「やっと風邪が治ったと思ったら、また保育園でうつってきたみたい」
「1年のうちに何度も風邪をひいているから心配」
という保護者もいるでしょう。
あまり頻繁に風邪をひくと、子どもの免疫力に何か異常があるのではないかと心配になる人もいるかもしれません。
集団生活をしていると、友達から風邪がうつるリスクはどうしても高くなります。
本記事では、子どもがよく風邪をひく理由を解説するとともに、免疫力を高める6つの習慣をお伝えします。
風邪に負けない体を作るための参考にしてみてください。
目次
子どもがよく風邪をひいてしまう原因
子どもが大人より頻繁に風邪をひくのは、病原体に対して十分な免疫を持っていないからです。
風邪のほとんどは、ライノウイルスやアデノウイルスなどの各種ウイルスによって引き起こされます。
風邪を引き起こすウイルスは200種類以上あるとされており、風邪が治ってもすぐに別のウイルスが原因の風邪をひいてしまうことも珍しくありません。
特に保育園・幼稚園・学校などで集団生活をするようになると、さまざまなウイルスにさらされる機会が増えます。
その結果、過去に感染したことがなく抗体を持たないウイルスにもさらされやすくなり、頻繁に風邪をひくようになると考えられます。
そもそも風邪ってどういう病気?
風邪といっても、鼻風邪やのど風邪などいくつか種類があります。
ここからは、風邪がどういう疾患かを解説します。
主な症状
風邪は、「かぜ症候群」ともいいます。かぜ症候群になると、以下のような症状が現れます。
- くしゃみ
- 鼻水
- 鼻づまり
- のどの痛み
- 咳
- たん
- 発熱
- 全身倦怠感
- 頭痛
- 腹痛
- 下痢
- 嘔吐
現れる症状は、原因のウイルスによって異なるのが特徴です。
いずれの症状も1週間~10日程度で快方に向かうことが多いとされています。
感染経路
風邪の感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
- 飛沫感染
くしゃみや咳の際に飛び散ったウイルスを含む唾液を吸い込むことで感染するルートです
- 接触感染
ウイルスが付いた場所・物に触った手で目・鼻・口の粘膜に触れることで感染するルートです
重症化のリスク
たかが風邪と思って油断していると、細菌に二次感染して重症化する場合もあるので注意しましょう。
風邪が重症化すると、次のような疾患を発症することがあります。
- 気管支炎
気管支で二次感染が起こり、激しい咳や黄色い痰が出る
- 喘息(ぜんそく)
風邪によって喘息の発作が誘発される
- 肺炎
細菌が肺に達して、高熱や激しい咳のほか胸の痛みや呼吸困難が起こる
- 中耳炎
細菌やウイルスが中耳に達して、耳の痛みや耳だれ、発熱などの症状が出る
- 髄膜炎・脳炎
髄膜や脳に細菌やウイルスが達して、頭痛・高熱・嘔吐・けいれん・意識障害などが起こる
重症化した場合、入院が必要になることもあります。
少しでも様子がおかしいと感じたときは、早めに医療機関を受診してください。
風邪をひいてしまった際の対処法
子どもが風邪をひいてしまったときは、次の3つのことを行いましょう。
- 体を休ませる
- 薬を飲んで症状を和らげる
- 医療機関を受診する
体を休ませる
症状が軽い場合は、家で安静に過ごさせましょう。
鼻水が出ている、のどが少し痛む程度であれば、水分と食事をしっかりとって体を休めるだけで、症状が悪化せずに治ることも珍しくありません。
薬を飲んで症状を和らげる
症状が気になる場合は受診して症状にあった薬を内服しましょう。
症状があっても生活に支障がない場合や、自然に回復していれば家で様子をみて構いません
医療機関を受診する
2~3日たっても症状が落ち着かず、高熱が続く・食欲が戻らない・呼吸が苦しそうといった症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。
二次感染を起こして、重症化している可能性があります。
咳や鼻水で苦しそうにしている場合も、医療機関を受診すると安心です。
風邪の予防方法
風邪にかからないためには、次のことを心がけましょう。
- 人混みを避ける
- 手洗い・うがいをする
- マスクを着用する
- 規則正しい生活をする
特に睡眠不足や栄養不足の状態が続くと、体の抵抗力が落ちて風邪をひきやすくなります。
普段から早寝早起きや栄養バランスのよい食事といった規則正しい生活を送って、風邪をひきにくい体を作りましょう。
知っておきたい免疫の話
「病気にかからないためには免疫をつけることが大切」という話を聞いたことがある保護者も多いでしょう。
免疫の仕組みには自然免疫と獲得免疫があり、それぞれ免疫細胞によって機能しています。
2つの違いを解説します。
自然免疫
自然免疫は、体の中に入ってきた細菌やウイルスといった異物に対して体が反応することを指します。
私たちの体にもともと備わっている機能です。入ってきた異物の特徴を獲得免疫に伝える役割もあります。
