2023.08.07

子どもに白い便が出たときに考えられる原因と保護者がとるべき対応

「子どもの便の色が普段と違う気がする」

「子どもが白っぽいうんちをしている場合、どんな対応を取れば良い?」

便の様子は子どもの健康状態をはかる上で大切なバロメータです。普段と状態が違うと、どう対応したら良いか不安になる保護者の方も多いのではないでしょうか?そこで今回は「子どもの白い便」について特集します。子どもに白い便が見られる原因や、受診のタイミング、家庭での対応方法などを解説します。保護者の方からのよくある質問にも回答していますので、ぜひ参考になさってください。

目次

子どもの便が白い場合に考えられる原因は?

子どもの便が白い場合、原因は複数考えられます。乳幼児に特によく見られる理由は次の4つです。

ロタウイルス性胃腸炎(白色便下痢症)

便の特徴

・灰色やクリームがかった白色

・臭いが強い

・水下痢なことも多い

便の色以外に見られる症状

・激しい嘔吐

・発熱

原因

ロタウイルスの感染

発症する年齢

生後半年~5歳頃

ロタウイルス性胃腸炎は、乳幼児に白い便が見られる代表的な疾患です。「白色便下痢症」という別名を持つことからもわかるように、かなりはっきりと白さの目立つ便が特徴的な症状としてあらわれます。

便はクリーム色ややや灰色がかった白で、臭いが強く、水っぽい下痢が見られます。

ロタウイルス性胃腸炎はいわゆる「お腹の風邪」で、下痢だけでなく激しい嘔吐と発熱を伴うことがあります。

人から人への感染力も強いので、歳の近い兄弟がいる場合は家庭内感染に注意しましょう。ロタウイルスワクチンは生後6週間から予防接種が可能です。予防接種法で定期接種に指定されているため無料で受けられますので、なるべく早めに受けることをおすすめします。

先天性胆道閉鎖症

便の特徴

・クリーム色やレモン色、灰色がかった白

便の色以外に見られる症状

・濃い黄色の尿

・皮膚や白目に黄疸(おうだん)が出て黄色くなる

・頻繁に出血する

・脳出血を伴うけいれん

原因

胆管(たんかん)が詰まり、胆汁(たんじゅう)が排出されなくなる

発症する年齢

生後1~2ヶ月

先天性胆道閉鎖症は生まれて間もない乳児に見られる病気です。

詳細は未だ不明ですが、胆汁(たんじゅう)の通り道である胆管(たんかん)が、何らかの要因で詰まり、胆汁の排出が困難になります。症状が進行すると肝硬変などで死亡する可能性が高まるため、一刻も早い発見・治療が求められます。

食欲もあり比較的元気ですが、胆汁が送られないため便が白く、徐々に肌に黄疸が出ることが特徴です。尿も激しくにごります。男の子より女の子によく見られる病気です。

また、先天性胆道閉鎖症の術後も、それに伴う胆のう炎によって再度白色便が出る可能性があります。

先天性胆道拡張症

便の特徴

・黄味がかった白っぽい色

便の色以外に見られる症状

・嘔吐や下痢

・発熱

原因

・膵液の逆流により胆管が損傷する

胆のうで細菌が増殖し、炎症を引き起こす病気です。大人にも見られますが、子どもの場合は「小児急性胆のう炎」と呼ばれます。先天性胆道閉鎖症の手術を行った後にトラブルとして発症することが多く、発熱や腹痛が見られます。

先天性胆道閉鎖症と同じく緊急性が高く、一刻も早い発見・治療が求められます。

主に先天的な要因で起こる病気で、男児より女児に多く見られます。膵液の逆流による胆管の損傷で胆管が拡張します。

発熱や下痢、嘔吐の症状が見られることが多く、緊急性が高いのが特徴。早期発見・治療が望まれます。

消化不良

便の特徴

・脂っぽい

・水に浮く

便の色以外に見られる症状

・膵臓の働きが落ちることがある

原因

・脂肪分の多い食品の過剰摂取

脂肪分の多い脂っぽい食べ物を食べ過ぎた場合にも白い便が出る場合があります。消化不良による白い便の特徴は便が水に浮くことと、便がやや脂っぽいことです。

このような便を「脂肪便」と呼びます。食欲があり元気なことが多く、基本的には家庭で消化の良いものを食べて様子を見ているうちに治りますが、症状が長引くと膵臓の働きが落ちやすくなるので注意しましょう。

子ども・幼児に白っぽいうんちが出たらすぐ病院へ連れて行くべき?

子どもに白い便が見られた場合、すぐ受診すべきか否かは、以下のポイントを参考にしてください。

乳児にこんな症状が見られたらすぐに受診を!

