喘鳴(ぜんめい)とは、何らかの原因で気道が狭くなり、呼吸するときにゼーゼー・ヒューヒューといった音がする症状です。
喘鳴には息を吸うときに音がする「吸気性喘鳴」と、息を吐くときに音がする「呼気性喘鳴」があります。どのタイミングで音がするかで、原因の疾患が異なります。
赤ちゃんの喘鳴が気になるときは、喘鳴が聞こえるタイミングをチェックしてみましょう。
本記事では主に、呼気性喘鳴について記載しております。赤ちゃんに喘鳴が起こる主な原因や受診の目安、喘鳴を起こしているときの対処法を紹介しますので、参考にしてみてください。
目次
わかりにくい赤ちゃんの「ゼーゼー」音|受診が必要な喘鳴の見分け方
喘鳴を起こしている場合、気管支喘息や気管支炎などを発症している可能性があります。
医療機関の受診を迷っている場合は、次のポイントをチェックしてみましょう。
- 胸や口元に耳を近づけるとゼーゼー・ヒューヒューと音がする
- 肩で息をしている
- 苦しくて眠れない、横になれない
- 顔が青白い
- 唇や爪が紫色になっている
以上の項目に当てはまる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
喘鳴が聞こえていても、スヤスヤと眠っている場合や機嫌がよい場合は、翌朝まで様子を見て早めに医療機関を受診しましょう。
判断が難しい場合の相談窓口
至急受診すべきか、様子を見るべきか迷ったときは、相談窓口に電話をしてみましょう。
次の相談窓口では、子どもの症状に合わせてどう対応すればよいか、救急車を呼ぶべきかを案内しています。
いずれも相談費用は無料です。
子ども医療電話相談 | #8000 | 休日や夜間に開設されています。 小児科医・看護師に、子どもの症状にどう対応すればよいか相談できるダイヤルです。 |
救急安心センター事業 | #7119 | 救急車を呼んだほうがよいか、病院を受診したほうがよいか相談できるダイヤルです。 医師や看護師のほか、トレーニングを受けた相談員が症状に合った適切な対応を教えてくれます。 |
乳幼児の喘鳴とは
ここからは、乳幼児の喘鳴を解説します。
- 喘鳴が起こるメカニズム
- 喘鳴の症状
- 喘鳴の診断方法
- 喘鳴の治療方法
- 喘鳴が起こりやすい年齢
喘鳴が起こるメカニズム
乳幼児の喘鳴が起こる場合、次のうち1つ以上の症状が見られます。
- 気道の組織の腫れ
- 気道の壁にある小さな筋肉のけいれん(気管支れん縮)
- 気道への粘液の蓄積
症状の原因はアレルギーもあれば、ウイルス感染症、喘息、心不全などさまざまです。
繰り返し肺に異物が入ったり、気道が狭くなったりすると、空気の通り道が狭くなり、呼吸のたびにゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴が起こります。
喘鳴の症状
喘鳴は、呼吸するときに甲高い笛のような音がします。
しばしば痰のからむ咳のほか、発熱や鼻水、哺乳困難などをともなうこともあり、現れる症状は原因によってさまざまです。
喘鳴の症状が重くなると、呼吸が早くなったり、チアノーゼを起こして唇や爪の先が紫色になったりします。
喘鳴の診断方法
喘鳴が出た場合、胸のエックス線検査を行うのが一般的です。
胸部エックス線検査を行うことで、肺の異物、肺炎、心不全などの有無を確認します。
指にパルスオキシメーターを装着して、血中酸素濃度を計測します。
治療を行っても喘鳴が改善しない場合は、嚥下検査やCT検査、気管支鏡検査などを行うこともあります。
喘鳴の治療方法
喘鳴の治療は、原因に合わせて行われます。
喘鳴の発作を起こした場合は、まず気管支拡張薬の吸入、もしくはそれに加え、抗炎症薬の吸入を行うのが一般的です。
吸入に反応しない、もしくは酵素化が極端に不良な場合は、上記に加え、コルチステロイドの全身投与が行われます。
喘鳴が起こりやすい年齢
喘鳴は2~3歳頃までが起こりやすいといわれています。
小児期以降も、症状が続くケースはごく一部です。
赤ちゃんはもともと大人に比べて気道が狭く、喘鳴が起こりやすい下地があります。
成長するにしたがって気道もしっかりしたものになり、徐々に喘鳴も出なくなってきます。
しかし放置するのはよろしくないので、基本的には受診しましょう。
また、気道が細い年齢だとしても、常時喘鳴がある場合は病的な細さなため、精査が必要です。
赤ちゃんに喘鳴が起こる主な原因
赤ちゃんに喘鳴が起こる主な原因は、次の3つです。
- ウイルス感染症
- アレルギー
- 喘息
ウイルス感染症
RSウイルスやヒトライノウイルスなどのウイルス感染症によって鼻やのどに炎症が起きると、気道が狭くなって喘鳴が聞こえることがあります。
突然、吐くときにゼーゼー・ヒューヒューといった音が聞こえるのが特徴です。
ウイルス感染症がよくなれば、喘鳴も治まります。
アレルギー
アレルギーで起こる喘鳴もあります。
アレルギーが原因の喘鳴は、何度も繰り返すのが特徴です。
アレルギーを起こす物質(アレルゲン)は、食べ物のほかハウスダスト・花粉・ペットの毛などさまざまです。
