手足口病は子どもの病気と思われがちですが、大人にもうつることがあります。「いつもの夏風邪と違う気がする」「いつもより重症な気がする」と感じている場合は、手足口病にかかってるかも、と疑ったほうが良いでしょう。
大人が手足口病になると、子どもよりも重症化しやすいと言われています。しかし、大人の場合も、子どもがかかったときと同様に特効薬はなく、薬で症状を和らげながら治るのを待つしかありません。
本記事では、症例も交えながらかかったときの対処法や予防法をお伝えします。いつから出勤できるのかや、具体的な感染対策の方法も解説しているので、参考にしてくださいね。
目次
こんな症状はありませんか?手足口病をセルフチェック
手足口病は子どもだけがかかる病気ではありません。一度感染したとしても抗体が長期間持続しないので、大人になってからも何度もかかるおそれがあります。
手足口病の主な症状は以下の4つです。
- 口内炎ができている
- 手足や他の場所に発疹ができている
- 40度近い高熱または悪寒や体の痛みがある
- 嘔吐や下痢の症状がある
思い当たる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
口内炎ができている
手足口病の主な症状のひとつに口内炎があります。感染すると3~5日の潜伏期間を経て、口の中に2~3mmの水ぶくれができるのが特徴です。
普通の口内炎とよく似ているため、「口の中にいくつも口内炎ができたなぁ」と思っていたら、実は手足口病だったというケースも珍しくありません。
手足やほかの場所にも発疹ができている
手足口病に感染すると、手や足、ひじ、ひざ、臀部などに発疹が見られることもあります。痛みを伴うのが特徴で、足の裏に発疹が出ると痛くて歩けなくなるケースもあり、注意が必要です。
発疹も口内炎の潜伏期間と同様に、感染してから3~5日後に現れます。手や足などに2~3mm程度の水ぶくれができていたら、手足口病を疑いましょう。
40度近い高熱または悪寒や体の痛みがある
子どもが手足口病に感染した場合、高熱が出るのは稀ですが、大人の場合は40度近い高熱が出ることもあります。今は熱がなくても、悪寒や全身の倦怠感、関節痛、筋肉痛といった症状がある場合はこれから熱が出るかもしれないので、体調の変化に十分注意しましょう。
手足口病の悪寒や全身倦怠感は、インフルエンザにかかったときの症状によく似ています
嘔吐や下痢をしている
手足口病を引き起こすウイルスは、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなど1種類だけではありません。感染したウイルスの型によっては、稀に嘔吐や下痢といった消化器症状が現れます。
【大人にもうつる病気】手足口病とは
手足口病は、ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱(プール熱)と並んで「3大夏風邪」と言われることもある感染症です。
以下、手足口病について解説します。
- 手足口病の主な症状
- 大人がかかった場合の症状の重さ
- 流行しやすい季節
手足口病の主な症状
手足口病に感染すると、3~5日間の潜伏期間を経て、手のひらや足、歯茎、口の中に直径2~3mm程度の発疹が現れます。大人の場合、発疹に痛みを伴うことが多いのが特徴です。
手足口病を引き起こすウイルスは、コクサッキーウイルスやエンテロウイルスなど1種類だけではないため、これまで感染したことがないウイルスに感染すると、何度でも再発します。
一般的に、3~7日程度で症状は軽快し、発疹がかさぶたになることもありません。しかし、稀に重症化すると合併症を併発するケースもあるので要注意です。
手足口病で併発するリスクのある合併症は以下のとおりです。
- 髄膜炎
- 脳炎
- 急性弛緩性麻痺
- 小脳失調症
- 心筋炎
- 神経原性肺水腫
これらの症状は嘔吐や頭痛を伴うことがあるので、少しでも体調がおかしいと感じたら速やかに医療機関を受診しましょう。
また、感染したウイルスの型によっては、発症後数週間で手足の爪が脱落する「爪甲脱落症」を発症する場合があります。爪甲脱落症に関しては爪がなくなっても、自然に治ると言われています。