前項で説明した先天性胆道閉鎖症や、先天性胆道拡張症の症状が見られたら、緊急性が高く、一刻を争う場合があります。

夜間でもすぐに救急外来を受診しましょう。それ以外の場合は、次の症状に当てはまるかどうかを確認し、該当するようならすぐに受診しましょう。

  • 嘔吐や下痢が治まらず脱水症状の危険がある
  • 意識がない
  • けいれんが見られる
  • 血便や酷い腹痛がある
  • 3ヶ月未満の乳児で38度以上の発熱が見られる

こんな症状の場合はしばらく様子を見てもOK

以下の場合はしばらく様子を見て問題ありません。夜間の場合は翌日以降、必要があれば症状の落ち着いたタイミングで受診しましょう。

  • 嘔吐や下痢が徐々に治まる
  • 水分補給がしっかりできている
  • 意識がはっきりしている
  • しっかり眠れている
  • 機嫌が良く元気

子どもに白い便が出た際に家庭で気をつけるべきことは?

白い便が出る疾患のうち、先天性胆道閉鎖症と先天性胆道拡張症の場合は、病院での早急な治療が必要となります。

いっぽう、ロタウイルス性胃腸炎と消化不良の場合は家庭で対処することになるでしょう。それぞれ、家庭では下記のようなことに気をつけてください。

ロタウイルス性胃腸炎(白色便下痢症)の場合に気をつけるべきこと

激しい下痢と嘔吐を伴うロタウイルス性胃腸炎の場合は、水分補給が非常に重要です。

嘔吐が落ち着いて1時間程度したら、少しずつ複数回に分けて経口補水液を飲ませましょう。

1度に大量に水分を摂らせると吐いてしまうので、必ず少量ずつ頻繁に飲ませてあげてください。食事は無理に摂らせず、嘔吐が治まり食欲が出てきたら、消化の良い柔らかいものを食べさせましょう。

また、ロタウイルス性胃腸炎は感染力が高いので、吐いた物を処理する際は必ずマスクと使い捨て手袋を着用し、直接触らないよう気をつけてください。汚れた床や壁、洗濯機に入れる前の布類は、塩素系の漂白剤で必ず消毒しましょう。その他、家庭内で感染を広げないために、以下のことにも気をつけてください。

  • ドアノブなど、手が触れる場所はこまめに消毒する
  • 感染者と家族は同じタオルを使用しない
  • 感染者と家族は一緒の場所で食事を摂らない

消化不良の場合に気をつけるべきこと

消化不良が原因で脂肪便が見られる場合は、食生活の改善が必要です。

牛乳など、脂肪分が多いものを食べ過ぎている場合は量を減らし、ごはんやパン、うどんなど消化の良いものや、鶏肉など、脂肪分の少ないタンパク質を食べさせましょう。

消化不良が長引いている場合、膵臓などに問題が発生している可能性もありますので、3日異常症状が続くようなら、受診を検討してください。

子どもの白い便に関するよくある質問

子どもの白い便に関するよくある質問をまとめました。

乳児の便にツブツブした白いものが混じっています。これは何ですか?

乳児の場合、母乳やミルクの脂肪分が十分消化されていないと、白い粒々となって便に混じることがあります。

とくに母乳やミルクをしっかり飲む赤ちゃんに多いケースです。元気で機嫌が良いようなら、あまり不安に思う心配はありません。

服薬中の薬の影響で便が白くなることはありますか?

飲んでいる薬の影響で便が白くなることもあります。特に、便秘のための下剤でよく見られるケースです。

服薬の影響で白い便になっている可能性がある場合は、担当の医師に相談しましょう。

嘔吐・下痢を伴う症状では経口補水液を与えると良いと聞きました。作れますか?

経口補水液(けいこうほすいえき)は、塩と砂糖があればご家庭でも簡単に作れます。

1リットルの湯冷ましに対し、塩3g(小さじ2分の1)と砂糖40g(大さじ4と2分の1)を加え、溶けるまで混ぜたら完成です。レモン汁を加えると口当たりがさっぱりして飲みやすくなります。

ロタウイルス性胃腸炎の場合、いつから登園・登校できますか?

嘔吐が治まり、普段の食事が摂れるようになって、下痢もある程度落ち着いてから登校・登園を検討しましょう。

ロタウイルス性胃腸炎は、かかってから数週間は便にウイルスが混ざると言われています。お漏らししてしまうなど、便の管理が難しい年齢や体調の場合は、症状が下痢だけになったとしても、感染拡大を防ぐためにお休みさせてください。

乳幼児の白っぽいうんちは原因を理解し適切な対応を

今回は「子どもに白い便が出る原因」について取り上げました。

乳児の場合、先天性の胆道系疾患の可能性を考えられます。緊急性が高くすぐに治療が必要となりますので、黄疸などの症状が見られたら、夜間でもすぐに受診してください。

また、冬場はロタウイルス性胃腸炎が乳幼児の間で流行しやすい時期です。激しい下痢や嘔吐が見られたら、水分補給をしっかり行うことと、家庭内での感染が広がらない工夫をすることに力を注いでください。

症状に合わせて、慌てず適切な対応をとりましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。