2023.07.14

【自宅でチェック】その症状、おたふく風邪かも?対処法と予防法を解説

おたふく風邪は、主に子どもがかかる感染症です。しかし免疫を持っていない場合、大人にもうつる可能性があります。

おたふく風邪は重症化すると難聴や無菌性髄膜炎などを引き起こすことがあるので、正しく理解して対処しましょう。

この記事では、おたふく風邪の主な症状とかかったときの対応法、予防方法を解説します。

目次

自宅でチェック|その症状はおたふく風邪かも

おたふく風邪かもしれないと思ったら、まずは出ている症状をチェックしましょう。

特に、周囲でおたふく風邪が流行っていたり、これまでおたふく風邪の予防接種を受けなかったりした人は注意が必要です。

主な症状を詳しく解説しますので、医療機関を受診する際の参考にしてください。

  • 耳の下が腫れている
  • 痛みがある
  • 熱を持っている
  • 発熱してい

耳の下が腫れている・痛みがある・熱を持っている

おたふく風邪に感染すると、16〜18日程度の潜伏期間の後、耳や顎の下といった耳下腺周辺が痛みをともなって腫れてきます。

しかし、乳児の場合は腫れや痛みが出ない(不顕性感染)ケースもあります。

おたふく風邪による耳下腺の腫れは、まず片側だけが腫れ、数日してから反対側も腫れてくることが多いといわれています。

発症後1~3日が腫れ・痛みのピークで、唾液の分泌とともに痛みが増すのも特徴です。

片側の耳の下が腫れている人は、おたふく風邪にかかっている可能性があるので、子どもは小児科、大人は内科または耳鼻咽喉科を受診しましょう。

発熱している

おたふく風邪にかかると、約半数の人が発熱します。発熱は37~38度くらいで、3日程度で下がることが多いとされています。

おたふく風邪のような症状があるときの対応

おたふく風邪のような症状がある時は、次のように対応しましょう。

  • 医療機関を受診する
  • 水分を摂る
  • 濡れたタオルなどで冷やす
  • やわらかく消化のよい食事を心がける
  • 保育園・幼稚園・学校を休む
  • 仕事を休む

医療機関を受診する

おたふく風邪を疑う症状があれば、まず医療機関を受診しましょう。

子どもの場合は小児科、大人の場合は内科か耳鼻咽喉科を受診してください。

おたふく風邪は感染が広がりやすいので、事前に医療機関に連絡し、指示に従って受診しましょう。

水分を摂る

耳やあごの下が腫れてくると、痛みで口を開けるのもつらくなります。

だからといって水分を摂らずにいると脱水状態になるおそれがあるので、積極的に水分を摂りましょう。

汗で失われるミネラルも補える経口補水液やスポーツドリンク、麦茶などがおすすめです。

酸味の強いジュースや炭酸飲料は刺激になるので、痛みがあるうちは避けましょう。

濡れたタオルなどで冷やす

腫れている場所の熱感や痛みが強い場合は、濡れたタオルなどでやさしく冷やすとやわらぐことがあります。

冷却シートを貼ったり、冷湿布で冷やしたりしてもよいでしょう。

やわらかく消化のよい食事を心がける

耳やあごの下が腫れているときは、やわらかく消化のよい食事を心がけましょう。硬い食べ物は噛めないので、スープやゼリー、ヨーグルト、おかゆなどがおすすめです。

のどごしがよく、噛まずに食べられるもので栄養を摂ってください。

保育園・幼稚園・学校を休む

おたふく風邪は、学校保健安全法で第2種の感染症に定められています。

耳やあごの下が腫れはじめてから5日経過し、全身の状態がよくなるまでは出席停止です。

また、同居する家族が感染した場合も、出席停止となります。

登園・登校再開には登園・通学許可証が必要なこともあるので、欠席の連絡をする際に確認しておきましょう。

仕事を休む

大人がおたふく風邪にかかった場合の出勤停止期間は、法律で定められていません。何日間出勤停止になるかは、各事業所の判断にゆだねられています。

しかし、周囲に感染を広げないためにも、症状がなくなるまでは出勤を控えましょう。

おたふく風邪(流行性耳下腺炎)とは

おたふく風邪は、正式名称を「流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)」といいます。

ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症で、感染すると約2~3週間の潜伏期間の後、耳やあごの下が腫れる特徴的な症状が現れます。

