2023.09.08

下痢しているけれど元気な時の対応方法|2歳程度までの乳幼児の下痢について

子どもが下痢をしているけど元気があるなら、様子をみてもよいかと迷ったり、「何かの病気が隠れている?」と不安になったりすることもあるでしょう。

本記事では、子どもの下痢の原因や受診のタイミングについて解説します。家庭での対応方法や登園の目安なども記載しているので、参考にしてください。

目次

子どもの下痢の原因

子どもの下痢の原因はさまざまです。多くは、消化不良、胃腸炎、食物アレルギーなどが考えられます。以下でそれぞれ詳しく説明します。

消化不良|下痢のみ・嘔吐なし・食欲があり元気な場合

下痢の症状があっても、元気なら、一時的な消化不良が原因かもしれません。
2歳になっても、子どもの消化機能はまだ未熟です。食事が未消化のまま出てきてしまうケースもあるでしょう。

食物繊維も多く含む「きのこ類」や「海藻類」、「脂肪の多い魚や肉」や「揚げ物」などは、消化しにくいので下痢してしまうケースがあります。消化不良による下痢は一時的なものが多く、適切に休息し、栄養をとっていれば、自然と改善するでしょう。

しかし、下痢が何日も続く場合や他の症状が出た場合、医療機関を受診しましょう。

胃腸炎|嘔吐や発熱を伴うケースが多い

症状が下痢だけでなく、嘔吐や発熱を伴えば、胃腸炎が疑われます。これは、ウイルスや細菌によって、胃や小腸、大腸などに炎症が生じる疾患です。

「ウイルス性胃腸炎」は、人との接触や食物を通じて感染します。特にロタウイルスとアデノウイルスは、子どもの下痢や嘔吐の主な原因です。

「細菌性胃腸炎」は、一般的に食中毒と言われるものです。サルモネラ菌やカンピロバクター、大腸菌などの細菌が原因です。これらの細菌は食物を介して感染し、嘔吐や下痢、発熱を引き起こします。

どちらの胃腸炎も、下痢の他に嘔吐や発熱があるので、大量の水分や電解質が体外へ失われます。このため脱水症状になりやすいので注意が必要です。下痢や嘔吐が続いているようなら、医師の診断を受け、適切な水分補給と治療を行いましょう。

食物アレルギー

食物アレルギーは、体の免疫システムが特定の食物を異物と誤認し、過剰な反応を起こす状態です。典型的な症状としては、じんましん、かゆみ、ぜんそく、腹痛、下痢などがあります。

よくみられる食物アレルギーは、卵、牛乳、小麦、大豆、ピーナッツ、ナッツ、魚、貝類などに起因するものです。下痢をしたとき特定の食物を摂取していないか確認をしましょう。

食物アレルギーは、重篤な反応を引き起こすケースもあるため、じんましんやかゆみなど、疑わしい症状があればすぐに医師への相談が重要です。

子どもに下痢が見られる場合の受診のタイミング

子どもが下痢を起こすと、すぐに医師に診てもらいたくなるかもしれませんが、必ずしも早急に受診する必要はありません。いつ医療機関を受診すべきなのか、判断基準を説明します。

緊急性が高い下痢症状

以下の症状があるときは、すぐに医師の診断を受けてください。

  • 繰り返し嘔吐する
  • 3ヶ月未満の乳児で38度以上発熱している
  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 下痢の他に、機嫌が悪い、食欲がない、発熱、嘔吐、腹痛などの諸症状がみられる
  • 脱水症状がみられる
  • 下痢と一緒に嘔吐する
  • 水分が摂れない
  • 唇や舌が乾いている
  • 尿が半日以上出ない
  • 尿の量が少なく、色が濃い
  • 米のとぎ汁のような白色水様便が出る
  • 血液や粘液、黒っぽい便が出る
  • けいれんを起こす

子どもの様子をしっかりと確認し、医師に症状を正確に伝えられるようにしましょう。

しばらく様子を見ても問題ない下痢症状

一方、以下のような状況では、様子をみても問題ありません。

  • いつもより便はやわらかいが、下痢の回数が1日数回以内
  • 食欲がいつもと変わらず、水分がとれている
  • 熱がなく、機嫌もよく元気

このような症状でも、下痢が1週間以上続いたら、腸内の吸収障害なども考えられるので、医療機関の受診をおすすめします。

また、様子を見る期間中でも、子どもの状態が急に悪化したり新たな症状が出たりした場合、すぐに医療機関に受診してください。

子どもが下痢をしている時の水分補給について

下痢をしていると、脱水状態の危険があります。下痢が続くときには、積極的に水分補給を行いましょう。

水分補給は、少量ずつこまめにおこなうのが、重要です。また、経口補水液は体液とほぼ同じ浸透圧なので吸収効率が高く、脱水症状の改善に役立ちます。

子どもが下痢をしている時の食事について

下痢をしているときには、消化の良い食事を心掛けましょう。おすすめの食事と避けるべき食事を紹介します。

 

