アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜がアレルゲン(アレルギーの原因:例えば、花粉やダニ、ハウスダストなど)に反応して炎症を起こす疾患です。くしゃみや鼻水、鼻づまりといった症状が特徴であり、大人にも子どもにも関係のある病気です。
これらの症状が続くと、仕事や勉強に集中できなくなったり、睡眠の質が低下して日中の疲れが抜けにくくなったりすることがあります。また、鼻づまりによって口呼吸が増えることで喉が乾燥し、風邪を引きやすくなるなど、健康全般にも影響を及ぼします。特に、長期間放置すると慢性的な鼻づまりや副鼻腔炎を引き起こすことがあり、さらなる不快な症状につながる可能性もあります。
しかし、適切な対策を取ることで、これらの症状を大幅に軽減し、快適な毎日を送ることができます。本記事では、症例も交えながらアレルギー性鼻炎にかかったときの対処法や予防法をお伝えし、生活の質(QOL)を向上させるための具体的な方法をご紹介します。ぜひ最後までお読みいただき、ご自身の症状管理に役立ててください。
目次
こんな症状ありませんか?アレルギー性鼻炎をセルフチェック

アレルギー性鼻炎は、鼻の粘膜がアレルゲン(花粉やダニ、ハウスダストなど)に反応して炎症を起こす疾患です。
以下の症状に当てはまる方は、アレルギー性鼻炎の可能性があります。
☑くしゃみが頻繁に出る
アレルギー反応によって鼻の粘膜が刺激されると、異物を排除しようとして、くしゃみが頻繁に出ます。特に朝起きたときや、外から帰宅した際に連続してくしゃみが出ることがあります。
☑水っぽい鼻水が止まらない
アレルギー性鼻炎では、透明でさらさらとした鼻水が大量に出るのが特徴です。これは体がアレルゲンを外に排出しようとする防御反応によるもので、風邪による粘り気のある鼻水とは異なります。
☑鼻づまりが続く
鼻の粘膜が炎症を起こし、腫れることで空気の通り道が狭くなります。これにより鼻づまりが慢性的に続き、息苦しさを感じることがあります。特に夜間や横になった際に悪化することが多いです。
☑目のかゆみや充血がある
アレルギー反応は鼻だけでなく目にも影響を及ぼします。アレルゲンが結膜(目の表面)に付着すると、かゆみや充血を引き起こし、目をこすることでさらに悪化することがあります。
☑口呼吸が多くなる
鼻づまりが続くと鼻呼吸が困難になり、無意識のうちに口呼吸をするようになります。口呼吸が習慣化すると、喉の乾燥や風邪をひきやすくなるなどの影響が出ることもあります。
☑睡眠の質が低下する
鼻づまりによる呼吸のしづらさや、夜間のくしゃみ・鼻水が原因で熟睡できなくなります。これにより、日中の眠気や集中力の低下、疲労感が増すことがあります。
アレルギー性鼻炎の種類
アレルギー性鼻炎は、免疫システムが特定の物質(アレルゲン)に過敏に反応することで起こる慢性の鼻炎です。その発症時期や原因となるアレルゲンの違いにより、以下の2つのタイプに分けられます。
通年性アレルギー性鼻炎
1年を通して症状が続き、主に室内のアレルゲンが原因となる。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
特定の季節に症状が現れ、花粉が主な原因となる。
アレルギー性鼻炎の症状は、単なる風邪とは異なり、長期間続くことが特徴です。また、どちらのタイプも遺伝的な要因や環境要因が影響を与えていると考えられています。
アレルギー性鼻炎を効果的に管理するためには、原因となるアレルゲンを特定し、適切な治療を受けることが重要です。それぞれの種類について詳しく見ていきましょう。
通年性アレルギー性鼻炎
特徴
通年性アレルギー性鼻炎は、1年を通して発症し、環境の変化に関係なく持続的に症状が続くのが特徴です。室内環境や生活習慣が大きく影響し、特に寝具や家具などに生息するダニやホコリが主な原因になります。
主な原因
・ダニ(布団やカーペット、ソファなど)
・ハウスダスト(ホコリやカビ)
・ペットの毛やフケ(犬、猫、ハムスターなど)
・カビ(湿気の多い環境に生息)
治療・対策
こまめに掃除をし、ダニやハウスダストを減らす
掃除機はHEPAフィルター付きのものを使用し、週に2回以上かけるのが理想的です。特に寝具やカーペットなど、ダニが繁殖しやすい場所を重点的に掃除しましょう。
布団やカーペットを清潔に保つ
布団は天日干し(乾燥させダニの繁殖を防ぐ)し、しっかりと掃除機をかけることが基本です。布団乾燥機や防ダニの布団カバーも有効です。カーペットはできるだけ避け、フローリングの掃除を徹底することが推奨されます。
空気清浄機を使用する
空気中のハウスダストや花粉を取り除くために、高性能フィルター搭載の空気清浄機を設置すると効果的です。
ペットを飼っている場合は、こまめなブラッシングや掃除を徹底する
