2023.08.10

元気なのに下痢が続く場合の対応方法|1、2歳を含む幼児の下痢の原因

「元気だけど下痢だけが続いていて、このまま子どもの様子を見ていてもいいのか不安」

「子どもの下痢が続く時気をつけるべきことは?」

機嫌がよく元気なのに子どもの下痢症状だけが続いていると、「何が原因なんだろう?」「どう対応したらよいのだろう?」と不安を覚える保護者の方も多いのではないでしょうか?

そこで本記事では「元気なのに子どもの下痢が続く原因」について特集します。

下痢の原因や受診のタイミング、家庭での対応方法などを解説。保護者の方からのよくある質問にも回答していますので、ぜひ参考にしてください。

目次

子どもが下痢をするのはなぜ?ずっと子どものうんちがゆるい時によくある原因

子どもの下痢が続く場合、下記のような原因が考えられます。

元気なのに下痢が続く場合はこれ!消化不良

子どもが元気なのに下痢が続いている場合、原因として1番多いのは消化不良です。

子どもは大人に比べて消化する力が弱いため、消化に悪い食材をたくさん食べたり、疲れて体力が落ちたりしている時は消化不良に陥りやすいのです。ストレスなどでも消化機能は衰えます。

特に、食物繊維を豊富に含んだキノコ類や油分の多い揚げ物、アイスクリームなどを食べた覚えがあれば、それが下痢の原因になっている可能性が高いと言えるでしょう。

消化不良は時間と共に回復することが多く、緊急性はありません。不快感を訴えず機嫌よく毎日過ごせているようなら、1週間程度は様子を見て大丈夫です。

二次性乳糖不耐症

また、二次性乳糖不耐症も、子どもの長引く下痢に多い原因です。

胃腸炎などでお腹の粘膜が荒れてしまうことにより、ミルクに含まれる乳糖を上手に分解できなくなってしまうことによる症状で、緊急性はありませんが、しばらく様子を見てよくならない場合は医療機関を受診しましょう。

乳糖不耐症には先天的な一次性のものと二次性のものがありますが、一次性の乳糖不耐症が起こることは日本人では稀です。

多くの場合二次性乳糖不耐症だと考えて良いでしょう。

ウイルス性胃腸炎(嘔吐下痢症)

子どもが下痢をする大きな原因に「ウイルス性胃腸炎」が挙げられます。

ウイルス性胃腸炎とは、一般的に「お腹の風邪」「吐き下し」と言われている病気のことです。「嘔吐下痢症」と呼ばれることもあります。

ウイルスがお腹の中に入って暴れ、下痢や嘔吐の症状を引き起こすと考えてよいでしょう。1年を通してかかる可能性がありますが、特に冬場に罹患するケースが目立ちます。

ウイルス性胃腸炎の場合、下痢以外に嘔吐や発熱の症状が現れることが多く、元気ではないことがほとんどです。

ただ、症状が軽い場合は元気なこともあります。ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスは数多く存在しますが、その中でも特に多く見られるのは次の3つのウイルスです。

ロタウイルス

ロタウイルスは生後半年~5歳くらいまでの乳幼児によく感染が見られる、下痢症状を呈するウイルスです。

潜伏期間は1~3日。下痢が長引くため、脱水症状を起こす危険性が高いことで知られています。多くの場合、下痢以外に嘔吐・発熱も見られます。

ノロウイルス

子どもから大人まで全年齢で強い感染が見られるウイルスです。

潜伏期間は半日~2日。ロタウイルス同様、嘔吐・下痢・発熱が見られます。年齢に関係なく罹患するので、家庭内感染に特に気をつけなければならないウイルスです。

アデノウイルス

夏に子どもの間で流行する「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因としても知られている有名なウイルスです。潜伏期間は5~7日。お腹にウイルスが入った場合は嘔吐と下痢の症状がメインで、発熱しない場合もあります。

食中毒(細菌性胃腸炎)

食中毒とは細菌性胃腸炎のことです。食品を通してお腹に細菌が入り、激しい腹痛や水様便などの症状を引き起こします。

子どもの食中毒の原因として最も多いものはサルモネラ菌ですが、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌など原因となる菌は多種多様です。

下痢以外にも嘔吐や発熱の症状が現れるものも多く、O-157のように強力なものになると意識障害など危険な状態に陥るケースもあります。

子どもを病院へ連れて行くべき?下痢が続く際にチェックすべき症状

子どもの下痢が続く場合、すぐ受診すべきか否かは、以下のポイントを参考にしてください。

元気なのに下痢が続く「消化不良」の場合の受診タイミング

消化不良の場合、症状が下痢のみで機嫌がよく元気であればしばらく様子を見ても問題ありません。

しかし、いつまでも症状が改善されない場合、体内で吸収に関するなんらかの問題が起こっている可能性が考えられます。

吸収に問題が生じると脱水症状などに繋がる危険性もあるため、1週間を目安に受診しましょう。

消化不良の場合以外の受診タイミング

消化不良以外の原因で子どもの下痢が続く場合には、いくつかチェックすべきポイントがあります。確認した状態により、病院へ連れていくかどうか判断しましょう。

子どもの下痢が続く時のチェックポイント

子どもの下痢が続く際は、以下の事項を確認してください。

  • 意識はあるか
  • けいれんの症状が見られるか
  • 嘔吐の症状はあるか
  • 発熱しているか(熱がある場合は何度か)
  • 機嫌はどうか
  • 便に血が混じっているか
  • 尿の量は普段通りか

