2023.09.05

子どもに発熱・嘔吐・下痢の症状が見られるときの対応方法|原因や受診のタイミングを解説

子どもに見られる発熱や嘔吐、下痢の症状ですが、「何が原因なの?」「どのタイミングで受診したらいいの?」と不安に思いますよね。

本記事では、子どもの発熱・嘔吐・下痢の原因や、受診のタイミングについて詳しく解説します。

家庭での対応方法についても紹介しているので参考にしてください。

目次

子どもの熱について|チェックすべき項目と原因

子どもの熱は、保護者にとって心配な症状です。ひと口に熱といってもさまざまな原因があるため、チェックすべき項目を確認しましょう。

発熱とうつ熱の違い

子どもの熱には、大きく分けて「発熱」と「うつ熱」の2種類があります。

発熱は、体が病原体に対抗して体温を上げる反応のことです。反応は免疫機能の一部であり、体が自身を守ろうとしている証拠です。

一方、うつ熱は外部温度に反応して体温が上昇する状態を指します。体温調節機能がうまく働かなくなると起こります。子どもは、体温調節機能が未熟なため、うつ熱を起こしやすくなるでしょう。

子どもの発熱でチェックすべきことと受診のタイミング

子どもが発熱したら、以下のポイントをチェックしましょう。

  • 生後3か月未満で38度以上の熱を出していないか
  • 顔色が悪くないか
  • 苦しそうではないか
  • 小鼻がピクピクして、呼吸が速くないか
  • 意識がはっきりしているか
  • 頻繁な嘔吐や下痢はないか
  • 不機嫌でぐったりしていないか
  • けいれんが起きていないか

このような症状がある場合は、緊急性が高いのですぐに医療機関を受診してください。

子どもが発熱する原因

子どもの発熱の原因は何か、具体的な症状はどのようなものかを理解すれば適切に対応できます。以下で、詳しく解説します。

一般的な風邪

一般的な風邪は、正式には「風邪症候群」といい、鼻やのどの急性炎症の総称です。風邪の原因となるウイルスなどが体内へ侵入することで、免疫抗体がウイルスと戦うために体温を上げています。

症状は主にくしゃみ、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、咳、たん、発熱などがあります。

急性中耳炎

急性中耳炎は、鼻咽頭に感染したウイルスが耳管を通って中耳に侵入して、炎症が引き起こされます。

化膿してできた「うみ」が中耳の空間にたまり、鼓膜を圧迫します。その結果、激しい痛み、発熱、耳が詰まった感覚などの症状が現れるでしょう。

炎症が続いて「うみ」が増えると、鼓膜が破れ、耳漏(耳から液体が出る状態)が生じる場合もあります。

はしか(麻疹)

はしかは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性発疹症で、高熱、上気道症状、目やに、発疹が出ます。

感染力は非常に強く、一人が感染すると家庭や学校などの集団内で流行する可能性が高くなります。肺炎や中耳炎、脳炎などの合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要な病気です。

プール熱(咽頭結膜炎)

プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症です。プールでの接触やタオルの共用により感染することもあるため、プール熱とも呼ばれます。

年間を通して発生しますが、特に6月末から夏季にかけて流行します。発熱(38〜39度)や結膜炎、のどの痛みといった症状が見られるでしょう。

溶連菌感染症

溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌という細菌がのどに感染することで発症します。

のどの痛みや発熱があり、ときには体や手足に発疹が出ます。咳や鼻水はほとんど出ません。しかし、口の中では、舌が苺のように赤くぼつぼつとし、のどの奥の扁桃部分に「うみ」が付きます。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、片側または両側の唾液腺の腫れを発症する、ウイルス感染症です。主な症状は、発熱とあご周りの腫脹です。

手足口病

手足口病は水疱性の発疹が出る、ウイルス性の感染症です。

手や足、口の中に2~3mmの水疱性の発疹ができます。発熱は3分の1の人に見られ、高熱にはなりにくい傾向があります。ほとんどの場合、数日で回復するでしょう。

水ぼうそう

水疱瘡(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。

症状は発熱から始まり、皮膚の表面が赤くなる発疹が見られます。その後、液体が含まれる水疱や「かさぶた」になり治癒します。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは、夏に流行する急性のウイルス性咽頭炎です。発熱の後に咽頭痛や赤みを感じ、直径1〜2mmほどの水疱が口の中にできます。

周期性発熱症候群(PFAPA)

周期性発熱症候群(PFAPA)は、生まれつきの自然免疫システムの反応が過剰になって発症する自己炎症性疾患です。原因や詳細な病態は、いまだ明らかにされていません。

主な症状は、周期的に発生する熱が上げられ、発熱期間は通常3〜6日間続きます。発熱以外に、アフタ性口内炎や頸部リンパ節炎、咽頭炎なども見られます。

発作は約3〜8週間ごとに繰り返され、発作と発作の間は無症状です。

川崎病

川崎病は、主に4歳以下の乳幼児が発症しやすい、原因不明の病気です。血管全体に炎症が生じて多様な症状を引き起こします。

高熱、両側の眼球結膜(目の白いところ)の充血、真っ赤な唇と苺のようにブツブツの舌、体の発赤疹、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れが主な症状で、これら6つの症状のうち5つ以上が見られることが多くあります。

子どもの発熱に対して家庭でとれる対策は?

