赤ちゃんが生まれてから最初の数年間は、子どもの成長と健康状態の確認、病気の早期発見と予防を行うための重要な期間です。
そこで実施されるのが乳幼児健診ですが、「乳幼児健康診査は何回あるの?」「絶対に行かなくてはならないの?」など、さまざまな不安がありますよね。
本記事では、乳幼児健診のスケジュールや内容、どこまでが義務になるのかを解説していきます。
乳幼児健診を活用して、子どもの健康管理をサポートしてもらいましょう。
目次
乳幼児健診(乳幼児健康診査)とは?どんな目的で行われる健診?
乳幼児健診は、正式名称を「乳幼児健康診査」といい、子どもの健康状態を把握し、健康の保持や発育をサポートするための重要なプログラムです。
健診では、子どもの身長や体重の計測などを行い、医師が診察を行います。
医師、歯科医師、保健師、栄養士、心理士など、各分野の専門家が連携して健診を行います。また、育児に関する疑問や悩みを専門家に相談する貴重な機会でもあります。
不安や問題点を解消するためにも、定期的な乳幼児健診が重要です。
健診は、母子健康法で定められた義務のものと、親が任意で受けることができるものの2つがあります。次の章で詳しいスケジュールについて確認しましょう。
乳幼児健診(乳幼児健康診査)はいつ行われる?スケジュールを解説
母子健康法で定められている乳幼児健診は以下の2回です。
- 1歳6か月
- 3歳
「1歳6か月児健康診査」と「3歳児健康診査」は、子どもの成長過程の中で重要な時期です。法定健診なので、忘れずに受診しましょう。
その他の健診については、法律で定められているものはありません。しかし、市町村など各自治体が定期的に実施している場合も多くあります。
一般的に、任意の乳幼児健診が行われることが多い時期は以下のとおりです。
- 1か月
- 3~4か月
- 6~7か月
- 9~10か月
上記の時期は一例であり、各自治体により異なる場合があります。各自治体のホームページなどで確認し、しっかりと受診日を把握しておくのがおすすめです。
市町村などが行っているものは基本的に無料で受けられます。また、自治体が無料で提供していなくても、補助金制度を利用できるケースがあります。
乳幼児健診(乳幼児健康診査)の内容は?どんなことをチェックしてもらう?費用は?
乳幼児健診の内容は時期によって異なります。各自治体ごとで実施する検査項目が変動する場合もあるため、しっかりと把握しておくようにしましょう。
以下では、各期間で受けられる内容や費用相場について解説します。
「1歳6か月児健康診査」と「3歳児健康診査」や各自治体が実施している健診は無料で受けられます。任意健診の場合は3,000〜5,000円程度が相場です。
費用は施設によって異なるため、具体的な金額については各施設に直接問い合わせてください。
1か月児健康診査
1か月児健康診査で行われる子どもの診察内容は次のとおりです。
- 母乳やミルクの摂取状況:しっかりと飲むことができているかどうかを確認
- 体重:順調に増えているか確認
- 頭囲:頭囲の増加を確認
- 姿勢や筋肉の緊張:全身の筋肉の状態や姿勢を確認
- 手足の動き:活発に動かすことができているかを確認
- 音や光への反応:視聴覚の発達を見るため、周囲の音や光に反応があるか確認
母親の検査項目は主に以下の5つです。
- 血圧
- 尿検査
- 血液検査
- 悪露、子宮復古
- 授乳状態
初めての育児を経験する保護者にとって、生後1か月は不安や疑問が多くなりやすい期間です。
健診は悩みを専門家と共有し、解決策を聞ける重要な機会につながります。
3~4か月児健康診査
3~4か月児健康診査の子どもの検査項目は、主に以下が挙げられます。
- 身体計測:体重、身長、頭囲、胸囲を測定
- 精神運動発達:首のすわり、物を追う視線、反応性の笑い、ガラガラを持って振る行動、人の顔や声に反応するなどの確認
- 病気の早期発見:先天性股関節脱臼、斜頸、先天性心疾患など、早期発見と治療が重要な疾患の確認
これから始まる離乳食の準備や栄養、日常生活の過ごし方についての説明があります。
育児の進行具合や悩み事を共有し、専門家のアドバイスを得ることができます。
6~7か月児健康診査
6〜7か月児健康診査では、主に以下の項目をチェックします。
- 身体計測:体重、身長、頭囲など、成長の確認
- 一般的な診察:健康状態の確認
- 精神運動発達:行動や反応を観察
- 顔布テスト:仰向けにした赤ちゃんが自分で顔にかけられた布を払いのけるかを確認
- 座位の確認:手がついた状態でわずかに座位がとれるかを確認
また、離乳食の進行状況について伝えることができ、必要に応じてアドバイスがもらえます。
予防接種のスケジュールや神経芽細胞腫の検査の受診状況についても医師と相談しましょう。
9~10か月児健康診査
9〜10か月児健康診査では、次のことを主にチェックします。
- 身体計測:身長、体重、頭囲などの発育状況の確認
- 一般的な診察:医師は視力、聴力、心肺機能などの健康状態を確認
