「子どもに便秘や下痢、嘔吐の症状が見られる場合、どのタイミングで受診したらよいのだろう?」「便秘や下痢、嘔吐の原因は何かわからない」といった風に、
子どもが体調不良になると、早く受診したほうがよいのかと心配になる保護者の方も多いですよね。
しかし、医療機関を受診するタイミングは症状によってさまざまで、中には様子を見てもよい場合があります。
本記事では、「子どもの便秘・下痢・嘔吐への対応方法」を解説します。
原因や受診のタイミングもわかりやすく紹介するので、子どもに便秘・下痢・嘔吐の症状が出ても、慌てず適切な対応を心がけましょう。
目次
子どもの便秘について|チェックすべき項目と原因
子どもの便秘でチェックすべき項目と、便秘になる原因を解説します。
子どもの便秘でチェックすべきこと
子どもが便秘になった際には、次の症状があるかを確認しましょう。
以下の項目は緊急性が高いため、すぐに医療機関の受診をすべき症状です。
- 便秘と一緒に嘔吐が見られる
- 急で激しい腹痛を伴う
- お腹に腫れが見られる
- 繰り返し嘔吐する
- 血便がある
便秘と一緒に嘔吐が見られる場合、腸閉塞(イレウス)や急性腹膜炎のリスクがあります。
激しい腹痛を伴う便秘は、胃腸炎や食中毒などの可能性も考えられるでしょう。
お腹に腫れが見られる場合や、繰り返し嘔吐する場合は、内部の閉塞・感染症・脱水症状を引き起こす可能性があります。
血便がある場合は、痔のような表面的な傷の他、腸管粘膜の炎症・潰瘍・出血なども考えられるため、早めに専門家に相談してください。
子どもが便秘になる原因
子どもが便秘になる原因を解説します。
- 腸の動きの悪化
腸は食べ物の消化や栄養素の吸収、排泄物の処理を担当しています。
特に大腸は水分や電解質を再吸収し、固形の便を形成する場所です。
しかし、腸の働きが弱まると、適切に機能せず便の形成や排泄が滞り、便秘を引き起こす可能性があります。
腸の働きが悪化する原因としては、食生活の乱れ・運動不足・ストレス・水分不足などが挙げられます。
子どもの場合は、不規則な食事や野菜・果物の摂取不足・適切な運動量が確保されていないと、便秘を引き起こす可能性があります。
新しい環境への適応や学校での問題など、子ども特有のストレスも便秘の原因です。
便秘が重度になると、腸内で便が硬くなり過ぎて詰まり、吐き気を催すケースもあります。
- 腸閉塞・イレウス|嘔吐症状を伴うケース多数
腸閉塞やイレウスといった病気も、便秘を引き起こすことがあります。
しかし、腸閉塞やイレウスは急を要する状態で、多くの場合は嘔吐の症状が同時に現れます。
腸閉塞は腸管内が何らかの原因でふさがれ、食物やガスが通過できなくなる状態です。
一方、イレウスは腸管の収縮が起こったり運動機能が停止または低下したりすることで、腸内の内容物が進行できなくなる状況を指します。
これらは、腸内の異物・腸管の構造異常・腸の回転異常(ボルバルス)・腸のねじれ(捻転)・腸管の炎症や腫瘍などが原因で起こり得ます。
典型的な症状としては、激しい腹痛・便秘・嘔吐・腹部の膨満感などがあります。
特に嘔吐は、腸閉塞やイレウスの重要な徴候で、繰り返すようであれば緊急の医療介入が必要です。
いずれの症状も重篤化すると生命を脅かす可能性があるため、子どもにこれらの症状が現れたら直ちに医療機関へ連絡をするようにしましょう。
医療専門家による適切な診断と早期の治療が求められます。
子どもの便秘に対して家庭で取れる対策は?