子どもの発熱に対する家庭での対策を確認しましょう。

十分な水分補給

発熱すると体内の水分を失いやすくなり、脱水状態になる危険があります。

脱水症状を防ぐには、こまめな水分補給が必須です。様子を見ながら少しずつでもよいので、こまめに水分を摂らせてください。

水、ノンカフェインのお茶、イオン飲料、果汁などで水分補給を行いましょう。

こまめな体温調節

熱を出したときには、適切な体温調整を心がけます。

震えていたり手足が冷たくなっていたら、ブランケットを掛けたり室温を上げて温かくしてあげましょう。

一方、手足や顔が赤くなり体が熱を持っていると感じれば、室内を風通しをよくし、薄着にして熱を発散しやすくする必要があります。

汗をかいたらこまめに拭き取り、清潔な衣服に着替えさせてください。また、首やももの付け根、脇などを冷却パックや冷たい枕で冷やすのも効果的です。

子どもが拒まないように、無理のない程度で行いましょう。

子どもの嘔吐について|チェックすべき項目と原因

子どもの嘔吐についてチェックすべき項目や受診のタイミング、原因を確認しましょう。

子どもの嘔吐でチェックすべきことと受診のタイミング

子どもが嘔吐の症状が見られた場合、以下の症状が見られるかどうかチェックしましょう。

  • 元気がなく、ぐったりしている
  • 機嫌が悪い、食欲がない
  • 嘔吐の回数が多い
  • 血液やコーヒーかすの様な形状の物を吐いたとき
  • 血液の混じった便がある
  • 脱水症状が疑われるとき

この項目は緊急性が高いので、すぐに医療機関を受診しましょう。

子どもが嘔吐する原因

子どもの嘔吐は、以下のような原因が考えられます。

  • 一般的な風邪:熱のはじめに嘔吐するケースがあります。
  • ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症): 子どもの嘔吐や下痢の主要な原因の1つです。胃と腸がウイルスに感染し、炎症を起こします。ロタウイルスやノロウイルスが一般的な原因です。
  • 細菌性胃腸炎(食中毒): 摂取した食品が原因で引き起こされる胃腸炎の一種です。主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱です。
  • 食物アレルギー: 特定の食品に反応し、嘔吐などの症状を引き起こします。食事の後に頻繁に吐く、または皮膚や、顔のむくみがある場合、食物アレルギーの可能性があります。
  • 腸重積(ちょうじゅうせき): 腸の一部が隣接する腸に入り込み、内容物の通過や血流が阻害される病気で、生後3か月から2歳の子どもによく見られます。腸重積の症状は、突然の腹痛から始まります。
  • 自家中毒(ケトン血性嘔吐症): 風邪や疲労、過度の緊張等が引き金になり、急に顔色が悪くなり、頻繁に吐き気を訴える状態です。病気の発症が比較的急激で、明らかな原因もなく食欲不振、悪心・嘔吐、腹痛等を訴えます。
  • 頭を強打した場合(頭蓋内出血を起こした場合): 頭を打つとあまり重症でなくても吐くことがあります。嘔吐がみられたら必ず重症というわけではないが、頭を打ってから2日以内の嘔吐がある際は、医療機関を必ず受診してください。
  • 腸回転異常症(ちょうかいてんいじょうしょう): 胎生期において中腸が反時計方向に回転しながら腹腔内に還納される過程で発生する疾患です。症状としては、急性の胆汁性嘔吐、間欠的な嘔吐、腹痛が見られます。
  • 精巣捻転(せいそうねんてん): 精巣が急に自然にねじれてしまう病気です。症状は、陰嚢の痛み・腫れだけでなく、腹痛・鼠径部痛・嘔吐などの症状が出ることもあります。

子どもの嘔吐に対して家庭でとれる対策は?