- 精神運動発達状態:行動や反応を観察
- パラシュート反応のチェック:赤ちゃんがうつ伏せの状態から落ちると感じると、手を伸ばして自分を守ろうとする反射反応で、身体的な発達状況を確認
9〜10か月健診でも、6~7ヶ月児健康診査時と同じく離乳食の進行状況の確認が行われます。
1歳6か月児健康診査
- 身体計測:身長、体重、頭囲などの身体的な成長の診察
- 内科的診察:心肺機能、視力、聴力など、全般的な健康状態を確認
- 発達チェック:積み木を積む、意味のある単語を話す、転ばずに歩く、絵本の中の知っているものを指差すなどの検査
- 生活習慣と行動:睡眠パターン、食事習慣など、日常生活の習慣や行動パターンに問題がないかの確認
- 視覚と聴覚の評価:この時期、調節性内斜視や間歇性外斜視、軽度の難聴などがないか確認
- 歯科検診:虫歯の有無や口内の衛生状態の確認など
この健診は母子健康法により定められており、自治体が提供しているため基本的に無料で受けられます。
3歳児健康診査
3歳児健康診査では、以下の主要なチェックが行われます。
- 視力と聴力のテスト:良好な視力と聴力の確認
- 医師による問診:全般的な健康状態を確認
- 生活習慣のチェック:睡眠パターン、食事習慣、運動習慣など日常の生活習慣の確認
- 言語、精神、運動の発達確認:子どもが適切に話し、考え、動けるか確認
- 歯と尿の検査:口腔衛生と腎臓の健康状態を確認
3歳になると「イヤイヤ期」などが続く場合があります。育児の悩みがあれば、相談しましょう。
乳幼児健診(乳幼児健康診査)は義務?行かないとどうなる?
乳幼児は義務なのか、行かないとどうなるのか、解説します。
乳幼児健診は義務?
前述したとおり、「1歳6か月児健診」「3歳児健診」は、法定義務があります。
また、その他の乳幼児健診は、法律により義務付けられているものではありませんが、各自治体は健診を通じて、地域の乳幼児の成長と健康状態を把握します。
必要に応じたサポートを受けられる重要な場でもあります。万が一何かあったときに早めに対応できるようにするためにも、基本的には受診するようにしましょう。
乳幼児健診に行かないとどうなる?
乳幼児健診を受けない場合、自治体から電話がきたり、職員が家庭を訪問したりするケースがほとんどです。
子供の健康状態や発達に問題がないかを確認されるでしょう。
乳幼児健診は、子供の健康と発達を確認し、適切な支援を得るための重要な機会です。可能な限り受けることをおすすめします。
乳幼児健診に行かずに健診期間を過ぎてしまったら?
もし乳幼児健診の予定が過ぎてしまった場合、居住地域の保健センターや保健所にある「母子保健窓口」に相談しましょう。
過ぎてしまった健診にどのように対応すべきか、具体的なアドバイスを受けることができます。
また、自己負担にはなりますが、医療機関でも健診を受けられます。自治体の健診が受けられない場合は、医療機関の利用を検討しましょう。
乳幼児健診(乳幼児健康診査)に関するよくある質問
乳幼児健診に関するよくある質問をまとめました。それぞれに回答します。
乳幼児健診を受けるのに保険証や乳児医療証は必要ですか?
乳幼児健診を受ける際には、原則として保険証や乳児医療証の提示は不要です。
しかし、健康診断の結果、治療が必要となった場合は必要になります。
自治体や医療機関によっては提示を求められる場合もあるため、初めて健診を受ける際には必ず確認してください。
引越しをしました。新しい居住地で乳幼児健診を受けるためにはどうしたらいいですか?
引越しをした場合、住所地の市区町村役場や保健所に引越しの届け出を行えば、一般的には乳幼児健診の個別案内が届きます。
引越しの際は、乳幼児健診について必ず問い合わせをしましょう。
定められた日に用事があり乳幼児健診に行けません。どうしたらいいですか?
定められた日に乳幼児健診に行けない場合は、早めにその旨を連絡し、別の日に予約を取り直すのがおすすめです。
しかし、期間を大幅に過ぎてしまうと自己負担が必要となる場合もあるので、早めの連絡が必要です。
子どもを乳幼児健診に連れて行かないと親はなんらかの罪に問われますか?
乳幼児健診を受けなかったからといって親が法的な罰を受けることはありません。
しかし、子どもの健康状態を把握し、必要なケアや支援を得るためにも、可能な限り受診しましょう。
乳幼児健診(乳幼児健康診査)は子どもの成長を把握する大切な健診
乳幼児健診(乳幼児健康診査)は、子どもの健康状態や発育をチェックし、保護者へ適切なアドバイスを受けられる重要な機会です。
医師や歯科医師、保健師、栄養士、心理士などが連携して、子どもの身体的・精神的発達の状況を確認します。
母子健康法では1歳6ヶ月と3歳の健診が規定されていますが、自治体によってはそれ以外の時期にも健診を受けられます。
子どもの成長過程を詳細に把握し、早期に問題を見つけ出すために、受診をしましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。