喘息(ぜんそく)は、呼吸をするときにゼイゼイ・ヒューヒューといった特徴的な音が聞こえたり、呼吸がしにくくなったりする疾患です。
子どもだけでなく大人もかかる疾患ですが、各々で症状と原因に違いがあります。
本記事では、小児気管支喘息と大人の喘息の違いを解説するとともに、小児気管支喘息の症状を抑える方法を紹介するので、参考にしてみてください。
目次
小児気管支喘息と大人の気管支喘息の違い
小児気管支喘息と大人の気管支喘息の違いは、主な症状と発作が起きる原因です。
それぞれの違いは表のとおりです。
小児気管支喘息 | 大人の気管支喘息 | |
主な症状 |
|
|
原因 |
|
|
発症する時期 |
|
|
治りやすさ |
|
|
子どもが発症する小児気管支喘息とは
小児気管支喘息は、80%が乳幼児期までに発症し、罹患者の90%はアレルギーが原因のアトピー型とされています。
発作が出ていないときでも常に気道が炎症を起こしており、少しの刺激で気道が狭くなるため、喘鳴や呼吸困難といった発作が起こります。
大人の喘息とは異なり、成長するにつれて症状が落ち着きやすく、寛解(薬を服用しなくても発作が落ち着いている状態)することも少なくありません。
大人が発症する気管支喘息とは
大人が発症する気管支喘息は、小児気管支喘息に比べて非アレルギー性が原因になることが多いとされています。
喘息の全割合のうち、アレルギーが原因なのは約6割ほどとされ、残りの4割は原因となるアレルゲンが見つからない非アレルギー性喘息です。
症状や発作が起こるメカニズムは小児気管支喘息と同じですが、寛解することは少なく、長期にわたって上手に付き合っていかなければならないケースが多いと言われています。
大人になってからはじめて喘息に罹患する人が多いのも、大人の気管支ぜんそくの特徴です。
小児気管支喘息の主な症状
小児気管支喘息の主な症状は、次のとおりです。
- 呼吸困難(息苦しく、十分な呼吸ができない)
- ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴
- 遊んだり運動したりした後に咳こむ
- 運動時の激しい息切れ
- 息を吸うときに胸がへこむ(陥没呼吸)
3歳くらいまでの乳幼児の場合、4歳以上の子どもと少し症状が異なるケースがあります。
特に乳児は気道が狭いため、風邪などでも「ゼーゼー・ヒューヒュー」といった音が聞こえやすく、喘息との見分けるのは簡単ではありません。
乳幼児の喘息では、激しい咳や喘鳴だけでなく次のような症状も現れやすいので、赤ちゃんの「苦しい」サインを見逃さないようにしましょう。
- ミルクや母乳を飲まなくなる
- 咳こんで眠れない
- 顔や唇の色が悪くなる
- 機嫌が悪くなって泣き叫ぶ
- 激しく咳こみ、嘔吐する
- 呼吸が速い
- 息を吐くときに喘鳴やウーウーといった唸り声が聞こえる
- 息を吸うときにのどや胸がへこみ、小鼻が開く
- 胸の動きがいつもと違う
赤ちゃんの喘息は、急に悪化することも少なくありません。
いつもと少しでも様子が違うと感じたら、早めに医療機関を受診してください。
重症化すると、気道の炎症が悪化してさらに呼吸がしにくくなったり、発作が起こりやすくなったりします。
小児気管支喘息の症状が出やすいタイミング
小児気管支喘息の発作は出やすいタイミングがあります。
次のようなときは注意が必要です。
- たくさん会話した後
- 激しい運動中や運動した後
- 横になったとき
- 夜から朝にかけて
- 季節の変わり目
- 風邪をひいたとき
- 天気がよくないとき
- 喘息の原因となる物質に触れたとき
喘息の原因や、発作が出やすいタイミングを知って対策をすれば、喘息が悪化するのを防ぐことができます。
喘息発作が起きる原因
小児気管支喘息の発作が起きる原因は、主に次の2つです。
- アレルゲンや風邪などのウイルスによる気道の炎症悪化
- 運動や冷たい空気などの刺激
喘息の子どもの気道は、常に炎症が起きて敏感になっています。
そのため、少しの刺激でも発作が起きてしまうので注意しましょう。
発作が起きると、炎症が悪化して気道が狭くなり、息がしにくくなったり咳が止まらなくなったりします。
特に、空気が冷たくなる時期はマスクを着用するなど、気道に刺激を与えないような工夫が大切です。
小児気管支喘息の治療方法
小児気管支喘息の治療は、発作がない状態(コントロールができている状態)をキープするために行います。
その際に用いられやすいのが、次の3つの薬です。
- ステロイド吸入薬
気道の慢性的な炎症を抑える薬です。毎日定期的に使用することで、発作を起こしにくくします。
- β2刺激薬
交感神経を刺激して、狭くなった気管支を広げるための薬です。
発作が起きたときに使用する「短時間作用β2刺激剤」と、毎日定期的に使用する「長時間作用性β2刺激薬配合剤」があります。
- 経口抗アレルギー薬(ロイコトリエン)
