2023.07.10

その症状、はしかかも|感染の原因と予防について解説します

はしかは、感染力が極めて強い麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、1人感染者が出ると爆発的に流行するおそれがあります。

MRワクチンの接種で予防ができるため、「まだ予防接種を受けていない小さな子どもの病気」と思っている人もいるかもしれません。

しかし、ワクチンを打っていなければ大人も感染する場合があり、子どもに比べて重症化しやすい傾向にあります。はしかはできるだけ早く、そして正しく対処することが重要です。

本記事では、はしかの症状や治療法、感染対策について解説します。

目次

この症状ははしか(麻疹)?自宅でセルフチェック

はしかにかかると、次のような症状が現れます。

  • 38度前後の高熱
  • 咳や鼻水など風邪に似た症状
  • 目の充血や目やになど結膜炎のような症状
  • 一度熱が下がった後の40度近い発熱
  • 頬の内側の白い斑点
  • 顔や全身の赤い発疹

以下では、特徴的なそれぞれの症状を解説します。

38度前後の高熱が出ている

麻疹ウイルスに感染すると、10~12日ほどの潜伏期間の後、38度前後の発熱が現れます。

熱は2~4日で一度下がるので、「単なる風邪」と判断してしまう人が多いです。

咳や鼻水などの風邪症状がある

発熱とほぼ同じタイミングで、咳や鼻水といった上気道症状が現れます。倦怠感(子どもの場合は不機嫌)を伴うこともあり、風邪と間違いやすいです。

目の充血や目やになど結膜炎のような症状

上気道症状が出るのと同じタイミングで、目の充血や目やに、視界のまぶしさといった結膜炎症状が現れます。

一度熱が下がったものの、再度40度近い熱が出ている

38度前後の熱が下がっても半日くらい経つと、40度近い発熱(多くの場合39度以上)があります。

頬の内側の白い斑点

体に赤い発疹が現れる1~2日前に、コプリック斑と呼ばれる特徴的な斑点が見られます。頬の内側をチェックして、少し盛り上がった直径1mmほどの白い斑点があれば、はしかにかかっている可能性が高いです。

顔や全身に赤い発疹がある

40度近い発熱と同じタイミングで、赤い発疹が現れます。耳の後ろや首、額から出はじめ、翌日には顔や体幹部、上腕に及ぶのが特徴です。

発疹が全身に広がるまで、40度近い発熱も続きます。

蕁麻疹と違ってかゆみはなく、消えた後は色素沈着があり茶色いシミのような跡が残ります。茶色い跡は2週間ほどで消えるのが一般的です。

はしか(麻疹)とは

はしかとは、麻疹(読み:ましん)ウイルスによって引き起こされる感染症です。10~12日ほどの潜伏期間の後、38度前後の発熱や咳・鼻水といった風邪に似た症状(カタル症状)が現れます。

一度感染するかMRワクチンの予防接種を受けることで生涯に渡って体内に免疫が作られる病気です。昔は「小さいうちにかかっておけば大丈夫」「ありふれた子どもの病気」といわれていましたが、命にかかわることもあるので、かからないに越したことはありません。

麻疹ウイルスに感染した場合、症状が現れない(不顕性感染)ことは基本的になく、100%の確立で発症します。

以下、はしかの概要を解説します。

  • 感染経路
  • かかりやすい年齢
  • はしかの症状

感染経路

はしかの感染経路は3つです。

  • 飛沫感染

くしゃみや咳の際に飛び散った飛沫を吸い込んで感染する

  • 空気感染

麻疹ウイルスを含んだ飛沫(唾液・鼻水など)が乾燥することでウイルスが空気中に漂い、その空気を吸い込むことで感染する

  • 接触感染

患者が触れたもの・場所に触った手で粘膜に触れることで感染する

はしかの感染が広がりやすいのは、飛沫・接触感染だけでなく、空気感染でもかかかかるのが原因です。飛沫中に含まれていたウイルスはしばらく空気中に漂うため、患者と短時間同じ空間にいただけでも感染するリスクが高まります。

