子どもの腹痛が長引くと、親としては心配になりますよね。
「原因はなに?」「どう対処すればいい?」など適切な処置を知りたいのではないでしょうか。
腹痛を訴えてから、少し時間が経過してケロッとしているようなら、機能性腹痛かもしれません。
本記事では、長引く腹痛の一つである「機能性腹痛」に焦点を当て、原因と改善方法について解説します。
受診すべきタイミングも説明しているので、参考にしてください。
目次
子どもの長引く・繰り返す腹痛は機能性腹痛かも
子どもの腹痛が長引き、原因が特定できない場合は「機能性腹痛」かもしれません。
機能性腹痛は、具体的な体の病気や薬、毒素とは関連がないけれど、6カ月以上続く腹部の痛みを指します。
仮病でなく本人は本当に痛みを感じています。
特に、精神的ストレスや自律神経失調などの原因で刺激に対して過敏な状態になり、腹痛をともなう便通異常を起こす機能性腹痛は、過敏性腸症候群と呼ばれます。
機能性腹痛は、痛みが常にあるわけでなく、現れたり消えたりします。
また、痛くて生活に支障をきたすケースもあるでしょう。
原因について完全には解明されていませんが、消化管の神経過敏、遺伝的な要因、ストレス、性格、社会的状況、精神障害などが関連していると考えられています。
特に、子どもの場合、新しい学校への転校など新しい環境への適応や兄弟姉妹の誕生など家庭内の変化がストレスになっている場合や乳糖不耐症などが機能性腹痛の一因となることがあります。
子どもの機能性腹痛を改善するポイント
機能性腹痛には治療法はありませんが、以下のような方法で改善できる場合があります。
- 腹痛の誘因になる出来事を探す
- 気を紛らわせる
- 対処法を見つける
- 腹痛について聞かない
腹痛の誘因になる出来事を探す
子どもは、学校や習い事、人間関係など、さまざまな場面でプレッシャーや不安を感じています。
このようなストレスが機能性腹痛の原因になっているかもしれません。
子どもをよく観察して、なにがストレスなのか、どうしたら軽減できるかを考慮すれば、改善のポイントになる場合が多いでしょう。
気を紛らわせる
痛みを和らげるためには、子どもの注意を痛みから逸らすことが有効です。
無理に腹痛について話すのではなく、関心を引く話題で楽しませたり、遊びや読書で楽しい時間を提供したりしましょう。
周囲が、子どもの心地よさを優先し、楽しい体験を共有すれば、症状が減ってきやすくなるでしょう。
対処法を見つける
機能性腹痛は、仮病ではなく本当に腹痛を感じています。
話し合いながら、腹痛が少しでも和らぐ方法を一緒に探しましょう。
深呼吸や心地よい音楽を聴かせるなどして、心地よくすごすのが効果的です。
腹痛について聞かない
子どもに「お腹痛い?」などと頻繁に聞くと、腹痛を意識しすぎることがあり、症状を感じやすくなってしまうかもしれません。
そのため、腹痛について過度に聞かないのも大切です。
この症状は危険です|すぐに受診すべき8つのサイン
以下のサインが現れた場合、すぐに医師の診察を受けましょう。
- 発熱
- 食欲不振
- 体重減少
- 夜中に目が覚めるほどの強い痛み
- 頻度の多い嘔吐や下痢
- 皮膚や白眼の黄染
- 腹部や脚の腫れ
- 食べ物や水分がうまく飲み込めない
このような症状があるなら、機能性腹痛ではなく、身体的な病気が隠れているかもしれません。
長引く腹痛で受診するなら|メモしておきたい6つの項目
腹痛で受診する際には、具体的な状況を正確に伝えましょう。
そのために、以下の6つの項目について、事前にメモを取っておくとよいでしょう。
メモがあれば伝え忘れが防げ、医師の正確な診断の助けとなります。
- 腹痛の程度
痛みの強さはどれくらいか。日常生活に支障をきたすほど強いのか、軽度で耐えられるほどなのか。
- 腹痛の場所
痛みを感じる場所はどこか。上部、下部、右側、左側、おへその周りなど、具体的に記入する。
- 腹痛の長さ
痛みは、どれくらいの時間続くのか。短時間で治まるのか、長時間続くのか。
- いつ腹痛が起きるか
痛みが起きるタイミングはいつか。夜間に痛みで目覚めることがあるか。
- 食事と腹痛の関係
空腹時や食後に痛みが起きるのか、食事とは関係なく痛むのか。
- 排便と腹痛の関係