おすすめの料理・食品

避けるべき料理・食品

おかゆ、うどん

中華麺

煮た柔らかい野菜

繊維の多い野菜

バナナ、りんご

パイン、いちご、柑橘類

茶碗蒸し、たまごとじ

脂肪の多い魚や肉

プリン

ゆで卵

 

食欲がなければ、無理に食べさせる必要はありません。充分な水分を補給し、嘔吐がなければ、年齢に適した食事を再開してください。

子どもが下痢をしている時のシャワー・入浴

子どもの下痢は、お尻を洗って清潔を保ちましょう。不衛生な状態が続くと、かぶれてしまいます。

また、かぶれてしまったところを何度も拭くと、さらに悪化させかねません。そのため、拭くのではなく、お湯できれいに洗い流しましょう。皮膚への刺激を最小限に抑えられます。洗浄後は、乾かしてから、オムツかぶれ用の軟膏を塗るとよいでしょう。

さらに、家族が感染しないように、下痢の子どもは最後に入浴させましょう。浴室やバスタブは、入浴後に洗浄します。

子どもの下痢による家庭内感染を防ぐ方法

下痢の家庭内感染を防止するのに、最も基本的なのは、手洗いうがいの徹底です。特にトイレの後や便の処理後、食事や調理前には必ず手を洗いましょう。使用した調理器具は必ず熱湯か塩素系の消毒液できれいに洗いましょう。

また、タオルの共有を避けるために、ペーパータオルの使用もおすすめです。汚れた衣類はそのまま洗濯機に入れず、100倍ほどに水で薄めた塩素系漂白剤に5〜10分ほど浸してください。

子どもが下痢をしている時の過ごさせ方

ストレスや疲労が消化力を低下させるケースもあるので、下痢をしている子どもは、おだやかに、あまり体力を消耗しないよう過ごさせます。よく話を聞いてあげたり、絵本を読んであげたりして、穏やかに過ごしましょう。

また、元気があり水分補給ができていれば、気分転換に短時間の外遊びもできます。しかし、他の子どもとの接触は控えて、感染症予防に努めましょう。

子どもが下痢をしている時の登園基準

下痢の症状がある場合、登園するべきかどうかは、保育園や幼稚園の基準によります。まずは保育園や幼稚園へ確認しましょう。

一般的には、以下の症状があれば、登園を控えるべきとされています。

  • 24時間以内に2回以上の水様便がある
  • 食事や水分を摂ると下痢がある
  • 体温が平熱より高い
  • 朝に排尿がない

具体的な判断は、相談したうえで決めましょう。

子どもの下痢に関するよくある質問

子どもが下痢をしているとき、保護者は心配になったり疑問をもったりするものです。ここからは、よくある質問とその回答をまとめてみました。

下痢と軟便の違いは何ですか?

「下痢」とは、液状か、それに近い状態の便を指します。「軟便」は少し軟らかい状態の便を意味します。

子どもが下痢をしている場合、体を温めた方が良いのでしょうか?

子どもの下痢の主な原因はウイルスです。したがって、お腹を温めても下痢が治るわけではありません。寒い状況や冷たい飲食物が直接的な原因でない限り、特に腹巻きなどを使う必要はありません。

経口補水液は家庭でも作れますか?

経口補水液は自宅で作れます。1リットルの水に、40gの砂糖と3gの塩を混ぜ、レモン汁を少々加えてよく溶かしてください。

子どものお尻が下痢でただれてしまわないためにできることはありますか?

下痢によりお尻がかぶれることがあります。便が出るたびにすぐにオムツを交換し、座浴やシャワーで洗い流すことと、乾かして清潔に保つのが効果的です。

元気なのに下痢をしている子どもには消化の良い食事を

子どもが元気でも下痢の症状がある場合、多くは消化不良が考えられます。発熱や嘔吐を伴えば、胃腸炎、食物アレルギーの場合もあるでしょう。

下痢の際は、すぐに医療機関に連れて行きたくなりますが、必ずしも早急の受診が必要なわけではありません。子どもの様子をしっかりと観察して、適切に判断しましょう。本記事で紹介している「受診のタイミング」や「様子を見てもよい症状」を参考にしてください。

もし自宅での療養になれば、水分補給をこまめに行い、消化に良い食事を与えてください。元気な子どもでも下痢は体力を消耗するので、適切なケアを心掛けましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。