赤ちゃんが風邪をひいたとき、どのようなことに気をつけて看病すればよいかわからず、不安になっていませんか?
乳幼児の風邪は大人と違って40度近い高熱が出たり、重症化したりすることもあるので、様子をよく観察しながら適切に対処することが重要です。
本記事では、乳幼児が風邪をひいたときの対応を解説します。
受診の目安もお伝えしますので、ぜひ参考にしてみてください。
目次
風邪とは|1シーズンで複数回罹患する理由
まず、風邪の概要をお伝えします。
風邪とは
風邪は、正式には「かぜ症候群」と呼ばれる感染症です。主にのどや鼻など上気道に炎症が起こります。
風邪のおもな原因はさまざまなウイルスで、90%以上がウイルスによって引き起こされるといわれています。
感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
くしゃみや咳をした際に飛び散ったウイルスを含む飛沫を吸い込んだり、ウイルスが付着した物・場所を触った手で目・鼻・口の粘膜に触れたりして感染します。
体の抵抗力が未熟な乳幼児は風邪にかかりやすく、重症化して肺炎や敗血症になってしまうこともあるので注意が必要です。
1シーズンで何度も風邪に罹患する理由
1シーズンで何度も風邪に罹患する理由は、風邪の原因となるウイルスの多さにあります。
一説には、風邪の原因となるウイルスは200種類以上にのぼるとされ、ひとつのウイルスの免疫がついても、別のウイルスに感染すれば風邪をひいてしまいます。
そのうえ、それぞれのウイルスが少しずつ変異しているため、一度免疫を手に入れたとしても、変異したウイルスには効果がないケースが少なくありません。
結果として、1シーズンの内に何度も風邪をひいてしまうのです。
健康な大人が風邪をひく回数は1年に3~6回といわれています。
抵抗力が弱く身体機能が未熟な乳幼児の場合、風邪の回数は大人より多くなる傾向にあります。
乳幼児の風邪の主な症状
乳幼児が風邪をひくと、おもに次のような症状が現れます。
咳
のどから肺にかけて炎症が起きると咳が出ます。
咳は昼間より、夜や明け方に出やすいといわれており、ふとんに入って体があたたまってくると咳こむ場合もあります。
鼻水・鼻づまり
鼻の粘膜に炎症が起こると、鼻水や鼻づまりといった症状が現れます。
風邪のひきはじめの鼻水は、さらさらとしていて水っぽく、色も透明に近いのが特徴です。
しかし、炎症が強くなるにつれ、黄色くどろっとした状態に変わります。
その後2~3日程度で透明でさらさらした状態に戻り、1週間程度で気にならなくなるのが一般的です。
鼻づまりは、鼻の粘膜が炎症を起こし充血して起こります。
普段口を閉じて呼吸しているのに口呼吸になっている場合、鼻が詰まっているかもしれません。
ときどきチェックしてみましょう。
発熱
水っぽい鼻水が出た後、熱が出てくることがあります。
大人の場合は37度程度の微熱で済むことが多い風邪ですが、乳幼児の場合40度近い熱が2~3日続くことも珍しくありません。
少しずつでも水分がとれていて、眠れているようならあまり心配しなくてよいでしょう。
けいれんを起こしたり、呼びかけても反応がなかったりする場合は、速やかに医療機関を受診してください。
嘔吐
おなかの風邪をひいたときは、嘔吐するケースもあります。
嘔吐がみられたら、発熱の有無や便の状態もチェックしましょう。
嘔吐以外の症状があったり、繰り返し吐いたりする場合は早めに医療機関を受診しましょう。
下痢
おなかの風邪をひいて、腸に炎症が起きると下痢をします。
下痢をしているときは消化吸収能力が落ちています。ミルクや母乳、水分は少しずつ・こまめに与えてください。
乳幼児の風邪の経過
乳幼児が風邪をひくと、次のような経過をたどります。
- 発熱(3日程度でおさまることが多い)
