2023.09.11

下痢しているけれど元気な時の対応方法|1歳程度までの乳幼児の下痢について

「下痢だけど、機嫌はよい。このまま様子を見てもいい?」
「下痢をしている赤ちゃんに、いつも通りの離乳食をあげてかまわない?」

赤ちゃんが体調を崩すと、いろいろ迷ってしまう保護者の方も多いでしょう。

特に、1歳頃までの赤ちゃんは頻繁に体調を崩すので、そのたびにどう対応していよいか悩んでいませんか?

本記事では、赤ちゃんの下痢の原因や病院を受診する目安、離乳食を与える際の注意点を解説します。悩んだときの参考にしてください。

目次

下痢?うんちがゆるいだけ?赤ちゃんのうんちの見分け方を解説

ミルクや母乳、やわらかい離乳食を中心に栄養をとっている赤ちゃんのうんちは、もともとゆるいものです。

離乳食が始まる前に赤ちゃんが口にするのは液体だけなので、うんちも液体に近いゆるさです。

離乳食が始まって少しずつ固いものを食べるようになると、うんちも徐々に固くなり、卒乳頃には大人と同じような固形のうんちになります。

1歳頃までであれば、普段と回数が変わらず、うんちが少しゆるい程度なら問題ありません。

ただし、次のような場合は下痢です。

・いつもより回数が多い
・おむつからはみだすほど水っぽい

下痢かどうかを判断するときは、元気なときのうんちの回数や固さと比べてみましょう。

赤ちゃんが下痢をする原因

赤ちゃんが下痢をする原因には、いくつか考えられますが、よく見られる原因を解説します。

単一症候性下痢|下痢のみ・嘔吐なし・食欲があり元気な場合

単一症候性下痢は、下痢以外の症状が見られない下痢です。発熱や腹痛などはともなわず、食欲もあり、元気なのが特徴です。

特に感染症にかかっていたり、何か悪いものを食べたりしたわけではないので、様子を見ていてかまいません。

赤ちゃんは消化機能が未熟なので、少し食べ過ぎたり、水分をとりすぎたりしただけで、一時的におなかがゆるくなってしまいます。

本人が機嫌よく過ごせているなら、特に心配いりません。

おしりがかぶれやすくなるので、おむつかぶれ対策だけはしっかり行ってください。

ただし、下痢が1か月以上続いたり、体重が減ったりするようであれば、一度かかりつけの小児科を受診しましょう。

胃腸炎|嘔吐と発熱を伴うケース多数

嘔吐や発熱をともなう下痢の原因は、胃腸炎だと考えられます。

胃腸炎には、ウイルス性と細菌性があり、それぞれ次のような特徴があります。

  • ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)

ウイルスなどによって引き起こされる胃腸炎で、「おなかの風邪」や「吐き下し」といった呼び方をされることもあります。

人から人に感染するほか、ウイルスに汚染された食べ物から感染します。

代表的な原因ウイルス:ロタウイルス、アデノウイルス、ノロウイルスなど

  • 細菌性胃腸炎(食中毒)

腹痛や下痢のほか、発熱の症状がある胃腸炎です。嘔吐するケースもありますが、ウイルス性胃腸炎に比べると軽いことが多いようです。

細菌に汚染された食べ物が原因なので、食べ物が傷みやすい夏場は特に注意しましょう。

食事の前の手洗いはもちろん、食器・調理器具の消毒、食品の中心まで十分に加熱するなどが予防になります。

代表的な原因細菌:カンピロバクター、大腸菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌、黄色ブドウ球菌 など

食物アレルギー

特定の食べ物でアレルギー反応を起こし、下痢をするケースもあります。

一般的に赤ちゃんは消化機能が未熟で、免疫機能も不十分なため、食物アレルギーを起こしやすいといわれています。

卵や牛乳、大豆は食物アレルギーを起こしやすいので、これらを食べると必ず下痢をする場合は食物アレルギーを疑ってみましょう。

小児科やアレルギー科で詳しい検査が受けられます。

乳糖不耐症

乳糖不耐症(にゅうとうふたいしょう)は、牛乳などに含まれる乳糖(ラクトース)を消化する酵素「ラクターゼ」の分泌が少ないために起こる症状です。

乳糖不耐症の人が、牛乳など乳糖を含む食べ物・飲み物を口にすると、消化不良やおなかの不快感、腹痛、下痢、おならといった症状が出ます。

症状の出かたには個人差が大きく、少しずつ飲めば大丈夫という人もいれば、温めて飲むと平気という人もいます。

胃腸炎等で下痢が長引き、腸内細菌のバランスが崩れたあとに二次的に乳糖不耐症になることもあります。

一時的に母乳・ミルク以外の乳製品を控えることで症状は改善します。

またごくまれに、生まれつきラクターゼを持たない「先天性乳糖不耐症」の赤ちゃんもいるので、母乳や粉ミルクを飲むとすぐ下痢をしてしまう場合はかかりつけの小児科で相談してみましょう。

