子どもが突然血便を出すと、親としては心配ですよね。
鮮やかな色をした血が出たり、血便が続いたりすると、何か疾患が隠れているかもしれません。
小さな子どもだと、自分の体調を正確に伝えるのが難しく、親が症状に気づいて適切に対処する必要があります。
本記事では、子どもが血便を出しているときに受診したほうがいいサインと、考えられる疾患を解説します。
対処法にも触れているので参考にしてください。
目次
緊急度別|子どもの血便で受診すべきサインとは
子どもは、症状を正確に説明できないことも多く、すぐに医療機関を受診するべきか、様子を見てもよいのか、保護者としては判断が難しいですよね。
ここでは、子どもが血便を出した時に受診を判断する目安を、以下にわけて緊急度別に解説します。
- 急いで受診すべき症状
- 受診すべき中程度の症状
- 受診を考えるべき症状
急いで受診すべき危険な症状
以下の症状があるときは、すぐに医師の診断を受けてください。
- 便の中に真っ赤な血液が混ざっているとき
- 機嫌が悪く腹痛もともなうとき
- イチゴジャムのような便が出たとき
- 下痢、嘔吐、発熱のいずれかがともなうとき
夜間や休日であっても救急外来を受診しましょう。
受診すべき中程度の症状
以下のような症状であれば、診療時間内に医療機関を受診しましょう。
- 肛門を痛がるとき
- 便の表面に血がついているとき
緊急に受診する必要のある症状が無くても、常に子どもの症状を見守りましょう。
もし、異変があれば、すぐに医療機関を受診しましょう。
受診を考えるべき症状
以下のような症状の場合、症状をよく観察し、状況によって医療機関を受診するべきか考えましょう。
- 普段通りに、元気な様子のとき
- イチゴやトマトなど、赤い食べものをとった後に赤い便が出たとき
もし違う症状が出るようなら、すぐに医療機関を受診しましょう。
子どもの血便から考えられる疾患
どもに血便が出た場合、以下の疾患の可能性があります。
- 肛門裂傷(切れ痔)
- ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)
- 炎症性腸疾患
- 若年性ポリープ
- 大腸リンパ濾胞増殖症
- 腸重積
- メッケル憩室
- IgA血管炎(血管性紫斑病、アレルギー性紫斑病)
- 胃十二指腸潰瘍
それぞれ詳しく解説します。
肛門裂傷(切れ痔)
血便の最も一般的な原因は肛門裂傷(切れ痔)です。
排便の際に、肛門の内部または外部の皮膚が裂け、排便時やその直後に痛み、血の付いた便が出ます。
排便時の便が硬い場合や大きい場合、または頻繁な軟便のために、肛門が傷つきます。
肛門裂傷の治療は、軟膏で肛門の保護などで、便が固くなっている場合には、便秘を治療します。
診療時間を待って医療機関を受診しましょう。
ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)
ウイルス性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの微生物が腸の炎症を引き起こす疾患です。
接触感染や、病原体が付着した食物の摂取が原因となります。
ウイルス性胃腸炎の症状は、原因となる病原体により異なりますが、一般的には腹痛、下痢、発熱などです。
血便は主に細菌が原因の胃腸炎で出る場合が多く、ウイルス性の胃腸炎では少ないとされています。
ひどくなると、脱水症状がおこることもあるので、早めに医療機関を受診しましょう。
炎症性腸疾患
炎症性腸疾患は、腸内に慢性の炎症を引き起こす疾患で、大きく分けて潰瘍性大腸炎とクローン病の二つに分類されます。
潰瘍性大腸炎は大腸に症状が出る疾患で、再発する下痢、血便、腹痛などが特徴です。
クローン病は炎症が消化管の粘膜に、潰瘍やただれができる疾患です。
症状は多様で、下痢、血便、腹痛などに加えて、慢性化組織のなかに膿がたまった膿瘍(のうよう)や異常な管状の穴である瘻孔(ろうこう)が肛門付近にできる場合もあります。
また、体重減少や成長障害などの消化器系以外の症状も報告されています。
