2023.11.02

赤ちゃんの咳と鼻水が治らない!受診すべきタイミングと対処法を解説

赤ちゃんの咳と鼻水がおさまらず、微熱も続くなどの症状があると、不安を感じますよね。症状が長引いている場合、病院で治療しなければならない疾患が隠れている可能性もあります。

本記事では、症状が長引く場合の、病院への受診タイミングや考えられる病気について解説します。家庭での対処法もまとめているので、参考にしてください。

目次

【こんな症状ありませんか?】すぐに受診すべき9つのサイン

まずは、以下のいずれかの症状がないか確認しましょう。

  • ぐったりしている
  • 呼吸しにくく、苦しそう
  • 夜中にひどい咳が出る
  • 咳が1週間以上続いている
  • 「ゴホンゴホン」と、痰が絡むような咳をする
  • 「ケンケン」と、空気がのどにこすれるような咳をする
  • 「ゼーゼー」「ヒューヒュー」とのどが鳴っている
  • 全身にじんましんが出ている

このような症状がある場合、深刻な疾患が隠れているケースもあります。夜間や休日であっても緊急外来を受診してください。

また、自己判断で市販薬を使用すると、症状が悪化するケースも考えられるため、医師の判断がない場合は避けましょう。

早急に受診すべき|咳や鼻水の症状が出る7つの疾患

咳や鼻水の症状が出る場合、以下の7つの疾患が疑われます。

  • 風邪
  • RSウイルス感染症
  • クループ(喉頭炎)
  • マイコプラズマ感染症
  • 百日咳
  • ヒトメタニューモウイルス感染症
  • 気管支喘息
  • 気管支炎・肺炎
  • 感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

それぞれ詳しく解説します。

風邪

風邪は、医学的に「かぜ症候群」と呼ばれ、気道(鼻からのどまでの空気の通り道)に急性炎症が起きる疾患です。

子どもが集団生活を始めたタイミングで、周りの子から風邪をもらい、症状が長引くケースもあります。

風邪を引き起こすウイルスの数は多く、免疫の少ない子どもはさまざまなウイルスに感染します。一度風邪をひいても、別のウイルスに感染していることもあるので、咳や鼻水などの症状が長引いているかもしれません。

一般的な風邪であれば、急いで医療機関を受診する必要はありません。

しかし、緊急性の高い症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

RSウイルス感染症

RSウイルス感染症は、RSウイルスが原因となる呼吸器疾患で、ほぼ全ての子どもが2歳までに1度は感染すると言われています。

生後数週から数か月の間に感染すると重篤化リスクが高くなるので注意が必要です。

また、早産児や心肺に既存の疾患を持っていたり、先天性の免疫不全症、染色体異常がある場合は、症状が重くなるケースもあります。

RSウイルス感染症の症状は、風邪のような発熱、鼻水、咳などです。ほとんどの場合、1週間程度で症状は改善しますが、重篤化する可能性もあります。

気管支炎や肺炎が発生し、病院での治療が必要となるケースもあるでしょう。

クループ(喉頭炎)

喉頭炎(クループ)は、主に風邪などの上気道ウイルスによって引き起こされます。

慢性的な発症は、過剰な発声やアレルギー、タバコなどの刺激物の吸入が原因として挙げられるでしょう。

喉頭炎の症状は声の変化で、声がれや声が出にくくなるなどが挙げられます。

症状の重さは炎症の程度によりますが、重度の感染では発熱や倦怠感、飲み込みにくさ、のどの痛みなどが見られます。

マイコプラズマ感染症

マイコプラズマ感染症は、マイコプラズマ・ニューモニエという細菌により引き起こされる感染症です。

病気の初期症状は風邪に似ており、発熱、頭痛、全身の倦怠感、のどの痛みなどが現れます。

その後、長引く咳や発熱、さらには気管支炎から肺炎へと進行することもあります。

また、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、貧血、関節炎などの合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

マイコプラズマ感染症は通常、重症化しにくいとされています。

しかし、免疫反応が強い子どもは進行が早く、入院を要するほど重症化するケースもあります。

百日咳

百日咳は急性呼吸器感染症で、免疫が未熟な乳児が罹患しやすく、重篤化しやすい傾向にあります。

通常の風邪症状から始まり、咳が増え激しくなるでしょう。

約2〜3週間では、短い咳が連続し、息を吸うと笛のようなヒューという音が出ます。

乳児期早期では特徴的な咳がなく、息を止めているような無呼吸発作を引き起こすケースもあるので注意が必要です。

ヒトメタニューモウイルス感染症

ヒトメタニューモウイルスは呼吸器感染症を引き起こすのが特徴です。

感染の初期症状は鼻水と発熱で、その後咳や喘鳴が出ることがあります。

特に、生後6ヶ月未満の乳児では、最初の症状として無呼吸が見られる場合があります。

一部の小児、特に月齢の低い乳児では、重症の呼吸窮迫が発生するケースもあるでしょう。

現在、感染を防ぐワクチンは存在しないため、良好な衛生状態の維持が重要です。

気管支喘息

気管支喘息は、気道が慢性的に炎症し、刺激が加わると気道が狭くなることで、呼吸困難、咳、喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューとした呼吸音)などの症状を発症します。

