子どもが3歳くらいになると自己主張も強くなり、保護者の思うようにはいきません。毎日が目まぐるしく大変ですね。
予防接種のスケジュールも煩雑なので、バタバタしたなかでも、「3歳以降に接種すべき予防接種には何があるのだろう?」
「予防接種を受ける時はどうすれば良いのだろう?」と気になる人もいるでしょう。
この記事では、3歳以降に受ける予防接種のスケジュールや、予防接種を受ける際のポイントを解説します。
様々な予防接種を計画的に受けさせたいと思っているなら、ぜひ参考にしてください。
目次
予防接種における定期接種と任意接種の違いは?
予防接種には、「定期接種」と「任意接種」があります。
定期接種は予防接種法で「すべての人が受けるべき予防接種」とされており、公費で受けられるものです。代表的なワクチンには、日本脳炎やMRワクチン、結核(BCG)などがあります。
法律で決められた時期以外のタイミングで予防接種を受ける場合は、基本的に自費となります。
一方、任意接種は状況に応じて個人が受けることができる予防接種です。任意接種の主なワクチンは、おたふくかぜワクチン(ムンプス)やインフルエンザワクチンなどです。
費用は基本的に自己負担ですが、自治体によっては公費による助成が受けられることもあります。
任意ではありますが、予防接種の重要性は定期接種と変わりません。
予防接種を受けないまま感染すると重篤な後遺症を残す病気もあるので、できるだけ受けるようにしましょう。
3歳以降の予防接種のスケジュールは?ワクチンごとに解説
3歳以降に受ける予防接種のスケジュールを、ワクチンごとに解説します。
日本脳炎ワクチン(3~4歳/9~13歳)
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスに感染した豚の血を吸った蚊に刺されると発症することがある感染症です。
多くの人には症状が出ませんが、発症すると障害が残ったり死亡したりするリスクが高まります。
日本脳炎ワクチンは、接種することで日本脳炎の罹患(りかん)リスク を減らす効果がある不活化ワクチンで、公費で受けられる定期接種に定められています。
4回接種する必要があり、1回目は生後6ヶ月から接種できます。しかし、多くの地域では3歳になってから接種するのが一般的です。
4回目は9歳から12歳の間に接種します。
麻しん風しん混合(MR)ワクチン(5~6歳)
麻しん(はしか)・風しん(三日はしか)を予防する公費で受けられる定期接種の混合生ワクチンです。
麻しんはとても感染力が強く、医療体制の整った先進国でも、感染すれば1,000人に1人が死亡するとされています。
2回の予防接種で95%程度の人が麻しんの免疫を獲得できるので、予防接種が受けられるようになったら、できるだけ早く受けましょう。
1回目の接種タイミングは1〜2歳、2回目は5〜7歳未満(小学校入学前の1年間)です。
二種混合(DT)ワクチン(11~13歳)
二種混合(DT)ワクチンは、ジフテリアと破傷風を予防する混合不活化ワクチンです。予防接種法で定期接種に定められています。
ジフテリア・破傷風ともに菌によって引き起こされる感染症で、最悪の場合亡くなることもあります。
二種混合(DT)ワクチンは、11歳のときに1回接種しましょう。
三種混合・不活化ポリオワクチン
三種混合・不活化ポリオワクチンは、ジフテリア・百日ぜき・破傷風・ポリオを予防する混合不活化ワクチンです。
任意接種ですが、MRワクチンの2回目と同時期に接種が推奨されています。
同時接種も活用して予防接種を受けましょう。
子宮頸がん予防(HPV)ワクチン(12~16歳)
子宮頸がん予防(HPV)ワクチンは、女性の子宮頸がんや尖圭コンジローマなどを予防する不活化ワクチンです。
2価・4価・9価と3種類のワクチンがあり、それぞれ作られる抗体の数が異なります。
このうち公費を使って定期接種で受けられるのは2価と4価、9価のワクチンで、2価と4価は3回、9価は最大2回の接種が必要です。
- 2価ワクチン
