「子どもが夏風邪を引いてからしばらく経つけど、なかなか症状が治まらない」「いつになったら高熱が下がるの?」と心配している保護者の方もいるでしょう。
ヘルパンギーナに代表される夏風邪は、のどの痛みや発熱をともなう感染症で、重症化することもあります。本記事では、子どもの夏風邪が長引く原因を解説するとともに、適切な看護・感染対策の方法をご紹介します。
目次
子どもの長引く夏風邪に要注意|緊急度別の受診サイン
まず、子どもの夏風邪が長引いているときの受診サインを、緊急度別にご紹介します。
- すぐに救急車を呼ぶべき症状
- すぐに病院へ行くべき症状
- 様子をみよう|夏風邪の主な症状
- 受診すべきか悩むときの相談先
夏風邪はただの風邪だと思っていたら重症化するケースもあるので、まずは受診すべきかどうかを判断してください。
すぐに救急車を呼ぶべき症状
次のような症状がある場合は、すぐに救急車を呼んでください。
- 手足をガクガクさせている
- 白目をむいている
- 目が合わない
- 5分以上けいれんしている
すぐに医療機関へ行くべき症状
次のような症状がある場合は、夜間であっても医療機関を受診してください。
- 眠れないほど咳がひどい
- 呼吸が苦しそう
- 嘔吐や下痢が続いて脱水症状が疑われる
- 激しい頭痛や腹痛がある
- 激しくぐずるほど機嫌が悪い
- 言葉を発さない
- 水分がとれない
様子をみよう|夏風邪の主な症状
次のような症状は、夏風邪の典型的な症状です。
- のどの痛み(赤くなる)
- 発熱
- 発疹
- 下痢
- 腹痛
症状がひどくなければ、様子をみましょう。
一般的には、1週間程度で回復することが多いといわれています。
ただし、重症化すると危険なので、心配な場合は次で紹介する窓口に相談してみましょう。
受診すべきか悩むときの相談先
救急車を呼ぶべきか、すぐに医療機関を受診すべきか判断できないときは、次の相談窓口を利用してみましょう。
相談料は無料、電話で相談できます。
#7119 (救急安心センター) | 救急車を呼んだほうがよいか、すぐに医療機関を受診したほうがよいかを相談できるダイヤルです。医師や看護師、トレーニングを受けた相談員が、症状を聞き取ってアドバイスしてくれます。
受診できる医療機関の紹介も行っています。住んでいる地域によっては#7119が実施されていないこともあるので、詳しくは「消防庁」のページで確認してください。 |
#8000 (子ども医療電話相談事業) | 厚生労働省が実施している子どものための相談事業です。休日・夜間のケガや病気について相談ができ、医師・看護師のアドバイスが受けられます。
詳しくは「厚生労働省」のページで確認してください。 |
子どもの夏風邪が長引く理由
夏風邪の原因となるウイルスは、冬の風邪のウイルスに比べて特別強力というわけではありません。
しかし、夏場は睡眠不足や夏バテによって免疫力が低下しやすいため、症状が長引きやすいといわれています。
夏は日も長く、活動的になりやすい時期です。
症状が軽いからといっていつもどおりの生活をすることも、夏風邪を長引かせる要因になります。
子どもに多い代表的な3つの夏風邪
以下の3つの感染症は、子どもがかかりやすい3大夏風邪といわれています。
疾患名 | 原因ウイルス | かかりやすい年齢 | 流行時期 |
ヘルパンギーナ | エンテロウイルス、コクサッキーウイルス | 4歳以下(1歳代が最も多い) | 5月頃から流行しはじめ、6~7月がピーク |
手足口病 | コクサッキーウイルス、エンテロウイルス | 5歳以下の乳幼児 | 7月下旬が流行のピーク |
プール熱(咽頭結膜熱) | アデノウイルス | 学童期(6~12歳) ただし、5歳以下の患者も多い | 6月頃から流行しはじめ7~8月がピーク |
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、発熱と口の中に水疱(水ぶくれ)が現れる感染症です。
突然39~40度の高熱が出てのどが痛くなり、上あごの粘膜やのどの奥に直径1~2mmの小さな水疱ができるのが特徴です。
水疱が破れるとその部分がただれて、痛みをともなうことがあります。
原因となるウイルスは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスです。例年5月頃から流行しはじめます。
治療法は対症療法が基本で、特効薬はありません。
学校で予防すべき伝染病には定められていないので、本人の体調がよければ、登園・登校しても問題ないでしょう。
手足口病
手足口病は、口の中や手足などに水疱ができる感染症です。
発熱は患者の3分の1に見られますが、高熱が出ることは少なく、短期間で解熱します。
コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによって引き起こされ、感染のピークは例年7月下旬です。