大人がかかると症状が重い傾向に
手足口病は、子どもに比べると大人の方が症状が重く出やすい病気です。特に発疹の痛みは、大人の方が強く出ます。また、インフルエンザにかかる前のような全身の倦怠感や悪寒、体の痛みも出やすいのが特徴です。
手足口病の患者は2歳以下の子どもが半数で、学童期までにさまざまなウイルスにかかり免疫を獲得します。保育園や幼稚園などで度々流行するため、子育て世代の間では比較的ポピュラーな感染症です。
ほとんどの人は大人になるまでに多種多様な型に感染して免疫を付けているので、大人になって発症する人はあまり多くありません。しかし、ウイルスは日々変異しています。これまでかかったことがない型のウイルスに感染すると、大人になってから手足口病が再発する場合もあるので注意が必要です。
特に、身近に子どもがいない人の場合、手足の発疹や発熱が手足口病によるものと思い至らないことも珍しくありません。少しでも疑わしい症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
流行しやすい季節
一般的に、手足口病が流行しやすい季節は夏だと言われています。1年を通して発生が確認されていますが、特に患者が増えるのは7月下旬頃です。
流行する季節
日本では毎年、5月頃からヘルパンギーナの患者数が増え始めます。7月頃にピークに達し、8月から減少し始め9月から10月にかけてはほとんど見られなくなります。国内におけるヘルパンギーナの流行は通常、西から東へと順次広がっていきます。
手足口病の治療方法
手足口病の治療法は、自宅での安静が基本です。特効薬がないため、対症療法的に薬を使いながら症状が軽快するのを待つしかありません。口内炎や手足の発疹が痛いときは解熱鎮痛剤や痛み止めの軟膏が処方されることがありますが、あくまでも症状を和らげるものです。
手足口病になったら、口の中にできた水ぶくれを刺激しないように、薄味で喉ごしの良い食事を心がけましょう。脱水症状を防ぐために、こまめな水分補給も行ってください。そのうえで、しっかり体を休めることが重要です。
手足口病の主な感染経路
手足口病に感染する主な経路は3つあります。
- 飛沫感染
- 接触感染
- 糞口感染
大人は、感染した子どものケアを通じてかかるケースがほとんどです。
飛沫感染
飛沫感染は、くしゃみや咳をした際に飛び散った飛沫を吸い込むことで感染する経路です。
接触感染
接触感染は、感染した人が触ったもの・場所に触れた手で、目や鼻・口の粘膜に触れることで感染する経路です。
糞口感染
排泄物や吐しゃ物に触れた手で口に触ることで感染する経路です。
大人が手足口病に感染した場合の対処法
大人が手足口病に感染した場合は、次のように対処しましょう。
- 安静にして休養する
- 仕事は休む
- 刺激物を避けた食事をとる
- 食器やタオルを共用しない
安静にして休養する
大人の場合、睡眠不足や疲労によって抵抗力が低下すると、手足口病を発症することがあります。連日忙しく、疲れがたまっているようなときは要注意です。手足口病になったら、安静を心がけしっかり体を休めましょう。栄養のあるものを食べ、体力を回復させるよう心がけてくださいね。
仕事は休む
手足口病は、法律によって出勤停止措置がある感染症ではありません。しかし、発熱が治まるまでは、仕事は休んだ方が良いでしょう。出勤する際は十分に感染対策をし、他人にうつさないよう心がけてください。
刺激物を避けた食事をとる
大人の場合、発疹に痛みを伴うことも。口の中が痛くなって水分補給や食事がままならなくなるケースも少なくありません。食事や水分が摂れないと、体の抵抗力も回復しませんし、脱水状態になってしまうこともあります。
手足口病になったら、薄味で喉ごしの良いものを中心に、しっかり栄養を摂るとよいでしょう。辛いものや酸っぱいもの、濃い味のものや脂っこいものは避けたほうが無難です。
おすすめの食べ物は
- ゼリー
- プリン
- 冷めたおじや
- 豆腐
などです。
飲みものはオレンジジュースなど酸味があるものを避け、
- 麦茶
- 牛乳
- 冷めたスープ
- 経口補水液
など、刺激が少ないものを少し冷やして飲むと刺激が少ないですよ。
