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2025.10.29

「赤ちゃんの頭の形、このままで大丈夫かな…」と悩むママやパパに|予防や対策、専門的な治療方を解説

「産まれたばかりのわが子の頭の形が気になる…」「成長すれば治るもの?」「気を付けることはある?」と悩むママやパパは少なくありません。
赤ちゃんの頭のゆがみは成長に伴って改善されることがほとんどですが、極端な変形は将来的にも残ることがあります。

赤ちゃんの頭のゆがみの種類から、ご家庭でできる予防・改善策、そして専門的な治療法、さらには治療の最適な時期まで、気になる情報を詳しく解説します。
大切な赤ちゃんの健やかな成長のために、正しい知識を身につけ、安心してケアしていきましょう。

目次

赤ちゃんの頭のゆがみってどんな種類があるの?

赤ちゃんの頭のゆがみはほとんどが「位置的頭蓋変形症」ですが、手術による治療が必要な「頭蓋骨縫合早期癒合症(ずがいほうごうそうきゆごうしょう)」と鑑別することが大事です。

1.位置的頭蓋変形症

外部からの圧力が原因で起こるゆがみです。これはさらに形によって3種類に分けられます。脳の発達への影響はありませんので見た目だけの問題です。

斜頭症(しゃとうしょう)

頭を上から見たときに後頭部が斜めに平らになり、左右非対称な状態です。寝る向きの癖(向き癖)や抱き癖、子宮内の環境などが主な原因となります。ゆがみが進むと、耳や顔の位置にも左右差が出ることがあります。

短頭症(たんとうしょう)(絶壁頭)

後頭部全体が丸みを帯びずに平らで、頭の横幅が広い状態を指します。日本では仰向け寝が一般的だったため、昔からよく見られたゆがみです。

長頭症(ちょうとうしょう)

頭部が縦に細長く伸び、後頭部が大きく突き出した状態です。NICU(新生児集中治療室)に長期入院していた未熟児の赤ちゃんに見られる傾向があり、本来であれば子宮の中で羊水に浮いている時期を保育器の中で過ごすことが原因です。

2.頭蓋縫合早期癒合症(ずがいこつほうごうそうきゆごうしょう)

2,500人に1人の確率で認められる比較的、稀な病気です。頭蓋骨のつなぎ目(頭蓋縫合)が脳の成長よりも早くくっついてしまう先天性の病気です。脳の成長が妨げられるため早期の診断と専門的な治療(手術)が必要です。大泉門と呼ばれる赤ちゃんの頭にある柔らかい凹みが生まれてすぐに閉じている場合、本疾患の可能性があるため注意が必要です。

ご家庭でできる改善・予防策

ゆがみが軽度の場合や生後3ヶ月未満の赤ちゃんには、日々のちょっとした工夫で改善・予防が期待できます。

向きをこまめに変える

ベッドに寝かせる際は、毎回頭の向きを変えたり、ベビーベッドの向きを日替わりで変えたりしましょう。赤ちゃんは光や人のいる方向を向くため、視覚的な刺激を利用するのも良い方法です。また、授乳のたびに抱く腕を左右交代にすることも、首の向きの偏りを減らす助けになります。

抱っこや姿勢替えを増やす

起きている間は、長時間同じ姿勢で寝かせっぱなしにせず、抱っこひもで縦抱きにしたり、抱っこする時間を増やしたりして、後頭部への圧迫を減らしましょう。

タミータイム(うつぶせ遊び)の活用

タミー(英語:tummy)とは『お腹』のことで、起きている間に赤ちゃんを腹ばい(うつぶせ)にすることで後頭部へ持続的な圧が加わることを避ける方法です。

❖赤ちゃんが起きているときに、保護者が見守りながらうつ伏せで遊ばせる時間を取り入れましょう。これは頭の同じ箇所への圧力を減らすだけでなく、首や背中の筋肉を鍛え、運動発達を促す効果があります。

