こどもが急に下痢をしたときは親として心配になりますよね。
特に乳幼児の場合は脱水症状に陥る可能性があるため、適切な対応が必要です。
本記事では、こどもが下痢をした時の対応方法や考えられる理由、病院に連れていくべき判断基準について紹介します。
冷静に判断し適切な対応やケアを行うためにも、ぜひ最後までご覧ください。
目次
こどもが下痢をするのはなぜ?7つのよくある理由を紹介
こどもが下痢をした時、まず気になるのが「理由」です。
こどもの下痢は医学的に「急性胃腸炎」と表現される事が多いですが、その理由はさまざまです。
以下では、こどもに下痢症状が現れてしまう理由を紹介します。
食物アレルギー・乳糖不耐症
食物アレルギーを持っているこどもは、特定の食べ物を食べることで体内の免疫システムが過剰に反応し、さまざまな症状を引き起こします。
主な原因物質として、鶏卵・牛乳・小麦が代表的です。消化器系の症状として腹痛や吐き気・嘔吐と並んで「下痢」も現れることがあります。
また、食物に関連した理由として「乳糖不耐症」も考えられます。
乳糖不耐症とは、腸内でミルクや母乳に含まれる乳糖という成分を分解・吸収できず残ることで「下痢」やお腹の張り・酸っぱいにおいの便という症状が現れる疾患です。
乳幼児の場合は、生まれつきの可能性もありますが、腸が何らかの原因でダメージを受けた後に発症する二次性のものが多いと言われています。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎には大きく分けて「ウイルス性胃腸炎」と「細菌性胃腸炎」があります。症状はどちらもほぼ同じで、下痢をはじめとする嘔吐や腹痛・発熱などの症状を起こします。
- ウイルス性胃腸炎
ウイルス性胃腸炎は嘔吐下痢症などとも言われ、冬場に多く発症する傾向にあります。
よく知られているウイルスには、ロタウイルス・ノロウイルスなど。口から入ったウイルスが十二指腸から小腸の粘膜上皮に感染することで発病します。
- 細菌性胃腸炎(食中毒)
細菌性腸炎は別名「食中毒」と言われ、夏場に多い感染症です。
原因にもよりますが、一般に菌を摂取した場合は5~72時間の間に発症します。原因となる食物として、魚介類の加工品・肉・魚・卵・カキなどが挙げられます。
便秘
便が硬くなり栓になってしまうと、排便の圧力で栓が取れた後、頻回の下痢が続くケースがあります。
便秘の原因として、水分不足や運動不足・偏食・野菜不足が原因の可能性が高いですが、ストレスや緊張によって自律神経が正しく働かなったために起こる場合もあります。
ウイルス性胃腸炎
- ロタウイルス
ロタウイルスによって引き起こされる急性のウイルス性胃腸炎の一種で、乳幼児にかかりやすい病気です。
主な症状は、水のような下痢・吐き気・嘔吐・発熱・腹痛です。5歳までにほぼ全てのこどもがロタウイルスに感染すると言われています。
5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。
- ノロウイルス
ノロウイルスは手指や食品などから口に入ることで感染し、下痢をはじめ、嘔吐・腹痛などを引き起こすウイルス性胃腸炎です。
主な症状には下痢、吐き気・嘔吐・腹痛があり、発熱は軽度の場合が多いと言われます。
通常これらの症状が1〜2日続き治癒しますが、乳幼児の場合重症化したり吐しゃ物を誤って気道に詰まらせて死亡する場合もあるので注意が必要です。
また、便や嘔吐物には大量のウイルスが含まれるため、感染拡大しやすいのも特徴です。
細菌性胃腸炎
- O-157
O‐157は、焼肉店等の飲食店や食肉販売業者が提供した食肉を生や加熱不足で食べて感染する事例が多い食中毒です。
海外では肉類の他にも生野菜を食べて感染したケースがあるのも特徴の1つです。
おおよそ3~8日の潜伏期間を置いて、水様便(下痢)の症状が現れますが、悪化すると、激しい腹痛を伴う血便が出る場合もあります。
その他
他にも、上気道感染に付随しての下痢があります。この場合、上気道症状が治ってもしばらく下痢が続くことがあります。また、抗生剤の副反応が下痢の原因になることもあります。
こどもを病院へ連れて行くべき?下痢の際にチェックすべき症状
こどもが下痢をした場合、理由が判明したとしても自然に治るのを待つか悩む方も多いでしょう。
以下ではチェックすべきポイントを紹介します。出ている症状や下痢の様子を見て、病院へ行く必要があるかを判断してください。
下痢をしているこどもに関してチェックすべきこと
下痢をした際は、次のポイントをチェックしましょう。
- 熱があるか
- 機嫌はよいか (元気はあるか)
- 腹痛はあるか
- 食欲はあるか
- 水分が摂れているか
- 下痢の回数はどのくらいか
- 便のにおいはどうか (腐ったようなにおい、酸っぱいにおい)
- 便の色はどうか (赤っぽい、白っぽい、クリーム色、血が混じっているか)
- 形はどうか(ドロドロ・サラサラ)
上記のチェックポイントを参考に、こどもの様子をよく観察してみてください。
こんな症状が見られたら夜間でもすぐ救急外来の受診を!
