「10か月 健診」は受けられているでしょうか。
「どんなことを検査するの」「いつ・どこで受けるの」「準備は何が必要」「お金はかかるの」など、乳幼児健診の前はさまざまな不安があるものです。
保護者の方は本当に大変ですね。この記事では、10か月健診について詳しく解説・紹介していきます。
目次
乳幼児健診(乳幼児健康診査)とは?どんな目的で行われる健診?
赤ちゃんは個人差が大きいものです。専門家の立場から、子どもの発育・発達が順調かどうか確認して、個性なのか異常なのか判断する必要もあります。
このため、定期的に健診をおこない発育の状況を確認する必要があります。
これを乳幼児健康診査、略して乳幼児健診と言います。生後間もない赤ちゃんの健康保持及び増進を目的とし、発育・栄養状態の確認、先天的な病気の有無・早期発見、予防接種の時期や種類の確認などの項目を定期的にチェックします。
乳幼児健診時期 | 定期健診・任意健診 | 日程 | 実施場所 |
---|---|---|---|
1か月 | 任意健診 | 予約日 | 小児科医療機関 |
3~4か月 | 定期健診/任意健診 | 予約日・決められた日 | 小児科医療機関 各自治体が指定する場所 |
6~7か月 | 任意健診 | 予約日・決められた日 | 小児科医療機関 各自治体が指定する場所 |
9~10か月 | 定期健診/任意健診 | 予約日・決められた日 | 小児科医療機関 各自治体が指定する場所 |
1歳 | 任意健診 | 予約日・決められた日 | 小児科医療機関 各自治体が指定する場所 |
1歳6か月 | 定期健診 義務化 | 決められた日 | 各自治体が指定する場所 |
3歳 | 定期健診 義務化 | 決められた日 | 各自治体が指定する場所 |
乳幼児健診には、定期健診と任意健診があります。
「母子保健法」では「満1歳6か月以上満2歳未満」と「満3歳以上満4歳未満」の幼児を対象に定期健診が義務化されています。
定期健診は集団で実施されるので、決められた日に自治体が指定する保健福祉センターや公民館などでおこなわれます。
決められた日程の都合が悪い場合、ほかの日程で受けられるので、管轄の行政機関に問い合わせるようにしましょう。
「生後1か月児」「生後3~4か月児」「生後6~7か月児」「生後9~10か月児」「1歳児」は、母子保護法で義務化されていない任意健診の対象です。
ただし、乳幼児健診は住んでいる自治体によって異なり、地域によっては3~4か月健診、9~10か月健診も定期健診として設定されています。この場合は、自治体が指定している医療機関で受けることが可能です。
定期健診は助成金でまかなわれ、全員が無料で受けられますが、市町村など各自治体によって実施の有無や時期にばらつきがあります。
10か月健診(9〜10か月児健康診査)とは?乳幼児健診の費用や実施場所
10か月頃の赤ちゃんは個人差が大きくなり、子どもの発育・発達の特徴を確認しながら育てるのが大切な時期です。
10か月健診は、生後9~10か月(9か月になる日から11か月になる日の前日まで)の赤ちゃんが対象の乳幼児健診です。ここでは、10か月健診の概要について説明します。
10か月健診(9〜10か月児健康診査)の目的
9〜10か月児健康診査は、以下の目的で実施されます。
- 赤ちゃんの発育や栄養状態の確認
- 先天的な病気の早期発見
- 予防接種の時期や種類の実施状況の確認
- 育児生活の状況確認・指導
- 乳児の健康保持及び増進
9~10か月頃は、体格や運動面において個人差がでやすくなってきます。色々な喃語が出るようになったり、つかまり立ちや伝い歩きをしたりする子も出てきます。
多くの自治体で10か月健診を実施しているので、赤ちゃんの成長に不安がある場合には、医師や保健師に相談するチャンスです。
10か月健診(9~10か月児健康診査)にかかる費用はいくら?
乳幼児健診は、費用によって3つに分類できます。
- 任意(自費)
- 定期(無料)
- 一部の健診費用を助成(一部有料)
「母子保健法」によって定められている乳幼児健診の時期は、「1歳6か月」と「3歳」です。
10か月児健康診査は、母子保護法で義務化されていない任意健診の対象ですが、7~8割は自治体の助成があり、定期健診(無料)として実施されています。
また、自己負担の場合でも、受診の自己負担費用を助成金額の範囲内で、1回のみ払い戻してくれる自治体もあります。
任意健診は基本的には有料です。医療機関によって費用にばらつきがありますが、3,000~6,000円程度と考えておきましょう。
定期健診は無料で受けられますが、受診できる日程が決められており、過ぎると自費となる可能性もあるので注意してください。
10か月健診(9~10か月児健康診査)はどこで行われる?
