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2025.12.25

長引くその咳、本当にただの風邪ですか?|「百日咳」の症状・治療と登園目安の正しい知識

「熱は下がったのに、咳だけがなかなか治らない…」
「夜になると咳き込んで、苦しそうで見ていられない」

そんな症状にお悩みではありませんか?
もし、お子さんの咳が長く続いているなら、それはただの風邪ではなく「百日咳(ひゃくにちせき)」かもしれません。

昔の病気だと思われがちですが、実は近年、大人からの感染や、乳児の重症化が問題になっています。

「うちはワクチンを打ったから大丈夫」と思っている方も要注意。
家族みんなで知っておきたい、百日咳のサインと対策について詳しく解説します。

目次

百日咳ってどんな病気?普通の風邪と何が違うの?

百日咳は、その名の通り「咳が長く(約100日)続く」と言われる呼吸器の感染症です。 最初は普通の風邪のように始まりますが、徐々に「咳」の性格が変わっていくのが特徴です。

独特な「3つのステップ」で進みます

1. カタル期(始めの1〜2週間)

普通の風邪と同じように、鼻水や軽い咳が出ます。
この時期が一番感染力が強いので注意が必要です。

2. 痙咳期(けいがいき)

ここが百日咳の最大の特徴です。
・「コンコンコンコン!」と短い咳の後、息を吸うときに「ヒュー」という笛のような音が鳴る。
・顔を真っ赤にして咳き込み、最後に吐いてしまうこともある。 夜間に発作が起きやすく、見ていてとても辛い時期です。

3. 回復期

激しい発作は減りますが、忘れた頃にまた咳が出るなど、完治まで2〜3ヶ月かかることがあります。

百日咳の治療は、早期の抗菌薬(マクロライド系抗菌薬)投与と、咳を和らげる対症療法が中心です。ただし、マクロライド耐性菌も報告されており、他の抗菌薬(ST合剤など)が選択されることがあります。

カタル期に抗菌薬を開始すると、咳の悪化を抑え、感染拡大を防ぐことができますが、すでに痙咳期に入ってから時間が経ってしまった場合、抗菌薬開始しても咳の症状を和らげることは難しくなります。

【赤ちゃんは特に注意!】

生後6カ月未満の乳児は重症化しやすく、生後6ヶ月未満の乳児が感染すると、咳が出ずに「息が止まってしまう(無呼吸)」ことがあり、命に関わる危険があります。

「子どもがかかる病気」は勘違い?実は大人も…

「うちはもう予防接種を受けたから大丈夫」
「大人は関係ないでしょ?」

そう思っているとしたら、少し認識をアップデートする必要があります。

大人の方でも感染します

実は、「大人の百日咳」が増えています。 子どもの頃に打ったワクチンの効果は、時間が経つとともに薄れていきます(最終接種から10〜12年で抗体が減ると言われています)。

大人がかかると、典型的な「ヒュー」という音が出ず、「しつこい咳が続く風邪」程度で終わることが多いため、百日咳だと気づかないケースが大半です。

ここが一番の怖いポイント

気づかないうちに、パパやママ、おじいちゃんおばあちゃんが「運び屋」となり、免疫のない赤ちゃんにうつしてしまう家庭内感染に注意が必要です。

もし罹ったら?学校や園はどうする?

百日咳は、学校保健安全法で「出席停止」になる感染症です。 単に熱が下がったからといって、自己判断で登校・登園させることはできません。

登園・登校の目安

1. 特有の咳(激しい咳き込み)が完全に消えるまで。

2. 医師に処方された抗菌薬を5日間飲み切ってから。

家庭でできる対策と予防のキホン

なによりも「ワクチン」が最強の盾

百日咳を防ぐ最も有効な手段は予防接種です。

・五種混合ワクチン

生後2ヶ月から接種が始まります。スケジュール通りに確実に受けましょう。

・就学前の追加接種

小学校入学前に「三種混合ワクチン」などを任意で接種することを推奨する小児科医が増えています(抗体を再び上げるため)。

生活の中でできること

・咳エチケットの徹底

大人も子どもも、咳が出るときはマスクをしましょう。

・部屋の加湿

乾燥は咳を誘発します。加湿器などで湿度を50〜60%に保ちましょう。

・こまめな水分補給

喉を潤すことで、少し咳が楽になることがあります。

最後に:長引く咳は「ただの風邪」じゃないかも

「熱はないし、元気はあるから大丈夫」と思っていても、咳が2週間以上続く場合や、咳き込んで吐いてしまう場合は、一度かかりつけの小児科や内科に相談してください。

特に、家に生まれたばかりの赤ちゃんがいるご家庭で、ご家族に長引く咳がある場合は、念のため受診することをおすすめします。それが、小さな命を守ることにつながります。

監修医師

ことびあクリニック恵比寿院 
手島 麻登里(てしま まどり)

医師(ことびあクリニック恵比寿院 非常勤医師 小児循環器科)
日本小児科学会 小児科専門医・指導医

防衛医科大学校を卒業後、陸上自衛隊医官として従事。その後、国立循環器病研究センター小児循環器科などで専門的な研鑽を重ねてまいりました。  現在は日本小児科学会小児科専門医・指導医として、後進の育成にも尽力しています。保護者の方々の「ちょっとした心配」から「専門的な悩み」まで、確かな医学的根拠をもとに解決の糸口となれるよう、丁寧で温かみのある診療を心がけています。