抗生物質など薬の影響

抗生物質など、薬の影響で下痢をすることがあります。

これは、腸内の細菌バランスが変わったり、腸の動きが激しくなったりするのが原因です。

薬の服用を止めれば自然と治るものなので、心配はいりません。

あまりに下痢がひどいときは、飲んでいる薬を処方した医師に相談してみましょう。

その他

このほか、インフルエンザや風邪でも下痢をすることがあります。

本人が機嫌よく過ごせているなら様子を見て構いませんが、嘔吐や発熱をともなう際は早めに医療機関を受診しましょう。

子どもに下痢が見られる場合の受診のタイミング

赤ちゃんが下痢をしている場合、医療機関を受診すべきかどうかの判断基準を解説します。

緊急性が高い下痢症状

次のような場合は、医療機関を受診しましょう。

  • 生後3か月以下で、38度以上の熱がある
  • 下痢の量が多い
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 機嫌が悪く、水分を受け付けない
  • 唇や口の中が乾いている
  • 6時間以上おしっこが出ていない
  • 繰り返し水のような下痢をしている
  • 繰り返し嘔吐している
  • 便の色が白っぽい
  • 便の色が黒く、粘度が高い
  • 便に血が混じっている
  • 強い腹痛を訴えている

便を持参するか、スマートフォンで写真に撮っておき、受診の際に医師に見せると診断に役立ちます。

下痢に加え嘔吐も見られる際は、嘔吐の頻度や間隔も記録しておくとよいでしょう。

しばらく様子を見ても問題ない下痢症状

下痢をしていても、元気があって機嫌もよく、食事・水分ともにしっかり取れているのであれば、1週間程度は様子を見ていて構いません。

しかし、下痢が1週間以上続く場合や嘔吐など別の症状が出てきた際は、吸収障害などの原因も考えられるので早めに医療機関を受診しましょう。

赤ちゃんが下痢をしているときの水分補給について

赤ちゃんが下痢をしているときは、脱水症状を避けるため、水分とミネラルを補うことが大切です。

体内に吸収されやすいベビー用イオン飲料や湯ざまし、麦茶、ほうじ茶などを、こまめに少しずつ飲ませましょう。

赤ちゃんが下痢をしているときの母乳やミルクについて

赤ちゃんが下痢をしているときも、いつもどおりの回数・頻度で授乳を行ってください。

飲みたがらないときは、1回の量を減らして回数を増やしてみましょう。

ただし、ミルクや牛乳の飲ませすぎには注意が必要です。下痢をしているときにミルクや牛乳を飲み過ぎると、二次性乳糖不耐症のリスクが高まります。

これは、下痢を起こした後、乳糖を分解する力が弱くなって起こるものです。

母乳は赤ちゃんが飲みたがるだけ飲ませて構いませんが、ミルクや牛乳などは、いつも与えている量より多くならないようにしましょう。

赤ちゃんが下痢をしているときの離乳食について

赤ちゃんが下痢をしているときは、離乳食はお休みしましょう。離乳食中期以降であれば、1段階前に戻してください。

消化の悪い物や脂っこい物、肉類、柑橘類の飲み物は消化器に負担をかけてしまうので避けるのが賢明です。

以下に、下痢をしているときに、おすすめの離乳食と避けるべき離乳食を紹介しますので、参考にしてください。

おすすめの離乳食

避けるべき離乳食

  • 野菜スープ
  • おもゆ
  • おかゆ
  • にんじん・かぼちゃ・じゃがいもなどの煮物
  • 豆腐
  • 白身魚・ひき肉・ささみ
  • すりおろしたりんごやにんじん
  • 冷たい物(ゼリーやアイスクリームなど)
  • 柑橘類(オレンジやグレープフルーツなど)
  • 脂肪の多い肉・魚類
  • 繊維の多い物(根菜類や海藻類、きのこなど)
  • 糖分の多い物(プリンや果物の缶詰など)
  • 脂質の多い物(チーズやバターなど)
  • 乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)

