2023.06.28

自宅でセルフチェック|アデノウイルスの症状と対処方法を解説します

アデノウイルスは風邪を引き起こす代表的なウイルスのひとつです。さまざまな症状を引き起こすため、感染したとき何科にかかればよいか迷ってしまう人も少なくないでしょう。なかには、医療機関に行かずに治るのを待っている人もいるかもしれません。

しかし、「ただの風邪だからそのうち治るだろう」と放っておくと、重症化するリスクがあります。重症化した場合、命にかかわることもあるので、気になる症状が現れたら早めに医療機関を受診しましょう。

本記事では、アデノウイルスに感染すると現れる症状やウイルスの基本情報の他、大人がかかった場合の対応もお伝えしますので、参考にしてください。

目次

【症状でセルフチェック】この症状はアデノウイルス感染症?

アデノウイルスに感染すると現れる症状は主に次の5つです。

  • 発熱・咽頭痛がある
  • 喉が真っ赤になっている
  • 扁桃腺に白い膿がある
  • 目に充血や目やにの症状が出ている
  • 鼻水・鼻づまりの症状がある

夏風邪を疑った際は、まずこれらの症状が出ていないかチェックしてみましょう。

発熱・咽頭痛がある

アデノウイルスに感染すると、高熱や喉の痛みといった症状が現れることがあります。
特に保育園や幼稚園、学校でプール授業がはじまると、増えてくる症状です。目やにや結膜炎など目の症状を伴うこともあります。

喉が真っ赤になっている

口を開け喉の奥が真っ赤に腫れている場合、アデノウイルスに感染している可能性があります。

ただ、喉が赤く腫れる病気はアデノウイルスだけではないので、医師以外の人が他の病気と見分けるのは難しく自己判断はおすすめしません。喉が赤く腫れているようであれば、早めに医療機関を受診しましょう。

扁桃腺に白い膿がある

扁桃腺に白い膿が付いている場合も、アデノウイルスに感染している可能性があります。
重症化すると、食べ物や飲み物が飲み込みにくくなることがあります。

目に充血や目やにの症状が出ている

アデノウイルスに感染することで、目の充血や目やにといった結膜炎の症状が出ることがあります。

アレルギーなどがなく、突然目が充血したり目やにが出たりした場合は、アデノウイルス感染症を疑いましょう。

鼻水・鼻づまりの症状がある

アデノウイルスは風邪のウイルスでもあるので、鼻水や鼻づまりといった症状を引き起こすこともあります。

アデノウイルスの基本情報

アデノウイルスと一口に言っても、その種類は67以上に上ります。
以下では感染経路やかかりやすい年齢など、ウイルスの詳細を紹介します。

  • アデノウイルスとは
  • アデノウイルスの感染経路
  • アデノウイルスの潜伏期間
  • かかりやすい年齢
  • 登園・通学までの目安

アデノウイルスとは

アデノウイルスとは、風邪の原因となるウイルスの一種です。年間を通して感染者が出ていますが、特に夏に流行しやすいことで知られています。アデノウイルスには67以上の型があり、感染するウイルスの型によって現れる症状が異なるのが特徴です。

発熱や喉の痛みといった風邪症状を引き起こすものもあれば、胃腸炎を引き起こすものや、結膜炎を引き起こすものもあります。一度感染すると抗体が作られますが、免疫の持続時間は長くありません。そのため何度も感染するおそれがあります。

アデノウイルス感染症の特効薬はなく、治療は症状に合わせた薬で熱や喉の痛みなどを和らげながら自然治癒を待つのが基本です。治るまでにかかる期間は個人差があるため、一概に何日と断言はできません。

重症化する可能性もあるので、アデノウイルスに感染した徴候があれば早めに医療機関を受診しましょう。

アデノウイルスの感染経路

アデノウイルスの主な感染経路は3つです。

  • 飛沫感染
    咳やくしゃみなどで飛び散った感染者の飛沫を吸い込むことで感染するルートです。
  • 接触感染
    感染者が触れた物や場所に触れた手で、目や鼻・口を触ることで感染するルートです。
    学校や保育園・幼稚園では、プールの水を介して感染することもあります。
  • 糞口感染
    アデノウイルスは排泄物の中にも混在します。

排泄物に汚染された手や水、食品などを通じて感染するルートです。

アデノウイルスの潜伏期間

アデノウイルスの潜伏期間は、5~7日と言われています。
症状が出る2日前から他の人に感染するおそれがあります。

かかりやすい年齢

アデノウイルスは保育園や幼稚園、学校などで流行しやすく、患者の約60%が5歳以下と言われています。乳幼児の場合、急性気道感染症の約10%がアデノウイルスによるものと言われており、特に重要な病原体です。

