おたふくかぜは、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症です。おたふくかぜになると耳の下が腫れるほか、発熱や頭痛などの症状が出ます。
子どもだけでなく大人もかかることがあり、重症化すると髄膜炎や脳炎といった重い合併症を引き起こすこともあるので正しく理解することが重要です。
本記事では、おたふくかぜになったときの対処法や、感染を予防する方法を解説します。
目次
当てはまったら病院へ|おたふくかぜのチェックリスト
おたふくかぜになると、耳の下が痛い・腫れる・熱いといった症状が現れます。もし次の状況に当てはまる場合は、症状がひどくならないうちに早めに医療機関を受診しましょう。
- 耳の下が痛い・腫れている・熱い
- 周りで流行している
- 今までおたふくかぜになったことがない
- おたふくかぜの予防接種をしていない
耳の下が痛い・腫れている・熱い
おたふくかぜは、ムンプスウイルスによって引き起こされる感染症です。感染すると、2~3週間の潜伏期間を経て、耳の下(耳下腺)に腫れや痛み、熱感といった症状が現れます。
耳下腺は、まず左右どちらかのみから腫れはじめ、続いて反対側が腫れてくることが多いです。耳下腺の腫れは痛みも伴い、唾液の分泌によって痛みを増すのが特徴です。
周りで流行している
耳下腺が腫れた際、周りでおたふくかぜが流行しているようであれば、ムンプスウイルスに感染している可能性は高いでしょう。おたふくかぜのウイルスは感染力がとても強く、患者の飛沫を吸い込んだり、患者が触れたもの・場所に触れた手で口や目・鼻の粘膜に触ることで簡単にうつります。
周囲でおたふくかぜが流行しており、疑わしい症状が出た場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
今までおたふくかぜになったことがない
おたふくかぜは一度感染すると生涯に渡る免疫が得られるため、二度とかからない感染症です。しかし、これまでかかったことがない人は免疫を持たないため、おたふくかぜになる恐れがあります。
おたふくかぜの予防接種をしていない
おたふくかぜは、予防接種で発症を防げる感染症です。子どものころにワクチンを2回接種していれば、おたふくかぜに特徴的な耳下腺の腫れや痛みといった症状はほとんど現れません。
これまでにおたふくかぜの予防接種をしていない人は、疑わしい症状が見られたら早めに医療機関へ相談しましょう。
おたふくかぜとは
おたふくかぜは、正式な名前を「流行性耳下腺炎」といいます。一度おたふくかぜになると生涯に渡って免疫が得られるため、再び感染することはありません。おたふくかぜの潜伏期間は、2~3週間(平均18日程度)といわれています。
また、おたふくかぜは幼少期にかかる病気だと思っている人も多いですが、子どものころに感染していなかったり、予防接種を受けていなかったりすると大人も発症する可能性があります。
大人が感染した場合、子どもより症状が重く出やすいといわれているので、しっかり予防することが大切です。
おたふくかぜの治療法
おたふくかぜには特効薬がありません。症状に合わせた薬を服用し、様子を見ながら自然に治るのを待つのが基本的な治療法です。
耳下腺の腫れや痛みがある場合は、解熱鎮痛剤や保冷剤による冷却が効果的です。発熱がひどく脱水に陥っているようであれば、点滴による輸液が行われることもあります。
おたふくかぜの感染経路
おたふくかぜを引き起こすムンプスウイルスは、感染力が強いウイルスです。患者が咳やくしゃみをした際に飛んだ飛沫を吸い込む「飛沫感染」や、患者が触ったものや場所に触れた手で口や目・鼻の粘膜を触ることで感染する「接触感染」での2種類で感染が広がります。
目立った症状がない人(不顕性感染者)からもウイルスがうつるので、手洗い・うがいやマスクの着用などで予防するのは難しいでしょう。
おたふくかぜの症状
おたふくかぜになると、以下のような症状が現れます。大人も子どもと同様の症状が現れるため、参考にしてください。
基本症状
おたふくかぜでよく見られる症状は、以下の6つです。
- 耳の下(耳下腺)の腫れや痛み・熱感
- 発熱
- 頭痛
- 食欲の減退
- 筋肉痛
- 首の痛み
特徴的なのは耳の下の腫れや痛み・熱感で、最初は片側だけに見られることが多く、しばらくすると反対側も腫れてきます。腫れた場所を触ってもしこりなどは確認できません。
耳の下の腫れや痛み・熱感が出た際は症状が出始めて1~3日がピークで、その後は1週間ほどで徐々に引いていきます。ただ、大人が感染すると、子どもに比べて重い症状が出やすいといわれています。
合併症
おたふくかぜになると、様々な合併症を発症することがあります。特に代表的なのは以下の2つです。
- ムンプス難聴
- 無菌性髄膜炎
ムンプス難聴は、1,000人に1人の割合で発症する難聴です。年間700人程度がかかっており、ステロイドなどを治療しても完全に治らないことが多いとされています。