若年性ポリープ
若年性ポリープは、直径約1cmの球状の腸管内にできるポリープを指します。
6割は子どもに発生するため、若年性ポリープと呼ばれています。悪性化することはありません。
便の表面についた鮮やかな赤色の血液によって発見されるケースが多く、肛門鏡や大腸内視鏡を用いて観察が可能です。
また、肛門から手を入れて触れる場所にできるケースもあります。
治療法は、内視鏡を用いてポリープを除去するのが一般的で、自然脱落もあります。
再発は少なく、切除すれば特に問題はないとされています。
大腸リンパ濾胞増殖症
大腸リンパ濾胞増殖症は、下痢、下腹部痛がおき、便に点状または線状に血が付着するのが特徴です。
ほとんどが特別な治療を受けなくても数か月以内に症状が消失します。しかし、原因はまだ明らかにされていません。
腸重積
腸重積症は特に3ヶ月から2歳未満の子どもに多い病気で、口側の腸管が肛門側の腸管に入り込んでしまい、腸が閉塞する疾患です。
典型的なケースでは、小腸の末端部分が大腸に入り混んでしまう場合が多いようです。
主な原因は腸のリンパ組織が腫れて大きくなり、この部分から大腸に入りこむのだとされています。
原因については、風邪などのウイルス感染がリンパ組織の腫れに関与していると考えられています。
腸重積は、早期診断と治療が必要です。
治療が遅れると重なった部分の血流が悪くなって腸管が腐ったり、腐った腸から菌が全身に入り込んでしまい腸を切り取らなければならないなど、深刻な事態を招くことになりかねません。
とにかく早めに医療機関を受診しましょう。
はじめの症状は突然の腹痛や嘔吐です。腹痛は痛いときと痛くないときが交互にあります。
症状が進むと顔色が悪くなり、イチゴゼリーのような血混じりの便が出ます。
また、約10%が再発し、いったんよくなった後に、再び腸重積を起こす場合もありますので、お子さんの症状を覚えておきましょう。
メッケル憩室
メッケル憩室は、小腸の中間部に位置する袋状の突出部で、胎児の初期に形成される卵黄管が消えずに残ったものです。
大部分の人々は無症状で、症状が現れるのは全体の約4%とされています。
主な症状は腹痛や便に黒い血が混じる下血で、他には、出血、腸閉塞、憩室炎を引き起こすケースがあります。
メッケル憩室は通常、腸粘膜で覆われていますが、一部には胃粘膜が存在する場合があります。この場合は、分泌された胃酸によって小腸に潰瘍ができ、そこから出血することがあります。
この出血は、一度に大量に出ることが多く痛みなどの前触れもないので驚くかもしれません。
一般的には無症状で経過しますが、下血の症状が現れたら、ひとまず胃潰瘍の薬を投与して、止血します。手術も可能です。
IgA血管炎(血管性紫斑病、アレルギー性紫斑病)
IgA血管炎は、全身性の血管炎の一種です。
皮膚の紫色の斑点がみられ、関節痛や腹痛・下血などの消化管症状や、腎障害を合併するケースもあるでしょう。
子どもに多い疾患で、特に3〜10歳に多い傾向があります。下痢や肛門からの出血は12.9%で、大腸からの出血は10.3%の報告があり、血便がでることもあります。
IgA腎症、血小板減少性紫斑病やその他の血管炎などは、指定難病とされています。
一定の要件を満たすことで医療費助成制度の利用が可能です。
胃十二指腸潰瘍
胃十二指腸潰瘍は、消化管の一部が欠損し、胃や十二指腸に生じる疾患です。
子どもではまれですが、新生児期から学童期までのどの年齢でも発症します。
小児が胃十二指腸潰瘍になる原因はさまざまですが、ピロリ菌の感染、ストレス、薬剤の影響などが考えられます。
症状は主に空腹時や食後の上腹部痛で、新生児や乳児の場合、吐血や下血(黒色)、幼児期以降では腹痛や体重減少などがあります。
病気じゃないかも|子どもの便が赤くなる原因
子どもの便が赤くなっても、食事が原因で病気ではないケースもあります。
例えば、トマトやイチゴなどの赤い食べ物を大量に食べたときに、すべて消化できず、便にそのまま出てくることがあります。
