「おたふく風邪の予防接種は任意だと聞いたけど、接種したほうが良いの?」
「リスクはないの?」
など、おたふく風邪の予防接種には、不安や疑問があるかもしれません。
おたふく風邪は、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症です。一度かかると再びかかることは、ほとんどないとされ、ムンプスワクチンを接種すれば発症・重症化が防げます。
本記事では、おたふく風邪の予防接種を受けるメリットや、副反応などのリスクについて解説します。
予防接種を受ける・受けないを判断する際の参考にしてください。
目次
おたふく風邪とは?流行性耳下腺炎の症状と気になる合併症
おたふく風邪は、正式な名称を「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」といいます。
ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、感染すると2~3週間の潜伏期間の後、耳の下(耳下腺)が腫れて痛むのが特徴です。
患者の45~47%が4歳以下、最もかかりやすいのは4歳児だといわれています。
おたふく風邪は、合併症を引き起こしやすく注意が必要です。
これまでに以下のような合併症が報告されています。
- 無菌性髄膜炎
- 重度の難聴
- 脳炎
- 精巣炎
- 卵巣炎
- 膵炎
- 妊娠早期の流産
おたふく風邪は子どもの病気と思われがちですが、大人でもかかることがあります。
しかも、大人がおたふく風邪になると、子どもよりも重い症状が出やすいといわれています。
おたふく風邪の詳しい症状は、次の記事で解説しています。こちらも合わせてご覧ください。
予防接種を受けることで防げるおたふく風邪のリスク
おたふく風邪の予防接種は、予防接種法で定められている誰もがみな受けるべき予防接種(定期接種)ではなく、任意接種で、接種するかどうかは個人の判断です。
予防接種を受けて防げるリスクも多いので、うけるかどうかは、リスクをよく理解して判断しましょう。
予防接種によって、以下のようなおたふく風邪の症状や障害を防ぐことができます。それぞれ簡単に解説します。
- ムンプス難聴
- 髄膜炎・脳炎・膵炎など
- 生殖機能の低下
- 耳の下(耳下腺)の腫れ
ムンプス難聴
ムンプス難聴は、おたふく風邪にかかった人の約1,000人に1人が発症し、年間700人ほどがムンプス難聴になっているといわれてます。
ステロイドを使って治療を行いますが、完全な治癒は難しく、一度難聴になってしまうと生涯にわたって障害が残りやすい合併症です。
髄膜炎・脳炎・膵炎など
おたふく風邪を引き起こすムンプスウイルスは、唾液腺だけでなく髄膜や耳、精巣・卵巣、膵臓などにも感染しやすいといわれています。
そのため、おたふく風邪になると髄膜炎や脳炎、膵炎といった合併症が起こりやすくなります。
そのなかでも、起きやすい合併症のひとつが無菌性髄膜炎です。おたふく風邪になった約50人に1人の割合で無菌性髄膜炎を発症し、強い頭痛や嘔吐をおこします。
髄膜炎は後遺症なく治ることが多いですが、まれに脳炎を併発すると後遺症が残る場合もあるため、注意が必要です。
生殖機能の低下
思春期以降におたふく風邪になると、精巣炎や卵巣炎といった合併症によって生殖機能が低下することがあります。
精巣炎が不妊症の原因になることは少ないのですが、合併率が20〜40%と高く、人によっては睾丸(こうがん)萎縮を伴って精子数が少なくなることがあると考えられています。
また、妊娠初期におたふく風邪になることで、自然流産のリスクが高まるといわれています。
生殖機能が低下すると、将来的に子どもが持てなくなる可能性もあります。リスクを防ぐには、予防接種も有効な手段です。
耳の下(耳下腺)の腫れ
おたふく風邪の代表的な症状に、耳の下(耳下腺)の腫れがあります。発症するとまず片側が腫れ、しばらくして反対側も腫れてくるのが特徴です。
耳下腺の腫れは痛みを伴うことが多く、唾液の分泌によって痛みが増します。
予防接種を受けることで、耳下腺の腫れをはじめとする諸症状を予防できます。
予防接種で本当に効果が得られるのか?