10か月健診の実施場所は、自治体によって異なります。自治体が指定した場所で一斉に行う集団健診と、自治体が委託した医療機関で行う個別健診があります。
各自治体によって、内容にばらつきがあり、日程・実施場所のチェックが必要です。
集団健診は、自治体が指定する保健福祉センターや公民館、役所などの施設、指定医療機関で、指定された日におこなわれます。
また、10か月健診は乳児健康診査受診票(受診票は各自治体に問合せ)を提示して、自治体が指定している小児科医療機関(各自治体に問合せ)で受けることもできます。
東京都では、9~10か月児を対象に健康診査を行っています。健康診査実施医療機関名簿が公布されているので、健診を希望する小児指定医療機関を選び、電話で日程を決め受診します。
10か月健診(9〜10か月児健康診査)の内容は?チェックする項目を紹介
9~10か月ごろの赤ちゃんは、新しい世界に一歩踏み出していきます。10か月健診以下の表の内容を確認します。
9~10か月健診の内容
チェックする項目 | 健診の内容 |
体重・身長・頭囲・胸囲 | 体重・身長・頭囲・胸囲の計測 |
心音や聴覚 | 心臓の音が一定のリズムか雑音が入っていないかを心音から確認、音への反応(聴覚)、眼球運動や斜視の判断などの検査 |
発達状況の確認 | 「お座り」「ハイハイ」「つかまり立ち」「小さなものをつかむ」など、いくつかの動作から発達状況の判断 |
言葉の発達(喃語) | 喃語が出ているか種類が増えているかを、保護者に口頭で確認 |
歯の生え方 | 歯が何本生えているかを確認 |
離乳食の進み具合 | 離乳食の進み具合、母乳やミルクの量や回数など、食事についての確認 |
愛着の形成 | 保育者がそばにいるとき、いなくなるとき、戻ってくるときの様子から愛着の形成ができているかを確認 |
上記の他、10か月健診では1歳前に済んでいないワクチン・予防接種の実施確認があります。
頭のかたちについて診察する項目は含まれていません。
心音や聴覚
心臓の音が、一定のリズムを保っているか心音の確認や、声を掛けた時の音に対する反応(聴覚)、ペンライトやおもちゃを動かした時に目で追う反応(眼球運動や斜視の判断)など聴覚・視力の検査も行われます。
発達状況の確認
10か月健診では、主に運動面での発達状況を確認します。
たとえば、ひとりでお座りができるかや、うつ伏せの状態からお座りに移行できるかなどの確認です。
ハイハイをしないでいきなりつかまり立ちをしたり、座ったままお尻をずらして移動したりする赤ちゃん(シャフリングベビー)もいます。主に確認するポイントを解説しましょう。
ホッピング反応とは
生まれてからしばらくすると自然に身につける姿勢反射のひとつがホッピング反応で、以下のように確認します。
- 立たせて体を前に倒そうとすると、左右どちらかの足を前に踏み出して体を支えようとする
- 立たせて体を後ろに倒そうとすると、足の関節を曲げて体を支えようとする
- 立たせて左右どちらかに倒そうとすると、倒れる側とは反対の足を交差するなどして体を支えようとする
ホッピング反応は、生後9〜10か月頃から少しずつ出現し始めます。前後左右のどれか一方向にのみホッピング反応がみられれば正常と判定され、つかまり立ちなどと同様、時期には個人差があります。
健診のときにホッピング反応がなかったということだけで、心配する必要はありません。
パラシュート反応とは
ホッピング反応と同じく、生後9〜10か月頃の乳幼児健診で検査する反射のひとつに腕と手に関する「パラシュート反応」があります。
パラシュート反射は、大脳皮質や中脳が発達する時期から見られ、体を持ち上げて急に前へ傾けたときに体を支えようと両腕が自然に前に出る反射です。
中脳は、身体の平衡や姿勢の保持、体の運動を起こす中枢、視覚反射や眼球運動反射、聴覚刺激に対する反射を担当しています。
ハイハイができる頃には、パラシュート反射ができるようになり、赤ちゃんが立って、つたい歩きする順番で、成長が見られます。
10か月児健康診断でパラシュート反射が見られない場合は、脳性まひや神経発達の異常が疑われますが、その場で精密検査が行われることはほとんどありません。
神経系の成長には個人差があります。10か月を超えてからパラシュート反射が出てくる赤ちゃんも多く存在するので心配する必要はありません。
言葉の発達(喃語)
生後9~10か月頃は、喃語(なんご)を話せるようになる時期です。
10か月健診では、喃語が話せるか、喃語の種類が増えているか、「マ、マ、マ」「ダッ、ダッ、ダッ」と反復喃語があるか、チェックします。
離乳食の進み具合
生後9~10か月頃だと、離乳食後期に入り1日3回食に進んでいる頃でしょう。
健診では離乳食の進み具合、母乳やミルクの1日に飲む量や回数なども確認します。また、離乳食の味付けや食べさせ方の指導も受けられます。
愛着形成
乳幼児健診では、保育者がそばにいるときの遊び方、いなくなったときの様子(後追いしたり、遊ばなくなる)、戻ってきたときの様子(嬉しそうな行動)とその後の遊び方で、愛着の形成が順調であるかを確認します。
10か月健診(9~10か月児健康診査)で、ひっかかると問題がある?
