2023.07.20

熱が出やすい子の特徴|乳幼児がよく熱を出す原因や病院へ連れていくべき判断基準

子どもは、大人に比べて免疫機能が未熟なため、熱を出しやすいものです。

しかし「毎週熱を出していても大丈夫?」「定期的に熱が出るのは大きな病気なの?」「よく熱を出す子にはどのような原因や特徴がある?」などと不安に感じる方も多いのではないでしょうか?

本記事では、熱が出やすい子どもの特徴や、発熱した際の対処法について解説します。病院で受診するべき判断ポイントも記載していますので、参考にしてください。

目次

熱が出やすい子の特徴は?子どもはよく熱を出す

子どもは、37.5度以上の発熱を頻繁に出します。「うちの子だけが異常なのでは?」と過度に心配する必要はありません。

発熱は病気の存在を示す一つの指標ですが、熱が高いからといって、重症だとは限りません。

子どもの発熱について詳しく解説します。

子どもは大人より体温が高い

子どもが大人より体温が高い理由は、新陳代謝が活発で、皮膚が薄いためです。

大人の場合、深部体温が皮膚を通過する間に低下します。しかし、子どもの皮膚は薄いため、皮膚の温度は大人ほど下がらず、37度前後が一般的です。

また、子どもの汗腺は未発達なので、主な体温調節は皮膚からの熱放散に頼っています。そのため、子どもの体温は上がりやすく、環境温度の変化や厚着、さらに興奮などによって、体温が簡単に上昇してしまいます。

ですから、子どもの体温が一時的に37度を超えることはよくあることです。特に夏の午後など、気温が高い日には37.5度を超えることも、珍しくありません。

免疫がつくまで子どもはよく熱を出す

生まれたばかりの赤ちゃんは、母親からの免疫で守られていますが、生後6ヶ月を過ぎると、母親からもらった免疫は減少していきます。

また、子ども自身の免疫が発達し始めるのは1歳を過ぎてからです。生後6ヶ月〜1歳半の間は免疫が低い傾向にあり、ウイルスに感染しやすい状態で、たびたび熱を出すことがあります。

「熱が出る」には「発熱」と「うつ熱」がある

子どもの熱には「発熱」と「うつ熱」があります。

発熱は、ウイルスなどの感染により体温が上昇することで、うつ熱は外部環境が体温に影響して体温上昇がおきる現象です。

特に、体温調節が未熟な子どもは、うつ熱になりやすい傾向にあります。それぞれ詳しく解説します。

発熱とは

発熱は、ウイルスや細菌によって体が攻撃に対処する反応です。

異物を感知すると、体から体温を上げるよう指示が出されます。免疫細胞を高温で活発に働かせるためといわれています。

感染源との戦いを有利に進めるための発熱なので、免疫システムが有効に機能している証拠です。

うつ熱とは

うつ熱は、外部環境の影響や体の放熱がうまくできず、おこります。

子どもの汗腺は未発達で、汗をかいても体温調節がうまくできず、体に熱がこもってしまいます。これが、うつ熱です。

うつ熱による高体温の対策は、服を脱がせて風通しの良い、涼しい場所に移動することです。急激に体を冷やす必要はありません。

子どもが発熱する主な原因

子どもが発熱する主な原因は次の通りです。

  • 一般的な風邪
  • 急性中耳炎
  • 周期性発熱症候群=PFAPA
  • はしか(麻疹)
  • 突発性発疹
  • プール熱(咽頭結膜炎)
  • 溶連菌感染症
  • おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
  • 手足口病
  • 水ぼうそう
  • ヘルパンギーナ
  • 川崎病
  • 尿路感染症
  • その他

それぞれ詳しく解説します。

一般的な風邪

一般的な風邪は、正式には「風邪症候群」といい、鼻やのどの急性炎症の総称です。

前述しましたが、風邪の原因となるウイルスなどが体内へ侵入したので、体がウイルスと戦うために体温を上げています。

症状は主に、くしゃみ、鼻づまり、鼻水、のどの痛み、咳、たん、発熱などがあります。

急性中耳炎

急性中耳炎は、鼻咽頭に感染したウイルスが、耳管を通って中耳に侵入し、炎症が引き起こされています。

化膿してできた「うみ」が中耳の空間に溜まり、それが鼓膜を押圧します。その結果、激しい痛み、発熱、耳が詰まった感覚などの症状が出ます。

炎症が続いて、「うみ」が多くなりすぎると、鼓膜が破れ、耳漏(耳から液体が出る状態)が生じる場合もあります。

周期性発熱症候群=PFAPA

周期性発熱症候群(PFAPA)は、生まれつきの自然免疫システムの反応が過剰になって発症する自己炎症性疾患です。

原因や詳細な病態は、未だ明らかにされていません。

主な症状としては、周期的に発生する発熱があげられ、発熱期間は通常3〜6日間続きます。

発熱以外に、アフタ性口内炎や頸部リンパ節炎、咽頭炎などもみられます。

発熱の発作は約3〜8週間ごとに繰り返され、発作と発作の間は無症状です。

はしか(麻疹)

