こどものインフルエンザに関して「こどもがインフルエンザに罹ったらどう対処すればいいの?」「予防接種は必要なの?」といった疑問を持つ保護者も多いでしょう。
こどものインフルエンザは特徴を理解したうえで、正しい対応をする必要があります。
本記事では、こどもがインフルエンザに罹患した際の特徴や初期症状、予防接種の必要性、感染後の対策などを解説します。
インフルエンザがうつる感染経路の予防や、家庭内感染を防ぐ方法も紹介しているので、参考にしてみてください。
目次
インフルエンザとは?
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって発症する気道感染症です。
インフルエンザウイルスに感染すると、発熱(38度以上の高熱)、頭痛、筋肉痛、全身のだるさなどの症状が現れます。
感染経路は、咳やくしゃみの飛沫感染や手指による接触感染です。感染から発症までの潜伏期間は約1〜3日で、強い感染力を持ちます。また、インフルエンザウイルスは1種類だけでないうえに変異するため、1度罹患しても再度発症する可能性があります。
インフルエンザと風邪の違い
インフルエンザは風邪と比較した際、症状の強さや現れ方に違いが出ます。
風邪の場合は軽度の症状が中心で全身症状が少ないのに対して、インフルエンザは高熱や全身の症状が強く、急激に進行するのが特徴です。
そして、インフルエンザは重症化すると、肺炎やインフルエンザ脳炎、脳症、気管支炎などの合併症にかかる可能性もあります。免疫力が弱い乳幼児やこどもは特に注意が必要です。
インフルエンザに罹患する原因
インフルエンザに罹患する原因は、飛沫感染と接触感染の2種類です。
飛沫感染は、感染者が咳やくしゃみでウイルスを放出し、他人がそれを吸い込むことで感染します。
接触感染は、すでに感染している者が咳やくしゃみを手で抑え、その後ドアノブや吊り革などの物に触れることでウイルスが付着し、他人の手へと移る感染です。
予防をするためには、これらの感染経路を絶つことを意識しましょう。
また、インフルエンザが冬季に流行する理由は、インフルエンザウイルスが低温で乾燥した空間で長生きするためです。
乾燥した季節はウイルスが空中を漂いやすく、人々の抵抗力が低下するため感染しやすくなります。
こどもがインフルエンザに罹患した場合の治療方法は?どんな薬が使われる?
インフルエンザの治療は、症状を軽減するための対症療法と、ウイルスの増殖を抑制する抗インフルエンザ薬による治療が主に行われます。
対症療法では、主に発熱・咳・痰・倦怠感などに対しての処置が施されます。
抗インフルエンザ薬は発熱から2日以内に使用することで、発熱期間を約1日短縮し、他人への感染リスクを減らせる薬です。
こどもの体重や普段の服薬状況などに合わせて薬の種類が決まります。
抗インフルエンザ薬の種類は主に、タミフル、リレンザ、イナビル、ラビアクタ、ゾフレーザの5種類です。
- 抗インフルエンザ薬のタミフル
体重37.5kg未満でドライシロップを、37.5kg以上でカプセルを使用します。新生児・乳児(1歳未満)から使用でき、ジェネリック医薬品の選択も可能です。
タミフルは、一般的に安全な医薬品ですが、服用後は経過観察を徹底し、服用後に何らかの異常を感じた場合は、すぐに医師に相談してください。
- リレンザ・イナビル
吸入薬で、リレンザは5日連続で1日2回、イナビルは1回のみの服用で治療が完了します。現状、イナビルは乳幼児に対するデータが不十分なため、乳幼児に対しての使用は推奨されていません。
- ゾフルーザ錠
1回の服用で完結するため、体重が10kg以上ある6歳以上の錠剤服用に慣れたこどもに処方されます。
しかし、抗インフルエンザ薬の有効性が弱くなる「耐性ウイルス」が出現するケースがあるので、慎重な投与が必要です。
- ラピアクタ
注射薬で、口からの投与が困難なこどもに処方されます。
最も重要なことは、こどもが確実に薬を服用できることです。薬の選択は医師としっかり相談して決定しましょう。
こどもがインフルエンザに罹患した場合の対応方法は?