赤ちゃんが下痢をしているときのおむつ替えについて

赤ちゃんが下痢をしているときのおむつ替えは、こまめに行いましょう。

下痢は肌に刺激が強いので、放っておくとおしりがかぶれやすくなります。

おむつ替えの際は、下痢をふき取るだけでなく、できればシャワーなどで洗い流して清潔にしましょう。

おしりが濡れた状態でおむつを履かせるとかぶれやすくなるので、忘れずに柔らかいタオルなどでやさしく水分を拭き取ってください。

もし、おしりがかぶれる場合は、自己判断で市販薬を使用せず、なるべく早めに小児科または皮膚科を受診しましょう。

下痢のうんちには、細菌やウイルスが含まれていることも珍しくありません。家庭内感染を防ぐためにも、おむつ替えの後は念入りに手を洗いましょう。

使い捨ての手袋を使うのもおすすめです。

赤ちゃんが下痢をしているときのシャワー・入浴

赤ちゃんが下痢をしているときは、なるべくシャワーだけで済ませるようにしましょう。

入浴は体力を消耗します。体の汚れが気になるときは、蒸しタオルなどでやさしく拭いてあげるのがおすすめです。

症状がよくなってきて入浴できそうな場合は、次の点を守って入浴させましょう。

  • 他の家族が入った後で入る
  • 一緒に湯船に浸からない
  • 残り湯を洗濯などに使わない
  • バスタオルを共有しない
  • お風呂から上がったら塩素系漂白剤などでしっかり消毒する

特に、ノロウイルスなどのウイルスが原因で下痢をしている場合は、家庭内で感染を広げないためにも下痢が治まるまではシャワー浴で済ませてください。

赤ちゃんの下痢による家庭内感染を防ぐ方法

ウイルスや細菌が原因で下痢をしている場合には、対策を怠ると家庭内に感染が広がってしまうおそれがあります。

次のことを心がけて二次感染を防ぎましょう。

  • トイレに行った後やおむつ替えの後、食事の前などにしっかり手を洗う
  • 手や体、顔を拭くタオルは共用せず、できるだけ使い捨てのペーパータオルなどを使用する
  • 赤ちゃんが触れる場所をこまめに消毒する
  • おむつを処理するときは、便が乾燥しないうちに素早く処理する
  • おむつ替えの際は使い捨ての手袋やマスクなどを使用する
  • 汚物が付いた衣類や寝具は、洗濯機に入れる前に手洗い・消毒する

赤ちゃんの下痢に関するよくある質問

赤ちゃんの下痢に関するよくある質問を以下にまとめましたので参考にしてください。

赤ちゃんが下痢をしている場合、体を温めた方がよいのでしょうか?

赤ちゃんの下痢は、ほとんどが単一症候性下痢や胃腸炎によるものです。おなかを温めたからといって治るものではないので、無理に温める必要はありません。

ベビー用イオン飲料の買い置きがありません。他に飲ませてもよい飲み物はありますか?

湯冷ましや麦茶、ほうじ茶などがおすすめです。糖分の多いジュースは下痢を悪化させてしまうことがあるので避けましょう。

母乳で育てています。下痢はしていますが食欲はあり母乳を欲しがります。好きなだけ飲ませてもよいですか?

母乳は、赤ちゃんが飲みたいだけ飲ませて構いません。

赤ちゃんが下痢をしている時は外出を控えた方がよいですか?

下痢をすると、それだけで体力を消耗します。

ウイルス性や細菌性の下痢の場合、外出することで感染を広げてしまうおそれがあるので、できるだけ家で安静に過ごしましょう。

元気で食欲のある赤ちゃんには消化のよい離乳食を

赤ちゃんが下痢をしていても元気があって機嫌がよく、食欲もある場合は、あまり心配しなくてよいでしょう。

まずは、母乳やミルク、消化のよい離乳食を与えながら、様子を見てください。

離乳食を与えるときは、離乳食中期以降は一段階前に戻した献立を与えるようにしましょう。

下痢をしていると体の中の水分だけでなくミネラルも失われてしまうので、しっかり水分を補給しながら安静に過ごすことが大切です。

もし発熱や嘔吐などの症状が現れた際は、早めにかかりつけの医療機関を受診してください。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。