ヘルパンギーナは5月頃から患者が増え、7月頃にピークを迎える子どもに多い疾患です。
いわゆる夏風邪のひとつで、急に熱が出て喉が痛くなります。
大人にうつれば、重症化することが多く注意が必要です。
この記事では、主に大人がヘルパンギーナにかかってしまった時の対処方法や感染対策を紹介します。
目次
こんな症状はありませんか?大人のヘルパンギーナをセルフチェック
ヘルパンギーナは、突然の高熱と喉の激しい痛みが特徴で、大人も感染することがあり注意が必要です。
口の中に、口内炎のような水ぶくれができ、それが破れると痛みが強くなります。
ヘルパンギーナと手足口病は、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスなど、似たようなウイルスが原因の疾患です。
ヘルパンギーナの場合は、基本的に口の中だけに発疹ができますが、手足口病なら手足にも発疹が出ます。また、ヘルパンギーナは口の奥のほうに水ぶくれができることが多いですが、手足口病では舌や歯茎など口の前のほうに発疹ができるのも違います。
ヘルパンギーナは、口以外には発疹は出ません。熱や喉の痛みがあったとしても、発疹が出ているなら、突発性発疹など、他の病気の可能性もあります。
以下の症状がある場合は、ヘンパンギーナの可能性があるので医療機関を受診しましょう。
- 口の中・喉が赤い
- 食欲不振や嘔吐・熱性けいれんがある
- 喉の奥に複数の水ぶくれができている
- 38度以上の高熱が続いている
口の中・喉が赤い
口の奥に水ぶくれが数個、人によっては複数できます。喉が赤くなり痛みを伴います。
食欲不振や嘔吐・熱性けいれんがある
ヘルパンギーナにかかると、喉の激しい痛みから食欲不振になり、飲食ができなくなることがあります。
また嘔吐が続くこともあり、これらの症状が続くと脱水症状を起こすリスクもあります。脱水症状を起こしていないかどうか、おしっこが出ているか、唇が乾いていないかなどに注意しましょう。無理に食事を摂るより、少しずつ数回に分けてしっかり水分を摂ることが大切です。
熱が急激に上がる時は、熱性けいれんをおこす可能性があります。急激な熱の上昇を防ぐために、保冷剤などを利用して首の裏や脇、太ももの付け根を冷やすとよいでしょう。
喉の奥に複数の水ぶくれができている
喉の奥に数個、もしくは複数の水ぶくれ(水疱)ができます。手足口病も口の中に水ぶくれができますが、歯茎や舌など、口の前のほうにできやすく、位置に多少の違いがあります。
38度以上の高熱が続いている
突然、38~40度の高熱が出て、2~4日程度で解熱します。水分がまったく取れずおしっこが出なかったり、ぐったりしたりするときは、脱水を起こして危険な状態です。医療機関を受診してください。
大人は重症化しやすい|ヘルパンギーナとは
ヘルパンギーナかもしれないと思った方は、もっと情報が知りたいと思います。ここからは、ヘルパンギーナについて、以下のポイントを詳しく解説します。参考にしてください。
- ヘルパンギーナの症状
- かかりやすい年齢
- 主な感染経路
- 流行する季節
ヘルパンギーナの症状
ヘルパンギーナには、2~4日の潜伏期間があり、突然、高熱と喉の痛みの症状が現れます。水ぶくれが破れると、いっそう痛みが強くなります。ヘルパンギーナの水ぶくれは、口の奥のほうにできやすいのも特徴です。
また、ヘルパンギーナは、ウイルス性髄膜炎、急性心筋炎など、注意すべき合併症を引き起こすことがあります。
ウイルス性髄膜炎は5日間程度持続して発熱する場合に疑われ、重症化することがあります。急性心筋炎は軽症から死に至ることもある病気で、足のむくみや胸の痛み、動悸などの症状があります。
このような合併症は、まれではありますが、症状の変化には注意が必要です。
かかりやすい年齢
ヘルパンギーナの患者は、5歳以下の子どもが全体の90%を占めており、特に1歳代での発症が多くなっています。
1歳代は好奇心旺盛で、おもちゃを舐めたり、いろいろな場所を触ったりしてしまう年齢なので、幼稚園や保育園などで感染が広がることもあります。手洗いうがいをしっかりするなど、感染対策が大切です。
主な感染経路
ヘルパンギーナの主な感染経路として、以下の3つがあげられます。
- 飛沫感染
くしゃみや咳によってウイルスが周囲に飛び散り、それを吸い込むことで感染します。
- 経口感染
ウイルスが付着した飲食物などを口に入れることで感染します。
- 接触感染
感染者の唾液などに含まれるウイルスが、手すりやおもちゃタオルなどに付着し、それを触った手で飲食をしたり、目をこすったりして体内に取り込んでしまい感染します。
流行する季節
ヘルパンギーナは、夏に流行する疾患です。
5月頃から発症する人が増え、7月頃にピークを迎え、9~10月頃になると患者数は収まってきます。
大人にヘルパンギーナがうつる原因
大人がヘルパンギーナにうつるのは、寝不足やストレスによって免疫力が低下している場合が多いようです。
全体の90%が子どもの患者なので、子どもからうつってしまうことが多いでしょう。
感染を防ぐためには、家庭内で感染が広がらないように注意することが必要です。
ウイルスの排泄期間は、呼吸器系からは1~2週間程度、腸管系からは1か月程度であると言われています。
