむね1週間程度といわれています。

水疱瘡(水痘)による注意したい合併症

大人や1歳以下の子どもが水疱瘡(水痘)にかかった場合、重症化して合併症を発症することがあります。

特に注意したい合併症が次の5つです。

  • 皮膚の二次性細菌感染
  • 肺炎
  • 小脳炎
  • 脳炎
  • ライ症候群

皮膚の二次性細菌感染

かゆいからと発疹を掻き壊してしまった場合、そこに細菌が入り込み、二次性細菌感染が起こることがあります。

二次性細菌感染がおきると発疹が化膿したり、蜂窩織炎(ほうかしきえん)を発症したり、傷口から細菌が血液中に入り込んで敗血症になったりするなど、リスクが多いので、発疹を掻かないよう注意が必要です。

特にA群溶連菌による二次性細菌感染は、死亡リスクが高いとされています。

肺炎

水痘・帯状疱疹ウイルスが肺に到達すると、炎症を起こし、肺炎になることがあります。

肺炎の主な症状は、発熱や咳、胸の痛み、痰、呼吸困難などです。

小脳炎

水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で小脳炎や小脳失調を発症することがあります。

また、感染が落ち着いた2、3週間後に遅れて顕在化することもあります。

予後は良好であることが多いです。

自然軽快することがほとんどですが、回復には2ヶ月ほど時間がかかることもあります。

脳炎

大人が水疱瘡(水痘)にかかった場合、1万例に2.7例程度の割合で脳炎を発症することがあります。

脳の広い範囲で炎症が起きるため、障害が残ったり、命が脅かされたりすることもある注意の必要な合併症です。

ライ症候群

水疱瘡(水痘)など子どもが発熱した場合に、アスピリンやジクロフェナクナトリウムが含まれている解熱剤を使用すると、ライ症候群を発症することがあります。

激しい嘔吐や意識障害、けいれんが特徴的な症状で、障害が残ることも少なくないので、解熱剤を使用の際はその種類に注意をしましょう。

水疱瘡(水痘)の治療法

水疱瘡(水痘)にかかったら、全身状態が良い場合は自然治癒が期待できます。症状が重い場合などは、抗ウイルス薬や解熱薬を使って治療するのが一般的です。

発疹が出てから48時間以内に抗ウイルス薬を服用すると、症状が緩和されます。

大人の場合は全身のだるさや発熱などの症状が強く出るため、入院して点滴をすることも珍しくありません。

発疹のかゆみに対して、フェノール・亜鉛華リニメント(カチリ)や抗菌外用薬が処方されることもあります。医師や薬剤師の指示に従って塗布しましょう。

水疱瘡(水痘)はワクチン接種で予防

水疱瘡(水痘)は、ワクチンで予防できる感染症です。現在、水疱瘡のワクチンは誰もが受けるべき予防接種(定期接種)に定められています。

水疱瘡(水痘)ワクチンは、1回の接種で感染を80~85%、重症化をほぼ100%防げるといわれています。

しかし、予防効果を高めるには2回接種するのが望ましいとされます

1歳になったらワクチンが打てるので、早めに1回目を打ちましょう。

2回目の接種は1回目から3ヶ月以上あけて接種します。詳しい接種スケジュールは、かかりつけの医療機関で相談してください。

家族に水疱瘡(水痘)の症状がある場合の9つの対処法

家族に水疱瘡(水痘)を疑う症状がある場合は、次の9つを意識して対処しましょう。

  • 医療機関を受診する
  • 子ども|保育園・幼稚園・学校を休ませる
  • 大人|仕事を休む
  • 刺激の少ない服を着る
  • 発疹をケアする
  • 同居家族を接触しない
  • タオルを共用しない
  • 脱水症状に気をつける
  • お風呂に浸からない

医療機関を受診する

周囲に水疱瘡(水痘)にかかった人がいて、発疹ができている・発熱しているといった疑わしい症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。

受診の際は、感染を広げないためにもあらかじめ連絡し、医療機関の指示に従って受診してください。

子ども|保育園・幼稚園・学校を休ませる

水疱瘡(水痘)は学校保健安全法で第二種の感染症に定められています。

発疹がすべて「かさぶた」になるまでは、周りにうつしてしまうおそれがあるので、出席停止です。

個人差はありますが、1週間程度で、すべての発疹がかさぶたになります。

保育園・幼稚園、学校によっては出席にあたり登園・通学許可証が必要なこともあります。欠席の連絡をする際に確認し、必要に応じて主治医に書いてもらいましょう。

大人|仕事を休む

大人が水疱瘡(水痘)にかかったら、仕事は休みましょう。

子どもと違い法律で出勤停止が定められているわけではありませんが、周囲に感染を広げないためにも発疹が、すべて「かさぶた」になるまで休んでください。

事業所によっては、出勤停止になることもあります。いつから仕事に復帰するかは、主治医と相談して、くれぐれも無理をしないようにしてください。

刺激の少ない服を着る

水疱瘡(水痘)の発疹は強いかゆみを伴います。できるだけ肌に刺激の少ない、ゆったりとした服装を心がけましょう。体に触れやすい締め付けの強い服だと、かゆみが強くなるおそれがあるだけでなく、着替えの際に水ぶくれを潰しやすくなります。