こどもがインフルエンザに罹患した場合の家庭での対応方法を説明します。適切な対応方法を知り、こどもの回復に努めましょう。
インフルエンザに罹患したこどもへの対応方法
インフルエンザに罹患したこどもへの対応方法としては、こどもの安静が最も重要です。
寝かせる場所は大人の視界内に設け、異常があればすぐに対応できるようにしましょう。安静を保つために室内の適切な温度管理も大切です。室温は18〜20度が適切です。
加えて、高熱による脱水を防ぐため、こまめに水分を摂るように心掛けてください。
食事は無理に与えず、軽いものを少しずつ食べさせてあげましょう。処方された薬は指示通りに、最後まで飲ませてください。
インフルエンザの家庭内感染拡大を防ぐ方法
こどもの看病をする際は、家庭内感染拡大を防止する必要があります。まずは、インフルエンザウイルスを不活性化させる環境作りが重要です。
エタノールを含む消毒剤によるこまめな消毒を行い、湿度50〜60%以上で維持することでインフルエンザが活動しにくい環境を作りましょう。
また、新鮮な空気の流れを保つため、1時間に1~2回ほどの定期的な換気も必要です。湿度の管理と換気は両立しにくいかもしれませんが、加湿器を利用することで、湿度を迅速に確保しつつ換気を続けられます。
加湿器がなければ、湿ったタオルを使用しても構いません。
こどもがインフルエンザに罹患した場合の学校への連絡方法
こどもがインフルエンザに罹患した場合、必ず学校や保育園・幼稚園へ連絡しましょう。
インフルエンザは学校感染症の第2種に該当します。かかった際は「症状が出てから5日経ち、また熱が下がってから2日(幼児の場合は3日)経過」するまで、学校への出席停止が推奨されています。
学校にはインフルエンザに感染したことを伝え、具体的な手続きや期間について確認しましょう。
こどものインフルエンザを予防するために!予防接種は有効?
インフルエンザを予防するためには予防接種が有効です。以下では、インフルエンザ予防接種の効果や詳細について詳しく解説します。
インフルエンザの予防接種とは?
インフルエンザ予防接種は、体内で抗体生成を促進し、インフルエンザの発症を抑制する役割を果たします。
しかし、予防接種を受けたとしても、かかる可能性はあるため、その後の感染対策も重要です。
インフルエンザワクチンは1年前の接種では効果がなく、毎年接種する必要があります。インフルエンザワクチンは毎年予想される流行ウイルスに対応できるように考えられているので、前年に接種したワクチンの効果は新シーズンでは期待できません。
前年にワクチンを受けていたとしても、今年の予防として再度接種しましょう。
インフルエンザの予防接種はこどもに効果がある?
インフルエンザの予防接種は、こどもにも効果があることが厚生労働省から立証されています。
接種を受けない人の感染リスクと比較した場合、予防接種した人の感染リスクは相対的に減少するとの研究結果が出ています。6歳未満のこどもを対象にした研究では、インフルエンザ予防接種の効果は60%です。
こどもの免疫力は成人に比べて弱く、重症化しやすい傾向があります。合併症を発症する危険性もあるため、乳幼児期からのワクチン接種は重要です。
引用元:厚生労働省インフルエンザQ&A
こどもがインフルエンザの予防接種を受ける回数は?