赤い便が出たとしても、赤い物を多く食べたのならまずは落ち着いて様子を見ましょう。
子どもに元気があれば、基本的には心配は不要です。
しかし、赤い便が続く場合や、他の症状が現れた場合は、医療機関で診察を受けましょう。
白色便下痢症の際の水分補給と食事の方法
子どもが下痢をしている際の対処法をご紹介します。
- おしりを清潔に保つ
- しっかり水分補給させる
- 消化のよい食べ物を与える
- 楽な服で、楽な姿勢にしてあげる
- 自己判断で下痢止めを服用させない
これらの項目について、それぞれ詳しく解説します。
おしりを清潔に保つ
下痢であれば、おしりのかぶれに気をつけてください。
子どもは、おしりがただれやすいので、こまめに洗浄して拭いてあげましょう。
清潔に乾燥した状態を保てば、不快な症状を防げるでしょう。
しっかり水分補給させる
下痢になると体から水分が失われるので、適切な水分補給が必要になります。
経口補水液などを少量ずつ、頻繁に与えましょう。
脱水症状になると、以下のような症状がみられます。
- 水分が摂取できない
- 唇や舌が乾燥している
- 尿が半日以上出ない
- 尿の量が少なく色が濃い
脱水症状がみられたら、すぐに医療機関を受診してください。
消化のよい食べ物を与える
血便がでているときは、消化できる食べ物を選びましょう。
例えば、おかゆやうどんなどのやわらかい食べ物は、消化しやすくおすすめです。
また、揚げ物や酸味の強い食べ物などは消化に悪いので、避けましょう。
下痢がひどい時には、固形物を避け、水分を多めにとるのが大切です。
その際、冷たい飲み物よりも体温に近い温度の飲み物を選ぶと、胃腸への負担を軽減できます。
楽な服で、楽な姿勢にしてあげる
子どもが体調を崩していたら、楽な姿勢にしてあげましょう。
楽な姿勢で寝かせるためには、枕やタオルを利用して適切な高さにしてあげてください。
また、締め付けのない服装選びも大切です。
自己判断で下痢止めを服用させない
下痢をしているからといって、自己判断で下痢止めを服用させないでください。
感染症が原因で下痢をしている場合には、症状が悪化するかもしれません。
下痢は体内の病原体や毒素を排出する役割を果たしています。
下痢を止めると、病原体や毒素の排出が阻害され、結果的に病状を悪化させるケースがあります。
下痢止めの使用は、医師の判断が必要です。
よくある質問
子どもの血便に関して、よくいただく質問をまとめました。
- 子どもが血便をしたときは何科を受診すべき?
- 子どもが血便をするのはなぜ?
- 下血と血便の違いは何?
それぞれに回答します。
子どもが血便をしたときは何科を受診すべき?
子どもが血便をしたら、最初に内科または小児科の医師に診てもらいましょう。
診察時には、症状の始まり、子どもの行動、便の特性などを医師に詳細に説明しましょう。
子どもが血便をするのはなぜ?
これまでに説明した疾患のなかでは、切れ痔が原因であることが多いでしょう。
切れ痔なら、急いで医療機関を受診する必要はありませんが、他の疾患の可能性も考え様子を観察し、異変を察知できるようにしてください。
下血と血便の違いは何??
血便は便に赤い血が混ざっている状態を指し、回腸、大腸、または肛門からの出血によるものです。
一方、下血は便に黒い血が混ざっている状態を指し、食道、胃、十二指腸などからの出血を示します。
まとめ
子どもの血便にはさまざまな疾患が隠れているケースもありますが、最も一般的な原因は便が固くなったせいでおこる肛門裂傷(切れ痔)です。
この場合、便をやわらかくする薬を服用し、肛門が切れるのを予防します。
肛門に軟膏を塗ることもあります。
しかし、以下のようなときは、すぐに医師の診断を受けてください。
- 便の中に真っ赤な血液が混ざり込んでいるとき
- 機嫌が悪く腹痛も伴うとき
- イチゴジャムのような便をしたとき
- 下痢、嘔吐、発熱のいずれかが伴うとき
これらの症状があれば、夜間や休日でも救急外来を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。