「子どもが高い熱をよく出しているけど大丈夫?」
「熱がある時やってはいけないことは?」
「正しい対応方法は?」など、疑問や不安を抱えている保護者は少なくないでしょう。
本記事では、1歳未満の赤ちゃんから子どもまでの発熱時の適切な対応と、熱がある時に避けるべき行動について解説します。
正しい知識を身につけ、適切なケアを行いましょう。
目次
そもそも赤ちゃんや子どもはなぜよく熱を出すの?何度くらいから注意が必要?
子どもが発熱を繰り返すと不安になるかもしれません。しかし、赤ちゃんや子どもの頻繁な発熱は、決して珍しくありません。
「うちの子だけが熱を出しているのでは……」と過度に心配する必要はないでしょう。
子どもは大人よりも体温が高い傾向にあります。子どもの体温は変動しやすく、36.0〜37.4度程度が平熱で、37.5度以上を発熱と判断するのが一般的です。
赤ちゃんや子どもの発熱と免疫の関係
子どもが頻繁に発熱するのは、子どもの免疫システムがまだ完全に発達していないからです。
生後半年までの赤ちゃんは、母親から受け継いだ免疫により守られています。しかし、免疫は生後半年までに徐々に減っていきます。
その後、徐々に自分自身で病原体に対抗して頻繁に発熱し、免疫を作っていくのです。
38度を超えたら注意
子どもの発熱は、一般的に体温が37.5度以上だとされます。特に赤ちゃんは、もともと体温が高めですが、38度を超えたら注意しましょう。生後3か月未満の赤ちゃんであれば、すぐに医療機関を受診してください。
37.5度〜38.0度の間でも、顔色が悪く苦しそう、呼吸が早い、意識がはっきりしないなどの症状が見られたら、医療機関に連絡しましょう。
体温だけではなく、全体的な様子を観察してください。
赤ちゃんや子どもが熱を出したらすぐ病院に連れていくべき?様子を見てもOK?
子どもが発熱をしたからといって、すぐに病院に連れていく必要はありません。
まずは、様子を観察して、症状によって判断しましょう。子どもが発熱したら、以下のポイントをチェックしましょう。
1歳に満たない赤ちゃんが熱を出したときにチェックすべきこと
先述したとおり、3か月未満の赤ちゃんに38度以上の熱があれば、夜間や休日でも医療機関の受診をおすすめします。
しかし、着せ過ぎやくるみ過ぎ、部屋が暑すぎるせいで体温が高くなっているケースもあります。環境を整えて38.0度未満になれば、様子をみても問題ないでしょう。
1歳前後の赤ちゃん~子どもが熱を出したときにチェックすべきこと
1歳前後の赤ちゃん〜子どもが熱を出したときに、チェックすべき項目は以下の通りです。
- 顔色が悪くないか
- 苦しそうではないか
- 小鼻がピクピクして、呼吸が速くないか
- 意識がはっきりしているか
- 頻繁な嘔吐や下痢はないか
- 不機嫌でぐったりしていないか
- けいれんが起きていないか
調子の悪い子どもを前にすると、冷静になりにくいものです。
一呼吸して心を落ち着かせて、様子を確認しましょう。
こんな症状が見られたら危険!すぐ受診を!
以下のような症状がある場合は、至急医療機関を受診しましょう。夜間でも救急外来を利用してください。
- 顔色が悪く苦しそう
- 5分以上もしくは繰り返す痙攣(けいれん)
- 呼吸が速い
- 意識が朦朧(もうろう)としている
- 不機嫌でぐったりしている
- 繰り返す下痢や嘔吐
こんな症状の場合はしばらく様子を見てもOK
以下のような状態であれば、急いで医療機関を受診する必要はありません。自宅で様子をみましょう。
- 症状が熱のみ
- 元気がある
- 食欲がある
元気があっても5日以上熱が続く場合は、一度受診することが推奨されます。
1歳未満の赤ちゃん~子どもに熱がある時にやるべきこと
赤ちゃん、子どもに熱があるときに、親が行うべきことを具体的に紹介します。
水分補給
発熱すると体内の水分を失いやすくなり、脱水状態になる危険があります。脱水症状を防ぐには、こまめな水分補給が必須となります。
様子を見ながら、少しずつでもよいので、こまめに水分を摂らせてください。
水、ノンカフェインのお茶、イオン飲料、果汁などで水分補給を行いましょう。
こまめな体温調整
熱を出したときには、適切な体温調整を心がけます。
震えていたり手足が冷たくなったりしていたら、ブランケットを掛け、室温を上げて温かくしてあげましょう。
一方、手足や顔が赤く体が熱を持っていると感じれば、室内の風通しを良くし、薄着にして熱を発散しやすくしてあげます。
汗をかいたら、こまめに拭き取り、清潔な衣服に着替えさせてください。
また、首やももの付け根、脇などを冷却パックや冷たい枕で冷やすと効果的です。しかし、子どもが拒んだら、無理に行わないようにしましょう。
1歳未満の赤ちゃん~子どもに熱がある時にやってはいけないこと
発熱した際に、やってはいけないことも知っておきましょう。ポイントを解説します。
無理に食事を摂らせる