便秘や下痢の傾向があるのか。便を出すと痛みが和らぐのか。便に異常(膿や血が混ざるなど)があるか。
関連があるかも|子どもの腹痛の原因になりやすい病気
子どもの腹痛の原因には、以下の病気も考えられます。
- 便秘症
- 感染性胃腸炎
- 腸重積
- 急性虫垂炎(盲腸)
- 過敏性腸症候群(IBS)
それぞれ特徴や症状について解説しますので、該当する症状があれば、医師の診察を受けてください。
便秘症
子どもの腹痛は、便秘が原因となるケースが多くあります。
週に3回より少なかったり、5日以上出ない日が続けば便秘と考えてよいでしょう。
便が出ているかどうか?最後に出たのはいつか?、子どもに聞いてみてください。
腸の動きが悪かったり、便の水分が吸収されすぎて便が硬くなったりすると、便秘になります。
2〜3日間排便がない場合には、医療機関を受診しましょう。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、特に秋から冬にかけての季節に流行する、ウイルスや細菌による感染症です。
症状は、吐き気や嘔吐、下痢、発熱、腹痛などで、小児では嘔吐が特に多く見られます。
なかでもロタウイルスによる感染では、乳児のけいれんも報告されています。
腸重積
腸重積症は特に3ヶ月から2歳未満の子どもに多い病気で、口側の腸管が肛門側の腸管に入り込んで、腸が閉塞する疾患です。
症状は突然の腹痛や嘔吐で、イチゴゼリーのような血混じりの便が出るのが特徴です。
急性虫垂炎(盲腸)
急性虫垂炎は、虫垂突起(盲腸の先端から出ている突起)の炎症によって引き起こされる病気です。
特に4、5歳から中学生にかけての子どもに多く見られますが、成人になってから発症することもある病気です。
初期の症状は腹痛や元気のなさ、食欲不振などで、炎症が進行すると発熱や嘔吐が見られます。
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)は、腸の機能障害による慢性的な病気で、腹痛や腹部の不快感が2ヶ月以上続くのが特徴です。
排便の回数や便の性状の変化もしばしば伴い、腹痛は排便後に軽減することもあります。
子どもにも頻繁に見られ、ストレスとの関連が指摘されています。
よくある質問
子どもの腹痛に関するよくある質問をまとめました。
- 子どもの腹痛で受診すべき目安は?
- 子どもがお腹を痛がるときは何科を受診すべき?
- 子どもがお腹を痛がるときはどうすればいい?
それぞれに回答します。
子どもの長引く腹痛で受診すべき目安は?
腹痛に加えて、以下のような症状があれば、何らかの疾患が隠れているかもしれないので、医療機関を受診しましょう。
- 発熱
- 食欲不振
- 体重減少
- 夜中に目が覚めるほどの強い痛み
- 頻度の多い嘔吐や下痢
- 皮膚や白眼の黄染
- 腹部や脚の腫れ
- 食べ物や水分がうまく飲み込めない
子どもがお腹を痛がるときは何科を受診すべき?
まずは、かかりつけの小児科医に診察を受けましょう。
子どもがお腹を痛がるときはどうすればいい?
腹痛が軽い場合、無理に食事を強要せず、水分を少量ずつ摂らせるとよいでしょう。
また、お腹を「の」の字に描くように優しくマッサージすると、痛みが和らぐことがあります。
しかし、症状が悪化したり、続いたりする場合には、医師の診察を受けましょう。
まとめ
子どもの長期にわたる腹痛で原因が特定できない場合、「機能性腹痛」かもしれません。
この痛みは6カ月以上続くことが多く、具体的な体の病気や薬、毒素とは無関係です。
痛みは常にあるわけではなく、時折現れたり消えたりします。
原因は完全には解明されていませんが、消化管の神経の過敏な反応、遺伝、ストレス、性格、社会的状況などが関連しているとされています。
子どもの新しい環境への適応や家庭内の変化も影響を及ぼすことがある病気で、仮病ではありません。
明確な治療法はありませんが、腹痛の誘因を探る、気を紛らわせるなどの対処法が有効です。
受診する際には、腹痛の程度、場所、長さ、タイミング、食事との関係、排便との関係など、具体的な状況を正確に伝えるためにメモを用意しておきましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。