2023.11.17

「ピークフロー」って何?小児気管支喘息との付き合い方と緊急時の対応を解説

喘息(ぜんそく)の診断を受けた際、多くの親御さんは不安や疑問を感じることでしょう。特に「ピークフロー」という言葉は、初めて耳にする方も多いかもしれません。

本記事では、「ピークフロー」の役割、測り方、数値の目安を解説します。種類と購入方法も記載しているので、参考にしてみてください。

目次

小児気管支喘息のコントロールに関係が深い「ピークフロー」とは

ピークフローは、息の速さ(強さ)を示す指標です。

具体的には、深く息を吸い込んだ後、力強く息を吐き出す際の速度を測定するものです。

息の速さは、気道の状態によって変わります。

喘息の発作や気道の狭窄が起きている場合、ピークフローの値は低下。

反対に、気道が正常に開いている場合、ピークフローの値は高くなります。

ピークフローの値は、発作の重度によっても異なります。

例えば、自己最良値の80〜60%の範囲は小発作、60〜30%は中発作、30%以下は大発作を示すとされています。

これらの値をもとに、適切な治療や対応を行えます。

ピークフローの測定が必要な理由

ピークフローの値を測定すると、喘息の状態や発作の状況が分かります。

治療薬の効果も、値を通して確認できるメリットがあります。

ピークフローを測る回数

1日に2回(朝と夜)あるいは3回(朝・昼・夜)測定することで、喘息の状態やコントロールの具体的な状況を明確に把握できます。

測定を行う時間は、できるだけ一定の時間帯に設定し、習慣化しましょう。

ピークフローの測り方

ピークフローは、以下の手順で測りましょう。

  1. 立った状態で測る
  2. ピークフローメーターをセットする
  3. 息を吸い込みマウスピースをくわえる
  4. 力いっぱい息を吐く
  5. 目盛りを読む
  6. 2〜5の工程を3回繰り返す
  7. 喘息日誌にピークフローの値を記録する

具体的な方法を以下で解説します。

1.立った状態で測る

測定は立った姿勢で行います。立つことが難しい場合は、そのときの姿勢をメモしておくとよいでしょう。

2.ピークフローメーターをセットする

ピークフローメーター(針、マーカー)を一番下まで引き下げます。しっかりと最下部にあるか確認しましょう。

3.息を吸い込みマウスピースをくわえる

深く息を吸い込み、マウスピースをしっかりと口にくわえます。これ以上吸えないところまで息を吸い、空気が漏れないようにすることが大切です。

正しく持ち、指が目盛り部分に触れないように注意しましょう。

4.力いっぱい息を吐く

力強く息を吐き出します。

速さが重要で、すべての息を吐き出す必要はありません。舌やのどを使って音を出すことは避けるようにしましょう。

5.目盛りを読む

ピークフローメーターが止まった位置の目盛りを確認します。ピークフローメーターに直接触れないように注意し、もし2つの目盛りの間で止まっていた場合は、近い方の目盛りを記録しましょう。