主に症状が現れる1日前から、症状がなくなった後の3日間ほどは感染力があるとされています。

かかりやすい年齢

はしかにかかりやすいのは、0~4歳の乳幼児です。特に0~1歳児の患者が多く見られます。大人の場合だと、ワクチン接種歴のない20代に感染者が多いです。

はしかの症状

はしかの症状は、病気の進行度合いによって3つの期間に分けられます。

  • カタル期(前駆期)

38度前後の熱が出て、咳や鼻水といった上気道症状(カタル症状)が現れる。目の充血や目やになどの結膜炎症状、頬の内側の白い丘疹(コプリック斑)が特徴的な症状として現れる。

  • 発疹期

熱が一度下がってから半日ほど後に39度以上の発熱が見られる。2回目の発熱と同じタイミングで赤い発疹が現れ、発疹が全身に広がるまで高熱が続く。

  • 回復期

発疹が3〜4日続くと熱が下がり、発疹も徐々に消えて咳や鼻水といった上気道症状が軽快していく。茶色いシミのような発疹の跡が残る。

合併症がない限り、主な症状は発症から7~10日ほどでなくなります。しかし、症状が消えてからもしばらくは他の病気にかかりやすくなるでしょう。体力の消耗も激しいため、体調が戻るまでには1ヶ月ほどかかることも珍しくありません。

はしかによる合併症

はしかは、肺炎や気管支炎、中耳炎といった合併症を引き起こしやすいことでも知られています。患者1,000人あたりに1人の割合で脳炎を発症し、1,000人に1人が死亡する恐ろしい病気です。

大人は子どもに比べて重症化しやすく、肺炎や中耳炎といった合併症が起こることもあります。その他の合併症には、次のようなものがあります。

  • 亜急性硬化性全脳炎(SSPE)

100,000人に1人の割合で学童期に発症する中枢神経疾患にかかることがある

  • 流産・早産

妊婦中の感染で流産・早産につながることがある

はしか(麻疹)はワクチンで予防可能

はしかは感染力が強く、マスクや手洗い・うがいで感染を防ぐことは困難ですが、予防接種を受ければかからないよう未然に防ぐことは可能です。はしかのワクチンである「MRワクチン」は、予防接種法で誰もが受けるべき定期接種として指定されています。

また、はしか(麻疹)と三日はしか(風しん)の混合ワクチンは、2回の接種が推奨されています。

  • 1回目:生後12ヶ月以上24ヶ月未満の間
  • 2回目:小学校入学前の1年間(5歳以上7歳未満の間)

上記の期間を参照し、計画的に予防接種を受けましょう。

これまではしかにかかったことがない人や、MRワクチンの予防接種を受けたことがない人は、かかりつけの医療機関で相談すればワクチンを受けられます。医療機関では抗体検査も行っているので、心配な人は相談してみましょう。

また、定期接種が1回だった世代(1990年以前に生まれた世代」の方は、2回目の接種が推奨されています。母子手帳で2回目を接種した記録がない場合は、ぜひ2回目の予防接種を受けましょう。

はしか(麻疹)に感染したときの4つの対処法

はしかに感染した可能性がある場合は、次のことを心がけましょう。

  • マスクを着用して病院へ行く
  • 家族が感染した場合はワクチンを接種する
  • 保育園・幼稚園・学校を休む
  • 患者が触れたものや場所をアルコール消毒する

マスクを着用して医療機関へ行く

はしかが疑われる場合、まずは医療機関に連絡して、はしかに感染している可能性があることを伝えましょう。

そのうえで、医療機関を受診する際は次のことを守ってください。

  • マスクをする
  • 公共交通機関を使用しない

はしかの感染力は非常に強いため、できるだけ感染を広げないよう工夫することが大切です。受診に際して医療機関からの指示がある場合は、その指示に従いましょう。

同居家族が感染した場合はワクチンを接種する

同居している家族がはしかに感染した場合、患者と接触してから3日以内にワクチンを接種したり、免疫グロブリン製剤(血液製剤)の注射を打ったりすることで発症を防げる可能性があります。