熱があるとき、子どもの食欲がなくなるケースがあります。この場合は、吐き気を引き起こすかもしれませんので、無理に食事を与える必要はありません。
食事よりも優先的にスープや果物などで水分を摂らせ、体調が回復してきたら徐々に食べられるものを与えましょう。
回復したら、ウイルスに負けない体力や抵抗力をつけるため、バランスのとれた食事を心がけましょう。
解熱剤の乱用
解熱剤は、病気そのものを治す薬ではないので、安易な使用はおすすめできません。一般的に、38.5度以上の熱があれば解熱剤が使用されますが、医師の判断に従いましょう。
高熱が引き起こす不快感がひどい、眠れないなど弊害があれば、38.5度未満でも解熱剤を使用するケースもあります。
一方、38.5度を超えていても、食欲があり元気な様子であれば無理に使用する必要はありません。
解熱剤は、治療そのものではないということを覚えておきましょう。
やっていい?やってはいけない?熱がある時判断に悩みやすいこと
入浴や体温調節については特に疑問を抱きやすいかと思います。
この章では、入浴や体温調節について、具体的な方法を解説します。
入浴やシャワー
一般的に、体調が良好であれば、熱が少し上がっていても入浴できます。汗を洗い流し、体を清潔に保つことも大切です。
しかし、40度以上の高熱があったりぐったりしていたりすれば、入浴で体力を奪われるかもしれません。
入浴は避けて、安静にしましょう。子どもの様子を見たうえで判断してください。
震えているときに温める?冷やす?
熱を出し始めた子どもが震えているとき、手足が冷たければ、体を温めます。暖かいブランケットなどで包むとよいでしょう。
逆に、熱がピークに達し手足や顔が温かくなり始めたら、熱がこもらないよう薄着にし換気を心掛けましょう。
冷却ジェルシートなどの冷却材は子どもが不快に感じない程度に使用しましょう。絶対に必要というわけではないので、無理に使う必要はありません。
また、熱が下がり大量の汗をかいた後は、衣類をこまめに交換しましょう。汗で冷えるのを防ぎ体温を安定させやすくなるので、子どもが快適に過ごせます。
赤ちゃんや子どもが熱を出す主な原因
子どもが熱を出す主な原因は様々で、代表的なものは以下の通りです。
- うつ熱
- 一般的な風邪
- 急性中耳炎
- はしか(麻疹)
- 突発性発疹
- プール熱(咽頭結膜炎)
- 溶連菌感染症
- おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
- 手足口病
- 水ぼうそう
- ヘルパンギーナ
- 川崎病
- 周期性発熱症候群(PFAPA)
これらの病気はすべて発熱を伴いますが、その他の症状や経過はそれぞれ異なります。発熱を伴う症状について不安であれば、専門家に相談しましょう。
赤ちゃん~子どもが熱を出すことに関するよくある質問
子どもの熱で、よくある質問をまとめました。
40度近く熱がありますが、症状は熱だけで元気です。どうすべきですか?
熱の高さが重症度を決めるわけではありません。元気があり、水分も摂れているようなら、自宅で様子をみても問題ないでしょう。
しかし、顔色が悪く苦しそうで、ぐったりしているなどの症状がで始めたら、医療機関の受診をおすすめします。また、4〜5日熱が続くようなら、元気そうでも一度受診しておきましょう。
高熱を出すと脳に障害が残ると聞きました。本当ですか?
高熱だけで、脳に障害が残るわけではありません。
しかし、髄膜炎、急性脳炎・脳などの病気は、脳にダメージを残す可能性があります。熱の高さで判断せず、子どもの様子を確認しましょう。
熱はありますが元気です。保育園に登園させてもいいですか?
37.5度以上の熱があれば、登園を控えましょう。
また、24時間以内に38.0度以上の発熱があった場合や、解熱剤を使用している場合は、自宅で過ごしましょう。
「けいれん」と「てんかん」は同じものですか?
「けいれん」と「てんかん」は同じようにとらえられがちですが、異なるものです。
けいれんは、不随意な筋収縮を指し、てんかんは脳の神経細胞の異常によって、てんかん発作をくりかえし起こす状態です。
てんかんでは、けいれん以外にも様々な神経症状がみられます。
やるべきこととやってはいけないことを見極めて子どもの発熱には適切な対応を
子どもの発熱は、免疫システムが未熟なので頻繁に起こります。子どもの場合、一般的に体温が37.5度以上を発熱としますが、体温が38度以上になったら警戒が必要です。
特に生後3ヵ月未満では、すぐに医療機関を受診しましょう。
発熱の際は、体温だけでなく、子どもの様子を見て判断しましょう。他に異常な症状が見られた場合には医療機関に連絡すべきです。
水分補給とこまめな体温調節を適切に行い、食べたがらないのに無理に食事をさせたり、解熱剤を必要以上に使ったりするのは避けましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。