インフルエンザの予防接種回数は、生後6カ月から12歳までのこどもには、毎年2回の接種が推奨されています。
2回目の接種は、1回目から2〜4週間間隔をあけて接種を行います。こどもの場合、一度の接種だけでは不十分な場合があります。また、接種するワクチンの量は年齢によって異なります。
- 生後6カ月から3歳未満のこども:0.25mlを2回接種
- 3歳から13歳未満のこども:0.5mlを2回接種
13歳以上の場合は、0.5mlのワクチンを1度のみの接種が通常です。
こどもがインフルエンザの予防接種を受ける時期は?
インフルエンザは通常、日本では12月から4月までの間に流行し、ピーク時は1月末から3月初旬です。それを考慮すると、12月中旬までには予防接種の完了が理想的です。
こどもが充分な免疫を得るには2回目の接種後、約2週間の期間が必要とされています。そのため、11月中に2回目の接種を終えておきましょう。
10月に1回目、11月に2回目の接種を行うスケジュールがおすすめです。インフルエンザの流行時期には適切な免疫が形成されるよう、計画的に予防接種を受けましょう。
こどものインフルエンザの予防接種代金はいくら?
予防接種1回の価格は、3,000〜5,000円が相場です。
治療ではなく予防のため、健康保険は適応されません。原則としてすべて自費負担となり、病院により価格は異なります。
地域によっては独自の補助制度を設けているケースもあるので、事前に確認してみてください。
こどものインフルエンザに関するよくある質問
こどものインフルエンザに関する、よくある質問をまとめました。
夜になってこどもが急に高熱を出しました。すぐ病院に連れて行くべきですか?
こどもの様子を確認し以下の症状がみられる場合は、医療機関へ連れて行きましょう。
- 活力がなく、ぐったりとしている
- 顔色が変わっている
- 意識が朦朧としている・無反応
- 呼吸に違和感がある
- 咳がひどい
これらの症状が現れた場合、夜間であったとしても急患対応の医療施設を受診してください。
こどもに卵アレルギーがあります。インフルエンザの予防接種は受けられますか?
インフルエンザワクチンには微量の卵成分が含まれますが、卵アレルギーのこどもでも大半は接種可能です。
現代の技術で卵由来の成分は更に減少していますが念のため、医師との相談をおすすめします。
こどもがインフルエンザだと診断された場合に解熱剤は使わない方が良いですか?
熱は体がウイルスと戦うサインであるため、解熱剤で無理に下げる必要はありません。
ただし、38度以上の高熱が続くようであれば解熱剤の使用を検討してください。1回使用した後は、最低でも6時間の間隔を置いてください。
タミフルなどの特効薬があるので予防接種は必要ありませんか?
特効薬であるタミフルはウイルス増殖を制限し、発症を防ぐ役割があります。
しかし、その効果は投与期間中のみで長期的な予防には適していないため、インフルエンザの予防接種が必要です。
何歳からインフルエンザの予防接種を受けられますか?
インフルエンザの予防接種は生後6か月(満6か月)から受けることが可能です。一般的には、生後1年から多くのこどもが接種します。
こどものインフルエンザの特徴を理解して早めの対策を
インフルエンザウイルスは普通の風邪とは異なり、急速に進行し強い症状を伴います。
特に、免疫力が未熟な乳幼児は重症化や合併症のリスクがあります。インフルエンザの傾向がある場合は、医師の診察を受けましょう。
また、罹患してしまった場合、自宅での対応方法は以下のポイントを抑えましょう。
- こどもを大人の視界内で安静な状態にする
- 室温は18〜20度、湿度は50〜60%にする
- こまめに水分を摂る
- 食事は、軽いものを少しずつ食べさせるようにする
- 処方された薬は指示通りに、最後まで飲ませる
そして、インフルエンザを予防するためには予防接種が有効です。
こどもの予防接種で知っておくべきポイントは、次の通りです。
- 毎年接種する必要がある
- 生後6カ月から12歳までのこどもは2回の接種が必要
- 11月中に2回目の接種を終える
インフルエンザが流行する前の予防をしっかりと行い、もし罹患してしまった場合は適切な対応を心がけましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。