子どもの便秘に対して家庭でとれる対策を紹介します。
- バランスのよい食事を決まった時間に取らせる
バランスのよい食事を決まった時間に取ることは、子どもの便秘改善にとても効果的です。
食事は消化器系の活動を刺激し、体内のリズムを整える役割を果たします。
特に、食物繊維を豊富に含む食品は便通を促すため、子どもの便秘改善が期待できるでしょう。
例えば、全粒穀物・豆類・果物・野菜は食物繊維が多く含まれています。
これらを毎食に取り入れることで便通をスムーズにして、子どもの便秘を予防・改善できます。
食物繊維だけでなく、必要な栄養素をバランスよく摂取することも重要です。
たんぱく質・ビタミン・ミネラルなどが含まれるバランスのよい食事は、全体的な健康状態を向上させ、消化系の正常な機能を維持します。
決まった時間に食事を取ることも便秘解消には有効です。
食事の時間を規則正しくすることで、体内時計を整え、消化器官のリズムを調節します。
これが、定期的な排便を促進し、便秘を予防します。
- こまめに水分補給をさせる
便秘解消において、子どもへのこまめな水分補給は非常に重要な対策です。
体内の水分が不足すると、便は硬くなり便通が悪くなります。
逆に、適切な水分補給が行われると、便は適度な柔らかさを保つことができ、スムーズな排便が可能です。
水分を取ることで腸の動きが活発になり、排便を促進します。
乳幼児の場合、哺乳瓶やカップで、水やお茶など無糖の飲み物を飲ませるのが好ましいです。
果物など水分を多く含む食品を取るのもよいでしょう。
- しっかり運動させる
運動は便秘解消に大いに役立ちます。
子どもの便秘に悩んでいる家庭では、定期的な運動を習慣づけるのがおすすめです。
運動は消化器系の働きを促進するとともに、体全体の血流をよくし、内臓の働きを活発にします。
日々の生活の中で子どもに適度な運動を取り入れることは、健康な体をつくり、生活リズムを整えるためにも大切です。
運動すると消化器官の動きが活発になり、食べ物がスムーズに体を通過しやすくなります。
公園で遊んだり、自転車に乗ったり、犬の散歩を手伝ったりと、日常生活の中に自然と取り入れられる活動で十分です。
- トイレの時間を楽しいものにする
子どもの便秘解消には、トイレの時間をリラックスできて楽しいものにすることが効果的です。
過度なトイレトレーニングはストレスを引き起こし、逆に便秘を誘発します。
そのため、子どものペースを尊重し、気長にサポートすることが大切です。
トイレ時間を楽しくするために、お気に入りの絵本を読むなどリラックスできる環境を整えるとよいでしょう。
トイレに行ったり、排便ができたりしたことを肯定的に評価することも大切です。
これにより、トイレの時間に安心感を与え、便秘解消につながります。
子どもの下痢について|チェックすべき項目と原因
子どもの下痢でチェックすべき項目と、下痢になる原因を解説します。
子どもの下痢でチェックすべきこと
子どもが下痢になった際に、以下の症状が見られる場合は直ちに医療機関に相談しましょう。
- 発熱がある
- 意識がない
- けいれんしている
- 脱水症状を起こしている
まずはじめに発熱があるか確認しましょう。
3ヶ月未満の乳児で38度以上の発熱が見られた場合は、すぐに医療機関へ連絡しましょう。
子どもがぼんやりしている、または意識がない場合も深刻な健康問題のリスクが考えられます。
子どもが異常な筋肉の収縮やけいれんを示している場合は、深刻な脱水症状や電解質不足の可能性があるでしょう。
口が乾く・尿が少ない・目がくぼむ・元気がない・皮膚の弾力がないなどの症状が見られる場合、脱水症状の可能性が高いです。
子どもが下痢になる原因
子どもが下痢になる主な原因は、以下の3つです。
- ウイルス性胃腸炎
- 細菌性胃腸炎
- 食物アレルギー
ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)は、 ロタウイルスやノロウイルスなどのウイルスによる感染が原因で、急性の下痢や嘔吐が発生します。
特に、ロタウイルスは乳幼児に多く見られ、発熱や腹痛も伴います。
細菌性胃腸炎(食中毒)は、サルモネラやカンピロバクター、エンテロヘモラジック大腸菌(O157など)による感染が原因で、下痢や腹痛、発熱などの症状が現れます。
調理の適切でない食物を摂取したことが原因になりやすいです。
食物アレルギーは、特定の食物に対するアレルギー反応が起こることで下痢につながることもあります。
牛乳や卵、小麦などが典型的なアレルゲンです。
下痢の他、皮膚の発疹や呼吸困難など他のアレルギー症状が同時に見られることもあります。
これらの症状が長期間続く場合や、症状が重度である場合は、医療機関への受診を検討してみましょう。
子どもの下痢に対して家庭でとれる対策は?