食器やタオルを共用しない
同居する家族がいる人は、食器やタオルを共用しないことも大切です。食器やタオルを共用すると、そこから家族に感染が広がってしまいます。食事は大皿を囲むのではなく一人ひとり取り分ける、タオルは使い捨てのペーパータオルを活用するなどして、家庭内感染を防ぎましょう。
手足口病の予防方法
手足口病は、夏風邪の一種です。かからないようにするためには、次のことを心がけましょう。
- うがい・手洗いを実施する
- 暴飲暴食しない
- 睡眠をしっかりとる
うがい・手洗いを実施する
手足口病は、基本的に感染した人の唾液や飛沫を吸い込む「飛沫感染」で感染が拡大します。ウイルスを含んだ飛沫を体の中に入れないために、うがい・手洗いを念入りに行ないましょう。
回復後もしばらくは排泄物のなかにウイルスが混在します。症状がなくなっても感染のリスクはゼロにはなりません。発疹が消えた後も3〜4週間は念入りに手洗い・うがいを行って、感染対策を怠らないようにしましょう。
暴飲暴食しない
連日の暴飲暴食は、胃腸に負担をかけます。胃腸を健やかに保ち体の抵抗力を維持するためにも、暴飲暴食は控えましょう。
特に夏場は冷たいものがおいしく感じられ、ついアイスやビールなど冷たいものばかり口にしがちですよね。冷たいものばかり食べていると内臓が冷えて抵抗力が落ちてしまうので、食べ過ぎにはくれぐれも注意してください。
睡眠をしっかりとる
睡眠不足が続くと体の抵抗力が落ち、手足口病などの感染症にかかりやすくなります。夏場は暑さのため寝苦しくなるので、エアコンを適切に使って、朝までぐっすり眠れる環境を整えましょう。室温は25~28度、湿度は50~60%を目安にすると寝苦しさが和らぎますよ。
寝具やパジャマも気候に合ったものにすると、より睡眠の質がアップしますので試してみてくださいね。
よくある質問
大人の手足口病に関するよくある質問にお答えします。
- 大人が手足口病にかかるとどうなる?
- 大人が手足口病にかかったらいつから出勤できる?
- 大人が手足口病にかかったら何科を受診すれば良い?
手足口病に大人がかかるとどうなる?
大人の場合、体の抵抗力が低下すると手足口病を発生することが多く、子どもに比べて症状が重く出やすいです。
主に
- 口内炎
- 手足の発疹
- 発熱
- 悪寒
- 全身倦怠感
- 関節痛や筋肉痛
など子どもと同じような症状が見られますが、程度は大人の方が重くなりやすく、人によっては発疹が出た場所の痛みを感じることも。40度近い高熱が出るケースもあります。
大人が手足口病にかかったらいつから出勤できる?
子どもの場合、発疹や発熱といった主な症状が消えれば登園・登校しても良いとされています。大人の場合も、同じように発疹や発熱といった症状が消えるまでは家で安静に過ごしましょう。
症状が軽快・消失するまでにかかる日数は個人差があるため、出勤できるようになるまで一概に何日と言及はされていません。
大人が手足口病にかかったら何科を受診すれば良い?
大人が手足口病になった場合、まずは内科を受診しましょう。発疹が痒い・痛いといった症状が強ければ、皮膚科を受診してもかまいません。
かかりつけの医療機関がある人は、まずはそちらで相談してみてください。
まとめ
子どもの間ではよく見られる手足口病ですが、稀に大人も発症することがあります。大人が発症すると症状が重く出やすいので、手足口病が疑われる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
手足口病が疑われる症状は次のとおりです。
- 口内炎ができている
- 手足や他の場所に発疹ができている
- 40度近い高熱または悪寒や体の痛みがある
- 嘔吐や下痢の症状がある
手足口病を発症しないためには、次のことを心がけて体の抵抗力を落とさないようにしましょう。
- うがい・手洗いを実施する
- 暴飲暴食しない
夏に風邪のような症状があったり、手・足・口に発疹ができたりして不安な場合は、かかりつけの医療機関または皮膚科を受診してください。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。