しかし、確実に防げるわけではないので、事前にワクチンを接種しておくに越したことはありません。

簡単に行えるものでもないので、まずは電話や問い合わせフォームを使ってかかりつけの医療機関に相談してください。

保育園・幼稚園・学校を休む

はしかは学校保健法で第二種に指定されている感染症です。熱が下がってから3日経過するまでは、出席停止になります。

アルコール消毒する

はしかの原因となる麻疹ウイルスは、アルコール消毒薬が効果的なウイルスです。患者が触ったものや場所をアルコール消毒することで、感染リスクが下げられます。

同時に手洗い・うがいもしっかり行い、手洗い後にもアルコール消毒を行うのが有効です。

はしか(麻疹)は大人にもうつる病気

はしかは、免疫を持たない大人の間で感染が広がることがあります。2007~2008年にかけては、10代・20代の人を中心に集団感染が起こりました。これは、MRワクチンの予防接種を受けても免疫が付かなかった人や、接種から10年以上経って免疫が弱まった人が多かったためといわれています。

このように、大人が感染すると重症化する可能性があるため、予防に努めることが重要です。

また、妊娠中の女性が感染すると早産や流産につながるリスクがあります。妊娠がわかった後に麻疹ワクチンの接種はできないので、妊娠を希望する人は妊娠前の段階で早めにワクチンを接種しておきましょう。

日本では2歳以上の全年代の中で95%以上の人がすでに抗体を持っているはしかですが、海外には未だ多数の患者が出ている国もあります。そのため、海外旅行に行く予定があり、これまではしかにかかったことがない・予防接種を受けたことがない人は、渡航前に予防接種を受けておきましょう。

予防接種を受けたかどうかわからない人は、母子手帳でワクチン接種の有無・回数が確認できます。

はしか(麻疹)と風疹(三日はしか)の違い

症状は似ているはしか(麻疹)と風疹(三日はしか)の違いは、原因となるウイルスと潜伏期間、感染経路です。

はしかは麻疹ウイルスによって引き起こされ、潜伏期間は10~12日ほど。一方風疹は、風疹ウイルスによって引き起こされる感染症で、潜伏期間は2~3週間です。はしかは空気感染しますが、風疹は空気感染しない点も異なります。

どちらも一度かかると再び感染しないといわれていますが、風疹は体の抵抗力が弱まったときに再度感染する場合があります。

よくある質問

はしかのよくある質問を紹介します。

  • はしかはどうやってうつるの?
  • はしかの初期症状は?
  • 発疹はいつ消える?

はしかはどうやってうつるの?

はしかは、次の3つの感染経路でうつります。

  • 飛沫感染

くしゃみや咳の際に飛び散った飛沫を吸い込んで感染する

  • 空気感染

麻疹ウイルスを含んだ飛沫(唾液・鼻水など)が乾燥することでウイルスが空気中に漂い、その空気を吸い込むことで感染する

  • 接触感染

患者が触れたもの・場所に触った手で粘膜に触れることで感染する

非常に感染力が強いので、マスクの着用や手洗い・うがいをしっかりしたとしても、感染を防ぐのは難しいといわれています。

感染する前に、MRワクチンの予防接種を受けることが重要です。

はしかの初期症状は?

はしかになると、次のような症状が現れます。

  • 38度前後の高熱
  • 咳や鼻水など風邪に似た症状
  • 目の充血や目やになど結膜炎のような症状
  • 一度熱が下がった後の40度近い発熱
  • 頬の内側の白い斑点
  • 顔や全身の赤い発疹

特徴的な症状は、咳や鼻水といった風邪に似た症状と、頬の内側の白い斑点(コプリック斑)です。

疑わしい症状がある場合は電話や問い合わせフォームを使って医療機関に相談し、指示に従って受診しましょう。

発疹はいつ消える?

はしかの発疹は、現れてから4~5日経つと色が変わってきます。発疹が消えた後に残った茶色いシミのような跡は、1ヶ月ほどできれいになります。

まとめ

はしかは非常に感染力が強く、命にかかわることもある恐ろしい感染症です。MRワクチンの接種で防げるため、子どもがいる人は早めにワクチン接種を済ませましょう。

はしかになると、次のような症状が現れます。

  • 38度前後の高熱
  • 咳や鼻水など風邪に似た症状
  • 目の充血や目やになど結膜炎のような症状
  • 一度熱が下がった後の40度近い発熱
  • 頬の内側の白い斑点
  • 顔や全身の赤い発疹

周囲にはしかになった人がいて、疑わしい症状が出ている場合は、電話などで医療機関に相談のうえ、指示に従って受診してください。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。