生後6ヶ月から3歳頃まで予防接種が続くため、中には「どれを受けたのかわからなくなってしまった」「うっかりしていて、受けさせるのを忘れてしまった」という保護者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、2歳までに受けるべき予防接種とそのスケジュールなどを解説します。受け忘れたときの対応も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
予防接種における定期接種と任意接種の違いは?
予防接種には定期接種と任意接種の2種類があります。
定期接種は、予防接種法で「誰もが受けるべき予防接種」に定められているもので、基本的に無料で受けられます。
一方、任意接種は個人の意思で接種するかどうかを決められる予防接種です。費用は自己負担ですが、自治体によっては助成を行っている場合もあります。
また、任意接種にはムンプスワクチンやインフルエンザワクチンも含まれるため、重要度は定期接種のワクチンと変わりません。
重篤な病気にかかるのを防ぐためにも、できるだけ受けられるワクチンはすべて接種するようにしましょう。
受けていなければ急いで接種を!2歳までの予防接種スケジュール
以下では、2歳までの予防接種スケジュールを解説します。
今までに接種すべきワクチンを接種していなかったとしても、2歳までならまだ接種できる可能性があります。本来接種しておくべきタイミングに接種できていなかった人は、できるだけ早めに予防接種を受けましょう。
2歳までに接種しておいたほうがよい予防接種は次のとおりです。
- インフルエンザ菌b型(ヒブ)
- 肺炎球菌(PCV13)
- B型肝炎
- 四種混合(DPT-IPV)
- BCG
- 麻疹・風疹混合(MR)
- 水痘
- おたふくかぜ
- ロタウイルス
定期接種:インフルエンザ菌b型(ヒブ)
インフルエンザ菌b型による感染症を防ぐ不活化ワクチンです。予防接種を受けないまま感染すると、肺炎や敗血症などを発症し命にかかわることがあります。
本来予防接種を受けるべき時期は、生後2ヶ月~1歳までです。この間に4回受ける必要があります。
しかし、もし打ち忘れていた場合、5歳までなら定期接種が受けられるので、早めにかかりつけの医療機関や自治体に相談しましょう。
定期接種:肺炎球菌(PCV13)
13種類の肺炎球菌血清型に対する抗体を作る不活化ワクチンです。肺炎球菌に感染すると、髄膜炎などの重い病気になることがあります。
予防接種を受けるのに適した時期は、生後2ヶ月〜1歳3ヶ月までです。この間に4回接種します。
忘れていた場合、5歳までは定期接種として打つことが可能です。
定期接種:B型肝炎
B型肝炎の予防や、B型肝炎の母子感染を防ぐための不活化ワクチンです。もしB型肝炎ウイルスに感染してしまうと、慢性肝炎から肝硬変・肝臓がんなどを発症するケースがあります。
本来なら生後2~8ヶ月にかけて3回接種しますが、未接種の場合は1歳まで定期接種が可能です。1歳以降は任意接種になるので、費用の自己負担が発生します。
定期接種:四種混合(DPT-IPV)
四種混合ワクチンは、ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ(急性灰白髄炎)を予防するための不活化ワクチンです。
第1期として、生後2~18ヶ月の間に4回接種します。このとき接種していなかったとしても、7歳6ヶ月までは定期接種として打つことが可能です。
第2期は、11~13歳未満のタイミングで二種混合ワクチンとして接種します。
定期接種:BCG
BCGは、結核を予防するための生ワクチンです。
通常、生後1歳までに1回接種します。多くの人は生後5~8ヶ月で接種しますが、この間に接種できなかった場合1歳までなら定期接種として接種が可能です。
1歳以降は任意接種に切り替わり、費用が自己負担となります。
定期接種:麻疹・風疹混合(MR)
麻疹・風疹混合(MR)ワクチンは、麻疹(はしか)と風疹(三日はしか)を予防する生ワクチンです。麻疹は重篤な合併症を引き起こしやすく、先進国であっても1,000人に1人が死亡するとされています。