気管支を収縮させるのに関わっている「ロイコトリエン」という物質の働きをブロックする薬です。
小児気管支喘息の治療は、これらの薬を組み合わせて行います。
医師が1人ひとりの発作の程度や頻度に合わせて選択するので、治療について不安なことやわからないことがあれば、まずは医師に相談してみましょう。
小児気管支喘息の子供の運動制限
体を動かすことは、子どもの発育には欠かせないものです。
小児気管支喘息になった場合は、予防薬を使うことで、発作をコントロールしながら運動ができるように対処します。
ただし、運動することで喘鳴や咳が出る、呼吸が苦しくなるような「運動誘発性発作」が起きやすい場合は、運動前に医師に相談しましょう。
運動誘発性発作の有無は、普段の喘息のコントロールがうまくいっているかが強く反映されます。
運動すると発作が出やすくなるのであれば、普段のコントロールがうまくいっていないのかもしれません。
まずは普段の生活の中で、喘息をうまくコントロールできるように努めましょう。
運動には、喘息発作を起こしやすいものとそうでないものがあります。
歩行や水泳は発作が起きにくいとされているので、まずは負担のかかりにくい運動から徐々に体を慣らしていきましょう。
小児気管支喘息の症状を抑えるためのポイント
小児気管支喘息の症状を抑えるには、次のことを心がけましょう。
- 同居家族はタバコを吸わない
- 煙から離れる
- ダニ対策を心がける
- イヌやネコを飼わない
同居家族はタバコを吸わない
小児気管支喘息の治療には、家族の協力が必要です。
タバコを吸っている人は、禁煙に努めましょう。
タバコの煙は、喘息の発作を誘発するだけでなく、薬の効果も低下させます。
喫煙者本人の健康にもさまざまな悪影響があるので、ぜひこの機会に禁煙してみてください。
煙から離れる
花火や線香などの煙も、喘息の発作を誘発します。
できるだけこれらの煙からは離れるようにしてください。
キャンプファイヤーやバーベキューなどでは、風上にいるようにしたり、口元をマスクやハンカチで覆ったりすることで刺激を和らげられるでしょう。
ダニ対策を心がける
ダニによってアレルギーが引き起こされる場合は、ダニ対策を念入りに行ないましょう。
ダニは、死骸やフンもアレルゲンになり得ます。
ダニ対策の基本は、布団の掃除です。
ダニのエサとなる食べこぼしやフケ、垢は掃除機でしっかりと取り除いてください。
また、ダニは室温20度・湿度60%以上の環境で最も繁殖しやすくなります。
布団はときどき天日干しをしたり、乾燥機にかけたりして、ダニが繁殖しにくい環境を整えるのも効果的です。
イヌやネコを飼わない
イヌやネコは、飼い始めたときは症状がなかったとしても、数年後にアレルギーを発症する場合があります。
小児気管支喘息の子どもがいる家庭では、イヌやネコなど毛のある動物の飼育は控えましょう。
しばらく飼った後で症状が出たからと手放すのは容易ではありません。
小児気管支喘息は成長とともに寛解するケースも見られるので、飼いたい場合は喘息が快方に向かうまで待ってから飼うとよいでしょう。
よくある質問
小児気管支喘息に関するよくある質問をまとめました。
喘息への理解を深めるのに役立ててください。
小児気管支喘息と気管支炎の違いは?
気管支炎も喘息も、気道に炎症が起こる疾患です。
しかし、気管支炎は一過性で、2週間ほどで軽快するケースが多いとされています。
一方、喘息は慢性的な炎症なので、発祥から2週間以上経っても咳が出る・息苦しいといった症状が消えません。
小児気管支喘息と気管支喘息の見分け方は?
小児気管支喘息と気管支喘息の見分け方は、発症年齢と治りやすさです。
小児気管支喘息は80%が乳幼児期までに発症するのに対し、気管支喘息は大人になってから初めて発症する人が多いといわれています。
小児気管支喘息は成長に合わせて症状が落ち着き、寛解することが多い一方で、気管支喘息は長く付き合っていかなければならない慢性疾患です。
喘息でしてはいけないことは?
子どもが喘息と診断されたら、同居をしている家族は禁煙に努めましょう。
また、日常生活ではダニなどのアレルゲンを減らす工夫も行ってください。
運動は、喘息が上手にコントロールできているなら無闇に制限する必要はありません。
症状の程度やコントロールの状況は個人差があるので、まずは主治医に相談してみましょう。
まとめ
激しい咳が出たり、息が苦しくなったりする喘息は、決して珍しい疾患ではありません。
しかし、軽く考えていると、命にかかわることもあります。
小児気管支喘息は大人の喘息と違い、成長にともなって寛解することも珍しくないので、本人と家族、医師の3人4脚で気長に治療を続けましょう。
もし、子どもの咳が長引いている・息苦しさを訴えることがある場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。