はしかは、麻しんウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性発疹症で、高熱、上気道症状、目やに、発疹が出ます。

感染力は非常に強く、一人が感染すると集団内で流行する可能性が高くなります。

また、はしかは、肺炎や中耳炎、脳炎などの合併症を引き起こす可能性もあるため、注意が必要な病気です。

突発性発疹

突発性発疹は、乳幼児に発症する疾患で、原因となるのはヘルペスウイルスの一種であるHHV-6またはHHV-7です。

急な高熱の後、熱が下がったタイミングで発疹が現れます。昔は知恵熱といわれていた熱は、ほとんどが突発性発疹だろうといわれています。

プール熱(咽頭結膜炎)

プール熱(咽頭結膜炎)は、アデノウイルスによって引き起こされる感染症です。

プールでの接触やタオルの共用により感染することもあるので、、プール熱とも呼ばれます。

年間を通じて発生しますが、特に6月末から夏季にかけて流行します。発熱(38〜39度)や結膜炎、のどの痛みといった症状がでます。

溶連菌感染症

溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌という細菌が喉に感染することで発症します。

喉の痛みや発熱があり、時には体や手足に発疹が出ます。

咳や鼻水はほとんど出ませんが、口の中では、舌が苺のように赤くぼつぼつとし、喉の奥の扁桃部分に「うみ」が付きます。

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)

おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)は、片側または両側の唾液腺の腫れを発症する、ウイルス感染症です。

主な症状は、発熱と顎周りの腫れです。

手足口病

手足口病は水疱性の発疹がでる、ウイルス性の感染症です。

手や足、口の中に2~3mmの水疱性の発疹ができます。発熱は3分の1の人にみられ、高熱は、あまり出ません。ほとんどの場合、数日で回復します。

水ぼうそう

水ぼうそうは、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる発疹性の病気です。

症状は発熱から始まり、皮膚の表面が赤くなる発疹がみられます。その後、液体が含まれる水疱や「かさぶた」になり治癒するとされています。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナは、夏に流行する急性のウイルス性咽頭炎です。

発熱の後に咽頭痛や赤みを感じ、直径1〜2mmほどの水疱が口の中にできます。

川崎病

川崎病は、主に4歳以下の乳幼児が発症しやすい、原因不明の病気です。

血管全体に炎症が生じて多様な症状を引き起こします。

高熱、両眼の結膜充血、舌に赤くぶつぶつした発疹、全身の発疹、手足の腫れ、そして首のリンパ節の腫れが主な症状です。

尿路感染症

尿路感染症は、腎尿路系(腎臓・尿管・膀胱・尿道)に細菌が感染し、炎症を起こす病気です。

感染が膀胱内であれば膀胱炎、それがさらに進行し腎臓まで細菌が拡大した場合、腎盂腎炎と呼ばれます。

38.5℃以上の発熱や腹痛や背痛、排尿時の痛みなどが発生することがあるでしょう

また、尿の異常な臭いや血尿が観察されることもあります。高熱が出る場合、膀胱炎だけでなく腎盂腎炎の可能性も考慮し、医療機関を受診してください。

その他

今まで説明した病気の他にも、熱の原因は、大人と同じインフルエンザや肺炎、気管支炎、髄膜炎なども考えられます。

また、白血病をはじめとする、悪性腫瘍の初期症状で発熱がみられるケースもあります。

症状が長引く場合や、ぐったりしている様子がみられたら、医療機関を受診しましょう。

子どもが熱を出したらすぐ病院に連れて行くべき?発熱の際にチェックすべき症状

赤ちゃんや子どもが発熱した際には、月齢によって病院に連れて行くかどうか決めるチェックポイントが違います。

下記を参考に、状態に合わせて、病院へ行くべきか判断しましょう。

生後3ヶ月未満の赤ちゃんが発熱している場合にチェックすべきこと

生後3ヶ月未満の赤ちゃんが38度以上発熱している場合、すぐに病院を受診しましょう。生後3ヶ月未満の場合、体が未発達なので、重症化しやすく危険です。入院となる場合もあるでしょう。

しかし、赤ちゃんの体温は環境に大きく影響されます。

37.5℃以上なら注意が必要ですが、部屋の温度が高かったり激しく泣いたりした後には、体温は高くなりやすいので、元気があり、部屋の温度調整ですぐに体温が下がる場合、過度な心配はいりません。

それでも、38度以上の熱が続く場合は、すぐに病院へ連絡しましょう。

生後3ヶ月以上の赤ちゃん~幼児が発熱している場合にチェックすべきこと

生後3ヶ月以上の赤ちゃんが発熱している場合、体温より他の症状が重要です。

厚生労働省の保育所における保育中の対応を参考に、6つの項目をチェックしましょう。

  • 痙攣していないか
  • 小鼻が動き、呼吸速度が速くないか
  • 意識がはっきりとしているか
  • 顔色が悪く、苦しそうではないか
  • 不機嫌でぐったりしていないか
  • 嘔吐や下痢を繰り返していないか

厚生労働省「保育所における感染症対策ガイドライン発熱時の対応」参考

こんな症状が見られたら危険!すぐ受診を!