日本ではおたふく風邪のワクチンは任意接種ですが、世界の国々には定期接種(誰もが受けるべき予防接種)に定めているところもあります。
ワクチン導入以前を100%とする場合、1回定期接種をしている国で88%、2回定期接種している国では99%おたふく風邪の発症が抑えられているデータもあります。
実際、予防接種の接種率を維持しているフィンランドでは、1996年に野生株の排除を宣言すると同時に、おたふくかぜワクチンによる重篤な後遺症や死亡例がなかったことが示されました。
ワクチンによっておたふく風邪の発症を防げば、合併症を発症するリスクも低下します。
ふく風邪の予防接種を受けるリスク
おたふく風邪の予防接種にはメリットだけでなくリスクもあります。
頻度は低いですが、次のようなリスクがあるので、予防接種をうけるかどうかを総合的に判断しましょう。
- 無菌性髄膜炎(40,000接種あたり1人の割合)
- 微熱
- 耳の下(耳下腺)やその周辺の腫れ
- アナフィラキシーショック
- 難聴
- 精巣炎
- 血小板減少性紫斑病
おたふく風邪の予防接種は何回受ける?費用は?
おたふく風邪の予防接種回数と、かかる費用を解説します。
おたふく風邪の予防接種は2回受けるのが一般的
おたふく風邪の予防接種は、2回受けるのが一般的です。タイミングは以下のとおりです。
- 1回目:1歳になったとき
- 2回目:小学校入学前の1年間
日本小児科学会では、1歳になったらできるだけ早めに1回目の接種を受けることを推奨しています。
おたふく風邪の予防接種にかかる費用
おたふく風邪の予防接種にかかる費用は、任意接種のため医療機関によって異なります。おおむね1回あたり3,000〜8,000円に設定されているようです。
住んでいる自治体によっては、おたふく風邪ワクチンの接種費用の助成が受けられます。
助成を行っている自治体やその金額は厚生労働省や自治体のホームページに掲載されているので、チェックしてみましょう。
おたふく風邪の予防接種に関するよくある質問
おたふく風邪の予防接種に関するよくある質問をまとめました。予防接種を受けるかどうか判断する際の参考にしてください。
おたふく風邪の予防接種を受ければ、もうおたふく風邪にかかりませんか?
おたふく風邪の予防接種は、予防効果が100%というわけではありません。
ただ、ワクチン導入以前を100%とする場合、1回定期接種をしている国で88%、2回定期接種している国では99%おたふく風邪の発症が抑えられているデータがあり、高い発症予防効果が期待できます。
国立感染症研究所では、おたふく風邪の予防接種を受けた乳幼児241例を対象に発症阻止効果の調査が行なわれています。
その結果、接種後1~12年の間におたふく風邪を発症したのは1例のみで、発症率は約0.4%でした。
兄弟や親など、家族の中におたふく風邪の予防接種を受けていない人がいます。今から受けた方がいいですか?
大人がおたふく風邪になると重症化しやすいと言われています。今からでも予防接種をおすすめします。
これまでおたふく風邪にかかったことがない人は、大人であっても予防接種が受けられます。
この場合、1回目の接種後28日空ければ、2回目の接種が可能です。
おたふくかぜの予防接種を希望する人は、かかりつけの医療機関で相談してみてください。
おたふく風邪の予防接種を受けられない人もいますか?
以下の条件に当てはまる人は予防接種が受けられません。
- 発熱している
- 重い急性疾患にかかっている予防接種でアナフィラキシーを起こしたことがある
- 免疫機能に異常がある
- 免疫抑制剤などを服用している
- 妊娠している可能性がある
- 医師が予防接種を受けるべきでないと判断した
心臓や血管、腎臓、肝臓、血液に持病がある人や発育に障害がある人は、事前に医師とよく相談して接種するかどうかを決めましょう。
おたふく風邪の予防接種は危険だからやめた方が良いと言われました。本当ですか?
おたふく風邪の予防接種にリスクがあるのは事実です。予防接種で、次の症状が出ることがあります。
- 無菌性髄膜炎(40,000接種あたり1人の割合)
- 微熱
- 耳の下(耳下腺)やその周辺の腫れ
- アナフィラキシーショック
- 難聴
- 精巣炎
- 血小板減少性紫斑病
しかし、これらの症状が出るのは極めてまれで、出たとしても、おたふく風邪にかかったときより症状が軽いことがほとんどです。
下の子がまだ予防接種を受けていないのに、上の子がおたふく風邪になりました。今すぐ接種すれば効果がありますか?
予防接種によって抗体がつくまでには、2週間ほどかかり、すぐに効果は出ません。
予防接種のタイミングは、かかりつけの医療機関に相談してください。
おたふく風邪の予防接種はメリットとリスクを理解して受けるかどうか判断を!
おたふく風邪は、難聴や脳炎といった重篤な合併症を起こすことがあります。
合併症による障害・後遺症を防ぐには、予防接種が有効です。2回の予防接種で、約88%の発症予防効果があるといわれています。
しかし、予防接種にはリスクがあるのも事実です。
予防接種を受けるかどうか迷っている人は、メリットとリスクを総合的に考えて、接種するかどうか判断しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。