水ぶくれを潰してしまうと、細菌性二次感染を起こしやすくなるので、できるだけ潰さないように注意してください。

発疹をケアする

発疹のケアは、水ぶくれを潰さないように、注意して行います。

入浴の際にタオルで擦ったり、長い爪で掻いたりすると潰れやすいので、体は手のひらで撫でるように洗う・爪を短く切ることを心がけましょう。

体を拭くときも、ごしごし拭くのは厳禁です。ポンポンと優しくおさえるように、水気を吸い取ってください。

同居家族と接触しない

水疱瘡(水痘)は、接触感染で感染が広がります。

2回ワクチンを接種しているか、1度感染したことがあれば感染する心配はありませんが、まだワクチンを打っていない・感染していない家族がいるときは、できるだけ接触しないように工夫しましょう。

空気感染でも感染するので、長時間同じ部屋に滞在することは避け、換気を十分に行ってください。

タオルを共用しない

水疱瘡(水痘)になった人とタオルを共用するのも避けましょう。

タオルには患者の体液が付着しています。

できれば、使い捨てのペーパータオルなどを使用するのがおすすめです。

脱水症状に気を付ける

発熱しているときは、脱水症状に気を付けて、こまめに水分を摂ってください。

おすすめの飲みものは以下です。

  • 湯冷まし
  • 麦茶
  • イオン飲料
  • 経口補水液
  • うすめた果汁
  • 野菜スープ

特に子どもは、口の中に水ぶくれができていると、痛みや違和感で食事や水分補給を嫌がるケースがあります。

水分が多く喉ごしのよい薄味のものや、とろみがついたものは食べやすいので、試してみてください。

お風呂に浸からない

熱いお風呂に浸かると、血行が良くなってかゆみが増すことがあります。お風呂のお湯で感染を広げないためにも、発疹が出ている間は、ぬるめのシャワーで済ませましょう。

体を洗うときは、ボディソープや石けんを使わずに、シャワーで汗を軽く流すだけにしてください。

体力が落ちていてシャワーを浴びるのもつらいときは、湿らせたタオルで優しく体を拭くのもおすすめです。

よくある質問

水疱瘡(水痘)についてのよくある質問をまとめました。医療機関の受診やホームケアの参考にしてください。

  • 水疱瘡の初期症状は?
  • 水疱瘡の発疹の見分け方は?
  • 水疱瘡になりやすい年齢は?

水疱瘡の初期症状は?

水疱瘡(水痘)になると、約10~20日の潜伏期間の後に以下の症状が現れます。

  • 顔や体に赤くて小さな発疹ができる
  • 数日経つと発疹がかさぶたになる
  • 頭痛や発熱がある
  • 食欲がない
  • 全身がだるい

最初赤く盛り上がっていた発疹が水ぶくれになったら、水疱瘡を疑いましょう。

水疱瘡の発疹の見分け方は?

水疱瘡と蕁麻疹やあせも・虫刺されを見分けるポイントは、発疹が出る場所と出ている期間です。

水疱瘡の場合、頭や手足、胴体を中心に発疹が現れ、水ぶくれになったあと黒いかさぶたができます。発疹がかさぶたになるまで約1週間かかります。

蕁麻疹は水疱瘡よりも短い時間で発疹が消え、あせもは水疱瘡と違って、汗が溜まりやすい場所にのみできます。

虫刺されは、虫に刺された場所だけに赤みやかゆみが出るので、見分ける際の参考にしてください。

水疱瘡になりやすい年齢は?

水疱瘡になりやすいのは、9歳以下の子どもです。実に患者の90%以上を、9歳以下の子どもが占めています。

特に、生後6ヶ月から4歳までの子どもが感染しやすいとされているので、早めにワクチンを接種して感染を防ぎましょう。

まとめ

水疱瘡(水痘)は子どもの病気と思われがちですが、免疫を持たない大人もかかることがあります。主な症状は次の5つです。

  • 顔や体に赤くて小さな発疹ができる
  • 数日経つと発疹がかさぶたになる
  • 頭痛や発熱がある
  • 食欲がない
  • 全身がだるい

感染力が強いので、身近に水疱瘡(水痘)になった人がいたら、自分も感染していると思って対処しましょう。

対処する際は次のポイントを意識してください。

  • 学校や仕事は休む
  • 水ぶくれを潰さない
  • タオルや食器は共用しない
  • 入浴はシャワーで済ませる
  • こまめに水分を摂る

適切に対処すれば、水疱瘡(水痘)は1週間程度でよくなります。

発疹のほか、発熱や全身のだるさといった症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。