2023.07.05

大人のアデノウイルスかも|6つの受診サインや仕事への影響を解説

アデノウイルスは、咽頭結膜熱(プール熱)や流行性角結膜炎、呼吸器感染症、夏風邪などを引き起こすウイルスです。

子どもがかかりやすいとされていますが、大人もかかるリスクがあるので、家庭内感染や職場感染には注意が必要です。罹患者を増やさないためにも、かかった場合の対処法を正しく理解しておきましょう。

本記事では、医療機関を受診すべき症状や、アデノウイルスによる感染症にかかった際の対処法を解説します。予防方法もお伝えしますので、参考にしてくださいね。

目次

大人も感染する?アデノウイルスとは

アデノウイルスは、手足口病・ヘルパンギーナと並ぶ三大夏風邪のひとつ「咽頭結膜熱(プール熱)」を引き起こします。ひと口にアデノウイルスと言っても、ウイルスの型は80以上存在しており、感染する種類によって咽頭結膜熱以外の症状も現れます。

  • 基本の症状
  • 感染経路
  • かかりやすい年齢

以下でそれぞれを解説します。

基本の症状

アデノウイルスに感染すると、2~14日の潜伏期間の後に次のような症状が出ます。

  • 発熱
  • のどの痛み
  • 目の充血や目やになどの結膜炎症状
  • 血尿を伴う膀胱炎
  • 下痢・嘔吐
  • 腹痛

感染経路

アデノウイルスの感染経路として挙げられるのは次の3つです。

  • 飛沫感染
    咳やくしゃみの際に飛び散ったウイルスを吸い込んで感染するルート
  • 接触感染
    感染した人が触れたものや場所を触り、その手で口や目・鼻の粘膜に触ることで感染するルート
  • 糞口感染(経口感染)
    おむつ替えの際などに手指に付着した排泄物が口に入ることで感染するルート

学校や幼稚園、保育園などでアデノウイルスに感染した子どもから、家庭内感染で大人にうつるケースが多いです。子どもがアデノウイルス感染症にかかった場合は、しっかりと家庭内で対策を行いましょう。

かかりやすい年齢

アデノウイルスにかかりやすいのは主に子どもです。年間を通じて罹患者は確認されていますが、6月頃から増え始め、7~8月に感染のピークを迎えます

ウイルスに感染した後は抗体が作られますが、持続期間はそれほど長くありません。そのため、同じ型のウイルスに再感染する場合があります。

大人も要注意|アデノウイルスの6つの受診サイン

もし、以下の症状に心当たりがあれば、早めに医療機関を受診しましょう。

  • 充血や目やになど結膜炎症状
  • のどの痛み
  • 咳や鼻水など呼吸器系の症状
  • 39℃前後の高熱
  • 腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状

特に、のどの痛みが激しく、食事や水分が取れない場合は速やかに医療機関を受診してください。受診する医療機関は内科が望ましいでしょう。目やにで目が開きにくいといった結膜炎症状が強い場合は、眼科の受診も検討してください。

大人もかかりやすいアデノウイルスの5つの感染症

アデノウイルスにかかると、感染したウイルスの型によっては次のような感染症を発症します。

 

  • 流行性角結膜炎(はやり目)
  • 出血性膀胱炎
  • 咽頭結膜熱(プール熱)
  • 胃腸炎
  • 呼吸器感染症

流行性角結膜炎(はやり目)

流行性角結膜炎は、アデノウイルスが付いた手で目に触れることで感染する結膜炎です。ウイルスにより汚染されたティッシュペーパーやタオル、洗面器などを共用することでも感染します。

感染すると8~14日の潜伏期間の後、急に次の症状が現れます。

  • まぶたのむくみ
  • 涙目
  • 充血
  • 目やに
  • 耳前リンパ節の腫れと痛み

大人でもかかりやすく、感染力がとても強いため、家庭内や病院内で感染することが多いです。治るまでには、2~3週間ほどかかります。

炎症が角膜にまで達すると、数年にわたって角膜がにごり視力に支障が出ることもあるので、「はやり目かも?」と思ったら速やかにかかりつけの眼科を受診しましょう。

出血性膀胱炎

出血性膀胱炎は、血尿を伴う膀胱炎です。感染すると、赤みを帯びた尿が出ます。排尿時に痛みを感じたり、残尿感を感じたりすることもあります。主に20~30代の女性がかかりやすい症状です。