風疹も麻疹同様に強い感染力を持ち、重篤な合併症を引き起こしやすい病気です。
麻疹・風疹混合(MR)ワクチンは、1~2歳未満のタイミングで1回目、5~7歳未満のタイミングで2回目を接種します。
定期接種の推奨時期以外に接種する場合は任意接種となり、費用の自己負担が発生します。
定期接種:水痘
水痘は水疱瘡を予防するための生ワクチンです。子どもが水疱瘡にかかると、熱性けいれんや肺炎、気管支炎などを発症することがあります。
水痘ワクチンを接種するタイミングは、生後12~24ヶ月の間に2回です。1回目の接種から3ヶ月以上(通常は6~12ヶ月)空けて2回目を接種します。
このタイミングで接種できなかった場合、3歳までなら定期接種として接種が可能です。それ以降は任意接種となります。
任意接種:おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン(1回目)
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンは、おたふくかぜを予防するための生ワクチンです。任意接種ですが、おたふくかぜは難聴や脳炎といった重篤な合併症を引き起こし、ときに障害を残すことがあるので、予防接種を打ってしっかり感染を防ぎましょう。
ワクチンの有効性は、おおむね90%以上とされています。接種のタイミングは、1~1歳3ヶ月の間です。任意接種なので、この時期以降も打つことができます。
任意接種:三種混合(DPT)ワクチン
三種混合(DPT)ワクチンは、ジフテリア・百日咳・破傷風を予防するための不活化ワクチンです。現在この3つの疾患に加えてポリオも予防する四種混合ワクチンが任意接種になっています。
しかし、百日咳に対する予防効果は4~10年程度で低下するとされているので、予防効果を持続させたいなら、就学前または10代で三種混合(DPT)ワクチンの追加接種を検討しましょう。
このワクチンは、5~6歳(就学前)のタイミングで麻しん・風疹ウイルスと同時に1回、11~12歳のタイミングで定期接種の二種混合(DT)ワクチンの代わりに接種します。
場合によって接種が必要:ポリオ(急性灰白髄炎)ワクチン
これまで四種混合ワクチンを接種したことがない場合は、三種混合(DPT)ワクチンまたは二種混合ワクチンに加えて、不活化ポリオワクチンの接種が必要です。
ポリオはポリオウイルスによって発生する疾患で、5歳以下の子どもがかかることが多く、手足に麻痺が残ることもあります。
ポリオ単独のワクチンを接種する場合、初回接種は生後3~12ヶ月の間に20~56日の間隔を空けて3回、3回目の接種を行ってから12~18ヶ月の間に1回の追加接種を行います。
7歳6ヶ月になるまでは、何らかの理由でポリオワクチンの接種を受けそびれた人も、定期接種として不活化ポリオワクチンの接種が受けられます。
時期を過ぎると接種不可:ロタウイルス
ロタウイルスワクチンは、ロタウイルスによって引き起こされる胃腸炎の重症化を防ぐ生ワクチンです。注射ではなく、飲み薬で接種します。
ロタウイルスによる胃腸炎は、5歳までにほぼすべての子どもが罹患するとされていますが、重症化すると命にかかわることもあるため予防が肝心です。
ロタウイルスワクチンは1価と5価の2種類があり、種類によって接種スケジュールが異なります。
1価ワクチンは、生後2~4ヶ月の間に2回接種するのが一般的ですが、生後5ヶ月半を過ぎると接種できなくなります。
5価ワクチンは、生後2~5ヶ月の間に3回接種します。こちらは生後7ヶ月半を過ぎると接種できなくなるので、定期接種推奨期間内に行くのを忘れないようにましょう。
2歳以降に受ける予防接種
ここからは2歳以降に受ける予防接種のスケジュールを解説します。
予防接種は1歳までに受けるものと3歳以降に受けるものが多く、2歳のときに受けなければならないものはありません。
2歳以降に受ける予防接種のスケジュールも踏まえて、子どもに合わせた予定を立てましょう。
