乳幼児がよく罹患するお腹の風邪の1つにロタウイルス感染症があります。
「冬の終わりから春先にかけて、保育園や幼稚園で激しい嘔吐や下痢を伴う風邪が流行っていて心配」「ロタウイルス感染症の予防接種は受けさせた方がいい?」と、嘔吐や下痢で苦しむ我が子への対応に悩む保護者の方も多いのではないでしょうか?
本記事ではロタウイルス感染症の感染経路や、罹患した子どもへの対応方法などを解説します。
予防接種ついても説明しているので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
この症状は危険です|医療機関受診のサイン
まずはじめに、すぐに医療機関を受診すべきサインについて紹介します。
以下の症状が見られた場合は命にかかわることがあるため、夜間や休日でも救急外来を受診してください。
- 意識がない・もうろうとしている・呼びかけても返事をしない
- けいれんを繰り返している
- 嘔吐を繰り返して脱水症状を起こしている・水分を摂ろうとしない
子どもが感染しやすいロタウイルスとは
ロタウイルスは感染力が強く、かかると酷い嘔吐や下痢を伴う胃腸炎を引き起こすウイルスです。
大人も感染しますが、症状が出るのは主に就学前の子どもであることが一般的です。
ロタウイルス感染症について、以下の3つのポイントに分けて詳しく説明します。
- ロタウイルス感染症の特徴
- 起こりうる合併症
- ロタウイルスの感染経路
ロタウイルス感染症の特徴
ロタウイルス感染症は、例年3〜5月頃に流行する胃腸炎です。
繰り返し感染することで徐々に症状があらわれなくなるため、激しい症状が出るのは初めて感染する乳幼児期の子どもがほとんどです。
急に激しい嘔吐や下痢が始まるケースが多いため、次のような症状があればロタウイルスを疑ってみましょう。
- 発熱を伴う激しい嘔吐が見られる
- ゆるい下痢や水のような下痢をしている
- 下痢が5~7日程度続いている
- 腹部の痛みや不快感を訴えている
起こりうる合併症
ロタウイルス感染症は脱水症状や意識の低下、けいれんなどを放置すると合併症を引き起こす危険性があります。
起こりうる代表的な合併症には以下のようなものがあります。
- 急性腎不全
- 脳症
- 肝機能異常
毎年20名未満ではありますが死者も出ているため、前項で挙げた「医療機関受診のサイン」が見られたら速やかに医療機関を受診してください。
ロタウイルスの感染経路
ロタウイルス感染症の最大の感染経路は経口感染および接触感染です。
ウイルスの含まれた吐しゃ物に触れた手で食事をすることで体内にロタウイルスが入り、症状を引き起こします。
ウイルスのついた手でドアノブなどに触れた場合、その場所を触った別の人も感染する危険性があります。
ロタウイルスの治療方法
ロタウイルスに対する特効薬はありません。
ウイルスが体の外に排出されることで徐々に回復するので、その間、脱水症状が起こらないようしっかり水分補給をすることが大切です。
電解質を含む経口補水液などを摂らせることがおすすめですが、もし嘔吐や下痢が酷く水分が摂れない場合は無理に家庭で対処しようとせず、早めに医療機関を受診し、点滴などの治療を受けましょう。
子どもがロタウイルスに感染したときの看病方法
子どもがロタウイルス感染症にかかった場合は、ゆっくり安静に過ごせる環境を整えた上で、以下の3つのポイントに気をつけて看病しましょう。
- しっかり水分を補給させる
- 苦しそうな表情をしていないか観察する
- お尻をやさしく洗ってあげる
それぞれについて詳しく説明します。
しっかり水分補給させる
ロタウイルス感染症にかかった子どもの看病で最も大切なのは水分補給です。
下痢や嘔吐で体の水分が失われると脱水症状にかかる危険性があるからです。
水分は電解質も一緒に摂れる経口補水液やイオン水がおすすめ。乳児用のものもあります。
水分を1度に飲むと吐き戻してしまうケースが多いので、少量頻回で与えるのがポイントです。
苦しそうな表情をしていないか観察する
子どもが苦しそうな表情をしていないかこまめに確認することも大切です。
ロタウイルス感染症の主な症状に嘔吐があるため、嘔吐物で軌道がふさがり、息ができなくなってしまうケースが見られるからです。
窒息を未然に防げるよう、子どもの様子にはしっかり気を配りましょう。
お尻をやさしく洗ってあげる
繰り返される下痢でお尻がただれてしまうことが多いため、ぬるめのお湯で優しく洗い、清潔な状態を保ちましょう。
