2023.06.29

症状でセルフチェック|川崎病とは?治療方法と予後を解説

川崎病は、全身の血管に炎症を起こす小児に好発する病気です。重篤な後遺症を残すことがあり、病気の特徴や治療方法の正しい理解が大切になります。この記事では、川崎病の症状を紹介します。

病院に行く前にセルフチェックをしたい方や、川崎病がどんな病気か知りたい方は最後まで読んでください。

目次

【症状でセルフチェック】この症状は川崎病?

川崎病は基本的に発熱から始まり、段階的に特有の症状が現れます。具体的には、以下のように進行するのが一般的です。

  • 【発熱後】白目が真っ赤に充血する
  • 【発熱後】口唇の紅潮・いちご舌がみられる
  • 【発熱2〜3日後】手足の先がぱんぱんにむくむ・赤い発疹ができる
  • 【発熱10~12日後】リンパ節が腫脹する
  • 【発熱10~12日後】指先から皮がむける

これらの症状は、時間が経てば自然に治癒しますが、適切な治療をしないと重篤な後遺症が残る可能性もあります。そのため、上記のような症状がみられるときは、早急に病院で診察を受けましょう。

この章では、症状の段階ごとに川崎病の特徴的な症状を紹介します。セルフチェックの判断材料にしてください。

【発熱後】白目が真っ赤に充血する

発熱してから1〜2日以内に、白目が充血します。これは、眼球結膜にある毛細血管の拡張が原因です。

片目だけに充血が起こることは少なく、基本的に両目に症状が現れます。また、目やにが出ないのも特徴のひとつです。

【発熱後】口唇の紅潮・いちご舌がみられる

口唇(こうしん:くちびるのこと)が赤く腫れ、乾燥して亀裂ができることもあります。また、川崎病の主要症状である、いちご舌がみられます。

いちご舌とは、舌が果物のいちごのように真っ赤に腫れ、表面に小さなぶつぶつができる症状です。川崎病の他にも、溶連菌感染症でも同じ症状がみられます。

【発熱2〜3日後】手足の先がぱんぱんにむくむ・赤い発疹ができる

発熱から2〜3日経つと手足が赤く腫れ、顔や体の皮膚に、大小さまざまな形の赤い発疹が現れます。乳幼児の場合、BCG予防接種の跡が赤く腫れるのも特徴のひとつです。

川崎病で起こるむくみは、皮膚がぱんぱんに腫れた状態で、指で押しても跡が残りません。発疹は、1〜2日ほどで自然に消えることもあるので、発疹が出た時の写真を残しておくと診察の際に役に立つでしょう。

【発熱10~12日後】リンパ節が腫脹する

首のリンパ節が大きく腫れて、痛みを感じます。頻度は、50%程度です。
その他の症状の出現率は90%以上と言われ、リンパ節の腫脹の発症率は比較的低いと言えるでしょう。

【発熱10~12日後】指先から皮がむける

熱が下がった頃から、指先の皮が薄くむける落屑(らくせつ)という症状がおこることがあります。

指先の角質層がむけるので、一時的に肌のバリア機能が低下します。医師と相談しながら、外用の保湿薬を使う、かゆみがある場合は抗ヒスタミン薬を内服するなどの対策をすることになります。

川崎病とは

川崎病は、1967年に川崎富作医師が最初に発表した小児に好発する病気です。詳しい原因は分かっていませんが、発症すると全身の血管に炎症を引き起こします。

死亡率や再発率は低いものの、心臓の冠動脈に後遺症をもたらす場合もあります。早期に炎症を抑えれば冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)などの重篤な合併症を予防できるので、川崎病の特徴的な症状や適切な治療法を理解しましょう。

もし川崎病の後遺症により継続的な受診が必要になった場合は、悪性新生物や先天性代謝異常などの難病と同様に、小児慢性特定疾患として認定され医療費が助成されます。

下記の章では、川崎病の代表的な症状や人に伝染するのかなどを詳しく解説します。

川崎病にかかりやすい年齢・月齢

川崎病にかかりやすいのは、生後6ヶ月〜6歳の乳幼児です。

また、川崎病は乳幼児の70人に1人程度の割合で発症すると言われており、決して珍しい病気ではありません。実際に、1970年から2020年12月30日までに、日本で川崎病と診断された患者数は累計で423,758人でした。男女の内訳は、男児244,343人、女児179,415人と、男児の方がかかりやすいことが分かっています。

川崎病の原因

川崎病のはっきりした原因は、いまだに解明されていません。現段階では、細菌やウィルス、環境物質による刺激などに対して免疫機能が過剰に反応しているのではないかと考えられています。また、兄弟姉妹でかかることもあり、遺伝的な要因も否定できません。