家庭での対策は、適切な水分補給・食事管理・感染拡大の防止を行うのが大切です。
下痢によって体内の水分と電解質(塩分など)が大量に失われるため、適切な水分補給が重要となります。
水分と電解質を効率よく補える、経口補水液を飲ませるのがおすすめです。
また、消化のよいものを中心に与え、無理のない範囲で食事を与えましょう。
下痢の際は、胃腸が敏感になっている可能性が高いです。柔らかい食事や消化のよいものの摂取が推奨されています。
排泄物の処理に注意を払い、感染の拡大を防ぐことも重要です。
特にロタウイルスなどの感染性の下痢の場合、適切な手洗いやトイレの清掃が不可欠です。
感染拡大防止のためには、手洗いを徹底し、トイレは使用後すぐに清掃しましょう。
子どもの嘔吐について|チェックすべき項目と原因
子どもの嘔吐について、チェックすべき項目と原因を解説します。
子どもの嘔吐でチェックすべきこと
子どもが嘔吐になった際、次の症状が見られるか確認しましょう。
下記の項目は緊急性が高く、すぐに医療機関を受診すべき症状です。
- 発熱の有無
- 意識がない
- けいれんしている
- 何度も繰り返し吐き続ける
- 脱水症状を起こしている
まず、発熱の有無を確認してみてください。
特に3ヶ月未満の乳児が38度以上の発熱を示す場合、深刻な状況と判断すべきサインの可能性があります。
意識がない状態やけいれんが見られる場合は、直ちに医療の専門家に相談してみましょう。
何度も繰り返し吐き続ける状況も要注意です。
脱水症状を引き起こすリスクがあり、口が渇く・尿が少ない・元気がないなどの症状が現れる場合があります。
これらの症状が見られた際は、直ちに医療機関に連絡を取りましょう。
子どもが嘔吐する原因
子どもが嘔吐する原因は、以下の通りです。
いずれも重大な症状を伴う可能性がありますので、症状が続く場合や、他の症状を伴う場合は、早急に医療機関を受診しましょう。
ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症):
ウイルスによって胃腸が炎症を起こし、嘔吐や下痢の症状が現れます。
細菌性胃腸炎(食中毒):
食物や飲み物に含まれる細菌によって引き起こされる症状で、急性の嘔吐や下痢になるのが特徴です。
食物アレルギー:
特定の食物に反応して嘔吐などのアレルギー反応が起きるケースがあります。
腸重積(ちょうじゅうせき):
腸が重なることで便の通過路が妨げられ、激しい腹痛や嘔吐を引き起こします。
自家中毒(アセトン血性嘔吐症):
体内のアセトン値が上昇し、頭痛や吐き気、嘔吐が生じます。
頭を強打した場合(頭蓋内出血):
頭部の強い打撲により脳が揺れ、嘔吐やめまいなどの症状が現れます。
腸回転異常症(ちょうかいてんいじょうしょう):
生まれつき腸の位置や形状が異常で、嘔吐や食欲不振を引き起こします。
虫垂炎:
異物(特に糞石)などにより、虫垂内腔の閉鎖が起こり、二次的に細菌感染を来たして発症します。腹痛や嘔吐などを引き起こします。
精巣捻転(せいそうねんてん):
男児に見られる症状で、精巣がねじれて血流が滞り、激しい痛みとともに嘔吐が生じます。
子どもの嘔吐に対して家庭でとれる対策は?
