「おなかが痛くてつらそう。子どもが重大な病気ではないか、心配だ」「どのタイミングで受診したらよいの?」
子どもが腹痛を訴えていると、緊急事態かもしれないと心配になります。
本記事では、子どもが「おなかの痛み」を訴えた際の対応方法を紹介します。2歳程度までの幼児の腹痛を分かりやすく解説するので、子どもが腹痛を訴えている場合の参考にしてみてください。
目次
子どもが腹痛を訴える原因
子どもが腹痛を訴えるときの原因を紹介します。
便秘
便秘は、乳児と幼児にもよく見られる症状です。
食事の内容や生活習慣、体質などが関わっています。
子どもの排便が困難、または排便回数が減っている場合は便秘の可能性が高い傾向です。
乳児や幼児の場合、離乳食の進行や母乳から人工乳への変更など、食事の変化が便秘を引き起こすこともあります。
胃腸炎
胃腸炎は、家族内でうつりやすい感染症で、主にウイルス性と細菌性に分けられます。
ウイルス性胃腸炎は、ロタウイルスやノロウイルスなどによるものです。
嘔吐や下痢、発熱などの症状があります。ウイルスは非常に感染力が強く、日本では冬場に流行します。
細菌性胃腸炎はサルモネラ菌や大腸菌による感染症で、食中毒の一種です。
細菌が体内に入ると胃や腸で増殖し、症状を引き起こします。
食材の調理過程や保存方法が不適切で感染することが多いでしょう。
腸閉塞(イレウス)
腸閉塞(イレウス)は、異物や炎症、腫瘍が原因で腸が詰まり、内容物が通過できなくなる状態です。
腸の中の食物や液体が通過できなくなると、腹部膨満や強い腹痛、嘔吐などの症状を引き起こします。
虫垂炎(盲腸)
虫垂炎は、虫垂という盲腸の一部が炎症を起こす病気です。
右下腹部に激しい腹痛の症状が出るのが特徴です。他にも食欲不振・嘔吐・発熱などの症状も見られます。
腸重積
腸重積(ちょうじゅうせき)は、腸の一部が隣接する腸の中に滑り込む症状です。
腸の血流が遮断され、激しい腹痛や血便を引き起こします。
0歳から2歳の乳児や幼児に多い病気です。
風邪などのウイルス感染による腸壁のリンパ組織の肥大が原因と考えられています
ヘルニア嵌頓
ヘルニア嵌頓(かんとん)は、股の付け根あたりから腸が飛び出て、血流障害を引き起こす病気です。
内臓が本来の位置からはみ出す症状、ヘルニアが原因で発症します。
腹痛や嘔吐、便秘などの症状が出ることがあります。
急性胃粘膜病変
急性胃粘膜病変は、胃の粘膜が炎症を起こす病気です。
幼児では基礎疾患がありステロイドを長期で内服している場合や、胃腸炎等で嘔吐症状が続いたあとに発症することがあります。
胃痛・嘔吐・食欲不振などの症状があります。
その他
膵臓が炎症を起こす膵炎や、腎臓に細菌が感染する腎盂腎炎なども腹痛の原因となることがあります。
これらの病気が疑われる場合も、医療機関での詳しい検査が必要です。
また、病気ではなく、ストレスが原因になることもあります。
子どもが腹痛を訴える場合の受診のタイミング
腹痛の症状はさまざまで、緊急性が高いものから自宅での対処で改善するものまであります。
以下の症状がある場合は、すぐに受診が必要です。
- 腸閉塞や虫垂炎、腸重積のおそれがある場合
- おなかが張っている、ぽっこり下部分がある場合
- 嘔吐や下痢がひどく脱水症状を起こしている
- 意識がなく、ぐったりしている
- 便に血が混じっている
- 激しいけいれんが見られる
- ジャンプするとおなか全体に痛みが響く
- 呼吸がうまくできていない
- 痛みで泣き止まない
- 腹痛に波がありいつまでも治まらない
- (男児の場合)睾丸が腫れている
これらの症状が見られた場合には、すぐに医療機関へ連絡し、受診することが重要です。
子どもが腹痛を訴えた場合の対応方法
子どもが突然、「お腹が痛い」と訴えた場合は以下の方法で痛みを軽減できる可能性があります。
排便を促す
何日も便が出ていない場合は、排便を促しましょう。浣腸液を使用することも手段です。
また、慢性的に便秘があるなら、日常的に内服等で便性コントロールすることが大切です。
楽な服装で横に寝かせる
子どもが腹痛を訴えるとき、症状を和らげるためにも体を締め付けない服装を選ぶことがおすすめです。
腹部を締め付けられることで痛みを感じやすくなります。
体調がすぐれないときは、安静に過ごすことが大切です。
子どもをソファやベッドなどでゆったりと横にさせ、腹部に負担がかからないようにしましょう。
