2023.11.21

小児気管支喘息の吸入薬「オルベスコ」とは|効果と副作用について解説

喘息(ぜんそく)は、アレルギー性の炎症により気道が狭くなり、さまざまな刺激に過敏に反応して、呼吸が苦しくなる病気です。重症になると毎日のように発作が起き、生活に大きな支障が出ることもあります。

喘息と診断されたら、医師から処方された吸入ステロイド薬や気管支拡張薬を使用して、喘息をコントロールすることが多いでしょう。

本記事では、喘息に使用される薬のうち、代表的な吸入ステロイド薬であるオルベスコについて解説します。

何歳から使えるか、使用方法、副作用などをまとめましたので、子どもが小児気管支喘息と診断された保護者の方は、参考にしてください。

目次

オルベスコとは

オルベスコとは、ステロイドである「シクレソニド」を主成分とした吸入剤です。

ガスの圧力で薬剤を噴射し、吸い込む力が弱い子どもや高齢者でも使いやすいのが特徴です。

エアゾールの粒子が細かいので肺へ到達しやすく、さらに、有効成分が肺の中に長時間滞留するので、1日1回(高用量の場合は2回)の吸入で効果が持続します。

しかし、薬を噴射するタイミングと吸い込むタイミングが合わないと、十分な量が吸入できないというデメリットもあります。

そのような場合は補助器具を使用するなどの工夫が必要です。

オルベスコの効果

オルベスコには、次のような作用があります。

  • 喘息発作抑制作用
  • 抗炎症作用

オルベスコの主成分であるシクレソニドには、気道の炎症を鎮める働きがあります。

肺のなかに入ってからステロイドとして活性化し、肝臓での代謝も比較的スムーズに行われるため、副作用が出にくいのがメリットです。

ただし、既に起きている発作を速やかに軽減する薬剤ではないので、発作の際には別の気管支拡張薬やステロイド剤が必要になります。

オルベスコの使用量と使用回数

オルベスコの使用量と使用回数は、次のとおりです。

  • 小児:シクレソニドとして100〜200μgを1日1回吸入投与する。

症状のコントロールが良好な場合は、1日1回50μgまで減量可能

  • 成人:シクレソニドとして100〜400μgを1日1回吸入投与する。

1日の最大投与量は800μgまでで、1日に800μg投与する場合は朝と夜の2回に分けて投与する

オルベスコの使用回数は、通常1日1回です。使用量は症状の程度に合わせて調整します。

使用するタイミングは夜が望ましいとされていますが、症状には個人差があるので、主治医の指示に従って使用しましょう。

オルベスコの使い方

オルベスコを上手に吸入する方法を解説します。

 