下痢をしているこどもの状態をチェックするポイントを知ったうえで救急外来の受診が必要なケースを紹介します。
- 高熱や繰り返しの嘔吐がある
- 機嫌が悪い
- 強い腹痛がある
- 水分をほとんど受け付けない、おしっこの量が極端に少ない
- 水様性の便が1日数回以上ある
- 白っぽい便、来る返しある水様便、血液が混じっている、糊のような黒っぽい便
- 下痢が長引いて唇や舌が乾いている
このような場合、緊急性が高いので早めにかかりつけの医師に診てもらうか、救急外来の受診を検討してください。
こんな症状の場合はしばらく様子を見てもOK
緊急性の高い状態が理解できたところで、次に「慌てず様子を見てOK」というこどもの状態を紹介します。
- 熱はない
- 機嫌がよい、元気
- 腹痛はない
- 食欲があり水分が取れている
- 下痢の回数が1日数回以内
- いつもより軟らかい便
このような場合は、脱水症状にならないようこまめに水分を与えながら様子を見ていきましょう。
こどもが下痢をしている場合の食事はどのようなものが適切?
こどもが下痢をしている時は、食事に気を配ることが大切です。下痢を続けると、水分や栄養素が失われてしまうため、適切な食事が必要です。
しかし、下痢をしている時は胃腸が弱っているため食事内容にも注意しましょう。
こどもが下痢をしている場合におすすめの食品を紹介します。
おすすめの食品 | NGな食品 |
おかゆ・うどん・トースト | 中華麺・すし |
じゃがいも・さといも | さつまいも・こんにゃく |
豆腐・高野豆腐・味噌・きなこ・煮て裏ごしした豆類 | 大豆・小豆・油揚げ・がんもどき |
柔らかく煮た野菜・大根・かぶ・ほうれん草・キャベツ・かぼちゃ | 繊維の多い野菜・たけのこ・ごぼう・れんこん・きのこ類・海藻類 |
りんご・バナナ | なし・パイン・いちご・柑橘類・スイカ・ドライフルーツ |
脂肪の少ない、たら・たい・かれい・しらす・はんぺん | 脂肪の多いかまぼこ・干物・サバ・さんま・いわし・貝類 |
茶碗蒸し・卵とじ | 生卵・固ゆで卵 |
脂肪の少ないささみ | 脂肪の多いソーセージ、ハム、ロース、バラ肉、ベーコン |
プリン、卵ボーロ、ウエハース | ケーキ類、せんべい、ナッツ類、牛乳、ヨーグルト、チーズ |
上記表にて「おすすめの食品とNGな食品」を紹介しましたが、下痢の時の食事は与えるタイミングが重要です。
下痢がひどい場合は、脱水にならないよう十分に水分を与える必要がありますが、固形物(食べ物)は控えるようにしましょう。
便の形が軟便にまで回復してきたら、腸の負担にならないような食べ物を、少しずつ与えます。
この時の注意するポイントは「食べ過ぎないこと」回復してきたとはいえ、胃や腸に負担をかけるのは禁物です。普段の3/2程にとどめましょう。
便がいつもの形に戻ってきたら、少しずつ元の食事に変えていきましょう。
こどもの下痢に関するよくある質問
以下ではよくある質問にお応えします。こどもが下痢になった時に備えて、しっかりと確認しておきましょう。
家庭内で感染が広がるのを防ぐために気をつけるべきことはありますか?
家庭内の感染を防ぐためには、排泄物の始末をした手を良く洗うように心がけましょう。
指の間・指先・爪の間・手首まで念入りに洗うことが大切です。また、換気をする・マスクをする・トイレを消毒する・タオルを分けるのも効果的です。
下痢での脱水症状を防ぐためにはどうすればいいでしょう?
下痢での脱水症状を防ぐためには、水分補給が重要です。
体内の水分と似た性質を持つ「経口補水液」が最も有効的です。一度にたくさん飲ませるのではなく、常温のものを1時間おきを目安に少しずつ、根気よく与えましょう。
乳児には下痢の際も母乳を与えて大丈夫ですか?
乳児には下痢の場合であっても、母乳を与えて問題ありません。
下痢が多い時には1回の量を少なくし回数を増やすことで、胃腸への負担を少なくします。
しかし、2週間程たっても下痢が続いている場合は上記で紹介した「二次性乳糖不耐症(乳糖を分解する力が弱くなっている状態)」の疑いがあるので、再度医療機関を受診し医師に相談しましょう。
こどもが下痢をしてお尻がただれてしまわないためにできることはありますか?
お尻がただれてしまわないためにできることは3つあります。
- こまめにおむつ替えをする
- ぬるま湯で洗う
- お尻を乾燥させる
下痢は皮膚への刺激が強く、お尻がただれる原因となります。そのため、清潔に保つ・こすらない・乾燥させるを意識しましょう。
昼間は復調したように見えたのに夜間こどもの容態が急変しました。救急外来を受診すべきですか?
まずは落ち着いてこどもの様子を観察しましょう。上記で紹介したように、「早めに受診するべき症状」がある場合は救急外来を受診することを検討してください。
もし判断に迷うようなら「小児救急電話相談#8000」に電話をして、相談するのもおすすめです。
こどもの下痢は理由とチェックすべきポイントを押さえ適切な対応を
こどもが下痢をした場合、その原因や症状によって適切な対応が求められます。
本記事ではこどもが下痢をした時の対応方法や考えられる理由・病院に連れていくべき判断基準・家でできるケアについて紹介しました。
親として大切なのはこどもの下痢に対して冷静に対応することです。
原因を把握し、こどもの症状のチェックポイントを抑えながら適切な対応を行うことが、こどもの健康回復につながります。
常にこどもの状態を観察し、緊急性の高い場合は早めにかかりつけの医師、もしくは救急外来を受診しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。