獲得免疫
獲得免疫は、自然免疫から伝えられた情報をもとに、体に入ってきた細菌やウイルスなどの異物を免疫細胞が攻撃する働きです。
攻撃が始まると、異物の活動を抑えるため、異物の特徴に合った抗体ができます。
抗体ができることで、次に同じ異物が入ってきたときに素早く攻撃できるようになります。しかし、免疫細胞の働きを活発にするため、発熱などの症状が見られることもあるでしょう。
抗体を獲得するには、感染症に感染するか、ワクチンを接種して病原体を体の中に入れる必要があります。
免疫力を高める6つの生活習慣
免疫力を高めるには、次の6つのことを実践してみましょう。
- 栄養バランスのよい食事をとる
- 適度な運動をする
- 体を温める
- 生活リズムを整える
- 屋外で遊ばせる
- 予防接種を受ける
栄養バランスのよい食事をとる
好き嫌いが多く、偏食気味だと、栄養不足から免疫力が低下して風邪をひきやすくなります。
まずは、主食+主菜+副菜のそろった、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
風邪の予防に効果的な栄養素には、次のようなものがあります。
- タンパク質(免疫細胞を作る)
- ビタミンA(鼻や口の粘膜を守る)
- ビタミンC(免疫力を高める)
- ビタミンE(抗酸化作用で免疫力の低下を防ぐ)
免疫細胞の約7割は腸内に生息しているともいわれているので、おなかの調子を整えることも大切です。
直接善玉菌をとるなら、ヨーグルトやみそ、納豆といった発酵食品がおすすめです。
海藻類や、キウイ・バナナなどの果物には、善玉菌のエサになる水溶性食物繊維が豊富に含まれています。ぜひ毎日の食事に取り入れましょう。
はちみつなどオリゴ糖を含む食品も、善玉菌のエサになります。
適度な運動をする
少し汗をかく程度の適度な運動を習慣にすることも大切です。
子どもの場合、外遊びや体育の授業などで適度に体を動かす機会は大人に比べて多いので、あまり運動不足を心配することはないでしょう。
適度に運動をして汗をかくと、体が温まり免疫力が高まります。
体を温める
体が冷えやすい冬場は、内側からも体を温めましょう。
体温が高くなると、白血球の働きが活発になるといわれています。
体を内側から温めるには、温かい飲み物やニンニク・ショウガ・ネギなどの香辛料を使った料理がおすすめです。
生活リズムを整える
普段から夜更かしを控え、規則正しい生活をして自律神経のバランスを保つことも、免疫力アップにつながります。
自律神経のバランスが乱れると免疫機能が低下し、風邪をひきやすくなるからです。
そのためには、睡眠の質にも気を配りましょう。
朝までぐっすり熟睡できるように、室温や寝具を気候に合ったものに変えるだけでも、睡眠の質がアップします。
屋外で遊ばせる
屋外で遊べるときは、ぜひ屋外で遊ばせましょう。
日光に当たることで、体の中でビタミンDが作られます。
ビタミンDは、免疫機能を調整する脂溶性のビタミンです。
風邪をはじめとした感染症の発症・悪化の予防にも関わっているので、ぜひ日光に当たる機会を増やしてビタミンD不足を予防してください。
予防接種を受ける
感染の予防や重症化を防ぐために欠かせないのが、予防接種です。
赤ちゃんは、ママから病気に対する抗体をもらって生まれてきます。
しかし、生後12ヶ月頃までに抗体はほとんどなくなってしまいます。
何らかの方法で病気への抗体を獲得しなければなりません。
そこで、有効なのが予防接種です。
予防接種を受けることで、重篤な感染症の発症・重症化を防げます。
予防接種が受けられるようになったら、定期予防接種のスケジュールに沿って必要なワクチンを接種して、感染症に対する免疫をつけさせましょう。
よくある質問
子どもがよく風邪をひくことに対するよくある質問をまとめました。
子どもがよく風邪をひくのはなぜ?
子どもがよく風邪をひくのは、大人に比べて免疫機能が未熟で、病原体に対する十分な抗体を持っていないからです。
風邪を引き起こすウイルスは、200種類以上あります。保育園・幼稚園・学校などでさまざまな病原体にさらされる機会が増えることで、風邪にもかかりやすくなります。
よく風邪をひく子どもの特徴は?
風邪をひきやすい子どもには次のような特徴があることも言われています。
- 生活リズムが乱れている(夜更かしなど)
- 食べ物の好き嫌いが多い
- あまり運動をしていない
- 食事の量が少ない
- 睡眠時間が短い
まとめ
子どもは大人に比べて免疫機能が未熟で、病原体に対する十分な抗体も持たないため、風邪をひきやすいものです。
しかし、風邪をひくたびに病気に対する免疫を獲得して、少しずつ体が丈夫になっていくので、あまり心配する必要はないでしょう。
風邪をひいて、少しでもいつもと様子が違う・つらそうにしている場合は、早めに医療機関を受診してください。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。