使い方の流れ

ポイント

1

ボンベが正しく装着されていることを確認する

ボンベがアダプターにしっかり装着されているかどうか、確認します。

2

キャップを外して、軽く振る

薬剤を均一に混ぜるため、軽く振りましょう。

3

アダプターをしっかり持つ

子どもは力が弱いので、両手の親指と人差し指でしっかり持つようにすれば、ボンベが押しやすくなります。

4

息を吐く

注入口を避けて軽く息を吐き、息を止めた状態で吸入口を加えます。

このとき、唇とアダプターの間にすきまができないようにしましょう。

5

薬剤を吸入する

息を吸いながらボンベを押し、薬を噴射します。5~10秒かけてゆっくり息を吸いましょう。

6

息を止める

アダプターから口を放して、5~10秒息を止めます。息を止めることで、薬の成分がしっかり肺に届きやすくなります。

7

ゆっくり息を吐く

ゆっくり息を吐きます。

複数回吸入する必要があるときは、1分程度間隔を空けてから吸入してください。

8

うがいする

うがいをして口の中に付着している薬を洗い流します。うがい後の水は飲み込んでも問題ありません。

吸入し終えたら、キャップを締めて携帯袋に入れて保管しましょう。

噴霧口を詰まらせないために、吸入口の内側と外側は、こまめにやわらかい布で拭いて清潔に保ちましょう。

オルベスコの使用を補助する便利グッズ

1日1回の吸入で効果が得られるオルベスコですが、子どもの場合はしっかりボンベを押せなかったり、タイミングよく吸えなかったりすることが珍しくありません。

そのような場合は、次のような便利グッズを使用してみましょう。

  • 残薬量目安計
  • 噴霧補助器具
  • 吸入補助器具
  • 使用期間確認シール

これらのアイテムは薬局やネット通販で購入できます。

それぞれの役割を解説します。

残薬量目安計

オルベスコの入っているボンベは、外から中が見えないため残薬量を把握するのが難しいというデメリットがあります。

十分な容量が残っているのを確認するには、専用の残薬量目安計を使うのがおすすめです。

ボンベ内に残っている薬のおおよその量が把握できるので、次に医療機関を受診するタイミングも判断しやすくなるでしょう。

残薬量目安計は、薬局に依頼すれば、メーカーから取り寄せられます。

噴霧補助器具

手が小さく力が弱い子どもの場合、ボンベを押す力が弱いので、噴霧補助器具を使えば、必要な量の薬を噴霧しやすくなります。

オルベスコには専用の噴霧補助器具があり、薬局に依頼すればメーカーから取り寄せることが可能です。

子どもが、ボンベをちゃんと押せているかどうか不安なら、使用すると安心でしょう。

使用期間確認シール

オルベスコは、ボンベ内に薬剤が無くなっても、ガスが出てきます。そのため、薬が無くなったことがわかりにくいのもデメリットです。

規定回数を超えて噴霧した場合、ガスのなかに十分な薬剤が含まれていない可能性があり、吸入する薬の量が十分でなければ、思うような効果は得られません。

規定噴霧回数を超えて使用するのを防ぐためには、使用期間確認シールを貼っておくとよいでしょう。

使用期間確認シールは、薬局で薬と一緒にもらえます。

オルベスコの保管方法

オルベスコを保管する際は、次のことを守りましょう。

  • 直射日光・50度以上の高温になるところに保管しない
  • 子どもの手が届くところに保管しない
  • ボンベを水に濡らさない
  • 火の近くに保管しない
  • 保管する際は携帯袋に入れる

専用のアダプターが汚れた際は、水で洗わずにやわらかい布などで拭くようにしてください。

オルベスコの使用上の注意

オルベスコを使用する際は、次のことに注意しましょう。

  • 自己判断で使用をやめない
  • 十分に噴霧するように意識する
  • 中に薬が残っていることを確認する
  • 他の医療機関や薬局でオルベスコを使用していることを伝える