無菌性髄膜炎は、約50人に1人の割合で発症する髄膜炎です。強い頭痛や嘔吐といった症状が見られますが、通常1~2週間程度で回復します。まだ有効な治療法がないため、発症したら自然に治るのを待つしかありません。
また、大人が重症化すると男性は精巣炎、女性は卵巣炎を発症するケースがあります。精巣炎は稀に不妊の原因になることがあるため、子どもを希望する人は注意が必要な症状です。
脳炎や膵炎といった重篤な後遺症・障害を引き起こす合併症のリスクもゼロではありません。
おたふくかぜにかかってしまったら
おたふくかぜにかかってしまったら、以下の対応を取りましょう。
- 保育園・幼稚園・学校は休む
- 脱水に注意する
保育園・幼稚園・学校を休む
おたふくかぜは、学校保健安全法で第2種の感染症に定められています。耳の下が腫れてから5日経過し、体調が良くなるまでは出席停止です。
患者の家族は、医師が「感染のおそれがない」と認めるまで出席停止です。
大人がかかった場合、出勤停止期間を定める法律はありません。しかし、おたふくかぜは感染力が強いので、周囲に広げないためにも外出は通院など最小限に留め、仕事は休むことを推奨します。
出勤停止期間は事業所によって異なるので、事業所の規則に従ってください。規則がない場合は、学校保健安全法と同じく耳の下が腫れてから5日経過し、全身の体調が良くなるまでは休んだ方がよいでしょう。
脱水に注意する
おたふくかぜになって耳の下が腫れると、唾液の分泌に伴ってひどく痛むようになります。痛みがあるからと水分や食事を摂らずにいると、脱水症状に陥ることがあるため注意しましょう。
耳の下が腫れている間は、酸味のあるものや硬いものは避けてください。どうしても口から水分が摂れない場合は、医療機関での点滴が必要になることもあります。
おたふくかぜの予防策
おたふくかぜは、飛沫感染・接触感染で広がります。周囲でおたふくかぜが流行っているときはこまめに手洗い・うがいを行い、ウイルスが体内に入るのを防ぎましょう。
おたふくかぜは、ワクチンによって発症が防げる感染症です。12~20ヶ月の子どもが予防接種を受けることで、92~100%発症を防げます。ただし、おたふくかぜの予防接種は任意です。予防接種で感染が予防できるので、できるだけ接種しましょう。
予防接種を受ける場合、日本小児科学会では2回の接種を推奨しています。1歳になった時点で早めに1回目のワクチンを接種し、小学校入学前の1年間に2回目のワクチン接種を受けるのが一般的です。
よくある質問
おたふくかぜのよくある質問を紹介します。
- おたふくかぜの見分け方は?
- おたふくかぜはうつる?
- おたふくかぜのときに外出してもよい?
おたふくかぜの見分け方は?
おたふくかぜ以外にも耳の下が腫れる病気があります。おたふくかぜかどうかは、以下の点をチェックしてください。
- 耳の下が腫れる・痛む・熱感がある
- 唾液の分泌に伴って痛みが増す
- 発熱がある
- 周囲でおたふくかぜが流行している
- これまでおたふくかぜになったことがない
- これまでおたふくかぜワクチンを接種したことがない
以上の項目に該当することがあれば、小児科または内科を受診しましょう。
おたふくかぜはうつる?
おたふくかぜは、感染力の強いウイルスが原因の感染症です。咳やくしゃみの際に飛んだ飛沫を吸い込んだり(飛沫感染)、患者が触ったもの・場所に触れた手で口や目・鼻を触る(接触感染)が感染経路となります。
症状が出ていない人からも感染するので、周囲におたふくかぜにかかった人がいる場合は、いつもより念入りにうがい・手洗いを行いましょう。
おたふくかぜは予防接種で防げる感染症です。まだおたふくかぜにかかったことがない・予防接種を受けたことがない人は、かかりつけの医療機関で相談してみましょう。
おたふくかぜのときに外出してもよい?
おたふくかぜになったときは、耳の下(耳下腺)の腫れが引くまで外出は控えましょう。腫れが引くまでにかかる時間は個人差がありますが、おおむね10日前後と言われています。
まとめ
子どもの病気と思われがちなおたふくかぜは、難聴や無菌性髄膜炎などの重い合併症を引き起こすことがある感染症です。耳の下が腫れたり、発熱したりといった症状がある場合はおたふくかぜを疑い、早めに医療機関を受診しましょう。
おたふくかぜになると、次のような症状が現れます。
- 耳の下(耳下腺)の腫れや痛み・熱感
- 発熱
- 頭痛
- 食欲の減退
- 筋肉痛
- 首の痛み
おたふくかぜの原因となるムンプスウイルスは感染力が強いウイルスです。これまでおたふくかぜになったことがない人・予防接種を受けたことがない人で上のような症状がみられた際は、おたふくかぜを疑ってください。
おたふくかぜは予防接種で防げる感染症です。重篤な合併症による後遺症・障害のリスクを避けるためにも、早めに予防接種を受けて発症を予防しましょう。
監修医師
古東麻悠(ことう・まゆ)
順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。