排泄物をしっかり落とすために強く擦ると、肌が傷つき危険です。
子どもがロタウイルスに感染したときの家族の対処法
子どもがロタウイルス感染症にかかった場合、家族は以下の3つのポイントに気をつけて対応しましょう。
- オムツ交換の際はゴム手袋をつける
- 衣類が便や吐しゃ物で汚れたら洗濯する
- タオルを共用しない
それぞれについて詳しく説明します。
オムツ交換の際はゴム手袋をつける
ロタウイルス感染症の家庭内感染を防ぐためには、吐しゃ物に触れないことが1番大切です。
1度吐しゃ物に触ってしまうと手を洗ってもなかなか落ちないのでオムツ交換を含む吐しゃ物の処理には使い捨てのゴム手袋を活用しましょう。
吐しゃ物を処理したものは必ず1度ビニール袋などに入れてから捨てることも大切です。
また、処理の後には手袋をしていたとしても手洗いを徹底してください。
衣類が吐しゃ物で汚れたら洗濯する
吐しゃ物で汚れた衣類は、必ず他の衣類と分けて洗濯しましょう。
一緒に洗うとウイルスが広がる可能性があります。
洗濯前に1度塩素系漂白剤に浸けると消毒できるので効果的です。
タオルを共用しない
感染している子どもとその他の家族のタオルは必ず分けましょう。
同じタオルを使うと、そこから感染が拡大するおそれがあります。
ロタウイルスのワクチンについて
ロタウイルス感染症の症状を重症化させないためにも、積極的にロタウイルス感染症の予防接種を受けましょう。
ロタウイルスワクチンは現在、定期接種となっており、接種期間中の子どもであれば無料で受けられます。
2回接種のものと3回接種のものがあり、医療機関によってどちらを取り扱っているかは異なりますが、どちらも効果は変わりません。
初回接種を生後6週間〜14週6日までに終わらせ、接種間隔は27日以上開ける決まりになっています。
ロタウイルスワクチンは、ロタウイルス感染症による入院リスクを下げる効果が期待できます。
しかし、摂取後2週間、腸重積症にかかる危険性が通常より高まることも知られています。
次のような症状が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。
- 便に血が混ざる
- ジャムやゼリーのような便が出る
- 1日中不機嫌で普段と様子が違う
- いきなり泣き出して泣き止まない
- 徐々に顔が青ざめてくる
また、規定の予防接種接種期間を過ぎると腸重積発症のリスクが高まることが知られているため、期間を過ぎてからの接種はできません。
子どもがロタウイルスに感染したときによくある質問
子どもがロタウイルス感染症にかかった時によくある質問をまとめました。
下痢や嘔吐でこどもが苦しそうです。下痢止めを飲ませてもよいですか?
ロタウイルスに感染した場合、ウイルスを体外に排出することが非常に重要です。
下痢止めの使用は、ウイルスを外に出すのを遅らせてしまう可能性が高まるため、おすすめできません。
食事はどのように与えればよいですか?
無理に食べさせると嘔吐してしまう可能性が高いので、食べたがらない場合は無理に食べさせる必要はありません。
ただし、脱水症状を避けるため、少量頻回での水分摂取を必ず行ってください。
保育園や幼稚園は休むべきですか?
ロタウイルス感染症は感染力の強い病気です。
乳幼児は感染すると症状が出やすいので治るまで保育園や幼稚園は休ませてください。
吐き気が強いようで、水を飲んでくれません。どうすればよいですか?
ロタウイルスに感染すると、下痢や嘔吐により脱水症状を起こす危険性があります。
もし子どもが水分摂取を嫌がる場合は早めに医療機関を受診し、点滴などの適切な治療を受けましょう。
病院に行こうと考えていますが、何か準備しておくことはありますか?
医療機関では家庭での子どもの様子について質問されます。
水分摂取や排泄、嘔吐の回数や便の状態などをメモし、医師に説明できるようにしておきましょう。
まとめ
今回はロタウイルス感染症について取り上げました。
冬の終わりから春先にかけて乳幼児の間で流行するロタウイルス感染症は、強い感染力と激しい嘔吐や下痢の症状が起こりやすいことで知られています。
感染した場合は少量頻回での水分補給を行い、脱水症状を防ぐよう心がけてください。
意識が低下したり、繰り返しけいれんを起こしたりする場合は昼夜問わず医療機関を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。