ペットの毛やフケがアレルギーの原因となることがあるため、こまめなブラッシングや部屋の掃除を心がけましょう。
抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などの薬物療法を活用
症状の重さに応じて、医師の指示のもと適切な薬を使用します。抗ヒスタミン薬は即効性があり、鼻水やくしゃみを抑えるのに有効です。ステロイド点鼻薬は炎症を抑え、長期的な管理に適しています。
舌下免疫療法を検討
アレルギーの原因(アレルゲン)となる物質を少しずつ、長期間服用することで身体を徐々にアレルゲンに慣らすことにより症状を和らげる治療法です。現在、スギ花粉やダニに対する治療が行われています。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
特徴
季節性アレルギー性鼻炎は、特定の季節にだけ症状が現れるアレルギー性鼻炎で、花粉症とも呼ばれます。花粉の飛散時期にアレルギー反応が起こるため、春や秋に多くみられます。
主な原因
・スギ花粉(2月~4月)
・ヒノキ花粉(3月~5月)
・ブタクサ花粉(8月~10月)
・ヨモギ花粉(8月~10月)
治療・対策
マスクやメガネを着用する
花粉が体内に入り込むのを防ぐため、外出時には花粉防止用のマスクやメガネを着用しましょう。メガネを使うことで、目に入る花粉を減らすことができます。
外出後は衣類や髪をしっかり払い、花粉を落とす
家に入る前に衣類や髪についた花粉を払い落とすことで、室内への花粉の持ち込みを防げます。洗顔やうがい、洗髪も有効です。
花粉が多い日は窓を開けない
花粉の飛散量が多い日には、窓を閉めて室内に花粉が入らないようにしましょう。換気が必要な場合は、窓を開ける幅を狭くしレースカーテンをする、花粉が少ない時間帯を選ぶ(花粉は昼前後と夕方に多く飛散します)、花粉対策用の網戸を活用するなど、工夫しましょう。また、花粉が飛散する季節には、洗濯物や布団の外干しを控えましょう。
抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などの薬物療法を活用
抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水を素早く抑える効果があり、ステロイド点鼻薬は炎症を鎮めて鼻づまりを改善します。症状がひどい場合は医師に相談して処方薬を使用しましょう。また、毎年花粉症の症状が出る方は、花粉飛沫が多くなる前にかかりつけの医療機関に相談しましょう。
スギ花粉に対する舌下免疫療法を検討
舌下免疫療法はスギ花粉によるアレルギー症状を根本的に改善する治療法です。花粉が飛散していない時期に開始する必要があります。
生活習慣を整える
規則正しい睡眠や栄養バランスの取れた食事を心がけ、免疫力を高めることで症状を軽減できる場合があります。
よくある質問
Q: アレルギー性鼻炎と風邪の違いは?
A: アレルギー性鼻炎は長期間続く水っぽい鼻水が特徴で、発熱を伴いません。一方、風邪は発熱や喉の痛みを伴うことが多く、数日で治ることが一般的です。
Q: 市販薬で治りますか?
A: 軽症であれば市販の抗ヒスタミン薬で症状を抑えられることもありますが、効果が不十分な場合は医師に相談し、適切な処方薬を検討しましょう。
Q: アレルギー性鼻炎は治るの?
A: 完全に治ることは難しいですが、適切な治療と対策により、症状を大幅に軽減することが可能です。舌下免疫療法などの根本的な治療も選択肢の一つです。
まとめ
通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎は、それぞれ原因や発症のタイミングが異なりますが、いずれも生活に大きな影響を与える病気です。
アレルギー性鼻炎の症状を放置すると、日常生活の質が低下し、集中力の低下や慢性的な睡眠不足を引き起こす可能性があります。しかし、適切な治療と生活習慣の改善により、症状を軽減し快適に過ごすことができます。
まずは、自分がどのタイプのアレルギー性鼻炎なのかを知り、原因となるアレルゲンを特定することが重要です。その上で、適切な対策を講じることで、症状を最小限に抑えることが可能です。
アレルギー性鼻炎と上手に付き合いながら、快適な生活を送るために、適切なケアを実践しましょう。症状が続く場合やつらいと感じる場合は、迷わず医師に相談し、自分に合った治療法を見つけてください。あなたの健康で快適な生活のために、できることから始めてみましょう。

監修医師
ことびあクリニック恵比寿院
院長 金井 幸代(かない さちよ)
徳島県出身
平成9年 徳島大学医学部 卒業
学位:医学博士
専門:日本小児科学会 小児科専門医
所属学会:日本小児科学会/日本外来小児科学会/日本小児アレルギー学会