- 鼻水(はじめは水っぽいが、徐々にどろっとした黄色いものに変わる)
- 咳(熱が下がる頃に咳がひどくなるケースが多い)
熱が出てから咳が治まるまでは数日のことが多く、最終的には自然によくなります。
しかし、原因となるウイルスによっては咳だけがしつこく残ったり、発熱が長引いたりするので、一概に上記のような経過をたどるとはいえません。
風邪は、毎回症状が少しずつ異なる疾患だと、認識しておきましょう。
乳幼児が風邪をひいている時の家庭での対応
乳幼児が風邪を引いているときは、次のように対応しましょう。
水分補給について
乳幼児が風邪をひいたら、少しずつこまめに水分を与えましょう。
特に熱があるときは、呼気や皮膚の表面からいつも以上に水分が失われていきます。
おすすめの飲み物は湯ざましや番茶、果汁、野菜スープ、乳児用イオン飲料などです。
喜んで飲むなら、なんでもかまいません。
1日何回と回数を決めず、こまめに少しずつ飲ませてあげてください。
乳児が風邪をひいている時の母乳やミルクについて
乳児が風邪をひいているときに絶食させる必要はありません。
母乳は欲しがるだけ飲ませてあげてください。
ただし、下痢をしている場合は、ミルクや牛乳などの乳製品のとりすぎに注意しましょう。
消化機能が落ちているところに乳製品をとりすぎると、二次性乳糖不耐症になるリスクが高まります。
二次性乳糖不耐症になると下痢が長引き、乳製品をとることで下痢がひどくなるので、ミルクや牛乳などの乳製品は通常の量にとどめておいてください。
幼児が風邪をひいている時の離乳食について
食欲があるなら、風邪をひいていても絶食させる必要はありません。
ただし、胃腸が弱っているので、おなかにやさしい食事を心がけましょう。
離乳食中期以降は、1段階前の食事を与えるのが基本です。
おすすめの離乳食と避けるべき離乳食を以下の表にまとめましたので参考にしてください。
おすすめの離乳食 | 避けるべき離乳食 |
やわらかく煮込んだ野菜スープ おもゆ・おかゆ 味噌汁の上ずみ リンゴのすりおろし バナナの裏ごし にんじんやかぼちゃの煮つぶし やわらかく煮たうどん など | ジュース おかし 繊維の多い野菜(ごぼう、サツマイモなど) 脂の多い肉や魚 海藻類 乳製品 消化の悪い物 など |
食べさせる物のかたさは、便のかたさと同程度が目安と覚えておけばわかりやすいでしょう。
幼児が風邪をひいている時の食事について(離乳食卒業後)
風邪をひいて熱があるときは、十分な水分補給に加え、高エネルギー・高たんぱく質の食事を心がけましょう。
たまご雑炊やヨーグルト、煮込みうどんなどがおすすめです。
スナック菓子や脂の多い肉・魚、消化の悪い物は胃腸に負担がかかるので控えましょう。
離乳食を卒業している幼児が、風邪をひいた場合におすすめの食事と避けるべき食事を以下の表にまとめましたので参考にしてください。
おすすめの食事 | 避けるべき食事 |
おかゆ うどん 豆腐 白身魚 卵 牛乳 ヨーグルト アイスクリーム りんご バナナ プリン ゼリー など | みかんなどの柑橘類 脂の多い肉や魚、乳製品 スナック菓子 炭酸飲料 など |
家庭での過ごし方
風邪をひいたら、安静に過ごすのが基本です。そのうえで、以下のことを心がけてください。
- 外出は医療機関の受診など必要最低限にする
- できるだけ清潔な部屋で過ごす
- 室温・湿度を調整する(湿度は40~60%を目安に)
- 汗をかき始めたら室温を少し下げて体を冷やす
- 1時間に1回、5分程度換気をする
- こまめに体を拭いたり着替えさせたりて気持ちよく過ごせるようにする
乳幼児は急に体調が悪化することもあるので、症状が落ち着いているからといって長時間1人にしないことが大切です。
できるだけ大人がそばで見守り、こまめに様子をチェックしましょう。
家庭内感染を防ぐ方法
家庭内感染を防ぐために、次のことを心がけてください。