- 定期接種(男女共通):日本脳炎ワクチン(3~4歳/9~13歳)
日本脳炎を防ぐ不活化ワクチンです。
1期は3~5歳の間に3回、2期は9~12歳の間に1回の合計4回接種します。
1期の定期接種推奨期間は7歳6ヶ月、2期は13歳までです。
7歳6ヶ月以降9歳未満と13歳以降は任意接種となります。
- 定期接種(男女共通):麻疹・風疹混合(MR)ワクチン(5~6歳)
麻疹・風疹混合(MR)ワクチンの2期です。5~7歳(小学校入学前の1年間)に1回追加接種を行います。
2歳以降5歳未満、7歳以降の接種は任意接種です。
- 定期接種(男女共通):二種混合(DT)ワクチン(11~13歳)
二種混合(DT)ワクチンはジフテリアと破傷風を予防するワクチンです。
四種混合ワクチンの追加接種として、11~13歳の間に1回接種します。
- 任意接種(男女共通):3種混合(DPT)
3種混合ワクチンは、ジフテリア・百日せき・破傷風を予防する不活化ワクチンです。2012年以前は定期接種でしたが、現在は任意接種の予防接種とされています。
3種混合(DPT)は、四種混合を接種した後の追加接種として、5~7歳(小学校入学前)のタイミングで1回接種します。
11~13歳未満のタイミングで、二種混合ワクチンの代わりに接種してもかまいません。ただし二種混合ワクチンの場合は無料ですが、三種混合ワクチンの場合は自費になります。
- 定期接種(女子のみ):子宮頸がん予防(HPV)ワクチン(12~16歳)
子宮頸がんや尖圭コンジローマなど、HPV(ヒトパピローマウイルス)によって引き起こされる病気を予防するためのワクチンです。
2価・4価・9価の3種類のワクチンがあり、いずれも小学6年生から高校1年生までが定期接種の対象になっています。
9価のワクチンのみ、初回の摂取時期によって接種回数が2回または3回に変わります。
- 任意接種:おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン(5~6歳)
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンの2回目は、5~6歳の間(小学校入学前の1年間)に接種します。MRワクチンと同時に接種するのが一般的です。
任意接種のワクチンなので、どのタイミングで接種しても費用の自己負担が発生します。
- 任意接種:インフルエンザワクチン(毎年)
季節性インフルエンザのワクチンです。生後6ヶ月以上13歳未満の子どもは2回、13歳以上は1回接種します。
インフルエンザは例年12~4月にかけて流行し、1月末~3月上旬に流行のピークを迎えるため、12月中旬までにワクチン接種を終えるのが望ましいでしょう。
予防接種が受けられるようになる時期は自治体や医療機関によって異なるので、10月頃からかかりつけの医療機関に相談することをおすすめします。
予防接種を受ける際の間隔は?
予防接種を受けるときは、間隔を空ける必要があります。
空けるべき間隔は次のとおりです。
- 生ワクチンを注射した後に別の生ワクチンを接種する場合:27日以上
(代表的な生ワクチン:麻疹・風疹混合(MR)、水痘、BCGなど)
- 同じ種類のワクチンを複数回接種する場合:ワクチンによって異なる
(代表的な複数回接種のワクチン:ロタウイルス、ヒブ、肺炎球菌など)
不活化ワクチンを注射した後や、経口生ワクチンを接種した後に別なワクチンを接種する場合、接種間隔に制限はありません。
予防接種にかかる費用は?
予防接種の費用は、定期接種のワクチンに関しては基本的に無料です。しかし、任意接種のワクチンについては、自己負担が発生します。
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンは1回4,000~6,000円、インフルエンザワクチンは1回3,000~5,000円程度です。
任意接種のワクチンの費用は、助成が受けられることもあります。詳しくは住んでいる自治体に問い合わせてみましょう。
子どもが予防接種を受けるときの流れは?