すぐ受診すべき症状

上記のチェック項目を踏まえ、次のような症状が見られる場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

  • 嘔吐が治まらない、または下痢が酷く脱水症状の危険がある
  • 意識がない
  • けいれんが見られる
  • 血便や酷い腹痛がある
  • 尿が極端に少ない
  • 3ヶ月未満の乳児で38度以上の発熱が見られる

しばらく様子を見ても問題ない症状

次のような状態の場合は、慌てずしばらく様子を見て問題ありません。症状が長引く場合は受診時間内に医療機関に連れて行きましょう。

  • 水分がしっかり摂取できている
  • 機嫌が極端に悪くない
  • 柔らかめの便だが、下痢の回数は1日数回以内

下痢が続く場合は脱水症状予防のためにしっかりと水分補給を

下痢が続く子どもにとって最も怖いのは、脱水症状を引き起こしてしまうことです。そのため、水分補給が非常に重要となります。

特に嘔吐症状がある場合に顕著ですが、水分を1度にたくさん摂らせると戻したり下したりしてしまうことがあります。そのため、水分は「少しずつ、何度も(少量頻回で)」飲ませるよう心がけましょう。

はじめは小さじやティースプーン1杯程度の量を、10~20分置きに摂取させます。

何回か飲ませて吐き戻さないようであれば、様子を見ながら少しずつ摂取させる量を増やしても問題ありません。

飲ませるものは、ただの水ではなく、体内の水分と成分が似ており、スムーズに吸収しやすい「経口補水液(けいこうほすいえき)」がおすすめです。

ただし、嫌がったり急を要したりする場合は、以下の飲み物を参考にしてください。

おすすめの飲み物

NGな飲み物

・麦茶

・スポーツドリンク(酷い下痢を脱している場合)

※温度は常温

・柑橘系のジュース

・牛乳

※冷やしたものは避ける

消化不良で下痢が続く子どもの食事はどのようなものが適切?

酷い下痢が落ち着き、食欲が回復したら少しずつ食事を摂らせましょう。

消化のよいものを中心に、おかゆなどの柔らかいものからはじめ、様子を見ながら徐々に固形物へ移行させましょう。おすすめの料理と避けるべき料理は次の通りです。

おすすめの料理・食品

NGな料理・食品

・具のない味噌汁やスープ

・おかゆ

・よく煮たうどん

・柔らかいパン・パン粥

・豆腐(冷たくないもの)

・すりおろした(または柔らかく煮た)リンゴ

・バナナ

・消化しにくい野菜

・かたい肉

・揚げ物

・柑橘系の果物(ミカンなど)

・お菓子

消化不良で下痢が続く子どもへのその他の対応

日々のストレスや疲れが消化する力の衰えに繋がっているケースも考えられます。

子どもは大人に比べて小さな出来事でも大きなストレスを感じやすいため、消化不良で下痢をしている場合はリラックスしてゆっくり過ごせる環境を整えてあげることも大切です。

子どもの下痢が続くことに関するよくある質問

子どもの下痢が続くことに関するよくある質問をまとめました。

市販されている下痢止めを使っても問題ありませんんか?

下痢止めは、ウイルスや細菌の排出を阻害する可能性があるため、使用はおすすめしません。

子ども向けの整腸剤は様子を見ながら使用しても大丈夫です。ただし、整腸剤は原因を根本的に解決するものではないため、症状が長い間改善されない場合は受診を検討しましょう。

下痢をしている場合、体を温めた方がよいのでしょうか?

お腹を冷やしてしまったり、冷たいものを食べ過ぎて消化不良を起こしている場合は、体をそれ以上冷やさないようお腹を中心に温めましょう。

ウイルス性胃腸炎などの場合は温めることは直接的な効果がないことが多いため、意識して温めようとしなくても問題ありません。

元気ですが、外へ遊びに行かせたりお風呂に入れたりしても大丈夫ですか?

消化不良の場合は、あまり気にせず普段と同じような生活を送って問題ありません。

ウイルス性胃腸炎の場合は、湯舟のお湯を通して家族に感染してしまう可能性があります。そのため、「家族全員が入った後に入浴させ、子どもが出た後は湯舟をしっかり洗う」「子どもが入った残り湯を洗濯に使わない」などの注意が必要です。

子どものお尻が下痢でただれてしまわないためにできることはありますか?

お尻を拭く場合はトイレットペーパーではなく、お尻拭きを活用するとよいでしょう。

ただれが酷い場合は、ぬるま湯で直接お尻を洗ってあげるのも有効です。洗った後に乾かし、水気がなくなったら保湿剤などでお尻を優しく保護してあげましょう。

ただれが改善しない場合は外用薬の適応もあるので、医療機関を受診しましょう。

元気なのに下痢が続く子どもには消化のよい食事とリラックスできる環境を

今回は「元気なのに子どもの下痢が続く原因」について取り上げました。

発熱や嘔吐などの症状が見られず、不快感を示さない場合、消化不良により下痢になっていることが多いと考えられます。水分補給をしっかり行い、消化によい食事を摂らせ、様子を見ましょう。

1週間以上症状が改善されない時は体の吸収機能に問題が生じているケースが考えられるため、受診を検討してください。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。