子どもが嘔吐した際は正しい手順でケアをすれば、症状の悪化を防げます。
まず、嘔吐後の30分~2時間は、繰り返し吐くことを避けるために飲食は避けましょう。
その後、状況が落ち着いたら経口補水液などを少しずつ与えて十分な水分補給をします。
寝ている際に嘔吐する場合は、吐いたものが喉に詰まることを防ぐために、子どもを横向きに寝かせます。
嘔吐は体調不良の症状だけでなく、心理的ストレスも引き起こすため、子どもが泣いている場合は抱きしめるなどして優しく対応してあげましょう。
嘔吐物の処理を適切に行った後は、感染の拡大を防ぐために手洗いと消毒を徹底してください。
子どもの便秘・下痢・嘔吐に関するよくある質問
子どもの便秘・下痢・嘔吐に関するよくある質問をまとめました。
緊急性の低い一般的な便秘でも子どもが嘔吐することはありますか?
一般的な便秘でも、子どもが嘔吐することはあります。
便秘が長期化すると腸が過度に拡張し、その結果、食物や胃液の逆流が起こって嘔吐を引き起こします。
医療機関では子どもの便秘に対してどんな薬を使って治療しますか?
医療機関では、子どもの便秘に対して便秘薬(下剤)が主に用いられます。
具体的には、酸化マグネシウムなどの塩類下剤や、マルツエキスなどの糖類下剤が使用されます。
子どもの便秘に市販の下剤を使ってもいいですか?
市販の下剤は子どもに対しても使用できます。
しかし、医師に市販薬でよいと言われた場合に限ります。
子どもにとらせる飲み物は大人向けのスポーツドリンクでもよいですか?
大人向けスポーツドリンクは糖分や塩分が豊富なため、子どもが運動した際の飲料としては適していません。
経口補水液や希釈したスポーツドリンクなどがおすすめです。
子どもに何日くらい排便がないと便秘だと言えますか?
排便が週3回未満の場合、一般的に便秘と判断されます。
ただし、毎日排便があっても、排便時に痛みや不快感がある場合は、便秘の可能性があります。
子どもに嘔吐や下痢が見られる場合、入浴させても大丈夫ですか?
子どもが嘔吐や下痢をしている場合でも、体調が優れているときは入浴させても大丈夫です。
ただし、体調がすぐれない場合や脱水症状がある場合は避け、安静にしましょう。
子どもの便秘・下痢・嘔吐には緊急性を意識して適切な対処を
子どもの便秘・下痢・嘔吐への対応は、症状の緊急性に基づいて適切に行うことが重要です。
子どもが体調不良を訴えるとき、その背後には風邪・食物アレルギー・胃腸炎など、さまざまな原因が考えられます。
重大な健康問題のサインにつながる場合もあるため、異変を感じたら早めに医療機関に相談しましょう。
便秘は長引くと腹痛や食欲不振など他の症状を引き起こし、場合によっては嘔吐を引き起こすこともあります。
下痢や嘔吐がある場合は、脱水症状を予防するために適切な水分補給が必要です。
下痢や嘔吐が重症化すると生命を脅かすこともあるため、慎重な対応が求められます。
体調や様子の変化をきちんと観察し、必要なら専門的な医療機関に早急に相談することが、子どもの健康を守るうえで最も重要です。
症状が悪化しないよう、早めの対応と適切なケアを心がけましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。