「公園で他の子に話しかけられると、私の後ろに隠れて固まってしまう」
「お店で店員さんに『ありがとう』が言えず、もじもじしている」
「新しい環境に馴染めず、いつも一人でいるみたい…」
お子さんの極端な人見知りや内向的な性格に、心配になっている親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。
「このままで大丈夫だろうか」「親としてどう関わればいいの?」と、不安になりますよね。
しかし、焦る必要はありません。内向的であることは、その子の個性であり、決して悪いことではないのです。
大切なのは、その子の気質を理解し、その子に合ったペースで成長を見守ってあげることです。
このコラムでは、内向的なお子さんの特徴や強み、親御さんの対応の仕方などについてご紹介します。
目次
なぜ?「極端な内向性」の背景にあるもの
まず理解したいのは、強い内向性や人見知りは、本人の「やる気がない」からでも、親の育て方が原因でもない、ということです。多くの場合、その子が生まれ持った「気質」が大きく関係しています。
内向的な子どもには、外向的な子どもにはない、生まれつきの素晴らしい長所がたくさんあります。
<内向的なお子さんの主な特徴と強み>
◇生まれ持った自己決定力と主体性
人の意見に流されず、自分で考え、自分で決める力を持っています。幼少期は頑固に見えるかもしれませんが、納得すると自ら方針転換したり、目標に向かってコツコツ努力を続けられる性質もあります。
◇豊かな内面世界と観察力
自分の世界を持ち、気になることがあるとじっくり観察し、独創的な遊びや表現を生み出すことができます。他の人が気づかないような細かい点にもよく気づきます。
◇人に流されない誠実さ
自分の意見や価値観を大切にするため、安易に周囲に流されることがありません。人に合わせたり、思ってもいないことを言ったりするのを嫌う、誠実さがあります。
◇集中力と探究心
興味を持ったことには高い集中力で取り組み、学習や創作活動でその力を発揮します。
◇質の高い人間関係
友人の数は多くなくても、信頼できる友人と長く深く付き合う傾向があります。
内向的な子は、物事をじっくり考え、深く感じ取ることができるという長所を持っています。まずは「この子は、そういう素敵な個性を持っているんだ」と、ありのままを受け止めてあげることが、サポートの第一歩です。
親の不安は「安心」に変えられる! 自信を育むサポート方法

お子さんの内気な様子や人見知りが心配になるのは、親として当然の感情です。しかし、大切なのは、お子さんの性格を無理に変えようとしないこと。短所を直そうとすると、せっかくの長所を失うリスクもあるのです。ご家庭は、お子さんが安心して過ごせる「安全基地」となり、少しずつ自信を育んでいく関わりが大切です。
1. お子さんの「安心」を最優先にする
お子さんが不安や緊張を感じている時、無理に「頑張らせる」のは逆効果です。親から見ると頼りなく感じても、寄り添い、「なんか緊張しちゃうね」のように共感する言葉をかけてあげましょう。 急かさずに待つことで、お子さんは自分のタイミングで行動に参加できるようになります。お子さんが安心できる状況を整えることは、自立神経を育む土台になります。
2. お子さんのペースを尊重し、見守る
内向的なお子さんは自分のペースを大切にします。集団行動が続くとストレスを感じやすいので、一人で過ごす時間や好きな遊びの時間を確保してあげましょう。一人の時間や好きな遊びの時間を確保することで、気持ちが整いやすくなります。「マイペースすぎて大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、成長とともに周囲に合わせる力も育ちます。急かしたり否定せず、ゆっくり考える時間を尊重してあげましょう。
3. 隠れた強みを伝え、自己肯定感を高める
「慎重に考えられるのは素敵だね」といった声かけで、お子さんの特性を肯定的に伝えることが大切です。他の子と比べるのではなく、過去の自分との成長に目を向け、「挑戦した勇気」や「できたこと」を具体的に褒めましょう。言いたいことが言えない場面では、「どうしたら気持ちよく過ごせるか一緒に考えよう」と寄り添う姿勢も効果的です。結果よりも、挑戦する姿勢を認めてあげることが、お子さんの自信につながります。
その範囲を超えたら…専門家への相談も大切な選択肢
ご家庭での工夫を続けても、以下のような状況が見られる場合は、一人で抱え込まずに専門家へ相談することを検討しましょう。
・特定の場所(学校など)で全く話せなくなる(場面緘黙症の可能性)
・人前に出ることを極端に恐れ、日常生活に支障が出ている(社交不安障害の可能性)
・腹痛や頭痛など、身体的な症状を頻繁に訴える
・保護者自身が対応に疲れ、精神的に追い詰められている
相談先としては、以下のような場所があります。
・市区町村の子育て支援センター、保健センター
・学校のスクールカウンセラー
・かかりつけの小児科
・児童精神科、心療内科
専門家への相談は、特別なことではありません。子育てのパートナーとして、客観的な視点から的確なアドバイスをもらうことができます。
まとめ
極端に内向的・人見知りなお子さんへの対応で最も大切なのは、その子の個性とペースを尊重し、「あなたのままで大丈夫だよ」というメッセージを伝え続けることです。
周りの子と比較して焦る必要はありません。お子さんの一番の理解者であり、味方である親御さんが、どっしりと構えて見守ってあげることが、お子さんにとって何よりの安心材料になります。日々の小さな「できた!」を一緒に喜びながら、お子さんのペースで歩んでいきましょう。

監修医師
ことびあクリニック恵比寿院
石井 知愛子(いしい ちあこ)
医師(ことびあクリニック恵比寿院 非常勤医師 思春期科)
日本小児科学会認定 小児科専門医
東京医科大学を卒業後、同大学の小児科および思春期科で診療と研究に携わり、現在は非常勤医として勤務しています。心と体が大きく変化する思春期のお子さま一人ひとりに寄り添い、丁寧な対話と専門的な視点でサポートしてまいります。