これらの症状は夜間から明け方にかけて発生しやすい傾向にあります。

長期にわたる咳が続く場合、気管支喘息の可能性があるため、適切な診断と治療のために医療機関への早急な受診がおすすめです。

気管支炎・肺炎

気管支炎・肺炎は、ウイルスや細菌が気管支や肺に侵入し、感染を引き起こす疾患です。

多くの場合、風邪の後に発症し、熱と咳が主な症状として現れます。

咳は病状が進行するにつれて、痰を伴うものに変化し、気管支が狭まり、「ヒューヒュー」「ゼーゼー」といった喘鳴のような呼吸が起こったり、肺に炎症が広がり息苦しさを感じる可能性があります。

感染後咳嗽(かんせんごがいそう)

感染後咳嗽は、ウイルスあるいは細菌によるかぜの後、あるいは気道感染の後、3週間以上続く咳嗽です。

肺炎マイコプラズマ、肺炎クラミジア、百日咳菌などの感染が原因になることが多いです。

自然に治ることが多く、咳がひどい時は咳止めを使う場合もあります。

咳や鼻水が出る主な原因

咳や鼻水が出る主な原因については、以下が考えられます。

  • 空気が乾燥している・空気が冷たい
  • アレルギー反応を起こしている
  • 何らかの病気にかかっている

それぞれ詳しく解説します。

空気が乾燥している・空気が冷たい

冬の時期は、乾燥や冷たい空気が鼻やのどの粘膜に影響を与え、咳や鼻水の症状を引き起こす可能性があります。

体の自然な反応として捉えられるため、特に医療機関への受診を必要とする状況ではありません。

症状の軽減には、屋内の湿度を適度に保つことや、身体を適切に温めるのが有効です。

加湿器の活用や暖房器具を適切に使って乾燥を防ぎ、身体を暖かく保ちましょう。

アレルギー反応を起こしている

花粉やハウスダストなどに対するアレルギー反応で、咳や鼻水を誘発することがあります。

花粉やハウスダストなどの異物が体内に入り、排除しようとする免疫反応で、咳や鼻水などの症状が現れます。

部屋の清掃の徹底や空気清浄機の使用をすれば、アレルギー物質が減り、症状は軽減するでしょう。

それでも症状が改善しない場合は、医療機関の受診を検討をおすすめします。

何らかの病気にかかっている

時折、咳や鼻水は特定の疾患の初期症状となることもあります。

前章で紹介した疾患などが考えられるでしょう。

症状が長期間続く場合や、他の重篤な症状が一緒に発生する場合、なんらかの疾患であるケースが高くなります。

適切な診断と治療のために医療機関を受診することが重要です。

赤ちゃんに咳と鼻水が出ているときの対処法

赤ちゃんに咳が出ているときの対処法を見ていきましょう。

  • 咳がひどいときは上体を起こして背中をさする
  • 鼻水がひどいときはスポイトで吸う・綿棒で掃除する
  • 安静にして体を休める
  • 食欲がないときは無理に食べさせない
  • 部屋を加湿する
  • 部屋をきれいに掃除する
  • 保育園や幼稚園に相談する