- マスクを着用する
- こまめに手洗い・うがいをする
- 十分に睡眠をとり、体調を整える
- 室温・湿度を調整する(湿度は40~60%を目安に)
- 1時間に1回、5分程度換気する
- 子どもが触れた場所・物をこまめに消毒する
乳幼児の場合、常にマスクを着用させるのは難しいかもしれません。
その場合はほかの家族がマスクを着け、飛沫感染のリスクを下げましょう。
乳幼児の風邪ですぐに受診が必要な症状
乳幼児が風邪をひいて次のような症状がある場合は、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。
- 普通の風邪とは様子が異なる
- 全体的に診て具合が悪そう
- 生後3ヶ月未満で38度以上の熱がある
- 1~2歳までの子どもで39度以上の熱がある
- ミルク・母乳を飲まない
- 元気がなく、ぐったりしている
- 呼吸が速く、息苦しそう
- けいれんを起こした
- 手足が冷たく、青紫色になっている
- 唇の周りが青白く、顔色が悪い
- 意識がおかしい(呼びかけても反応しない)
- 何度も嘔吐する
- いったん良くなったのに再び悪化した
これらの症状がある場合、風邪のように見えて実は違う疾患だったというケースもあります。
「風邪だからそのうち治る」と自己判断せず、早めに医師の診察を受けてください。
乳幼児の風邪に関するよくある質問
乳幼児の風邪に関するよくある質問をまとめました。看病する際の参考にしてみてください。
風邪をひいている時、お風呂は控えた方がよいですか?
鼻水や咳の症状があっても、熱がなく機嫌がよいならお風呂に入れてもかまいません。
熱があってお風呂に入れない場合は、濡れタオルで体を拭いたり、こまめに着替えさせたりして気持ちよく過ごせるよう工夫しましょう。
食欲がありません。無理にでも食べさせた方がよいでしょうか?
食欲がない場合は、無理に食べさせる必要はありません。
ただし、脱水症状を防ぐために水分はしっかりとらせましょう。
風邪で発熱しています。体をあたためてあげた方がよいですか?冷やしてあげた方がよいですか?
熱の上がりはじめは寒気を感じるので、毛布をかけたり厚着をさせたりしてあたためてあげてください。
熱が上がりきって汗をかき始めたら、必要以上に厚着させず、部屋の温度を少し下げて涼しくしてあげましょう。
乳幼児がいる家庭で風邪をひいたときのために常備しておくべきアイテムはありますか?
乳幼児は風邪をひきやすいので、次のものを常備しておくと安心です。
- 体温計
- 解熱鎮痛剤
- ベビー用イオン飲料
薬を飲むのが苦手な子どもには、服薬ゼリーなど服薬補助アイテムもあると重宝します。
ベビー用イオン飲料がありません。代わりに何を飲ませたらよいでしょうか?
ベビー用イオン飲料がない場合は、次のものがおすすめです。
- 湯ざまし
- 番茶
- 果汁
- 野菜スープ
よろこんで飲むものならなんでもかまいません。ただし、大人用のイオン飲料やスポーツドリンクは糖分が多すぎたり、電解質のバランスが子どもに適さなかったりするので避けましょう。
乳幼児の風邪のポイントを理解して適切な準備と対応を
初めて赤ちゃんが風邪をひいたとき、どのように対応すればよいかわからないのは、あなただけではありません。
基本的には、次のことを心がけましょう。
- 少しずつこまめに水分をとらせる
- 乳児が母乳を欲しがるときは欲しがるだけ飲ませる
- 食欲があるときは消化のよいものを食べさせる
- 外出は控え、できるだけ安静に過ごさせる
何度も風邪をひくうちに、病原体への免疫を獲得し、少しずつ体が丈夫になっていきます。
必要以上に心配せず、ポイントを押さえて適切に対応しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。