「保育園でインフルエンザが流行っている…」
「急に熱が上がってぐったりしている」
冬の足音が聞こえると同時に、ママ・パパの心配の種となるのが季節性インフルエンザです。毎年流行するとわかっていても、いざ我が子が罹ると慌ててしまうものですよね。
今回は、インフルエンザの基本から、子ども特有の注意点、そして家庭内感染を防ぐコツまで、「これだけ知っていれば安心」というポイントをまとめました。
目次
そもそもインフルエンザってどんな病気?
「風邪とどう違うの?」とよく聞かれますが、インフルエンザは「全身の病気」と言えます。
一般的な風邪が「のどの痛み」「鼻水」など局所的な症状からじわじわ始まるのに対し、インフルエンザは以下のような特徴があります。
・急な発熱(38℃以上)
・全身のだるさ、関節痛
・頭痛
これらが比較的急速にやってくるのが特徴です。
なぜ毎年流行するの?症状が違うのはなぜ?
インフルエンザウイルスは、大きく分けてA型とB型がありますが、その中でもさらに細かく型が分かれており、ウイルスは少しずつ自分の形を変えて私たちの免疫をすり抜けようとします。
そのため、「去年かかったから大丈夫」とはならず、その年流行している「型」に合った対策が必要になるのはこのためです。
予防接種は打ったほうがいいの?
結論から言うと、小児科視点では「毎年の接種」を推奨します。
「ワクチンを打ったのにかかったことがある」という声もよく耳にしますが、実はインフルエンザワクチンの最大の目的は「感染を100%防ぐこと」ではなく、「重症化を防ぐこと」と「感染後に発症する可能性を減らすこと」にあります。
■重症化を防ぐこと
インフルエンザ脳症の予防:子どもにとって最も怖い合併症の一つです。
■感染後に発症する可能性を減らすこと
肺炎や入院リスクの軽減:症状を軽く済ませる効果が期待できます。
ウイルスの流行する型は毎年変わるため、そのシーズンの流行予測に合わせて作られたワクチンを接種することが、子どもを守る一番の鎧(よろい)になります。

子どもが罹ったときのホームケアと注意点
もし診断されたら、基本は「安静」と「水分補給」です。
また、抗インフルエンザウイルス薬(タミフルやイナビル、ゾフルーザなど)は、発症から48時間以内に使用すると熱が早く下がりやすいですが、必ず医師の指示に従ってください。
【重要】ここだけは覚えておいて!「異常行動」への注意
子どものインフルエンザで最も気をつけなければならないのが、「異常行動」です。
薬の副作用だけでなく、インフルエンザの高熱自体によって引き起こされることもあります。
高熱が続いている間は、決してお子さんを一人にしないでください。
具体的な異常行動の例
・急に走り出す、部屋の中をうろうろする。
・人に襲われる感覚を覚え、外に飛び出す(幻覚・錯乱)。
・興奮してベランダに出て、飛び降りようとする。
ご家庭での対策
・玄関や窓の鍵をしっかりかける。
・ベランダに面していない部屋で休ませる。
・寝ている間も、大人がそばで見守る。
家族への感染を防ぐ「守りの」テクニック
子どもがインフルエンザになると、看病するパパ・ママへの感染リスクは非常に高くなります。完全に防ぐのは難しいですが、リスクを下げる方法はあります。
■湿度は50〜60%をキープ
インフルエンザウイルスは乾燥が大好きで、湿気に弱いです。加湿器をフル稼働させましょう。
■マスクの着用
看病する大人はもちろん、可能ならお子さんにもマスクを(苦しくない範囲で)。
■ゴミの捨て方を工夫:
鼻水を拭いたティッシュにはウイルスがいっぱいです。ビニール袋に入れて密閉してからゴミ箱へ捨てましょう。
■手洗い
こまめに手を洗いましょう。また、咳やくしゃみを手でおおったときにも洗いましょう。
■入浴
感染者は「最後」に入り、使用したタオルは共有しないようにしましょう。
■こまめな換気
寒くても1時間に1回、数分でも窓を開けて空気を入れ替えましょう。

最後に:慌てずに、まずは様子を見て
子どもが高熱を出すと胸が痛みますが、インフルエンザは適切なケアをすれば数日で回復に向かう病気です。
水分が摂れていて、少しでも眠れているなら、まずは一安心です。 ただし、以下の場合は迷わず医療機関に相談してください。
・水分が全く摂れない
・呼吸が苦しそう(ゼーゼーしている、肩で息をしている)
・呼びかけへの反応が鈍い
冬の流行シーズン、正しい知識とお守り(インフルエンザ予防接種・ホームケア)を持って、家族みんなで乗り切りましょう!

監修医師
ことびあクリニック恵比寿院
手島 麻登里(てしま まどり)
医師(ことびあクリニック恵比寿院 非常勤医師 小児循環器科)
日本小児科学会 小児科専門医・指導医
防衛医科大学校を卒業後、陸上自衛隊医官として従事。その後、国立循環器病研究センター小児循環器科などで専門的な研鑽を重ねてまいりました。 現在は日本小児科学会小児科専門医・指導医として、後進の育成にも尽力しています。保護者の方々の「ちょっとした心配」から「専門的な悩み」まで、確かな医学的根拠をもとに解決の糸口となれるよう、丁寧で温かみのある診療を心がけています。