小学6年生から高校1年生の女子が定期接種の対象です。接種できるようになったら1回目を接種し、その1ヶ月後に2回目、1回目の接種から6ヶ月後に3回目を接種します。
- 4価ワクチン
中学1年生になったら1回目を接種し、その2ヶ月後に2回目、1回目の接種から6ヶ月後に3回目を接種します。
- 9価ワクチン
初回接種を15歳未満で受けるか、15歳以上で受けるかで接種回数が変わります。
15歳以下で初回接種を行った場合は2回の接種が必要です。
2013年4月にHPVワクチンが定期接種になってから、2021年11月まで一時的に予防接種が差し控えられていました。そのため、本来接種を受けるはずだったのに、接種を受けられなかった年代の女性がいます。
1997年4月2日〜2007年4月1日に生まれた女性でHPVワクチン接種を受けていない人は、2022年4月〜2025年3月の3年間であればHPVワクチン接種が受けられます。
該当する人は、かかりつけの医療機関で相談してください。
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチン(5~6歳)
おたふくかぜ(ムンプス)ワクチンは、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)を防ぐ任意接種の生ワクチンです。任意接種のため、費用は基本的に自己負担ですが、自治体によっては公費助成が受けられます。
おたふくかぜにかかると、ムンプス難聴などの障害が残ることがあるため、可能な限り予防接種を受けて発症を防ぎましょう。
おたふくかぜの予防接種は、1歳の誕生日が来たら受けられます。いつまでに受けなければならないと、期間が決められているわけではないですが、3歳になった時点でまだ予防接種を受けていない場合は早めに受けるようにしましょう。
インフルエンザワクチン(毎年)
インフルエンザワクチンは、季節性インフルエンザを防ぐ任意接種の不活化ワクチンで、毎年予防接種を受ける必要があります。
インフルエンザが流行するのは、例年12〜4月です。1月末〜3月上旬に流行のピークを迎えるため、遅くても12月中旬までには接種を終えるのが望ましいとされています。
インフルエンザワクチンは、生後6ヶ月以上13歳未満の場合は2回、13歳以上の場合は1回接種します。
2回接種する場合は、1回目の接種から4週間程度間隔をあけましょう。
毎年10〜11月頃から予防接種が始まるので、時期が近くなったらかかりつけの医療機関で相談することをおすすめします。
予防接種にかかる費用は?
決められた期間の定期接種に関しては、基本的に無料です。一方、任意接種の費用は、基本的に自己負担となります。
住んでいる自治体によっては公費による助成が受けられることがあるので、費用が心配な人は自治体のホームページなどで確認してみましょう。
なお、おたふくかぜとインフルエンザの予防接種を自費で受けた場合、費用目安は以下のとおりです。
- おたふくかぜ:医療機関によって異なるが、1回4,000~6,000円のところが多い
- インフルエンザ:医療機関によって異なるが、1回3,000〜5,000円のところが多い
子どもが予防接種を受ける時の流れは?
子どもが予防接種を受ける時の流れを解説します。
定期接種の場合
定期接種を受けるためには、自治体の発行する予診票や接種券が必要です。
対象となる人には予診票が送られてくるので、基本的に自分で発行手続きをする必要はありません。
予診票には予防接種が受けられる医療機関が記載されているので、予防接種を受ける医療機関に問い合わせ、必要があれば予約を取ってください。
当日、必要事項を記載した予診票や健康保険証などを持参の上医療機関を受診し、予防接種を受けます。
任意接種の場合
任意接種の場合、医療機関によってはワクチンの在庫がないことがあります。
受診したその日に接種が受けられるとは限らないので、事前に医療機関に任意接種のワクチンを接種したい旨を相談しましょう。
予防接種が受けられるようになったら、問診表などに必要事項を記入し、予防接種を受けます。
予防接種が怖い!3歳の子どもに予防接種をどう伝える?