それぞれ詳しく解説します。

【咳がひどいとき】上体を起こして背中を軽くさする

赤ちゃんが咳込んだ時は、上体を起こして背中を軽くさすってあげてください。

横に寝かせるよりも座る姿勢を取ることで、呼吸の流れが自然とよくなります。

また、膝を曲げて腹筋を緩めるのも重要です。

そのうえで、背中を軽くさすってあげると、呼吸を楽にできるでしょう。

咳が止まらない場合や、他の症状が現れる場合は、医療機関を受診してください。

【鼻水がひどいとき】スポイトで吸う・綿棒で掃除する

赤ちゃんの鼻水は、潤んだティッシュで優しく拭きましょう。

深部の鼻水もティッシュを糸状にして、くすぐることで出てきます。

拭き終わった後は、皮膚が赤くならないようにワセリンで保護しましょう。

また、市販のスポイトや鼻吸引器を使って鼻水を吸い取るのも有効です。

湿らせた綿棒で鼻を清潔に保ち、固まった鼻水にはベビーオイルを塗布してから除去してください。

安静にして体を休める

咳や鼻水が続くときは、安静にして体を休められる環境を作りましょう。

鼻水が詰まって呼吸が苦しいと感じるときは、クッションや布団で体を適度に起こしてあげてください。

不快感を和らげ、安静にすることで、自然と体力が回復し風邪症状も改善されるでしょう。

食欲がないときは無理に食べさせない

食欲がないときは、無理な食事の強制は避けてください。

食事よりも適切な水分補給が重要です。

体内の栄養や酸素を効果的に配分し、老廃物と二酸化炭素を排出するため、ただの水を与えるだけではなく、糖分とイオンのバランスを考慮した経口補水液や子ども向けのイオン飲料が理想的です。

食べ物に関しては、消化のよいものを選び、赤ちゃんが食べられる量だけ提供しましょう。

たとえば、やわらかいおかゆ、ゆでたうどん、野菜スープなどが適しています。

また、すりおろしたリンゴの果汁やみそ汁の澄みも食欲不振時のよい選択肢です。

最後に、不安な場合は小児科医に相談することをおすすめします。

部屋を加湿する

乾燥した環境は鼻水を固めてしまい、鼻づまりの原因となるため、湿度を適切に保ちましょう。

就寝時には加湿器を活用し、室内の湿度を40〜60%にしてください。

また、適切な室温も風邪の症状緩和に役立ちます。

理想的な室温は20〜23度です。

これらの対策により、風邪症状の緩和を促進し、快適な休息の確保が可能になるでしょう。

部屋をきれいに掃除する

赤ちゃんの咳や鼻水の原因がアレルギーである場合、部屋の清掃が重要な対策となります。

日常の生活空間からアレルゲンを除去するため、掃除を頻繁に行いましょう。

家庭の掃除を行うことで、アレルゲンの影響を最小限に抑えられるので、赤ちゃんの健康状態を維持することが可能となります。

また、症状を和らげるために抗アレルギー薬を使用することも選択肢の一つです。

薬の使用は医師との相談のもと行ってください。

適切な投与量や使用方法について、専門的なアドバイスを受けることが重要です。

保育園や幼稚園に相談する

無理な登園は体調を悪化させ、他の子どもに感染する恐れもあります。

症状がある場合、まずは保育園や幼稚園に相談し、方針に従いましょう。

赤ちゃんを風邪や感染症から守るための予防法

風邪や感染症から赤ちゃんを守るため、以下の予防策を心がけましょう。

  • 混雑した場所を避ける
  • 手洗い・うがいの習慣化
  • 赤ちゃんの清潔さを保つ
  • 共用おもちゃの口への接触を防ぐ
  • 自分用のおむつ替えマットを持参する
  • アルコール消毒を行う
  • 予防接種を受ける

これらの予防策を日々続けることで、赤ちゃんを風邪や感染症から守ることができるでしょう。

よくある質問

子どもの咳や鼻水に関するよくある質問をまとめました。

  • 子どもの咳や鼻水はいつ治る?
  • 赤ちゃんが咳をしているときはどうすればいい?
  • 赤ちゃんが咳をしているときの寝かせ方は?

それぞれに回答します。

子どもの咳や鼻水はいつ治る?

一般的な風邪の場合、咳や鼻水は1週間ほど続くことが多いです。

赤ちゃんが咳をしているときはどうすればいい?

咳がひどいときは、赤ちゃんの上体を起こし、背中を優しくさすると咳が和らぎます。安静にして体を休めてあげましょう。

赤ちゃんが咳をしているときの寝かせ方は?

咳がひどい場合、横向きで寝ると咳が出やすいので、少し上半身を起こす形で寝かせるといいでしょう。

また、加湿器を使用して部屋の湿度を保つことも重要です。

まとめ

赤ちゃんの咳や鼻水は、乾燥した空気、冷たい気候、アレルギー、または何らかの疾患が主な原因で発生します。家庭では以下の対処法が有効です。

  • 咳がひどいときは上体を起こして背中を軽くさする
  • 鼻水がひどいときはスポイトで吸う・綿棒で掃除する
  • 安静にして体を休める
  • 食欲がないときは無理に食べさせない
  • 部屋を加湿する
  • 部屋をきれいに掃除する
  • 保育園や幼稚園に相談する

しかし、呼吸困難や全身にじんましんが出るなどの深刻な症状がある場合、または咳が1週間以上続いている場合は、可能な限り早く医療機関を受診しましょう。

市販薬の使用は悪化の原因につながる可能性があるため、医師の指示がない限りは避けてください。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。