6.2〜5を合計3回繰り返す

上記の手順2から5を合計3回繰り返します。3回の測定の中で最も高い値を、そのときのピークフロー値として採用します。

7.喘息日誌にピークフローの値を記録する

測定結果は「喘息日誌」に記録します。いつの測定値かを確認できるように、日誌には日付とともに記入しましょう。

ピークフロー数値の見方

ピークフローの数値の見方を確認しましょう。

  • ベストな数値
  • ベストな数値の80%以下のとき
  • ベストな数値の50%以下のとき

ベストな数値

数週間にわたって定期的にピークフローを測定すると、ベストなピークフロー数値を特定できます。

数値は、喘息の管理の基準となる指標です。

ベストな数値の80%以下のとき

ベストな数値の80%以下の場合、明確な自覚症状がなくても、喘息発作のリスクが高まっています。

このような状況では、激しい運動は避けましょう。

もし運動を行う場合は、気管支拡張薬のメプチンの吸入を事前に行い、保護者や指導者の監督のもとで行うように心がけてください。

この数値範囲で喘息の症状が現れた場合、メプチンの吸入が効果的です。

ベストな数値の50%以下のとき

ベストな数値が50%以下の場合、喘息発作の強度が高まっていることを示しています。

この状態では、迅速な対応が必要となるでしょう。

自宅にメプチンなどの治療薬がある場合、すぐに吸入し、数値がベストの50%以上に回復する場合は、クリニックの診療時間まで待機することが可能です。

しかし、メプチンを吸入しても数値が50%以上に回復しない、または測定が難しい場合は、直ちに医療機関を受診することが必要です。

ピークフローを管理する喘息日誌とは

喘息日誌は、喘息の状態を日々追跡し、その管理を助けるツールとして非常に有効です。

日誌は、患者や家族、そして医師との間でのコミュニケーションを強化し、治療の方針を明確にするための情報源として役立ちます。

日誌に記録された情報をもとに、医師は患者の日常の生活習慣や薬の効果、症状の変動などを詳細に理解できます。

喘息日誌の書き方

  • 天気:当日の気象状況を記載します。気温の変動や季節の変わり目は、喘息の症状に影響を与えることが知られています。
  • 活動内容:その日に行った活動や運動を簡潔にメモします。例:「学校へ行った」「サッカーをした」など。
  • 体調:体の具合や感じた症状を記載します。特に熱や鼻水、咳などの症状があった場合は詳細に書きます。
  • 発作の状態:喘息発作の有無やその程度を記載します。発作の強さは「大・中・小」などで分類して記入します。
  • 薬の使用状況:その日に使用した薬の名前や服用・吸入回数を記載します。特に発作止めの薬の使用回数は、詳細にメモすることが重要です。
  • ピークフローの数値:朝と夕方(または夜)の2回、ピークフローを測定し、その数値を記入します。

喘息日誌は、上記のように各項目を箇条書きで整理し、それぞれの内容を具体的に補足して説明する形で記入します。

これにより、日々の喘息の状態を正確に把握し、適切な治療を受けるための情報を提供できます。

ピークフローメーターの種類と購入方法

ピークフローメーターは、いくつかの種類が市販されており、価格も手頃で使いやすいため、家で簡単に呼吸の測定ができます。

最新のものは、電子技術が取り入れられており、価格は少し高めです。

しかし、データの保存機能を備えています。

データをパソコンに取り込んで、専用ソフトを使って詳しく分析もできて便利です。

機器名

特徴

販売元

ミニライト

世界で初めて市場に登場し、多くの人々に利用されているモデル。

松吉医科器械

   

エアゾーン

ゾーンの管理がしやすい特別なマーカーを備えており、持ちやすいハンドルも特徴。

松吉医科器械

トルーゾーン

他のモデルに比べて非常に軽量。透明なボディを持ち、針が内部に収められているため、持ち運びや操作が容易。

東京エム・アイ商会

パーソナルベスト

計測時に便利な専用ケースが付属。ゾーンの管理に特化したポインターも搭載。

タケウチ

 

アスマ・ワン

 

電子ピークフローメーター。電源を入れてマウスピースを装着。過去の測定結果も確認できる。

 

宝通商

販売元の問い合わせ先

・松吉医科器械:03-5816-8800
・東京エム・アイ商会:03-6458-5588
・宝通商:03-3241-3121
・タケウチ:0120-066-884

よくある質問

ピークフローに関するよくある質問をまとめました。

  • ピークフローの測定は何歳から実施する?
  • ピークフロー値の正常値はいくつ?

小児気管支喘息の咳の特徴は?

ピークフローの測定は何歳から実施する?

ピークフローの測定は、子どもが操作に慣れると5歳頃から始められます。ただし、一般的には6歳頃からの実施が推奨されています。

ピークフロー値の正常値はいくつ?

ピークフローの正常値は、性別、年齢、身長に基づいて算出される標準値や、過去の最高記録としての自己最良値を基準とします。具体的には、自己最良値の80〜60%の範囲は小発作、60〜30%は中発作、30%以下は大発作を示すとされています。

小児気管支喘息の咳の特徴は?

小児の喘息における咳は、気道が一時的に狭まることにより特徴的な音を伴います。

具体的には、ヒューヒューやゼーゼーといった音(喘鳴)が発生します。最重症となると空気が入らず、喘鳴も聞こえなくなります。

子どもの発熱が長引いている場合はポイントを押さえ適切な対応を

「ピークフロー」とは、息の速さを示す指標で、喘息の状態や発作の重度を知るための重要なツールです。

値は、専用の「ピークフローメーター」を使用して測定されます。

ピークフローの数値は、喘息のコントロール状態を示すもので、発作の重度によっても異なります。

ピークフローの測定は、喘息の状態や治療薬の効果を確認するために重要です。1日に2~3回の測定が推奨され、測定結果は「喘息日誌」に記録しましょう。

日誌は、患者、家族、医師間のコミュニケーションを強化し、治療の方針を明確にするための情報源として役立ちます。

日誌には、天気、活動内容、体調、発作の状態、薬の使用状況、ピークフローの数値などを記入しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。