接触感染や糞口感染で感染が広がるため、保育施設や幼稚園などで集団感染が発生しやすいという特徴があります。
手足口病の治療は、特効薬がないため、対症療法が基本です。
学校で予防すべき伝染病に定められていない感染症なので、本人の体調がよくなれば、登園・登校してかまいません。
プール熱(咽頭結膜熱)
プール熱(咽頭結膜熱)は、38~39度の発熱やのどの痛み、結膜炎といった症状が現れる感染症です。
アデノウイルスによって引き起こされます。
流行のピークは、例年7~8月です。
プール熱(咽頭結膜熱)には特効薬がないため、治療は対症療法が基本です。
学校安全法で第2種の伝染病に定められているので、発熱やのどの痛みといった主な症状が消えた後、2日経過するまでは出席停止となります。
夏風邪の感染経路
夏風邪の感染経路は、次の3つです。
- 飛沫感染
- 接触感染
- 経口感染
夏は暑さで体力が落ちているだけでなく、エアコンによって体が冷えてしまうことも少なくありません。
夏バテや冷えなどで免疫力が低下すると夏風邪にかかりやすくなるので、感染経路を知ってしっかり対策を行いましょう。
飛沫感染
くしゃみや咳で飛び散ったウイルスを含んだ飛沫を吸い込んで感染する経路です。
近くにマスクをしていなかったり、手でおさえるなどをしたりせずにくしゃみや咳をしている人がいると、気付かないうちに飛沫を吸い込んで飛沫感染をする可能性があります。
接触感染
皮膚や粘膜が直接触れたり、ウイルスが付着したものを共用したりすることで感染する経路です。
タオルやおもちゃなど、ウイルスが付着したものを消毒せずに一緒に使ってしまうと、接触感染につながる可能性があります。
経口感染
ウイルスや細菌に汚染された食べ物を口にしたり、糞便についたウイルスや細菌が手指を介して体内に入ったりすることで感染する経路です。
おむつ交換の後や食事の前にしっかり手洗いをしないと、経口感染する可能性があります。
夏風邪が長引く子どもへの看護方法
子どもの夏風邪が長引いているときは、次のポイントを意識して看病しましょう。
- 体温を調節してあげる
- 食事は無理に与えない
- 水分補給をしっかりする
- お風呂はシャワー浴にする
体温を調節してあげる
熱が出ていてつらそうなときは、次の方法で体温を調節してあげましょう。
- わきの下や脚の付け根などの太い血管を冷やす
- 寝具を軽く薄いものに変える
- 通気性がよい服を着せる
- エアコン・扇風機で室温を調整する
服を着せすぎたり、温かい寝具を使っていたりすると、体温が上がり熱性けいれんが起こりやすくなります。汗も蒸発しにくくなるので、通気性がよく涼しい服・寝具を用いて体温を調節してあげましょう。
食事は無理に与えない
のどが痛い場合、食欲がなくなってしまう子どももいます。
食欲がない場合は、無理に食事を与えないようにしましょう。
食事をとらせる場合は、次の点を意識して食材を選ぶと痛みを感じにくいといわれています。
- 刺激が少なくやわらかいもの
- 塩味や酸味が強くないあっさりとした味のもの
- 冷たいもの
具体的には、次の食品がおすすめです。
- 豆腐
- プリン
- ゼリー
- アイスクリーム
- 冷ましたおかゆやみそ汁
水分補給をしっかりする
脱水を防ぐため、しっかり水分をとらせることも大切です。
少しずつこまめに水分を補給しましょう。
汗をかいて失われた水分やミネラルを補うには、乳幼児用のイオン飲料や経口補水液がおすすめです。
授乳中の赤ちゃんの場合、母乳やミルクが飲めていれば別途イオン飲料などを与える必要はありません。
お風呂はシャワー浴にする
熱いお湯に長時間浸かると体力を消耗します。
夏風邪で体力が落ちているときは、シャワー浴にするか、少しぬるめのお湯にサッと浸かるようにしましょう。
湯冷めしないようにとすぐ布団に入れると、体温が下がらずかえって汗をかいて寝冷えをしてしまうことがあります。
お風呂から上がったら、体のほてりを十分に取り、寝かせましょう。
家族が夏風邪にかかった際の感染対策
家族が夏風邪にかかったら、しっかり感染対策を行いましょう。
- トイレのあとやおむつ交換後に手を洗う
- タオルの共用を避ける
- 感染者が触った場所を消毒する
トイレのあとやおむつ交換後に手を洗う
トイレに行ったりおむつ交換をしたりした後は、必ずしっかり手を洗いましょう。
手にはウイルスや細菌が付いているため、そのまま他の場所を触ったりすると感染が広がりやすくなります。
手洗い後は、手指消毒薬も使うとより感染しにくくなります。
タオルの共用を避ける
タオルの共用を避けることも重要です。
唾液などの体液にはウイルスが含まれます。
ウイルスが含まれた体液が付着したタオルを共用すると、そこから感染が広がるので、タオルは家族間であったとしても、使いまわさないようにしましょう。