子どもが嘔吐した場合、以下の対策を家庭で行うことができます。

  • 嘔吐意外の症状もチェックしておく
  • 嘔吐後うがいをする(できなければ口内の嘔吐物を取り除く)
  • 嘔吐後30分~60分後に吐き気がなければ、少しづつ水分を摂る
  • 落ち着いたら経口補水液などの水分を十分に摂取させる
  • 吐いたものがのどに詰まるのを防ぐために寝ている場合は横向きにする
  • 抱っこや優しい言葉をかけて精神的なケアを行う
  • 嘔吐物を処理した後は手洗い消毒をしっかりする

以上が、子どもの嘔吐に対して家庭で行える対策です。症状が重篤である場合や繰り返しの嘔吐が長時間続く場合には、医師の診断と指示を受けることが重要です。

子どもの下痢について|チェックすべき項目と原因

子どもの下痢について、気をつけるべき点やその原因、家庭での対策を具体的に解説します。

子どもの下痢でチェックすべきことと受診のタイミング

子どもが下痢になった場合、以下の症状が見られたら医療機関への受診が必要となります。

  • 元気がなくぐったりしている
  • 意識がなく、無反応や反応が鈍い状態が続いている
  • 下痢の以外に、機嫌が悪い、食欲がない、発熱、嘔吐、腹痛があるなどの諸症状が見られる
  • 脱水症状を起こしている(水分が摂れていない、唇や舌が乾いている、尿が半日以上でない、米のとぎ汁のような白色水様便が出る、血液や粘液、黒っぽい便が出る、けいれんを起こす)

これらの症状は緊急性が高く、いずれかが当てはまる場合はすぐに医療機関へ連絡しましょう。

子どもが下痢になる原因

子どもが下痢になる一般的な原因を紹介します。原因によって症状や対策が異なるため、具体的な内容を把握しておくと役立つでしょう。

  • ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症):子どもの嘔吐や下痢の主要な原因の1つです。胃と腸がウイルスに感染し、炎症を起こします。ロタウイルスやノロウイルスが一般的な原因です。
  • 細菌性胃腸炎(食中毒):摂取した食品が原因で引き起こされる胃腸炎の一種です。主な症状は嘔吐、下痢、腹痛、発熱です。
  • 食物アレルギー:特定の食品に反応し、嘔吐などの症状を引き起こします。食事の後に頻繁に下痢をする、または皮膚や顔にむくみがある場合、食物アレルギーの可能性があります。

子どもの下痢に対して家庭でとれる対策は?

子どもの下痢は、家庭での対策が重要です。以下の点に注意しながら対応しましょう。

  • 下痢によって体内から水分が失われるので、適度に水分補給をする
  • 食事は消化のいいものを選ぶ(食欲がない場合は無理に食べさせる必要はありません)
  • ウイルスや細菌が排泄物に含まれている場合が多いため、排泄物を適切な処理をする
  • お尻のただれを防ぐため清拭する

子どもの発熱・嘔吐・下痢に関するよくある質問

子どもの発熱・嘔吐・下痢について、保護者がよく抱く疑問や不安に対し、回答をまとめました。

子どもが発熱している場合、解熱剤を使用してもいいですか?

発熱は体がウイルスや細菌から身を守るための自然な反応です。そのため、解熱剤を無理に使用する必要はありません。

夜間や休日など医療機関を受診できない場面で、熱が高くて眠れない、食事がうまく摂れないなど、辛そうな症状がある場合だけ使用してください。

高熱を出すと脳に障害が残るというのは本当ですか?

発熱だけでは脳にダメージは生じませんが、熱を出す病気の中には、脳にダメージが現れる可能性のある疾患もあります。

発熱している場合、お風呂やシャワーは控えるべきですか?

高熱や体調不良の時は入浴を避けるべきです。しかし、体温が38度前後で元気であれば、汗を流す程度のシャワーなら大丈夫な場合が多いでしょう。

元気な時をみはからって、短時間で済ませましょう。

食欲がありません。無理にでも食べさせた方がいいでしょうか?

発熱時は、食欲が減退することがあります。無理に食事をさせるよりも水分補給をさせて、体調が回復してきたら徐々に食べられるものを与えましょう。

発熱・ 嘔吐・下痢の症状が見られる子どもと一緒に親兄弟が食事をして問題ありませんか?

感染症の拡散を防ぐために共食は控えるべきです。特に、ウイルス性の胃腸炎(ノロウイルスなど)の場合、嘔吐物や排便とともにウイルスが大量に排出されます。

これが直接的に、または間接的に口に入ることにより、感染が広がりやすくなります。

子どもの発熱・嘔吐・下痢にはチェックすべきポイントを押さえ適切な対応を

子どもの急な発熱・嘔吐・下痢の際は焦らず冷静に対応しましょう。

まずは子どもの具体的な症状を観察し、本記事の内容を参考に医療機関の受診を判断してください。不安がある場合や明らかな異変がある場合は、早めに医師に連絡しましょう。

また、子どもの症状は急に変化することもあるため、一貫した観察が重要です。発熱や嘔吐、下痢は体から水分を大量に失うので、脱水状態を防ぐためにも、定期的に水分を補給しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。