「子どもの熱が上がりきったサインは?」「熱が上がりきるまでにやるべきことは?」など、不安に感じる方も多いのではないでしょうか?
本記事では、子どもの発熱の原因や、熱が上がりきったサインを解説します。受診のタイミングも記載しているので、参考にしてみてください。
目次
子どもの熱について
子どもが発熱すると、親としては不安になるのは当然です。
しかし、子どもの熱について理解を深め、冷静に適切な対応をしなければなりません。以下で、子どもの熱を解説します。
子どもは熱を出しやすい
まず、子どもは熱を出しやすいことを理解しておきましょう。
熱を出しやすい理由は、子どもの免疫システムが関わっています。子どもは、生後6ヶ月まで母から受け継いだ免疫によって守られています。しかし、免疫は、生後6ヶ月までに徐々に減少するでしょう。
母からの免疫がなくなってから、子どもは自らの免疫を作り始めます。発熱は、病原体に対抗するための反応で、その過程で免疫を作っています。
発熱とうつ熱の違い
子どもの熱には、大きく分けて「発熱」と「うつ熱」の2種類があります。
発熱は、体が病原体に対抗して体温を上げる反応のことです。反応は免疫機能の一部であり、体が自身を守ろうとしている証拠です。
一方、うつ熱は外部温度に反応して体温が上昇する状態をいいます。体温調節機能がうまく働かないために起こります。子どもは、体温調節機能が未熟です。うつ熱を起こしやすいとされています。
熱を出すのはいけないこと?
熱を出すことは、基本的に悪いことではありません。体が病原体に対抗するために熱を出しているので、体を守るための自然な反応です。
ウイルスや細菌は高い温度に弱いので、発熱することで病原体と戦いやすい環境を作りあげています。
しかし、熱が長時間続いたり、子どもが苦しそうな様子を見せたりする場合は、医療行為が必要です。子どもの様子の確認が重要です。
子どもが発熱する原因
子どもの発熱の原因は何か、具体的な症状はどのようなものか、理解すれば適切に対応できます。ここでは、子どもが発熱する主な原因を詳しく解説します。
一般的な風邪
一般的な風邪は、正式には「風邪症候群」といい、鼻やのどの急性炎症の総称です。
前述しましたが、風邪の原因となるウイルスなどが体内へ侵入したので、体がウイルスと戦うために体温を上げています。
症状は主に、くしゃみ、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、咳、たん、発熱などがあります。
はしか(麻疹)
はしかは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性発疹症で、高熱、上気道症状、目やに、発疹が出ます。
感染力は非常に強く、一人が感染すると集団内で流行する可能性が高くなります。
はしかは、肺炎や中耳炎、脳炎などの合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要な病気です。
突発性発疹
突発性発疹は、乳幼児に発症する病気です。原因は、ヘルペスウイルスの一種であるHHV-6またはHHV-7です。
急な高熱の後、熱が下がったタイミングで発疹が現れます。昔は知恵熱といわれていた熱は、ほとんどが突発性発疹だろうといわれています。
プール熱(咽頭結膜熱)
プール熱(咽頭結膜熱)は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症です。
プールでの接触やタオルの共用により感染することもあるので、プール熱とも呼ばれます。
年間を通じて発生しますが、特に6月末から夏季にかけて流行します。発熱(38〜39度)や結膜炎、のどの痛みといった症状が見られるでしょう。
溶連菌感染症
溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌という細菌がのどに感染することで発症します。
のどの痛みや発熱があり、ときには体や手足に発疹が出ます。咳や鼻水はほとんど出ません。
しかし、口の中では、舌が苺のように赤くぼつぼつとし、のどの奥の扁桃部分に「うみ」が付きます。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、片側または両側の唾液腺の腫れを発症する、ウイルス感染症です。
主な症状は、発熱とあご周りの腫れです。
手足口病
手足口病は水疱性の発疹が出る、ウイルス性の感染症です。
手や足、口の中に2~3mmの水疱性の発疹ができます。発熱は3分の1の人に見られ、高熱は、あまり出ません。ほとんどの場合、数日で回復します。
水疱瘡
水疱瘡(水痘)は、水痘・帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。
症状は発熱から始まり、皮膚の表面が赤くなる発疹が見られます。その後、液体が含まれる水疱や「かさぶた」になり治癒するとされています。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、夏に流行する急性のウイルス性咽頭炎です。
発熱の後に咽頭痛や赤みを感じ、直径1〜2mmほどの水疱が口の中にできます。
周期性発熱症候群(PFAPA)
周期性発熱症候群(PFAPA)は、生まれつきの自然免疫システムの反応が過剰になって発症する自己炎症性疾患です。原因や詳細な病態は、いまだ明らかにされていません。
主な症状は、周期的に発生する熱が上げられ、発熱期間は通常3〜6日間続きます。発熱以外に、アフタ性口内炎や頸部リンパ節炎、咽頭炎なども見られます。
発作は約3〜8週間ごとに繰り返され、発作と発作の間は無症状です。
川崎病
川崎病は、主に4歳以下の乳幼児が発症しやすい、原因不明の病気です。
血管全体に炎症が生じて多様な症状を引き起こします。高熱、両側の眼球結膜(目の白いところ)の充血、真っ赤な唇と苺のようにブツブツの舌、体の発赤疹、手足の腫れ、首のリンパ節の腫れが主な症状で、これら6つの症状のうち5つ以上が見られます。
その他
今まで説明した病気の他にも、熱の原因は、大人と同じインフルエンザや肺炎、気管支炎、髄膜炎なども考えられます。
熱と咳が続いている場合は、念のため病院で受診しましょう。
発熱と受診のタイミング|緊急性の高い場合は?