夏風邪が治るまでは、使い捨てのペーパータオルなどを使用するのがおすすめです。
感染者が触った場所を消毒する
感染が広がるのを防ぐため、感染した人が触った場所や物はこまめに消毒をしましょう。
夏風邪の原因となるウイルスには、アルコールが効きにくいものもあります。
消毒には、アルコールが効かないウイルスにも効果がある次亜塩素酸ナトリウムを使うのがおすすめです。
おもちゃやドアノブ、手すりなど感染した人がよく触る物・場所を中心に消毒してください。
夏風邪の予防方法
夏風邪にかからないようにするには、次のことが大切です。
- 規則正しい生活をする
- うがいと手洗いを習慣化する
- エアコンをかけすぎない
- 寝冷えしない寝具を使う
- プールのあとはしっかりシャワーを浴びる
規則正しい生活をする
風邪にかからないようにするには、体の免疫力を落とさないことが重要です。
免疫力を維持するためにも、規則正しい生活を心がけましょう。
栄養バランスのよい食事と適度な運動を心がけ、夜はしっかり眠ることが重要です。
うがいと手洗いを習慣化する
うがいと手洗いを習慣化することも大切です。
外から帰ったときやトイレの後、食事の前などは、こまめに手洗い・うがいをしてください。
手洗いは、泡立てた石けんで手首の上までしっかり洗い、流水で十分にすすぐのがポイントです。
エアコンをかけすぎない
エアコンで体を冷やしすぎないようにしましょう。
暑いからといって室温を下げ過ぎると、体が冷えて免疫力が落ちてしまいます。
環境省では、夏場の室温の目安を28度としています。
あくまでも室温が28度なので、エアコンの温度は外の気温や部屋の広さなどに合わせて、適宜調整しましょう。
暑いと感じる際は我慢せず、扇風機なども併用して室温を調節してください。
寝冷えしない寝具を使う
就寝中もエアコンを使うことが増え、寝ている間に体が冷えてしまう人が増えています。
暑い時期ですが、就寝中はタオルケットや夏掛けを上手く活用して、寝冷えを防ぎましょう。
パジャマは汗をよく吸い取るコットン素材のものがおすすめです。
プールのあとはしっかりシャワーを浴びる
プールの後は、体を清潔にするためにしっかりとシャワーを浴びて、うがいをしましょう。
まだトイレで排泄ができない乳幼児の場合は、プールの前にお尻も洗うことが大切です。
個別のタライなどを使い、他の子どもと水を共用しないよう配慮してください。
夏風邪には大人も要注意
エンテロウイルスやアデノウイルスによる夏風邪は、大人もかかることがあります。
大人がかかった場合、重症化することがあるので注意が必要です。
また、大人は、子どもからうつされるケースも珍しくありません。
子どもが保育園や幼稚園、学校で夏風邪をもらってきたときは、対策を念入りに行なって、家庭内で感染を広げないように努めましょう。
感染してしまったときは、早めに医療機関を受診してください。
よくある質問
子どもの長引く夏風邪でよくある質問をまとめました。
- 子どもの夏風邪は何日で治る?
- 子どもの夏風邪が長引くのはなぜ?
- 夏風邪の子どもの特徴は?
子どもの夏風邪は何日で治る?
子どもの夏風邪は、通常であれば1週間程度で治ります。
個人差があるため、一概に何日と言及はできません。
子どもの夏風邪が長引くのはなぜ?
夏場は睡眠不足や夏バテによって免疫力が低下しやすいため、症状が長引きやすいといわれています。
日が長いため活動的になりやすく、症状が軽いからといつもどおりに過ごしてしまうのも、夏風邪を長引かせる原因です。
子どもの夏風邪の特徴は?
子どもの夏風邪の特徴は以下のとおりです。
- ヘルパンギーナ
・38度以上の高熱
・口の中の小さな水疱(水ぶくれ)
・のどや口の中の痛み
- 手足口病
・口や手足の発疹
・37度台の微熱
- 咽頭結膜熱(プール熱)
・頭痛
・食欲不振
・全身のだるさ
・38度以上の高熱
・のどの痛み
・結膜炎症状(目やに・充血)
まとめ
夏風邪は、ウイルスによって引き起こされる感染症で、長引くことが少なくありません。
子どもが夏風邪をひいたら、症状に合わせて対処しながら、回復するのを待ちましょう。
通常であれば1週間程度で回復します。
大人が夏風邪に感染すると重症化することがあるので、感染を広げないための対策も重要です。
家族が夏風邪になったら、次の対策で感染拡大を防ぎましょう。
- トイレのあとやおむつ交換後に手を洗う
- タオルの共用を避ける
- 咳エチケットを心がける
- 感染者が触った場所を消毒する
- プールのあとはしっかりシャワーを浴びる
夏は暑さで体力が落ちやすい時期です。
規則正しい生活で夏風邪に負けない体を作り、少しでも体調が悪いときは早めに医療機関を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。