プール熱は、アデノウイルスが原因の感染症で、夏風邪の1つです。子どもに多い病気で、出席停止措置も取られているほどの感染力の強さを持っています。大人にも罹患しやすく、肺炎などを引き起こすケースもあり、正しい知識がなければ周りに感染を広げてしまうことになりかねません。
毎年、6月から感染者が増え始めて、7月から8月にかけてピークを迎えるため、ヘルパンギーナとあわせて夏風邪と認識している方も多いのではないでしょうか。
本記事では、プール熱に罹ってしまった場合の対処法や、予防方法を解説します。正しい知識を身につけて、子どもが水遊びを楽しめるように対策しましょう。
目次
プール熱とは
プール熱は、アデノウイルスによって引き起こされる病気で、「咽頭結膜熱」とも呼ばれます。子どもの夏風邪としてよく知られ、かつてはプールの水を介して感染が広がっていたことから「プール熱」と名が付けられました。主な症状は、発熱や喉の痛み、眼の充血や痛みが特徴です。
アデノウイルスは、強い感染力を持っています。主に飛沫感染や接触感染、糞口感染などで広がります。症状が消えた後でも、ウイルスは喉や便から排出されるため、しばらくは注意が必要です。
また、アデノウイルスは1種類だけではありません。一度罹患しても、異なるタイプのアデノウイルスに感染すると再度症状が出るケースがあります。
流行する季節
プール熱は、夏季に流行します。6月から病例が増え始め、7月から8月にかけてピークを迎えます。次の章でプール熱にかかる原因を理解し、流行する前から対策しましょう。
プール熱にかかる原因
プール熱は塩素消毒が不十分なプールに入ることで、水を介してウイルスに感染していました。しかし、現代では、遊泳用プールには衛生基準が定められています。塩素濃度管理が徹底されている施設がほとんどで、プール水からの感染は稀と言われています。つまり、プール熱はプール以外の感染経路を断つ必要があります。
感染経路
プール熱は、主に飛沫感染や接触感染、糞口感染によって感染が拡大します。プール熱のウイルスは、咽頭(のど)から約2週間、便からだと約30日間排出され続けます。
飛沫感染は、咳やくしゃみ、会話によって発生する、ウイルスを含んだ飛沫(微細な水滴)を、他の人が吸い込む感染経路です。
接触感染は、直接的な接触や間接的な接触(共有した物体の表面)を通じてウイルスに感染する経路です。ドアノブ、携帯電話、キーボードなど感染者が触れた物に触れ、その手で目や口などを触ることで感染します。
糞口感染は、感染者の排泄物から排出されたウイルスによって感染する経路です。特にアデノウイルスは、便から排出されます。便器やトイレのドアノブに付着したウイルスにも注意が必要です。
プール熱の症状
プール熱の症状は、主に3つあります。
- 39~40度の高熱または微熱
- 咽頭炎による喉の痛み
- 結膜炎(目の充血、涙、目やに、光を見るのが辛い)
体温が39〜40度の高熱と37〜38度の微熱の間を1日の中で繰り返し、このような状態が4〜5日間持続します。咽頭炎による喉の痛み、結膜炎の症状も出ます。結膜炎は、目の充血や、涙と目やにが多くなり、時に痛い場合もあるでしょう。目の症状は、3~5日間程度持続します。
プール熱にかかってしまったら
プール熱にかかってしまった場合の対応方法について確認しましょう。
- 自宅で療養する
- 刺激の少ない食べ物を与える
- 脱水症状に気を付ける
- 保育園・幼稚園・学校を休む
- 元気がないうちはお風呂に入れない
それぞれ詳しく解説します。
自宅で療養する
プール熱に対する特効薬はなく、自然に回復を待つ必要があります。つまり、対症療法を中心とした自宅での療養となるでしょう。痛みを抑える鎮静剤や、炎症を抑える点眼薬、合併症を防ぐ抗生剤が処方されるケースがほとんどです。
刺激の少ない食べ物を与える
プール熱は、喉の痛みを伴うため、食事は刺激が少なく食べやすいものを選びましょう。例えば、お粥やうどん、ゼリーやプリンなどがおすすめです。辛いものや刺激が強いものは避けましょう。
脱水症状に気を付ける
発熱が続くと脱水症状を起こす可能性があるので、こまめな水分補給が大切です。経口補水液や幼児用イオン水、麦茶やスポーツ飲料で水分補給をしましょう。
喉が痛くて水分がとれない状態が数日続いた場合は、入院が必要になるケースがあります。ためらわずに医療機関を受診しましょう。
保育園・幼稚園・学校を休む
プール熱は第二種伝染病として国が認めているため、かかった場合は出席停止となります。感染が広がる可能性があるため、主要な症状が消えても、2日間は保育園・幼稚園・学校に出席できません。医師に感染の危険性がないと判断してもらうことが重要です。