登園・通学までの目安

アデノウイルス感染症は、学校安全法では第二種伝染病に指定されています。喉の痛みや腫れ、結膜炎症状など、主な症状が無くなってから2日経過するまでは出席停止です。ただし、症状が無くなり、医師が「感染のおそれがない」と判断した場合は、登園・登校できます。

まずはゆっくり体を休め、症状が無くなったタイミングで一度医師に登園・登校しても問題ないか確認するとよいでしょう。

アデノウイルスにかかった際の治療方法

アデノウイルスにかかった場合の治療は、基本的に対症療法です。熱があれば解熱鎮痛剤を服用する、結膜炎があれば目薬をさすなど、その時表れている症状に合わせた治療を行います。

アデノウイルスに対する特効薬はありません。他のウイルスに比べて発熱症状が長く続きやすいので、こまめに水分を摂って脱水症状を防ぎましょう。

アデノウイルスが引き起こす5つの感染症

アデノウイルスが引き起こす感染症は主に5つです。

  • 咽頭結膜熱(プール熱)
  • 胃腸炎
  • 流行性角結膜炎(はやり目)
  • 呼吸器感染症
  • 出血性膀胱炎

それぞれの症状と重症かリスク、何科を受診すべきかをお伝えします。

咽頭結膜熱(プール熱)

咽頭結膜熱(プール熱)は、1日の間で39~40度の高熱と37~38度前後の微熱を行ったり来たりするのが4~5日ほど続く感染症です。かつては夏にプールを介して感染が広がっていたことから「プール熱」と呼ばれることもあります。(現在は塩素濃度管理が徹底されているため、プールを介して感染が広がるのは稀です。)

咽頭結膜熱に感染すると、次のような症状が現れます。

  • 発熱
  • 喉の腫れ
  • 喉の痛み
  • 扁桃腺の腫れ・膿の付着
  • 目やにや充血などの結膜炎症状

人によっては頭痛や腹痛・下痢、リンパ節の腫れと言った症状が見られる場合もあります。

喉が痛くて水分が取れない場合や、5日以上熱が続く場合、早めに小児科・内科を受診しましょう。

胃腸炎

乳幼児期に多く見られるアデノウイルス感染症です。腹痛や嘔吐、下痢といった症状が長期に渡って見られます。

発熱は軽度で済むケースが多いものの、重症化すると脱水症状を引き起こすことがあるため注意が必要です。感染が疑われる場合は、小児科・内科を受診しましょう。

流行性角結膜炎(はやり目)

目の充血や目やにといった症状が出る感染症です。

咽頭結膜熱のような高熱や喉の痛みはほとんどなく、喉の腫れも強くはありません。結膜炎の症状が治まった後に角膜炎や偽膜性結膜炎が起こる場合があります。

流行性角結膜炎は、学校保健安全法で学校感染症のひとつに指定されているため、他の人にうつすおそれがなくなるまで登園・登校は禁止です。

結膜炎の症状が強く出ている場合は、眼科を受診してください。

呼吸器感染症

咳や鼻水・鼻づまりといった呼吸器症状が出る感染症で、長引く発熱を伴うケースがあります。乳幼児がかかりやすく、重症化すると髄膜炎や脳炎、心筋炎などを引き起こす可能性があるので注意が必要です。

咳や呼吸器症状が強く出ている場合は、早めに小児科・内科・呼吸器科で処置を受けましょう。

出血性膀胱炎

排尿時の痛みと血尿が特徴的な症状です。膀胱炎症状は2~3日で、血尿・尿潜血は10日程度で改善します。

子どもの場合は小児科、大人の場合は内科または泌尿器科を受診しましょう。

アデノウイルス感染症にかかったら脱水症状に気を付けて

アデノウイルス感染症は特効薬や効果的な治療法がないため、自然に回復するのを待つしかありません。回復を待つ間、発熱や嘔吐・下痢などで脱水状態に陥ると命にかかわることがあるので注意しましょう。

喉の痛みもある場合は、水分や食事を摂るのも難しくなります。喉が痛いから、食欲がないからと水分や食事を摂らずにいると、脱水状態になりやすくなるので、こまめに水分を補給してください。

