マイコプラズマ感染症は、体力のある子どもや若い人でも、菌に対する体の免疫反応が強く出て重症化することもあり、注意が必要な疾患です。
この記事では、医療機関を受診するべきタイミングや、対処法、感染予防対策を紹介します。参考にしてください。
目次
この症状はマイコプラズマ?チェックリスト
マイコプラズマに感染すると、次のような症状が現れます。
- 頭痛・発熱の症状がある
- 乾いた咳が続く
- 全身がだるい
軽い症状でも放置したままだと、重症化することもあるので、心当たりがある場合は医療機関を受診しましょう。
頭痛・発熱の症状がある
マイコプラズマの代表的な症状に、頭痛や発熱といった風邪に似た症状があります。
乾いた咳が続く
熱が出たのと同時か、少し遅れたタイミングで、「コンコン・コホコホ」といった痰の絡まない乾いた咳が出ます。
この咳は残りやすく、熱が下がった後になっても3~4週間にわたって長く続き、特に年長児や青年では、そのうち痰の絡んだ咳になることもあります。
多くの人は軽い症状ですが、一部の人は肺炎を併発し、重症化する場合もあります。
全身がだるい
マイコプラズマ感染症では、全身倦怠感(だるさ)を感じる人も多くいます。
マイコプラズマとは
マイコプラズマは、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )という細菌によって引き起こされる感染症です。
一年を通じて患者が報告されていますが、空気が乾燥する冬場に患者が増加する傾向にあります。
病原体の潜伏期間は、約2~3週間です。初期症状は風邪とよく似ていますが、熱が出た後1~2日してから咳がどんどん強くなります。
ほとんどの場合、症状が出てから5~7日で軽快することが多いですが、40%の人では、気道が狭くなって、呼吸をするときに、ヒューヒュー、ゼーゼーなどと音がする喘鳴(ぜんめい)が認められます。そのまま、適切な治療を受けずに放っておくと、肺炎に移行し、重症化したり、肺に水がたまったりする例も珍しくありません。
マイコプラズマ感染症による肺炎は、子どもや若い人が発症する肺炎の原因のうち、比較的多くの割合を占めています。例年、患者として報告される患者の約80%は、14歳以下で、特に多いのは6~12歳です。しかし、大人や乳幼児も感染することがある病気なので、疑わしい症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
マイコプラズマの基本的な症状
マイコプラズマ感染症になると、次のような症状が現れます。
- 発熱や頭痛、だるさ、筋肉痛といった風邪のような症状
- 痰の絡まない乾いた咳
- 喘鳴(ぜんめい:呼吸の際にゼーゼー・ヒューヒューといった音がする)
- 喘息様気管支炎
マイコプラズマ感染症は、熱が出てから1~2日後に咳が出はじめ、日が経つにつれ徐々に咳が激しくなり、痰が絡むようになります。
咳は熱が下がった後も3~4週間ほど続くのが特徴です。
マイコプラズマ肺炎の症状
マイコプラズマに感染した場合、ほとんどの人は気管支炎程度の軽症で済みます。しかし、まれに重症化して、肺炎を併発することもあるので注意しましょう。
マイコプラズマ肺炎の主な症状は、しつこい咳と発熱です。
そのほかの合併症
マイコプラズマの合併症として、以下のような症状が報告されています。
- 中耳炎
- 胸膜炎
- 心筋炎
- 髄膜炎
- 脳炎
子どもがマイコプラズマにかかる原因
マイコプラズマ感染症にかかりやすいのは、14歳以下の子どもです。特に6~12歳でがかかりやすいとされています。これは、マイコプラズマが飛沫感染や接触感染で広がるためです。
- 飛沫感染
咳やくしゃみの際に飛び散った病原体を含む飛沫を吸い込み感染するルートです。
- 接触感染
患者が触れたものや場所に触った手で、口や目・鼻の粘膜に触れて感染するルートです。
患者と密に接触すると感染リスクが高まるので、集団行動が多い学校や保育園・幼稚園、密な接触が避けられない家庭内で感染が広がりやすいと言われています。
マイコプラズマにかかってしまったら
マイコプラズマ感染症にかかってしまったら、まずは早めに医療機関を受診しましょう。そのうえで、医師の指示に従って療養してください。
治療方法
肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )は、とても小さな細菌で、マクロライド系などの抗菌薬(抗生物質)が有効とされています。