自己判断で使用をやめない

オルベスコは、慢性的な気道の炎症を抑え、喘息の発作を起こしにくくする薬です。

喘息の発作が出ていないからといって、自己判断で使用をやめないようにしましょう。

オルベスコの使用を急に止めると、喘息が急激に悪化することがあります。

上手に吸入できない・思うような効果が得られない場合は、主治医に相談してください。

十分に噴霧するように意識する

オルベスコは、ボンベを押して薬を噴霧するタイプの薬です。

ボンベの押し方が不十分だったり、息を吸うタイミングと噴霧のタイミングが合っていなかったりすると、十分な量の薬を吸入できません。

しっかりと吸入するためにも、次の点を意識してください。

  • ボンベをしっかり押す
  • 正面または少しうつむき加減で吸入する
  • 呼吸と噴霧のタイミングを合わせる

子どもが自分で吸入すると、使っているうちにやり方が変わってしまったり、できているつもりでも使用方法が間違っていたりするかもしれません。

時々医師や看護師に吸入の仕方をチェックしてもらいましょう。

中に薬が残っていることを確認する

オルベスコは、空のボンベを押してもガスが出てくるため、残量がわかりにくい薬です。

空のまま吸ってしまわないように、便利グッズを活用して残量を確認しましょう。

他の医療機関や薬局でオルベスコを使用していることを伝える

他の医療機関を受診するときは、忘れずにオルベスコを使用していることを伝えてください。

オルベスコには、併用に注意が必要な薬があります。

医療機関受診・薬局利用時は、お薬手帳を持参すると安心です。

オルベスコの使用に注意が必要な人

次の人は、オルベスコの使用に注意が必要です。

  • 薬や食べ物でアレルギー症状が出たことがある人
  • 抗菌剤の効かない感染症や深在性真菌症、結核性疾患にかかっている人
  • 薬を服用している人(ドラッグストアで購入できる薬も含む)
  • 妊娠中・授乳中の人

該当する人は、受診時に医師にその旨、相談しましょう。

オルベスコによる副作用

オルベスコを使った後、次のような副作用が現れることがあります。

  • 呼吸困難
  • 声のかすれ
  • 発疹
  • 気管支痙攣
  • 血管浮腫などの過敏症状
  • かゆみ
  • 口腔カンジダ

吸入後にこれらの症状がみられたり、体調が悪くなったりした場合は、速やかに医療機関を受診して医師の指示を受けてください。

口腔カンジダは、口の中に残った薬剤によって粘膜の免疫が抑えられることで、カンジダというカビの一種が増えてしまう疾患です。

吸入後にしっかりうがいをして、残っている薬剤を洗い流すことで予防できるので、忘れずにうがいをしてください。

使用方法を間違えたときの対処法

オルベスコの吸入を忘れてしまったり、うっかり2回以上吸入してしまったりすることもあるでしょう。

そのような場合は、次のように対処してください。

  • 使用を忘れたとき

吸入が1日1回の場合は、気付いた時点で1回分を吸入してください。

1日2回の場合は、気付いても吸入せず、次の回から吸入を再開してください。

この時、2回分を一度に吸入しないでください。

  • 決められた回数より多く吸入してしまったとき

体調に変化がなくても、医師または薬剤師に相談しましょう。

確実に決められた回数を吸入するために、吸入のタイミングを決めるほか、服薬管理アプリなどを活用するのもおすすめです。

よくある質問

オルベスコについてよくある質問をまとめました。

  • オルベスコの子どもの用量は?
  • オルベスコ吸入にはどのような効果がある?
  • 吸入ステロイド薬は何歳から使用できる?

子どもにオルベスコを処方された保護者の方は、参考にしてみてください。

オルベスコの子どもの用量は?

症状の程度や体格によって異なりますが、子どもは1日1回シクレソニドとして100〜200μgを投与するのが一般的です。

喘息のコントロールが良好な場合は、1日1回50μgまで減量できます。

オルベスコ吸入にはどのような効果がある?

オルベスコには、気道の炎症を鎮めて、喘息の発作を起きにくくする効果があります。

発作を鎮めたり、気管支を広げたりする効果はないため、症状に応じて気管支拡張薬などと併用されます。

吸入ステロイド薬は何歳から使用できる?

オルベスコは、医師の判断によりますが、5歳から使用可能です。

小児気管支喘息の場合、5歳まででも吸入ステロイド薬を使用する場合がありますが、今回紹介したオルベスコは使用されません。医師と相談して適切な薬を選択してください。

まとめ

小児気管支喘息は、長期にわたって喘息発作を起こさないようコントロールする治療がおこなわれます。

そのためには、処方された薬を正しく用いる必要があります。

吸入ステロイド薬のオルベスコが処方された際は、次のことを守って使用しましょう。

  • 自己判断で使用をやめない
  • 十分に噴霧するように意識する
  • 中に薬が残っていることを確認する
  • 他の医療機関や薬局でオルベスコを使用していることを伝える

喘息治療で不安なことやわからないことがあれば、その都度医師に相談し、本人・家族・医療機関の3人4脚で治療にあたりましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。