川崎病は、同じ地域や時期に流行することがあるため、罹患者と接触すると伝染るのではないかと心配になる方も多いでしょう。しかし、川崎病はヒトからヒトに感染することはないと考えられています。

川崎病の治療方法

症状診断や不全型の場合のエコー検査などの結果から川崎病だと診断されたら、1〜2週間の入院が必要になります。まず、冠動脈瘤予防のため、血管の炎症を抑えるのが最優先です。

回復後は血が固まりにくくなる内服薬などを服用し、定期的なフォローをしていきます。

入院中の治療方法

入院の治療法としては、全身の炎症を抑えるための「免疫グロブリン製剤」の点滴と、血栓予防と炎症の抑制のための、「アスピリン」の内服を併用するのが、最も一般的な方法です。

すでに解熱している場合は、「免疫グロブリン製剤」を使用せず、「アスピリン」の内服のみの治療法が選択されます。

それでも症状が落ち着かない場合、追加の治療が必要になります。例えば、免疫細胞の働きを抑制する「シクロスポリン」の内服などが実施されます。

退院後の治療方法

川崎病にかかると数週間は血液が固まりやすくなっているため、退院後は、特に注意が必要です。1〜3ヶ月を目安に血栓予防のためのアスピリンを内服し、心電図や心エコーなどで、定期的フォローをします。

症状の程度や後遺症が残ったかなどによっても退院後の治療やフォローは変わるため、主治医と相談をしながら経過観察していきましょう。

川崎病にかかってしまったら

川崎病だと診断されたら、以下の3点が気になるかもしれません。

  • 通園や通学について
  • 運動制限について
  • 後遺症について

下記で、それぞれ詳しく解説します。

登園・通学の目安

全身状態が改善したからといって自己判断で登園、通学をさせないようにしましょう。医師がアスピリンの内服量、冠動脈の経過次第では慎重に判断します。
許可がでたら登園や通学しても問題ないでしょう。

運動制限

合併症がない場合、運動制限をする必要はありません。ただし、冠動脈瘤が残った場合は、主治医と相談してください。

また、血栓予防のための薬を飲んでいる期間は、止血しにくくなるためケガには注意が必要です。その他脱水による血栓の発生を防ぐために、こまめな水分補給も忘れないようにしましょう。

川崎病の後遺症

川崎病の後遺症として、冠動脈瘤や冠動脈の局所狭窄(きょくしょきょうさく:動脈の一部が狭くなること)などがあります。

後遺症の症状が軽度の場合は時間と共に元通りになることがほとんどです。ただし重度の場合は、薬による治療や手術が必要になります。

また、川崎病は4.2%の確率で再発すると言われています。特に3〜4歳での再発が多く、6歳以降は減少傾向にあるようです。

川崎病の予防策

川崎病は原因が分からないこともあり、有効な予防策が確立されていません。

東アジア人に発症することが多い点や、親子や兄弟・姉妹で発症するケースがある点から、遺伝的な要因があるのではないかとも考えられています。しかし、遺伝的な要因を予防することは難しく、また二次感染例は確認されていないため、一般的な感染症予防も有効な方法とはいえません。

川崎病の発症自体を予防するのは難しいため、症状を周知し早期発見することが大切です。

よくある質問

川崎病と診断を受けたり、疑いのある症状をみつけたりすると

  • 川崎病の死亡率
  • 気が付かないとどうなるのか
  • 川崎病の原因

などが気になりますよね。この章では川崎病に関する疑問にお答えします。

川崎病の死亡率は?

川崎病の死亡率は0.3%と極めて低いです。有効な治療法が確立されており、早期に治療を受けることで、肝動脈瘤など重篤な合併症も予防できます。

川崎病に気づかなかったらどうなる?

発熱や発疹など目に見える症状は時間と共に自己治癒するため、一見完治したように思われます。しかし、適切な治療をしなかった場合、25%の人に冠動脈瘤などの後遺症が残ると言われています。

少しでも川崎病が疑われる場合は、必ず病院を受診しましょう。

川崎病の原因は?

川崎病の原因は分かっていません。今のところは、体内に侵入したウィルスや細菌などに対して過剰な免疫反応が起こり、全身に炎症を起こしてしまうのではないかと考えられています。

有効な予防法が確立されていないため、川崎病の特徴を知り、早期に治療を開始することが大切です。

まとめ

川崎病は、生後6ヶ月〜6歳ごろの小児に発症しやすい病気です。下記の症状がみられる場合は、川崎病かもしれません。

  • 5日以上続く発熱
  • 白目の充血
  • 口唇の紅潮といちご舌
  • 手足の腫れ
  • 全身の発疹
  • リンパ節の腫れ

見逃すと重篤な後遺症が残ることもあるため、早期の適切な治療が必要です。少しでも不安要素がある場合は、早めに病院を受診するようにしてください。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。