子どもの症状がよくなっても、しばらくは、おむつ替え時にも注意してください。
外出先で、おむつ替えのときに、うつることもあります。使用前には、おむつ替えの場所を消毒する、持参したおむつ替え用のシートを引くなど対策するのも有効です。
ヘルパンギーナの治療方法
ヘルパンギーナには治療法がありません。したがって自然治癒を待つことになります。
自宅で安静に過ごしましょう。喉の痛みが強い場合や高熱が続いている場合、また、まったく水分が取れない、おしっこが半日近く出ていないといった脱水症状が見られる場合には、医療機関を受診しましょう。
大人がヘルパンギーナにかかったときの対処法
大人もヘルパンギーナにかかってしまうことがあります。身近にヘルパンギーナの患者がいたり流行していたりする場合は、あらかじめ対処法を知り、悪化や流行を防ぎましょう。
- 数日間仕事を休む
- 脱水症状にならないように注意する
- 家族との接触は避ける
数日間仕事を休む
ヘルパンギーナは免疫力が落ちると、いっそう悪化する可能性があります。
無理せず仕事を休むことが望ましいです。体を休めて体力を戻しましょう。
脱水症状にならないように注意する
ヘルパンギーナには、嘔吐や食欲不振の症状が出ることがあります。
喉が非常に痛いため、飲食がむずかしいようなら、水分だけでも摂りましょう。
経口補水液など食べやすい消化に良いものがおすすめです。
味噌汁やスープの具は食べられなくても、汁を飲めば、ある程度の栄養を取ることができます。
食べられるようなら、茶碗蒸しやおかゆ、ゼリー、とうふ、アイスクリーム、プリンなど喉ごしの良いものから食べ、様子を見ながら少しずつ量を増やすと負担が軽減されます。
固形物が食べられるようなら、煮込みうどんや雑炊など消化に良いものを選ぶと良いでしょう。
柑橘系や刺激物は喉に刺激を与えてしまい、症状を悪化させてしまう可能性もあるため、避けたほうがよいでしょう。
家族との接触は避ける
ヘルパンギーナはうつる病気なので、家族との接触は避けることが望ましいです。
飛沫感染、経口感染、接触感染と、様々なルートでうつります。できる限り接触を避けて、感染拡大を防ぎましょう。
大人向け|ヘルパンギーナを予防する方法
大人のヘルパンギーナ感染を予防するためには、免疫力アップが最も大切です。
疲れをためすぎない、しっかり食べて、睡眠をとるなど、日ごろから免疫力を高めておけば、ヘルパンギーナの予防に繋がります。
また、ヘルパンギーナはアルコール消毒があまり効かないため、日ごろからの感染対策が重要になります。以下の3つのポイントには特に注意しましょう。
- おむつの交換の後はすぐに手を洗う
- 感染者がいる場合はマスクを着用する
- 感染者とタオルや食器を共有しない
おむつ交換の後はすぐに手を洗う
おむつ交換の後はすぐに手を洗いましょう。
便の中には、約1ヶ月ウイルスが含まれています。見た目がきれいでも、おむつ替えをした手で飲食しないでください。
感染者がいる場合はマスクを着用する
ヘルパンギーナは、飛沫感染でうつる感染症です。
マスクをすれば、ある程度、感染を予防することができます。感染者とは長時間話さないなど、対策を取ると良いでしょう。
感染者とタオルや食器を共用しない
接触感染でうつることもあります。
感染者のタオルや食器は別々のものを使用し、接触を少なくしましょう。
よくある質問
ヘルパンギーナに関して、よくある質問をまとめました。参考にしてください。
- 大人がヘルパンギーナにかかったらどのくらいで治る?
- なぜ大人がヘルパンギーナにかかるの?
- ヘルパンギーナは家庭内感染する?
大人がヘルパンギーナにかかったらどのくらいで治る?
通常、ヘルパンギーナでの発熱は2~4日ほどで解熱し、だいたい1週間ほどすると回復してきます。
もし熱が下がらない場合は合併症を起こしているかもしれません。医療機関を受診してください。
なぜ大人がヘルパンギーナにかかるの?
寝不足やストレスによって、体が疲れてしまい免疫力が低下していると、大人でもヘルパンギーナにかかってしまうことがあります。
ヘルパンギーナは家庭内感染する?
ヘルパンギーナは、ひろがりやすい疾患です。飛沫感染、接触感染、経口感染でうつるので家庭内で感染する可能性があります。
まとめ
ヘルパンギーナは夏風邪の原因として代表的な疾患で、子どもがかかりやすい病気です。
高熱や激しい喉の痛みから食欲不振になることもあり、軽視できません。
流行する時期が夏なので、特に水分が摂取できなくなると、脱水症状の危険もあります。
さまざまな感染経路があるのでうつりやすく、免疫力の落ちた大人もかかります。
子どもより、大人のほうが重症化しやすいので、日ごろから睡眠や食事などに気をつけ免疫力をアップさせ、おむつ替えなどに注意しましょう。
この記事のポイントは、以下の通りです。
- 大人は重症化する可能性がある
- 日ごろから免疫力を高め予防する
- まれに合併症を引き起こすことがあるので心配な時は医療機関を受診する
ヘルパンギーナには治療薬がありませんが、症状を楽にする措置はあります。高熱が続いたり不安な症状があったりする場合は、医療機関を受診してください。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。