保育園・幼稚園・学校によって、出席許可証が必要なケースもあります。感染が確認されたら迅速に報告をして、その後の対応方法を確認しましょう。
元気がないうちはお風呂に入らない
熱が高く食欲や元気もない時は、体調を優先するため、無理にお風呂に入らない方がよいでしょう。体力が回復したらゆっくりと入浴し、体を清潔に保ちましょう。
プール熱の予防策
プール熱を予防するために、以下の5つのポイントを抑えておきましょう。
- 罹患者が使ったタオルは使わない
- プールに入る前後にシャワーをしっかり浴びる
- おむつ交換後は速やかに手を洗う
- 手洗いうがいを入念にする
- 【運営者】プールの塩分濃度を確かめる
以下でそれぞれ解説します。
罹患者が使ったタオルは使わない
罹患者が使用したタオルには、ウイルスが付着している可能性があります。タオルを共用するのは避け、罹患者が使用したタオルは、別にして洗濯をしましょう。
また、目やにも感染源となるので、タオルで拭かず、使い捨てができるティッシュなどを使用しましょう。
プールに入る前後にシャワーをしっかり浴びる
水泳前後のシャワーと洗眼をしっかりと行いましょう。塩水濃度が徹底されていれば、水を介した感染は稀ですが、他の子どもとの接触による感染も考えられます。水泳前後の予防対策をしっかりと行うのも重要です。
おむつ交換後は速やかに手を洗う
アデノウイルスは、感染者の便からも排出されます。おむつを交換した際には、手指がウイルスと接触している可能性があります。手指を介して他の人に広がるリスクがあるので、おむつ交換後は流水と石鹸を用いて手をしっかりと洗いましょう。
手洗いうがいを入念にする
プール熱は飛沫感染や接触感染を主な経路とするため、日常的な手洗いとうがいで予防できます。アデノウイルスに対しては、消毒用エタノールの消毒効果が弱いので、水と石鹸を使用した手洗いが推奨されます。
【運営者】プールの塩分濃度を確かめる
プールを利用する際のアデノウイルス感染防止策としては、プールの塩素濃度を適切な範囲(0.4mg/l以上、1.0mg/l以下の遊離残留塩素濃度)に保つことが重要です。適正な塩素濃度管理で、プール水を介したアデノウイルスの感染拡大を防ぎましょう。
知っておきたいプール熱の知識
プール熱の知識への理解をもう少し深め、感染者が出た際に適切な対処ができるようにしておきましょう。
プール熱は大人にもうつる
プール熱は子どもだけでなく、大人にも感染します。子どもに比べると症状が重くなりにくく、一般的な風邪として認識されるケースがほとんどです。主な症状は、咽頭痛や鼻水や鼻詰まり、発熱や咳といった一般的な風邪症状を伴います。
明確な出勤停止期間はありませんが、仕事を休んで療養しましょう。職場と相談して決めましょう。
12月を中心に冬季でも流行する
プール熱は、2003年から冬季にも流行する傾向が確認されています。冬になると、インフルエンザが主に心配されますが、目の充血や目やにが出るなどの症状が見られた場合は、アデノウイルスに感染している可能性を疑いましょう。
よくある質問
プール熱に関するよくある質問をまとめました。
- プール熱の初期症状は?
- プール熱と夏風邪の違いは?
- プール熱の治し方は?
それぞれに回答します。
プール熱の初期症状は?
プール熱は、発熱から始まるケースが多いです。その後、喉の痛みを引き起こす咽頭炎、結膜炎に伴う目の充血や目の痛み、強い光に対する過敏さ、涙の過剰な流出、目やにが出るといった症状がみられます。
プール熱と夏風邪の違いは?
プール熱は、夏風邪の1つです。夏風邪と称されるものは他に、手足口病、ヘルパンギーナが挙げられます。
プール熱の治し方は?
プール熱に直接的に有効な薬はありません。免疫システムがウイルスに勝ち、自然に回復するのを待つ必要があります。
まとめ
プール熱は、アデノウイルスによって引き起こされる子どもに多い感染症の1つです。6月から感染が増え始め、7月から8月にかけてピークを迎えます。
プール熱の症状は、主に3つあります。
- 39~40度の高熱または微熱
- 咽頭炎による喉の痛み
- 結膜炎(目の充血、涙、目やに、光を見るのが辛い)
このような症状がみられた場合は、医療機関を受診しましょう。
また、プール熱にかかってしまった場合は、以下の方法をポイントに対応しましょう。
- 自宅で療養する
- 刺激の少ない食べ物を与える
- 脱水症状に気を付ける
- 保育園・幼稚園・学校を休む
- 元気がないうちはお風呂に入れない
特にアデノウイルスは、手洗いうがいが有効な予防です。流行する時期には意識して予防対策を徹底しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。