子どもが予防接種を受ける際の流れを説明します。
定期接種の場合
定期接種を受けるには、自治体が発行する予診票または接種券が必要です。自宅に予診票(接種券)が届いたら、必要事項を記入して医療機関または集団接種会場に向かいましょう。
予診票(接種券)のほか、保険証や母子手帳なども忘れずに持参してください。
予防接種を受けたあとはしばらくその場で待機し、体調の変化などをチェックします。15~30分程度しても体調に変化がなければ帰宅してかまいません。
任意接種の場合
任意接種の予防接種は、自治体から予診票や接種券が送られてくることはありません。そのため、予防接種を行っている医療機関を探して予約する必要があります。
かかりつけの医療機関で予防接種が受けられるならよいですが、医療機関によってはワクチンを取り寄せるのに時間がかかったり、予防接種を実施していなかったりすることがあるので、まずは問い合わせてみましょう。
予約ができたら、あとは医療機関の案内に従って受診し、予防接種を受けてください。
2歳以前の予防接種に関するよくある質問
2歳以前の予防接種に関するよくある質問をまとめました。
体質的に予防接種が受けられないケースはありますか?
持病やアレルギーがある場合は、予防接種を受けられないことがあります。詳しくはかかりつけの医師に相談しましょう。
うっかり接種させるのを忘れてしまいました。どこに申し出ればよいですか?
定期接種の場合は、まず住んでいる自治体の健康福祉課に申し出ましょう。自治体によっては、申請することで無料で予防接種が受けられることもあります。
住んでいる自治体の担当窓口がわからない場合は、かかりつけの医療機関に相談してみましょう。
子どもが泣いて予防接種(定期接種)を嫌がります。もっと大きくなってから受けさせればよいでしょうか?
定期接種は、ワクチンごとに定められた接種期間があります。その期間より後に接種した場合、免疫が付くのが遅くなって重篤な病気にかかったり、任意接種扱いになって費用の自己負担が発生したりします。
定期接種の予防接種は、できるだけ指定された期間に受けるようにしましょう。
子どもに予防接種のことをどのように伝えたらよいでしょうか?
なんのために予防接種をするのかをわかりやすい言葉で伝えましょう。そのうえで、「少し痛いけど、一緒に頑張ろうね」と励ましてあげてください。
「痛くないから大丈夫」といった嘘や、「悪いことをしたら注射してもらうよ」と脅かすような言動は避けましょう。
子どもの年齢によっては、絵本などを使って予防接種の意義を説明するのもおすすめです。
予防接種後、子どもをどのように褒めてあげたらよいでしょうか?
泣いてしまった場合も、泣かなかった場合も、子どもががんばったことに変わりありません。「痛かったのによくがんばったね」「我慢できてえらかったね」と素直に褒めてあげましょう。
子どもの年齢によっては、絵本などを使って予防接種の意義を説明するのもおすすめです。
2歳までに受けるべき予防接種のスケジュールを把握して確実な接種を
予防接種の多くは1歳までと3歳以降に受けるため、2歳のタイミングで受けなければならないものはありません。しかし、これまで接種し忘れていたものがあれば、早めに予防接種を受けましょう。
ワクチンによっては、定期接種期間を過ぎると自己負担が発生したり、接種できなくなったりするものがあります。
もし受け忘れていたことに気付いたら、その時点で住んでいる自治体の健康福祉課またはかかりつけの医療機関に相談しましょう。
予防接種は子どもにとって嫌なものですが、適切なタイミングで予防接種を受けることは、その子の健康を守ることにつながります。
2歳までに受けるべき予防接種はたくさんあるため、スケジュールを把握するとともに同時接種も活用しながら、確実に接種しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。