子どもの発熱時に、下記のような症状がみられる場合、すぐに病院で受診しましょう。

  • 痙攣(けいれん)
  • 呼吸が苦しそう
  • 意識が朦朧(もうろう)としている
  • ぐったりしている
  • 繰り返す下痢や嘔吐

このような症状は重症化している危険があるため、夜間でも、救急外来を受診しましょう。

こんな場合はしばらく様子を見てもOK

上記のような症状がない場合は、焦らずに自宅で様子をみましょう。

とくに下記のような状態であれば、夜間や休日に急いで医療機関に行く必要はありません。

  • 症状が熱のみ
  • 元気がある
  • 食欲がある

自宅で様子を観察して、2〜3日間熱が続くようであれば、念のため医師に相談しましょう。

子どもが発熱した場合の対処法は?水分の補給方法や体温調節について解説

子どもが発熱したら、適切な対処が必要です。水分補給や食事、体温調節など、対処法を解説します。

水分をしっかり摂らせる

発熱時はこまめに水分補給をしましょう。

発熱すると発汗と速い呼吸によって水分と塩分を消耗し、脱水症につながる可能性があります。

おすすめの飲み物と、飲ませてはいけない飲み物は以下の通りです。

おすすめの飲み物

避けたい飲み物

経口補水液

炭酸飲料

幼児用イオンドリンク、スポーツドリンク

熱い飲み物

また、嘔吐を繰り返している場合、無理に水分を摂ると胃を刺激してしまうため、嘔吐が止まるまで待ちましょう。

食事は可能なら摂らせる

まず、水分補給を優先させ、食べものを食べられそうであれば、食事をしましょう。

また、嘔吐や下痢で食事ができないと低血糖になりやすくなります。

下記の食べものを参考に、できる限り食べやすい食事を用意してあげましょう。

おすすめの食品

おすすめしない食品

ヨーグルト、プリン、ゼリー

脂っこいもの

たまご雑炊

消化に悪いもの

うどん

お菓子

体温調節をこまめに行う

子どもが発熱した際は、適切な体温に調節してあげましょう。

震えていたり、手足が冷たくなっている場合は、温かくしてあげましょう。

反対に、手足や顔が赤かったら温めすぎを避け、適度な通気性の確保が大切です。

また、汗をかいた際は、体が冷えすぎず、清潔に保つために、こまめに汗を拭き取り、着替えさせましょう。

首やももの付け根、脇などを冷却パックや冷たい枕で冷やすことも効果的ですが、子どもが拒む場合は、無理に行ってはいけません。

こどもの発熱・熱が出やすい子どもに関するよくある質問

子どもの発熱・熱が出やすい子どもに関する、よく聞かれる質問をまとめました。困ったときに参考にしてみてください。

解熱剤を使っても大丈夫でしょうか?

解熱剤を無理に使用する必要はありません。

夜間や休日など医療機関を受診できない場面で、熱が高くて眠れない、食事がうまく摂れない、など、辛そうな症状がある場合だけ使用してください。

高熱を出すと脳に障害が残るのですか?

風邪による高熱だけでは脳にダメージは生じませんが、熱を出す病気には、脳に後遺症がでる可能性のある疾患もあります。

熱があるときはシャワーやお風呂は控えた方が良いですか?

高熱や体調不良の時は入浴を避けるべきです。

しかし、体温が38度前後で元気であれば、汗を流す程度のシャワーなら大丈夫な場合が多いでしょう。元気な時をみはからって、短時間で済ませましょう。

「知恵熱」とはどんな病気ですか?

昔は、生後約半年頃の赤ちゃんの発熱は「知恵熱」と呼ばれました。

ちょうど歯が生え始めて知恵がついた頃発熱する場合が多かったからです。

現在の突発性発疹が、知恵熱だったとされていますが、知恵熱に医学的な根拠はありません。

子どもの頻繁な発熱はチェックすべきポイントを押さえ適切な対応を

子どもは大人に比べて免疫力が未熟で、頻繁に熱を出します。子どもが37.5度以上発熱するのは、自然な現象で過度に心配する必要はありません。

子どもが熱を出したときの病院に連れて行くかどうかの判断は、以下のチェックポイントを参考にしてください。

  • 痙攣していないか
  • 小鼻が動き、呼吸速度が速くないか
  • 意識がはっきりとしているか
  • 顔色が悪く、苦しそうではないか
  • 不機嫌でぐったりしていないか
  • 何度も嘔吐や下痢をしていないか

また、子どもが発熱した際の、対処法は以下の通りです、

  • 水分をしっかり摂らせる
  • 食事は可能なら摂らせる
  • 体温調節をこまめに行う

子どもが熱を出したら、あせらずに正しく対処しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。