❖生後すぐ(退院直後)から、機嫌の良いときに1回3~5分程度、1日2~3回を目安に始め、徐々に時間を延ばし、首がすわる頃には1日合計30~60分を目標に、無理のない範囲で増やしましょう。

❖ママ・パパの胸の上でうつ伏せにしたり、横に寝転んで声をかけたりすると、赤ちゃんも安心しやすくなります。

❖顔がマットや布団に沈み込んで鼻や口が塞がれていないか常に確認し、柔らかすぎる布団やクッションの上では行わないなど、安全には十分注意してください。うつぶせにしたまま寝かせることは窒息のリスクとなるため絶対に避けてください。

改善できるのはいつまで?治療の最適なタイミング

赤ちゃんの脳は2歳までに成人の約70%にまで急速に成長し、それに伴い頭蓋骨も大きく変化します。赤ちゃんが寝返りを打ったりお座りを始めたりすると後頭部へかかる圧が減るため、頭の歪みの多くは自然に解消されますが、重度の変形がある場合は治療の適応となることがあります。

位置的頭蓋変形症(ヘルメット治療)

❖重度の変形があり、自然療法で改善しない場合はヘルメット治療の効果があることがあります。

❖保険適応はないため、自費での治療になります。

❖入浴の時以外はヘルメットを着用する必要があり、頭の蒸れや皮膚潰瘍などのトラブルが起こることがあります。

❖治療期間は5~6ヶ月でヘルメットの調整のために定期的な通院が必要です。

❖ヘルメット治療が最も効果的とされるのは、頭の成長が活発な生後4〜6ヶ月頃です。この時期に治療を開始することで、より高い改善効果が期待できます。

❖生後7ヶ月以降は効果が落ちるとされ、2歳を過ぎるとヘルメット治療の効果はないため、気になる場合は早めに相談することをお勧めします。

頭蓋骨縫合早期癒合症(手術)

経験豊富な小児脳神経外科医と小児形成外科医による治療が必要です。脳の発育への影響を考慮し、1歳前に手術を行います。ヘルメット治療で直すことはできないので、疑わしい場合は適切な検査を受けることが必要です。

赤ちゃんの健やかな成長のために心配なときは、迷わず専門家へ相談を

赤ちゃんの頭のゆがみは多くの場合、成長に伴って目立たなくなります。また、早期にケアを行うことで変形が進むのを予防することができます。また、頭のゆがみは運動発達の遅れのサインであることもあるので、以下のような場合はまずはかかりつけの小児科医にご相談を。

・月齢が進んでも頭のゆがみが強い、または左右差が広がっていると感じるとき。
・赤ちゃんに強い向き癖があり、常に同じ方向にしか頭を向けられない様子があるとき。
・生後3〜4ヶ月を過ぎても、明らかなゆがみが残っているか悪化しているとき。

赤ちゃんの成長はあっという間です。「もっと早く相談すればよかった」と後悔しないためにも、少しでも気になることがあれば、まずはかかりつけの小児科医や専門の相談窓口に気軽に相談してください。

監修医師

ことびあクリニック恵比寿院 
澁谷聡一(しぶや そういち)

医師(ことびあクリニック恵比寿院 非常勤医師 小児外科)
日本小児外科学会 小児外科専門医
日本周産期・新生児医学会 認定外科医
da Vinci Certified Surgeon(ロボット手術認定)
医学博士

京都府立医科大学を卒業後、順天堂大学小児外科・小児泌尿生殖器外科、長野県立こども病院、聖隷浜松病院などで研鑽を積み、さらに英国ロンドン大学グレートオーモンドストリート小児健康研究所にて国際的な経験も重ねてまいりました。

専門は小児外科全般、とくに先天性疾患・新生児外科・低侵襲手術に加え、胎児診断や出生前の外科系疾患に関するコンサルテーション、そして再生医療にも取り組んでいます。診療にあたっては「優しく、丁寧に、わかりやすく」を心がけ、笑顔を忘れずに、ご家族が安心してお話しいただける雰囲気づくりを大切にしています。