水分補給の際には、失われやすいミネラルも補給できる経口補水液がおすすめです。

アデノウイルスの3つの感染対策

アデノウイルスに感染しないためには、対策として次の3つを心がけましょう。

  • 手洗いうがいを入念に行う
  • プールに入る前後にシャワーをしっかり浴びる
  • 感染者と同じタオルを使わない

手洗いうがいを入念に

アデノウイルスは、感染した人の飛沫や糞便を介して感染が広がります。外から帰ったときやトイレに行った後に限らず、こまめな手洗い・うがいで感染を防ぎましょう。

アデノウイルスは、ノンエンベロープウイルスといったアルコール消毒液が効きにくい性質を持ちます。そのため、アルコール消毒だけではウイルスを不活化できません。

石けんを使ってしっかり手を洗ったうえで消毒液を使用し、より効果的に予防を行いましょう。

煮沸や次亜塩素酸ソーダで消毒する

感染した人が使った物や触った場所は、できるだけ消毒しましょう。アデノウイルスに消毒用エタノールはあまり効果がなく、逆性石鹸やイソプロパノールには抵抗があります。

消毒する場合は、煮沸消毒や次亜塩素酸ソーダでの消毒が有効です。

感染者と同じタオルや食器は使用しない

感染者の唾液や体液が付いたタオルや食器を共用すると、アデノウイルスに感染しやすくなります。

アデノウイルスは感染力の強いウイルスです。症状が治まった後でも2~4週間はウイルスが排出されます。

症状が消えてもしばらくはタオルや食器を共用しないようにしましょう。

よくある質問

アデノウイルスに関するよくある質問にお答えします。

  • アデノウイルスは大人にもうつる?
  • アデノウイルスは何日くらいで治る?
  • アデノウイルスの検査方法は?

以下で詳しく解説しますので、参考にしてください。

アデノウイルスは大人にもうつる?

アデノウイルスは大人にもうつる可能性があります。

ウイルスに感染すると抗体が作られますが、アデノウイルスに対する免疫は持続期間が短いため、子どもの頃にできた免疫が大人になってからも持続することはありません。

大人がアデノウイルスに感染しても、アデノウイルス特有の目立った症状は出にくく、普通の夏風邪と疑われやすいのが特徴です。

しかし、お年寄りや持病がある人など重症化しやすい人もいるので、家族で感染者が出た場合は感染対策を徹底しましょう。

症状がある場合は早めに内科・眼科を受診して、症状に合った薬を処方してもらってください。特効薬はありませんが、症状に合わせた薬で症状を和らげることは可能です。

大人が感染した場合、仕事を何日休むかは勤務先の判断に委ねられます。

ウイルス感染症は何日くらいで治る?

アデノウイルス感染症が治るまでの日数は、個人差があるため一概には言えません。4~5日程度で発熱が治まる場合もあれば、10日以上結膜炎症状が消えないこともあります。

子どもが感染した場合は、目立った症状がなくなってから2日経過するまでは登園・登校を控えましょう。

アデノウイルスの検査方法は?

アデノウイルスに感染しているかどうかは、簡単な検査で診断できます。目や喉から採取した検体を検査キットにセットするだけで、15分ほどで結果が出ます。

検査費用は、保険適応の場合で数百円〜2,000円程度です。

まとめ

アデノウイルスは、風邪症状を引き起こす代表的なウイルスです。感染力が強いので、普段からしっかりと手洗い・うがいをして感染を防ぎましょう。

アデノウイルスに感染すると、以下の症状が現れます。

  • 喉の痛み
  • 喉の腫れ
  • 扁桃腺の膿
  • 結膜炎症状(充血・目やに)
  • 胃腸炎
  • 呼吸器障害
  • 血尿
  • 排尿時の痛み

これらの症状が見られた場合は、かかりつけの内科または小児科を受診してください。目の症状が出ているときは、眼科の受診も検討しましょう。

アデノウイルス感染症に特効薬はなく、症状に合わせた薬で熱や痛みを和らげながら、しっかり水分を摂って自然回復するのを待つしかありません。しかし、放っておくと重症化するおそれがあるので、早めに医療機関を受診することが大切です。

監修医師

古東麻悠(ことう・まゆ)

順天堂大学医学部卒業。途上国医療に関心を持ち、学生時代よりアジア・アフリカ各国の保健指導、巡回診療に参画。子どもたちのトータルサポートを目指し、小児科医として働きながらNPO法人very50、NPO法人Ubdobe(現株式会社デジリハ)のメディカルアドバイザーを兼務。現在は都内総合周産期病院にて新生児科医として勤務。一児の母。