特効薬はないため、しっかり水分を摂りながら自然に治るのを待つしかありません。血尿は数日で改善し、排尿痛や残尿感も1週間程度で軽快するでしょう。

医療機関を受診する場合は、内科または泌尿器科を受診してください。

咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱は、夏場にプールを介して感染が広がりやすいことから「プール熱」とも呼ばれます。子どもがかかりやすい感染症ですが、大人も感染することがあるので要注意です。

感染すると5~7日の潜伏期間を経て次のような症状が出ます。

  • 高熱
  • 頭痛
  • 食欲不振
  • 全身のだるさ
  • 目の充血や目やになどの結膜炎症状
  • のどの痛み

乳幼児が咽頭結膜熱に感染すると重症化するケースがあるので注意が必要です。咽頭結膜熱の可能性があるときは、かかりつけの内科を受診しましょう。

胃腸炎

アデノウイルスは夏風邪や流行性結膜炎を起こすウイルスとして知られていますが、胃腸炎を引き起こすケースもあります。主に6歳以下の子どもに多いですが、大人も感染することがあるので注意しましょう。

アデノウイルスが原因の場合、腹痛や嘔吐・下痢といった消化器症状が現れます。 他のウイルス性胃腸炎に比べて下痢が長く続くのが特徴です。

呼吸器感染症

アデノウイルスのなかには、鼻水や咳、のどの痛み、扁桃炎などの呼吸器感染症を引き起こす型があります。重症化すると気管支炎や肺炎になることもあり、特にアデノウイルス7型が引き起こす肺炎は命にかかわることがあるので適切な対処が必要です。

呼吸器感染症が表れた場合は、早めにかかりつけの内科を受診しましょう。

大人がアデノウイルスに感染してしまったら

大人がアデノウイルスに感染してしまったら、次のことを心がけてください。

  • 自宅で療養する
  • 仕事は休む
  • 脱水症状に気を付ける
  • コンタクトレンズを使用しない

自宅で療養する

熱が高い場合は解熱剤を使用することもありますが、アデノウイルス感染症の特効薬はありません。症状に合わせた薬を使って症状を和らげながら自然に治るのを待つのが治療の基本です。

症状ごとの対処法は以下のとおりです。

  • 目の症状

他の細菌に感染しないために抗菌薬の入った目薬を使います。角膜にまで炎症が及んでいる場合は、ステロイドの目薬を使う場合もあります。

  • 膀胱炎の症状

効果的な薬がないため、水分をしっかり摂りながら安静にして症状が治まるのを待ちます。

  • 咳や鼻水の症状

症状に合わせて鼻炎薬や咳止め薬、去痰薬などを使います。

仕事は休む

アデノウイルスは感染力が強いので、症状が治まってもしばらくは飛沫などにウイルスが混在します。仕事を何日休むかは法律で決められていませんが、感染を広げないために症状が治まってからも全身の体調がよくなるまでは休むようにしましょう。

大人がアデノウイルスに感染した場合、熱が下がるまで4~5日程度かかるといわれています。

事業所によって出勤停止の期間が異なるので、感染したことがわかったら職場の人に確認しておきましょう。

脱水症状に気を付ける

アデノウイルスに感染してのどが腫れると、痛みから食事や水分が摂れなくなることも珍しくありません。しかし、痛いからといって食事や水分を摂らずにいると、脱水状態や栄養不足になりやすいので、できるだけのどや胃腸に優しい食事・水分を摂るようにしましょう。

食事は豆腐など消化が良い薄味のものがおすすめです。酸味や辛みのあるもの、味が濃いものは刺激が強いので避けてください。

飲みものは、少し冷ました薄味のスープやスポーツドリンク、麦茶、経口補水液などがおすすめです。酸味が強いものや炭酸飲料は治るまで我慢しましょう。

結膜炎症状があるときはコンタクトレンズを使用しない

普段コンタクトレンズを使っている人は、症状が治まって医師から「使ってもいい」と許可が降りるまでコンタクトレンズの使用は中止しましょう。

 

結膜炎になっているときにコンタクトレンズを使うと、症状が悪化する場合があります。使用できる目薬も限られてしまうので、目の充血や目やにといった症状が出たらすぐにコンタクトを外してくださいね。

【大人向け】アデノウイルス6つの感染対策

大人がアデノウイルスに感染するのは、子どもから家庭内で感染するケースがほとんどです。家庭内感染を防ぐためにも、次のことを実践しましょう。

 