しかし最近は抗生物質に耐性を持つ「耐性菌」も確認されており、その場合は他の抗菌薬で治療することもあります。
家庭での療養は、体力を落とさないことを心がけましょう。こまめに水分を補給し、栄養のあるものを食べさせてください。
仰向けの姿勢で寝ると苦しい場合は、背中部分にクッションや折りたたんだバスタオルを入れて上体を少し起こすと呼吸が楽になります。
マイコプラズマ感染症が重症化して肺炎を起こした場合は、症状の程度に合わせて入院が必要なこともあります。
登園・登校の目安
マイコプラズマ感染症は、学校保健安全法で第3種の感染症に指定されています。
この場合、医師が他の児童・生徒に感染させるおそれがないと判断するまで出席停止です。
体調がよくなるまでにかかる時間には個人差があり、一概に何日ということはできませんが、軽症であれば約1週間で症状が軽快すると言われています。
マイコプラズマの感染対策
マイコプラズマ感染症の感染対策は、主に3つです。基本的にはインフルエンザや風邪の感染対策に準じます。
- 手洗い
接触感染を防ぐため、患者と接触したり、触れたものや場所に触ったりした場合には、しっかり手を洗いましょう。手洗い前に口や目・鼻に触れないようにしましょう。
- うがい
体の中に病原体を入れないために、外から帰ったときや患者と接触した場合には、しっかりうがいをしましょう。
- マスクの着用
飛沫感染を防ぐため、患者本人だけでなく看病にあたる人もマスクを着用しましょう。
特に、咳が出ている間はマスクを着用することが望ましいです。
よくある質問
マイコプラズマ感染症について聞かれるよくある質問を紹介します。
- マイコプラズマになるとどんな咳が出る?
- マイコプラズマにかかったら何日休めばいい?
- マイコプラズマはどうやって診断する?
マイコプラズマになるとどんな咳が出る?
マイコプラズマ感染症になると、コンコン・コホコホといった乾いた咳が出ます。
発熱後1~2日してから咳が出はじめることもあり、時間の経過とともに徐々にひどくなっていくのが特徴です。
最初は乾いた咳ですが、とくに特に年長児や青年では、痰が絡んだ湿った咳(ゴホゴホ・ゲホゲホといった咳)に変化する場合もあります。
マイコプラズマにかかったら何日休めばいい?
マイコプラズマ感染症は、学校保健安全法で第3種の感染症に指定されています。
全身の症状が良くなり、他の人にうつすおそれがないと医師が診断するまでは出席停止です。
回復までにかかる時間は個人差があるので、期間ははっきり言えませんが、軽症であれば1週間程度で回復することが多いとされています。
大人の場合、法律で出勤停止期間は決められていません。出勤停止になるかどうかは各事業所の判断にゆだねられています。
しかし周りに感染を広げないために、熱が下がるまでは仕事を休み、咳があるうちはマスクを着用するむのが望ましいでしょう。
出勤する場合、咳が出ている間は必ずマスクを着用してください。
マイコプラズマはどうやって診断する?
長引く咳や肺炎の原因が肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae )なのかどうかは、抗原検査キットで診断が可能です。咽頭拭い液や痰を使った検査をおこない、15分程度で結果が出ます。
検査費用は3割負担で1,000円程度です。
肺炎を起こしているかどうかは、問診・視診・聴診のほか血液検査や胸部レントゲン検査で調べます。
まとめ
マイコプラズマ感染症は、風邪とよく似た症状が出る病気です。風邪だと思って放っておくと重症化し、肺炎を引き起こすこともあるので注意しましょう。
マイコプラズマ感染症になると、次のような症状が現れます。
- 頭痛・発熱
- 長引く乾いた咳
- 全身のだるさ
特に咳が時間とともにひどくなるようなら、マイコプラズマ感染症を疑いましょう。
マイコプラズマ感染症になったら、抗菌薬(抗生物質)を使って治療します。自宅では、体力を落とさないように、積極的に水分・栄養を摂って体を休めてください。
マイコプラズマ感染症は、飛沫感染・接触感染で広がります。
身近にかかった人がいる場合は、手洗い・うがい・マスクの着用を行って感染を予防しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。