原因物質を調べたい場合は、医師と相談してアレルギー検査を受けるとよいでしょう。
喘息
繰り返し起こる喘鳴の原因には、喘息もあります。
子どもの喘息は、患者の60%が3歳までに発症するといわれており、そのほとんどはアレルギーが原因のアトピー型です。
早期に適切な治療を行えば、成長にともなって発作が起こりにくくなり、寛解するケースも珍しくありません。
赤ちゃんが喘鳴を起こしているときのセルフケア
赤ちゃんが喘鳴を起こしているときは、次のように対応しましょう。
- 楽な姿勢にさせる
- 痰を出させる
- 部屋の乾燥を避ける
- 少しずつ水分補給をさせる
- 部屋を清潔に保つ
- 同居家族は禁煙する
楽な姿勢にさせる
喘鳴が出ていて苦しそうなときは、衣服をゆるめ、楽な姿勢をとらせましょう。
上半身を少し起こした姿勢や、何かにもたれかかる姿勢は、呼吸が楽になりやすいといわれています。
楽な姿勢をとらせたら、しっかり呼吸できるよう一緒にリズムを取りながら腹式呼吸で呼吸させましょう。
痰を出させる
赤ちゃんは、大人と違って上手に痰が出せません。
痰を出しやすくするために、少しずつ水を飲ませて、軽く背中をさすったりトントンとたたいたりしてあげましょう。
部屋の乾燥を避ける
症状を落ち着かせるには、部屋の乾燥を避けるのも有効です。
部屋が乾燥すると、のどが刺激されて咳が出やすくなったり、痰が切れにくくなったりします。
加湿器がない場合は、洗濯物やぬらしたタオルを部屋の中に干すだけでも、乾燥が和らぐので試してみてください。
少しずつ水分補給をさせる
痰が切れやすくするためにも、少しずつ水分をとらせましょう。
飲み物が飲めないときは、受診をしましょう。
部屋を清潔に保つ
部屋の中のほこりなどにアレルギーがある場合は、部屋を清潔に保ち、時折換気することで症状が和らぐケースもあります。
同居家族は禁煙する
喘鳴が出ているときは、気道が敏感になっています。
症状を悪化させないためにも、同居している家族は禁煙しましょう。
たばこの煙には、約4,000種類の化学物質が含まれているといわれており、敏感になった気道に大きな刺激となります。
受動喫煙を防止するためにも、同居している家族は禁煙しましょう。
受診するなら|症状を的確に伝えるためのポイント
喘鳴で医療機関を受診する際は、喘鳴が起きているときの様子を動画や音声で記録しましょう。
喘鳴の音や呼吸の様子が診断に役立ちます。
合わせて、次のことを医師に伝えてください。
- いつから喘鳴が出ているのか
- 喘鳴が出るタイミング(朝や夜、寝ているとき、ミルクを飲んだ後など)
- どのような音がするのか(ゼーゼー・ヒューヒュー・ヒーヒーなど)
- 他に気になる症状(咳や痰の有無)
赤ちゃんは、まだ言葉を話せません。もし普段と違う様子やしぐさが見られた場合は、それもメモに書き留めておくとよいでしょう。
すぐに救急車を呼ぶべき症状
- 顔色が悪く、唇が紫色になっている(チアノーゼを起こしている)
- 極端に呼吸の回数が少ない、もしくは多い(生後1ヶ月未満:40~50回/分、生後1ヶ月~1歳未満:30~40回/分、1~7歳未満:20~30回/分といった正常値を極端に下回る、もしくは上回る場合)
- 肩を動かして苦しそうに呼吸している
- 呼吸に合わせて肋骨の間や上が凹む
夜間・休日でも受診を検討すべき症状
- 喘鳴が聞こえ、苦しそうにしている
- ほえるような咳・ケンケンという咳をしていて、声がかすれている
- 横になると苦しさが増す
- 息苦しくて動けない
- 小さなものを口に入れていて突然咳こみ始めた
診察時間内に受診を検討すべき症状
- 機嫌がよく、いつも通りに遊べる
- 横になって眠れる
- 喘鳴が出ても時々で、苦しそうにしていない
- 咳をしている
よくある質問
乳児の喘鳴に関するよくある質問をまとめました。
- 赤ちゃんの喘鳴の原因は?
- 赤ちゃんの喘息の特徴は?
- 喘息かどうかの検査はどのように実施する?
赤ちゃんの喘鳴の原因は?
赤ちゃんの喘鳴の主な原因は、風邪などのウイルス感染症やアレルギー、喘息です。
赤ちゃんの喘息の特徴は?
赤ちゃんの喘息の特徴に、繰り返し起こる喘鳴があります。
しかし、赤ちゃんは大人に比べて気道が狭く、喘鳴が出やすいため、喘鳴だけで喘息かどうかを診断するのは容易ではありません。
喘息かどうかの検査はどのように実施する?
喘息かどうかは、問診のほか血液検査、胸のエックス線検査などを行います。
年齢によっては、肺機能検査や気道過敏性検査が行われることもあります。
まとめ
赤ちゃんが喘鳴を起こしていると、心配になる保護者も多いでしょう。
しかし、赤ちゃんは大人に比べて気道が狭く、喘鳴を起こしやすいといわれています。
赤ちゃんが喘鳴を起こしていて医療機関を受診すべきかどうか迷ったときは、記事中で紹介した受診の基準を参考にしてみてください。
喘鳴が出ているからといって、喘息とは限りません。原因に合わせて、適切な治療を受けることが大切です。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。