  • 手洗いうがいを忘れない
  • おむつ交換の後には必ず手を洗う
  • 規則正しい生活をする
  • マスクをつける
  • あちこち触らない
  • 食器やタオルを共用しない

手洗いうがいを忘れない

アデノウイルスは、ノンエンベロープウイルスといってアルコール消毒が効きにくいウイルスです。アルコール消毒では十分に不活化できないので、こまめに手洗い・うがいをして体の中にウイルスを入れないようにしましょう。

ていねいに手を洗った後に消毒薬で消毒すれば、より感染のリスクを低下させられますよ。

おむつ交換の後には必ず手を洗う

おむつを交換した後は、糞口感染を避けるためにも必ず念入りに手を洗いましょう。アデノウイルスの型によっては、子どもの便の中に菌が長期間混在します。

おむつ交換をする際は、使い捨てのビニール手袋を活用するのもおすすめです。

規則正しい生活をする

規則正しい生活をして、体の抵抗力を落とさないことも大切です。栄養バランスのよい食事を心がけ、睡眠不足にならないようにしましょう。特に睡眠不足が続くと体の抵抗力が一気に落ちます。少し昼寝をするなどして、睡眠不足にならないよう工夫してください。

仕事がある場合、昼休みに15分昼寝するだけでも気分のリフレッシュ・睡眠不足解消に繋がりますよ。

マスクをつける

咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを含んだ飛沫を吸い込むと、アデノウイルスに感染してしまいます。周囲で夏風邪にかかった人がいるようであれば、飛沫感染を防ぐためにもマスクを着用しましょう。

あちこち触らない

アデノウイルスは感染力が強いウイルスです。アルコール消毒も効きにくいので、感染した人が触ったもの・場所に触れるのはなるべく避けましょう。

感染した人が触ったもの・場所に触れたらしっかり手を洗い、手を洗う前に口や目・鼻に触れないようにしてください。

食器やタオルを共用しない

アデノウイルスに感染した人が使った食器やタオルを他の人が使うことは避けましょう。食器やタオルにはウイルスが付いているため、共用すると感染するおそれがあります。

食事は大皿で食卓に出すのではなく、1人前ずつ皿に盛って出しましょう。タオルは使い捨てのペーパータオルなどを活用すると、タオルの使い回しを防いでください。

よくある質問

大人がアデノウイルスに感染した場合のよくある質問を紹介します。

 

  • アデノウイルスの大人の症状は?
  • アデノウイルスは大人にうつりやすい?
  • アデノウイルスの隔離期間は?

アデノウイルスの大人の症状は?

アデノウイルスに感染すると、大人の場合次のような症状が出やすいといわれています。

 

  • 発熱
  • のどの痛み
  • 目の充血や目やになどの結膜炎症状
  • 血尿を伴う膀胱炎
  • 下痢・嘔吐
  • 腹痛

アデノウイルスは大人にうつりやすい?

アデノウイルスは、感染した後にできる抗体の持続期間が短いため、何度も感染するおそれがあります。主に接触感染・飛沫感染で感染が広がり、子どもがアデノウイルス感染症になると家庭内感染しやすいので注意しましょう。

アデノウイルスの隔離期間は?

大人の場合、アデノウイルス感染症になった際の隔離期間は法律で決められていません。何日仕事を休むかは、各事業所の判断にゆだねられています。しかし、周りに感染を広げないためにも、体調がよくなるまでは仕事を休んだ方がよいでしょう。

大人がアデノウイルス感染症になった場合、熱が下がるまで4~5日かかることが多いです。

まとめ

アデノウイルスは感染力が強く、大人も感染することがあるウイルスです。大人がかかると、次のような症状が現れます。

  • 発熱
  • のどの痛み
  • 目の充血や目やになどの結膜炎症状
  • 血尿を伴う膀胱炎
  • 下痢・嘔吐
  • 腹痛

アデノウイルス感染症には特効薬がないため、症状に合わせた薬を使いながら自然に治るのを待つしかありません。

感染を防ぐには、次のことを心がけましょう。

  • 手洗いうがいを忘れない
  • おむつ交換の後には必ず手を洗う
  • 規則正しい生活をする
  • マスクをつける
  • あちこち触らない
  • 食器やタオルを共用しない

特に、学校や幼稚園、保育園でアデノウイルスに感染した子どもから家庭内感染するケースが多いので、子どもの看病をする際は感染対策に気を配ってください。

もし、身近にアデノウイルスの罹患者がいて、疑わしい症状がある場合は早めにかかりつけの医療機関を受診しましょう。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。