注射が怖い!という子どもは決して少なくありません。少しでも子どもの恐怖心を和らげるために、保護者は次のことを心がけましょう。
性格に合わせて伝える
3歳頃になると、それまで受けた予防接種で怖い思いをしたり、痛かった記憶が強く残っていたりして、予防接種を嫌がる子どもが少なくありません。
これから予防接種を受けることを伝える際は、子どもの性格に合わせて伝えるよう心がけましょう。
怖がりだったり神経質だったりする子どもに伝えるときは、大げさに伝えず「3つ数える間に終わるよ」「深呼吸すると痛くないよ」など少しでも安心させる声かけが、いいでしょう。
嘘をつかない・脅さない
予防接種をすることを伝える際、「痛くないよ」といったり「予防接種をしないと病気になって死んじゃうんだよ」などと言ったりする保護者がいます。
しかし、嘘を伝えたり、脅したりするのは逆効果です。
「予防接種は痛いけど、すぐに終わるよ」
「病気になるとお注射をするよりもつらいから、ちょっとだけ頑張ろうね」
など、子どもが納得して予防接種を受けられるよう声かけ・説明を行いましょう。
子どもの怖い気持ちに寄り添う
腕に針を刺されるというのは、大人でも怖いものです。子どもなら、なおさら怖いのはあたりまえ。
予防接種を受けるときは、子どもの怖い気持ちに寄り添ってあげてください。
「おててをギュッとしているからね」
「ママ・パパはここにいるからね」
など、子どもが少しでも安心できるよう心がけましょう。
予防接種が終わったら頑張りを褒める
予防接種が終わったら、子どもの頑張りをしっかり褒めてあげましょう。
泣かなかった子には「やればできるじゃん!すごいね!」と伝えたり、思いきりハグをしたりして、頑張りを認めてあげましょう。
泣いて大暴れした子も、頑張ったことには変わりありません。「よく頑張ったね」「また頑張ろうね」など、注射を受けられたことを評価してあげてください。
3歳以降の予防接種に関するよくある質問
3歳以降の予防接種に関するよくある質問をまとめました。予防接種を受ける際の参考にしてください。
定期接種のワクチンを受けさせないと保護者は罪に問われますか?
医療ネグレクト(予防接種を受けさせない・必要な医療を受けさせない)として児童虐待の罪に問われることがあります。
体質的に予防接種が受けられないケースはありますか?
ワクチンの種類によっては、体質や基礎疾患が理由で予防接種が受けられないケースもあります。
受けられるかどうかは医師の判断によるため、まずはかかりつけの医療機関で相談してください。
うっかり接種させるのを忘れてしまいました。どうしたら良いでしょうか?
接種忘れに気付いたタイミングで、なるべく早くかかりつけの医療機関に相談してください。
予防接種は、決められたタイミングに、決められた回数打つことで免疫をつけるものです。
接種タイミングがずれたり、回数が少なかったりすると、十分な免疫がつかないことがあります。
まずは、かかりつけの医療機関に相談し、今後の対応を考えましょう。
3歳までに接種すべきワクチンの中で接種できていないものがありました。どうしたら良いでしょうか?
接種すべきワクチンの中で、接種できていないものがあることに気付いたら、その段階でかかりつけの医療機関に相談してください。
ワクチンによっては、費用は自己負担となりますが、すぐに接種できることもあります。
子どもが泣いて予防接種(定期接種)を嫌がります。もっと大きくなってから受けさせれば良いでしょうか?
ワクチンは接種すべきタイミングに、必要な回数接種するのが望ましいため、時期が設定されています。子どもが嫌がるからといって、接種タイミングを、ずらすことは避けましょう。
痛い注射は大人でも嫌なものです。子どもが安心できる声かけや、必要性を説明するなどして、少しでも落ち着いて予防接種が受けられるよう工夫してみましょう。
3歳以降の予防接種のスケジュールを把握して確実な接種を
生後半年から始まる予防接種ですが、3歳以降に受けるべきものもあります。
子どもが生まれたら、予防接種のスケジュールを把握して、確実に接種を受けさせましょう。
最近は予防接種のスケジュールをチェックできるアプリやサイトもあります。
ワクチンの接種漏れ・接種忘れを防ぐには、複数のワクチンを一度に接種する「同時接種」もおすすめです。
詳しくは、かかりつけの医療機関で相談してみましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。