子どもが感染した場合は熱もそれほど高くならず、症状も軽く済みますが、大人が感染すると重症化しやすいので注意が必要です。

おたふく風邪の主な症状

おたふく風邪の主な症状は、以下のとおりです。

  • 耳やあごの下の腫れ・痛み・熱感
  • 発熱

まず片方の耳やあごの下が腫れ、1~2日して反対側も腫れてくることが多いです。腫れている場所の境目はあいまいで、痛みや熱感も伴います。

また、半数の人に発熱が見られます。子どもは37~38度程度の発熱で済むことが多いですが、大人は40度を超える熱が出ることもあるので注意が必要です。

腫れはじめてから1~3日が腫れと痛み、発熱のピークで、3~7日程度で快方に向かいます。

おたふく風邪による合併症

おたふく風邪は、さまざまな合併症を引き起こすことでも知られている病気です。

主な合併症は次のとおりです。なかには重篤なものもあるので、詳しく紹介します。

  • 無菌性髄膜炎
  • ムンプス難聴
  • 膵炎
  • 脳炎
  • 精巣炎・卵巣炎

無菌性髄膜炎

無菌性髄膜炎は、発熱・頭痛・嘔吐の3つの症状が特徴的な合併症です。

ウイルスが髄膜に入り込むことで炎症が起き、5日程度発熱が続きます。

一般的な措置として入院による治療が必要な合併症ですが、予後はよいとされています。

ムンプス難聴

ムンプス難聴は、おたふく風邪によって引き起こされる難聴で、1年間に700~2,300人がムンプス難聴になっているとされています。片耳だけの難聴がほとんどです。

ステロイドなどを使って治療をしても聴力が戻らないケースが多く、難聴だけでなくめまいや耳鳴りを伴い、日常生活に支障をきたすこともあります。

膵炎

子どもにはまれですが、大人がかかった場合、急性の膵炎を起こすことがあります。

腹部や背中の痛みのほか、悪心・嘔吐・発熱・腹部膨満感・黄疸といった症状が現れます。

脳炎

5,000~6,000例に1例ではありますが、脳炎になることもあります。

ムンプスウイルスが脳に侵入することで高熱・頭痛・けいれん・意識障害などが起こり、治ってもさまざまな後遺症が残ることもある合併症です。

精巣炎・卵巣炎

思春期以降、大人になってからおたふく風邪にかかると、男性は精巣炎、女性は卵巣炎になることがあります。

精巣炎は感染した男性の20~40%に見られ、睾丸(こうがん)が萎縮して精子数が少なくなった結果、男性不妊の原因にもなり得る合併症です。

おたふく風邪の治療方法

おたふく風邪には、特効薬がありません。そのため対症療法が治療の基本になります。

熱や痛みがある場合は解熱鎮痛剤を使って症状を和らげ、水分・栄養を摂って安静に過ごしましょう。

重症化した場合は入院して、点滴を行うこともあります。

おたふく風邪がうつる原因

おたふく風邪の原因となるムンプスウイルスは感染力が強く、保育園や幼稚園、学校、家庭などで感染が広がりやすいとされています。

特に、家庭内では子どもから感染が広がることが多いので、しっかり対策をして感染を広げないようにしましょう。

主な原因は以下の通りです。

接触感染

症状が出ている人が触ったもの・場所に触れた手で口や目、鼻の粘膜を触ることで感染します。

飛沫感染

症状が出ている人のくしゃみや咳、会話の際に飛び散った飛沫を吸い込んで感染します。

おたふく風邪を予防する方法

さまざまな合併症を引き起こすこともあるおたふく風邪ですが、予防ができます。

有効とされる予防法は、ワクチンと手洗いです。

ワクチンを接種する

おたふく風邪は、ワクチンの予防接種で防げます。

ワクチンの有効性はおおむね90%以上とされており、2回接種すれば感染そのものを防げます。

おたふく風邪ワクチンの接種タイミングは、次のとおりです。

  • 1回目:1歳になったらできるだけ早く
  • 2回目:小学校入学前の1年間

おたふく風邪ワクチンは任意接種のワクチンですが、接種すれば感染リスク・重症化リスクが大幅に低下します。

MRワクチンや水痘(水ぼうそう)ワクチンと同時接種も可能なので、できるだけ接種をおすすめします。

自費にはなりますが、未接種であれば大人も接種可能です。

日頃から手洗いうがいを心がける

おたふく風邪にかからないためには、日頃の予防も重要です。

接触感染・飛沫感染を防ぐためにも、こまめな手洗い・うがいを習慣にしましょう。

おたふく風邪と間違いやすい病気

おたふく風邪と間違いやすい病気には、次のようなものがあります。

  • 反復性耳下腺炎
  • 化膿性耳下腺炎

反復性耳下腺炎

反復性耳下腺炎は、耳やあごの下などが繰り返し腫れる病気です。おたふく風邪とよく似ているため、はじめて反復性耳下腺炎になったときはおたふく風邪と見分けるのが困難だとされます。

繰り返し腫れて、はじめて反復性耳下腺炎と診断されます。

原因は、虫歯や口の中の雑菌への感染や耳下腺の先天性異常などいくつか考えられますが、詳しくはわかっていません。

反復性耳下腺炎になった場合も、おたふく風邪と同様に対症療法が基本です。痛みや発熱がある場合は解熱鎮痛剤を使い、細菌への感染が疑われる場合は抗生剤を使って治療します。

化膿性耳下腺炎

化膿性耳下腺炎は、口の中の細菌が耳下腺に入り込んで起こる炎症で、黄色ブドウ球菌や溶連菌、肺炎球菌などによって引き起こされます。

通常は片方の耳下腺だけが腫れ、痛みや発熱、頭痛などをともない、腫れがひどくなると耳下腺に膿が溜まるのが特徴です。

治療には抗生物質が使用され、症状に合わせて患部を冷湿布で冷やしたり、解熱鎮痛剤を用いたりします。

患部に膿が溜まった場合は、切開が必要なケースもあります。

よくある質問

おたふく風邪について、よくある質問をまとめました。

  • おたふく風邪になるとどこが腫れる?
  • おたふく風邪の痛みのピークはいつ?
  • おたふく風邪になると熱は何度になる?

おたふく風邪になるとどこが腫れる?

おたふく風邪になると、耳の下を中心にあごの下や首のリンパ腺が腫れます。

おたふく風邪の痛みのピークはいつ?

おたふく風邪の痛みのピークは、耳下腺が腫れてから1~3日です。

おたふく風邪になると熱は何度になる?

38度前後のことが多いです。しかし、約半数の患者は発熱しないといわれています。

まとめ

おたふく風邪は、難聴や不妊などの原因になることもある感染症です。次のような症状がみられたらおたふく風邪を疑い、早めに医療機関を受診してください。

  • 耳やあごの下の腫れ・痛み・熱感
  • 発熱

おたふく風邪予防には、予防接種が有効です。

ワクチンが接種できるようになったら早めに予防接種を受け、おたふく風邪を予防しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。