生後9~10か月頃の赤ちゃんは、運動面での発達の遅れ(運動発達遅延)を指摘されることも少なくありません。
指摘されたからといって、必ずしも赤ちゃんに問題があるとは限らず、1歳半健診まで様子を見ることもあります。ただし、再検査をすすめられた場合は、医師の指示に従い再検査を受けてください。
もし再検査を勧められたとしても、9~10か月頃の赤ちゃんの運動能力には個人差があるため、あまり心配しすぎないようにしましょう。
10ヶ月健診(9~10か月児健康診査)を受けるまでの流れ
東京都及び都内区市町村では、9~10か月児を対象に、東京都内の契約医療機関で健康診査を公費で行っています。
3~4か月児健康診査の際に9~10か月児健康診査受診票を直接渡されるか郵送などで対象者に配布されます。(居住地域によって制度が違うので各地域自治体の公式ホームページなどで確認してください。)
10か月児健診についても、集団健診で実施しているのか、個別健診で実施しているのかについては自治体により違いがあります。10か月児健診を受ける日時と場所は、案内を確認してください。
受診の前には、必ず各医療機関に問い合わせをしてください。健康診査の日時を定めている場合や予約が必要な場合もあります。
10か月健診(9~10か月児健康診査)に持って行くもの
子どもの下痢が続くことに関するよくある質問をまとめました。
10か月健診 当日の持ち物
医療機関で個別健診を受ける場合は、事前に予約をして受診しましょう。また、健診に必要な持ち物をチェックします。
通常、10か月健診に必要な持ち物は以下の通りです。
- 母子健康手帳
- 乳幼児医療証
- 問診票
- 健診券
- おむつ・おしりふき
- 着替え・大判のタオル
- ミルクやおやつ
- 絵本や積み木などのおもちゃ
受診の際は、母子健康手帳と健康保険証、受診票が必要です。
手元に問診票がある場合は、自宅で記入して持参すると健診の際にスムーズです。
健診中は待ち時間が長いため、子どもが水分補給できるもの(ミルク)やおやつ、赤ちゃんがぐずったり飽きたりしないよう、絵本やおもちゃなど、お気に入りのものを持っていきましょう。
なお、自治体からの通知には、健診に必要なものが記載されているので、事前に確認しておきましょう。
10か月健診(9~10か月児健康診査)に適した服装
健診時には、身長や体重を計測するため、裸になります。着脱しやすいもが便利でしょう。
お座りができるのなら、上下が分かれていてボタンが少ないもの、お座りができない赤ちゃんは、寝かせたままでも脱ぎ着ができる前開きのカバーオールを選びます。
また健診時は、暖房や冷房がききすぎている場合があります。大判のタオルやブランケットなど、健診待ちの裸の赤ちゃんが羽織れるものが一枚あると便利です。
10か月健診(9~10か月児健康診査)に関するよくある質問
10か月児健康診査に保険証や乳幼児医療証は必要ですか?
健康保険証と乳幼児医療証は、健診で異常が認められ、治療を実施すると必要になります。
10か月児健康診査は受付から診察終了までどれくらいの時間がかかりますか?
実施する医療機関によってかかる時間は異なります。健康診査は、受付後、健康診査終了まで1~2時間程度かかります。
9~10か月児健康診査に行くまでに家庭でしておいた方がよいことはありますか?
健康診断の種類に応じた問診票(質問票)や同意書などの提出書類には、あらかじめ記入して、揃えておきましょう。
健診当日に気になっていたことを、忘れてしまう保護者の方も少なくありません。また、当日までに気になることがないか注意して観察し、あればメモしておきます。
また、体調不良の場合は健康診断を受けられませんので、体調管理に注意して当日を迎えましょう。
10か月児健康診査は必ず受けなくてはなりませんか?
10か月児健康診査は任意なので強制ではありませんが、赤ちゃんが健やかに育つために必要とされる検査です。
また育児への不安を緩和し、専門家に相談できる貴重な機会なので、受けたほうがいいでしょう。
10か月健診は積極的に受けましょう
10か月健診は任意ですが、成長の様子を確認できる貴重な機会です。
東京都に住んでいる9か月~10か月対象の赤ちゃんは、東京都内の契約医療機関にて公費で健康診査が受診できます。 その他の地域でも、ほとんどの地域で乳幼児健康診査を行っています。
定期的な健診は保護者の不安や悩みを楽にしてくれるでしょう。必ず受けるようにしてください。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。