子どもの発熱は、症状や様子の確認が重要です。特に以下の症状が見られた場合は、緊急性が高いと判断し、すぐに医療機関を受診してください。
- 生後3ヶ月未満で38度以上の熱が出ている
- 小鼻が動き呼吸が速いとき
- 意識がはっきりとしていないとき
- 頻繁な嘔吐や下痢があるとき
- 不機嫌でぐったりしているとき
- けいれんは5分以上おさまらないとき
このような症状の場合、落ち着いて冷静に対処しましょう。夜間や休日であっても、救急外来を受診してください。
緊急性の低い発熱への対処|熱が上がりきるまでの時間と熱が上がりきったサイン
緊急性の低い発熱への対処や熱が上がりきるまでの時間と、熱が上がりきったサインについて説明します。
緊急性が低い場合は熱が上がりきるまで待つ
前章で解説した、緊急性の高い症状がなければ、熱が上がりきるまで待ちましょう。なぜなら、発熱は体が病原体と闘う一環であり、熱が上がることで免疫システムが活性化するためです。
解熱薬などを使用して、無理に下げると、免疫反応を抑制してしまう恐れがあります。しかし、本人がしんどそうな場合は、無理をさせず解熱剤を使用してよいでしょう。
熱が上がりきるまでの時間
熱が上がりきるまでの時間は、病気の種類や年齢により大きく変動します。
一般的な「風邪」の場合、1〜2日間で39〜40度の高熱が出ることもあります。しかし、ほとんどの場合は3〜4日で熱が下がるでしょう。
熱が上がり途中であるサイン
熱が上がり途中であるサインは、以下が挙げられます。
- 手足が冷たい
- 寒がっている
- 汗をかいていない
熱の上がり始めは、末梢の血管が収縮し、血流が減少するため、寒がる傾向が見られるでしょう。
熱が上がりきったサイン
熱が上がりきったサインは、以下の通りです。
- 体全体が熱い
- 汗をかいている
- 暑がる
熱が上がりきると、体が熱くなり汗をかき始めます。熱が発散しやすいように対策をしましょう。
熱が上がり途中のときと熱が上がりきったときの対応
熱が上がり途中の状態と上がりきった状態では、対応方法が異なります。それぞれの状況での適切な対応方法を解説します。
熱が上がり途中のときの対応
発熱が始まり、熱が上がり途中のときは、解熱薬の使用を避けましょう。体は熱を出すことで自己防衛メカニズムを働かせています。
寒気を感じていれば、ブランケットを掛けたり、部屋の温度と湿度を調節したりして、体温を調節してあげましょう。
熱が上がりきったときの対応
室内を風通しよくし、熱が発散しやすい薄着にすることをおすすめします。
汗はこまめに拭き取り、首やももの付け根、脇などを冷却パックや冷たい枕で冷やすと効果的です。しかし、子どもが拒んだら、無理に行わないようにしましょう。
脱水症状にも注意が必要で、こまめな水分補給が重要です。子ども用イオン飲料、麦茶、湯冷ましなどで水分補給を行いましょう。
子どもの発熱に関するよくある質問
子どもの発熱に関するよくある質問をまとめました。
子どもが熱を出している場合は入浴させない方がよいですか?
子どもの体調や体温によって判断しましょう。
元気があり、微熱程度なら問題ありません。しかし、熱が高い場合や体調がすぐれない場合は、体力を消耗するため避けるべきです。
高熱を出すと脳に障害が残るのは本当ですか?
一般的に、熱のみの症状で脳にダメージを与えることはまれです。しかし、髄膜炎、急性脳炎・脳症などの病気は、脳にダメージを残す可能性があります。
熱の高さで判断せず、子どもの様子を確認しましょう。
食欲がありません。無理にでも食べさせた方がよいでしょうか?
発熱時は、食欲が減退することがあります。
無理に食事をさせるよりも、水分補給をして、体調が回復してきたら徐々に食べられるものを与えましょう。
夜は高熱を出していましたが、朝になったら下がっていました。登園させてもよいですか?
24時間以内に38度以上の発熱があった場合や、解熱薬を使用している場合は、自宅で過ごしましょう。
子どもの発熱はポイントを押さえ適切な対応を
子どもの発熱は成長過程で一般的な現象であり、自身の免疫を作るために必要なプロセスです。
発熱は、体が病原体に対抗する反応の一部です。子どもが発熱しても、緊急な症状がなく元気があるようなら、無理に熱を下げずに自然に任せることも大切でしょう。
発熱の途中であるサインは、以下が挙げられます。
- 手足が冷たい
- 寒がっている
- 汗をかいていない
熱が上がりきったサインは、以下の通りです。
- 体全体が熱い
- 汗をかいている
- 暑がる
子どもの発熱は、症状や様子の確認が重要です。
本記事で紹介した緊急性が高い症状が見られたら、すぐに医療機関を受診してください。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。