おなかを温める
子どもの腹痛の症状を和らげるのに、おなかを温めることも効果的です。
服装の調整や腰巻きの使用で症状が和らぐことがあります。
おなかをマッサージする
腹痛の症状を和らげるためには、優しくおなかをマッサージすることも効果的です。
「の」の字を描くような動きでおなかを優しくなでると、腸の動きを促進して排便や排ガスを促し、結果的に痛みが和らぐことがあります
ただし、強く押しすぎたり、嫌がる子どもにマッサージをしたりするのはやめましょう。
優しく話しかけてリラックスできる環境を作る
子どもが体調不良を訴えているとき、心地よい環境を作ることも大切です。
親が優しく声をかけたり、子どもの肌に触れたりすることで、安心感を与えられます。
リラックスすると症状が和らぐことがあるため、周りの環境を整えて、穏やかな時間を過ごすように心がけましょう。
ストレス原因を探る
子どもが腹痛を訴える原因の1つに、ストレスが考えられます。
子どもが何かストレスを感じていないかを観察し、必要であればストレスを軽減できる対策を考えることが大切です。
家庭内感染を防ぐ方法(感染症が原因の場合)
子どもの腹痛は感染症によるものもあるため、日頃から予防をしましょう。
感染症予防対策の基本は、手洗いと消毒です。家族全員が定期的に手を洗い、清潔を保つことで感染のリスクを減らせます。消毒液を用いて頻繁に触れる場所(ドアノブ・テーブル・トイレなど)を清潔に保つのも効果的です。
子どもが感染症にかかっている場合は、使用した食器や衣類は別に洗うことをおすすめします。別々にして洗うことで、他の衣類への感染を防げます。
子どもの腹痛に関するよくある質問
腹痛を訴えている子どもへの対応について、よくある質問をまとめました。
便秘を軽くするために気を付けるべきことはありますか?
子どもの便秘を改善するためには、食事や生活習慣の見直しが大切です。食物繊維を多く含む食事や、十分な水分摂取を心がけてみてください。定期的な運動も便通を促す助けになります。
食欲がありません。無理にでも食べさせた方がよいですか?
子どもが体調を崩して食欲がない場合、無理に食べさせるのはやめましょう。無理に食べさせると吐いてしまう可能性があるため、脱水症状を予防するための水分補給を中心に行うのが有効です。水分と塩分を補給することを心がけ、少しずつ食べられるようになったら、消化のよい食事を与えましょう。
下痢や嘔吐の症状があります。入浴させてもよいですか?
下痢や嘔吐が続いている場合、子どもの体力が消耗している可能性があるため、無理に入浴させる必要はありません。入浴する代わりに、ぬるま湯で体を拭いて清潔を保つようにしましょう。体調が回復してから通常の入浴を再開するのがおすすめです。汗をかいた際は、ぬれタオルなどで体を拭くと気分がさっぱりします。
乳児です。腹痛を訴えるものの食欲はあります。欲しがるだけ母乳をあげてもよいですか?
腹痛があるにもかかわらず食欲がある場合、通常通り母乳を与えても問題ありません。ただし、一度に大量に摂取すると腹痛を悪化させる可能性があるため、少しずつ頻繁に与えるとよいでしょう。
腹痛は訴えていますが元気です。外遊びをさせてもよいですか?
子どもが元気で活動的ならば、軽い外遊びを許したくなります。ただし、腹痛がひどくなるような激しい運動は避け、体調を見ながら適度な活動に留めておくことをおすすめします。
子どもが腹痛を訴えている場合、体をあたためてあげた方がよいですか?
腹痛が続いている場合、冷えは症状を悪化させる可能性があります。適度に体をあたためて、腹痛の症状を和らげましょう。
腹痛は原因に応じて適切な対処を
子どもが腹痛を訴えているのは、親にとっても非常に心配な状況です。しかし、慌てずに冷静に対応することが何よりも大切です。親が落ち着いて対応することで、子どもに安心感を与え、腹痛の回復にもつながります。
本記事で説明したように、腹痛の原因は食べ物の問題から感染症、ストレスまでさまざまです。症状と原因をしっかりと見極めて、適切な対処をしてあげましょう。
おなかをあたためる、やマッサージをするなど、家庭でできる対策は多くあります。子どもにとって快適な環境を整えて、健康を見守ってみてください。
腹痛が続く場合、他の重篤な症状(高熱・ひどい嘔吐・元気がないなど)がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。